コロボックル物語1 だれも知らない小さな国 (講談社文庫)

  • 講談社
4.33
  • (121)
  • (75)
  • (35)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 827
感想 : 106
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062767989

作品紹介・あらすじ

250万人が愛した、日本の小人(コロボックル)の物語、復刊!

久しぶりで本書を読んで感じたのは、これはなんと、純度の高いラヴストーリーそのものではないか、という驚きだった。――梨木香歩(解説より)

初版が出て51年、いつのまにか本は半世紀を越えて生き、作者の私は80歳を過ぎてしまった。いくつになろうと、私が作者であるのはまちがいないのだが、このごろはなんとなく自分も、読者の1人になっているような気がする。そして読者としての私も、この再文庫化を大いに喜んでいる。――佐藤さとる
これが、僕がコロボックルを描く最後になるかもしれない。――村上勉

びっくりするほど綺麗なつばきが咲き、美しい泉が湧き出る「ぼくの小山」。ここは、コロボックルと呼ばれる小人の伝説がある山だった。ある日小川を流れる靴の中で、小指ほどしかない小さな人たちがぼくに向かって手を振った。うわあ、この山を守らなきゃ! 日本初・本格的ファンタジーの傑作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 小学生の時、初めて自分のこずかいで買った思い入れのある本。
    上橋菜穂子さんや荻野規子さんといった名だたるファンタジー作家の方々もこの本を読んで育ったとエッセイに書いておられているほどで、後世にとても影響を与えた本だと思う。
    初版は1958年で、当初はなんと自費出版だったらしい。

    講談社から文庫本で出版されていると知り、改めて読んでみた。
    細かいストーリーはほとんど覚えていなかったのだけれど、自分が思い込んでいた内容とかなり違うところが多くてびっくりした。

    第一に、私はこの物語を、小学生くらいの男の子が自分だけの秘密の場所で小人のコロボックルと出会い、交流するという話だと思っていた。
    これはあながち間違いではないのだけれど、物語の大半は、小学生の時にコロボックルに出会った少年が大人になってからの話だったのだ。

    第二に、物語の中に戦争の影響が色濃く残っていることである。
    小学生の途中で引っ越した主人公は、そのままいったんコロボックルの山から離れていく。しかし、戦争で父や学校を失った彼は、終戦後、ふと子どもの頃の宝物のような日々を思い出し、久しぶりに山を訪れるのである。
    著者の佐藤さとるさんは1928年生まれ。自身の体験が反映されているところも多いのだろう。

    働き始めた主人公は、山を買い取ることを目指してまずは山を借り受け、小さな小屋を建てる。その様子をずっと見守っていたコロボックルたちは主人公を信頼に値する人だと判断し、交流が始まるのである。
    しかし、コロボックルの山の真ん中に道路を建設するという計画が持ち上がる。このままでは大切な山がなくなってしまう、と危機感を覚えた主人公とコロボックルたちはとある方法を思いつき、見事山を守ることに成功する。

    本書は児童文学にカテゴライズされているが、子供のころの夢を忘れがちな大人こそ読むべき物語である。私も久しぶりに読み直し、好奇心を持って動き回っていた当時のわくわく感を思い出すことができた。
    これまで読んだことのない人もぜひ手に取ってほしい。自分の心の中にしまい込んだ大切な宝物を再発見するきっかけになるはずだ。

    • たなか・まさん
      子供の頃コロボックルが家にいたらどうしようと異様に心配でした。
      子供の頃コロボックルが家にいたらどうしようと異様に心配でした。
      2023/03/11
  • 図書館で見つけて懐かしくて思わず借りて読む。
    昔も好きだったけど今も変わらず新鮮に感じる。
    子供の頃は、自分の近くにもコロボックルいるかも~とよくキョロキョロしてた。
    自分だけの秘密の場所と小さな友達。宝物のようなファンタジーの世界だけどコロボックルの世界も人間の世界もリアルで面白い。

  • 小学2年生で初めて読んで以来ずっと大好きで、10代でも20代でも、30代に入ってもまだ読み返している。
    自分にとっての読書体験のルーツなので、思い入れが強すぎるのは承知しているが、何がそんなに良いのか、今回の再読を機に考えてみた。

    自分のそばでも小さな影が走るのではないか、雨蛙が落ちてくるのではないか、机の引き出しをあけるとそこにいるのではないかという、絶妙なリアリティがまず魅力である。

    物語を読み終えて、ぱたりと本を閉じてからも、その空想はずっと止まらない。通学路を歩いていても宿題をしていても、物陰にはいつも彼らがいるような気がしていた。

    この感覚は30代ともなるとさすがに薄れてしまうので、大人になってから読んだ人には通じにくいのかも知れないが、これが最大の魅力だというのは間違いないと思う。

    それから小山の描写。

    秘密の隠れ家は子どもの夢である。
    いつもより遠くまで足をのばし、いつもなら入らないような草深い場所で、偶然に発見した秘密の小山。
    完全に隔絶された異世界というわけではなく「トマトのおばあさん」のような地元の大人は知っているというのが、またどこかに本当にありそうな風情で良い。

    その素敵な隠れ家をどうするかと思えば、地道に石を積み、草を刈るという現実的な手作業。生き生きとした植物や水辺の描写も相まって、ありありと目に浮かぶ。子どもの頃の夏休みの、あのありあまった永遠のような時間、どこかの水辺でぼんやりと見ていた光のゆらめきが、この物語にはそのまま封じ込められているようだ。

    そう、小山はもはやせいたかさんだけではなく、私の思い出の一部なのだ。

    そしてその場所が、夢みたいな思い出の地では終わらない。大人になって戻ってきて、本当にその手で家を建て、開拓していく。その前向きさ、望んだことを着実に一歩ずつ進めていく実現力は、ファンタジーが陥りがちな魔法とか運命とか不思議とかの力を借りて、なんとなく感動の幕の向こうで煙に巻いてしまうやり方とは違って、この現代に生きている私たち、ありとあらゆる人間が本来は持っている素朴な「意思の力」と「手の力」を、なんの疑いもなく、ときめきとともに示してくれている。こんなに地に足の着いた、現実の心に寄り添ってくれるファンタジーがあるだろうか。

    コロボックルとの交流の仕方も同じことが言える。
    相手を尊重しながら少しずつ距離を詰めていく。お互いが、どちらもが相手のことを調べに調べ、知るべきを知り、そして当人同士できちんと話し合って、問題意識を共有し、共生する決意。
    残念ながら人間の国家間ではそうはいかないのが現実だが、せめて身の回りの小規模な人間関係でくらい、せいたかさんとコロボックルのようでありたい。価値観や立場や力の有無の差を超えて。

    あえて他の物語と違う魅力を語るとすると、そのあたりではないだろうかと思う。
    地に足の着いた、そのくせ極上のわくわくが詰まったファンタジー。

    ところで、せいたかさんが大人になる間には戦争があった。
    この一大事については、ほとんど語られない。

    戦争体験のある児童文学作家の作品には、反戦のメッセージの色濃いものが多いが、佐藤さとるはこのシリーズにそういったことを反映させなかった。避けたと言うよりは、書かれた時代には言うまでもない、周知の事実であったというだけかもしれない。

    ただ、30代になって読んで見ると、大人になったせいたかさんが、戦争前の子ども時代の記憶をとりもどし、小山を手に入れる様は、戦争によって一度失われた世界を取り返そうとする、そういう痛みと切なさを背負った行為であったかもしれないと感じた。

  • 隣同士の国でも仲良く出来ないし、絶滅の危機にある動物だっているし、コロボックルたちが人間世界と共存できるというのは夢物語なんだろうな。でもひっそりと友好を結び仲良くやっていこうとする主人公の輪が広がっていくと良いな。今回、小山に自動車道路の建設の件は回避できたけど、また別の場所には建設されるわけで…。その場所に別のコロボックル達が居ませんようにと祈らずにいられません。

  • 解説が梨木香歩。
    たぶん八月ごろ一日で一気に読了(ばたばたしてて覚えてない)。
    色々考えること、惹かれるところ、今の時代だったらこうは書けないのではないかなと思うところなどあったが、集中して小説の世界に入っていけた。

    2013,2,22購入。

  • ほんとに身近にいるのかも、いたらいいな、と読むたびに思う。彼たちが見える、信じられるおとなでありたいな、と。

  • 懐かしさのあまり衝動買い 絵もいいんだよねぇ(゚∀゚人)♥

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「懐かしさのあまり衝動買い」
      判る!
      しかも、何れ有川浩が続編書くと言う話なので、今「コロボックル物語」は買いです!!
      佐藤さとるオフィシャ...
      「懐かしさのあまり衝動買い」
      判る!
      しかも、何れ有川浩が続編書くと言う話なので、今「コロボックル物語」は買いです!!
      佐藤さとるオフィシャルウェブサイトでは、私家版も販売しているとか、、、欲しい~
      http://www.k-akatsuki.jp/
      2013/05/07
  • 「びっくりするほど綺麗なつばきが咲き、美しい泉が湧き出る「ぼくの小山」。ここは、コロボックルと呼ばれる小人の伝説がある山だった。ある日小川を流れる靴の中で、小指ほどしかない小さな人たちがぼくに向かって手を振った。うわあ、この山を守らなきゃ! 日本初・本格的ファンタジーの傑作。」

  • 幼い日、家にあったこの本。人生で初めて?ぐらいに読んだ小説。当時は意味なんて深く理解することができず、ただ、字を読むことでこの膨大な世界に自分が迷い込めた感覚が楽しくて、夢中になって読んだ思い出がある。大人になった今、この一冊を1日で読んでしまった。他の方もおっしゃってた通り、戦争の描写があることを初めて知った。戦時中を生きた1人として、せいたかさんも相当苦労して生きてきたんだなということが分かった。
    誰にも心の中に自分だけの世界がある。大人になったからこそわかるこの大切さ。
    最近は子ども時代に埋めたタイムカプセルを掘り起こして、そして温かい気持ちになる、そんな気持ちになる機会が多いなと感じます。

  • 有村浩からの繋がりで読んでみました。表紙や挿絵のイラストが有村浩と一緒で「よく本家のイラストレーター」を使えたものだと感心してしまった。←まずそこから(笑)
    それで内容の方なんですが、これは児童文学じゃないです。オトナが読む本です。文字がページの中にギッシル詰まっているだけで読み切れるか不安になりましたが、せいたかさんの小屋が秘密基地みたいでなんだかワクワクして読みました。このまま次の『ちいさな犬』へ進んでいこうと思います。

全106件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1928年、神奈川県横須賀市に生まれる。1959年、『だれも知らない小さな国』を出版し、毎日出版文化賞、国際アンデルセン賞国内賞他を受賞。コロボックルシリーズをはじめ、『かえるのアパート』、『おばあさんのひこうき』などの名作を次々に発表。日本の児童文学の代表的作家の一人。

「2009年 『もうひとつのコロボックル物語 ヒノキノヒコのかくれ家 人形のすきな男の子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐藤さとるの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×