私的生活 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062767767

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わるのにえらく時間がかかりましたが、田辺聖子さんの3部作の2冊目です。

    毎月1冊だけ購入するマイルールの今月の本です。

    乃里子の結婚生活が書かれています。
    いちゃついている結婚生活が特に大きな事件が起こって壊れるのでもなく、少しずつ何かがかわってきてしまう。
    その辺がとてもリアルに感じられました。

    3冊目も乃里子のその後を知りたいので、追いかけます。

  • 「言い寄る」に続く2作目の「私的生活」。

    当作品の初出昭和51年当時は、都はるみさんの「北の宿から」が大ヒット。
    「着てはもらえぬセーターを寒さこらえて編んでます」

    女心やら未練やら、1人哀しみも寂しさも耐え忍ぶ美学…。やだな。

    その時代に、田辺聖子さんが「乃里子」という女性を描いたことに、度肝を抜かれる。当時の時代背景は、女性にとって、結婚は男性の立身出世を支えるもので、お家存続のためには出産育児、親戚づきあいすべて献身あるのみ。

    結婚や夫婦、家族が幸せではないなどと、感じたり、口に出すことすら憚られる雰囲気はあったのだと思う。内実は違うのになあ。

    心を惹かれ、お互いに心を寄せ合ったつもりで、一つ屋根の下に暮らし始めると、そう簡単にはことは運ばない。ロマンスから苦瓜へ。

    我慢、辛抱、献身が美徳とされるこの国で、女性、妻、母親はその象徴。そんななか、乃里子こそ、心に感じる事に耳を傾け、心の中で咀嚼しながら、選択肢を増やし、選んでいく女性だ!

    ちなみに、テレサテンの「つぐない」(こんな女でも忘れないでね)、「愛人」(私は待つ身の女でいいの)はさらに8年後ぐらいににヒット。いい歌だけど、今では狂気すら感じる(笑)。

    日本の女は、我慢して耐えてきたのね。私は短い老い先、「だましだまし」続けながら、自分の人生のハンドルは自分で握っていきたいなあ。

  • 関西弁の小説は苦手だけど、田辺さんの小説は読みやすいです。サラサラ読めて、乃里子に共感できました。

  • センスの良い人が読んでる本を読みたくなるので、お友達のmさんが読んでた本を予備知識なしで読む。
    読み終わってから3部作の2作目と知る…でもそう感じないくらい登場人物の描写がわかりやすかった。
    古い小説なので、出てくるものがバブリーだったり、その中で生活する主人公たちも昔の映画を観てるような感覚で読んだ。
    逆行するけど、1作目で少し前の乃里子と剛をこれから読めるのも楽しみ。

  • 剛めっちゃ嫌いという印象。

  • 乃里子は好きだけど、剛ちゃんと結婚するのはわからんな〜。男と女のことは当事者同士でないとわからないのか。
    生活の描写が素敵。
    乃里子が出来る中年男に魅かれてるのはすごいわかる!

  • ☆4 水無瀬
    「乃里子三部作」第二作。結婚中。『苺をつぶしながら』の評価が高いが私はこれがいっとう好き。自分らしく在ることを一切諦めないのだ、素敵だ。お金の使いっぷりも素敵。

    ☆4 容
    寄り添うことと侵食すること、分かち合うことと押し入ること、の、違いに心を配らなければ共に生きることは難しい。それでも男は我儘で可愛く女も奔放で愛らしい。結婚しよかなと思ったら一度読むべき。

  • 男女の愛し合っていつのまにか離れなきゃいけなくなるそのすべてが、リアルで、とてもつらかった。
    誰が悪いというわけでもないし、相性が悪いとかいうわけでもなくて、思いやりも納得もあって、でもいつのまにか掛け違えてしまうのは、どうしてなのか。
    踏み込んじゃいけないところまで踏み込んだらいけない。自分らしさを恋人のために捨てたらいけない。そういうことはもちろんそうなんだけど、そんな単純な話でもない気がするし。
    好きだから踏み込みたい、自分のものにしたい、喜ばせたい、でも。
    とても息苦しくて、私はやっぱり、人も、色々な感覚も気持ちもモノも、失うのが怖い。ものすごく怖い。

  • 前作に引き続き、図書館ですぐに予約して読みました。旅行から帰って来て日常になれていかなきゃという頃。同じくさくさくと読めました。

    一番悲しい思いをしたのは、剛に乃里子の日記を読まれた事というよりも、あの大阪のマンションにずかずかと侵入されてしまっていたこと。大切な居場所を汚された気分で、落胆してしまった。あんなに生き生きとしていた乃里子の様子が小説の終わりにはすっかり萎んでしまっていた。かわいそうにと溜息が出た。

    結婚生活が粉々になくなってしまう。本音と本音が本当に行き来し始めると終わりが早まってく。

    陰鬱とした気持ちが残らないのは、剛と乃里子のやりとりの中に思いやりを感じたから?相手を思いやっているつもりが我を通して狂気となってしまった恋愛小説を最近読んだところだったので、一体何故こんなに読後感が違うのでしょうか、と不思議な思いでいます。

    酔いつぶれた福田くんを自宅に送り届けた際の、乃里子と原こずゑとのやりとり。中杉氏の乃里子にする、心地良いまでのあしらい方。好きです。

    引き続き続編を読みたいと思います。

  • 2022.08.21
    予定終了。
    結婚してないけど、色々考えさせられる気がした。
    役者になって、今の人と結婚に持って行くこともできる。けどその気になれない。違うけどちょっと通ずる所を感じた。

    今役者になって耐えたら、死ぬ時にはよかったって思える人生になる可能性もあるもんね。

    叶姉妹の真珠のネックレスのパールを一粒ずつ捨てている時と同じ状況かも。

著者プロフィール

1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大)卒業。1957年、雑誌の懸賞に佳作入選した『花狩』で、デビュー。64年『感傷旅行』で「芥川賞」を受賞。以後、『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』『ひねくれ一茶』『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』『新源氏物語』等が受賞作となる。95年「紫綬褒章」、2000年「文化功労者」、08年「文化勲章」を受章する。19年、総胆管結石による胆管炎のため死去。91歳没。

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