新世界より(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.97
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本棚登録 : 11436
レビュー : 928
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062768535

作品紹介・あらすじ

1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力」を得るに至った人類が手にした平和。念動力の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた…隠された先史文明の一端を知るまでは。

感想・レビュー・書評

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  • 現在の人類とは、大きく異なる価値観を持つ未来の人類を描く作品。
    ちょっとホラー要素もあり、唐突に性描写もある。
    いきなりの性描写には戸惑ったが、改めてこの世界の価値観は、今とは別物であるという設定には強く惹かれた。

    人間が人間を殺すなんて有り得ない......

    子供たちは厳しく抑制された世界に生きているが、決して不幸には見受けられない。
    呪力という不思議な力を得ている人間社会は一見して平和だが、子供たちが行動できる世界は限られていた。
    人間の感情を抑制していることに映画『リベリオン』の世界観が頭に浮かんだ。

    主人公たちは冒険心からルールを破り、外の世界へ歩み出る。そこで意思を持った機械から、人類にとって重要な情報を知ることになる。事実さえも否定してしまうほどのショックが彼らを襲う。それは禁断の知識だった。
    業魔、悪鬼とは病気のようなものなのだろうか。
    しかし、その場をある僧に発見され、厳しく処罰を受けることになる。

    バケネズミと呼ばれる生き物は、人間に仕える醜い生き物だが、物語はこのバケネズミと人間の関係の危うさを描きながら進んでゆく。

    続きも楽しみ。

  • 【感想】
    面白い小説を探すにあたり、人に聞いてもネットで検索しても、必ず一度は耳にする「新世界より」。
    上中下3巻という中々のボリュームでしたが、どのような内容か一切わからないままチャレンジしました。

    本作品を一言で表すならば、「和製ハリーポッター」という感じでしょうか。構成のクセがスゴイ!!
    サイコキネシスを操る人類と、その文明の中に存在する色々な変わった生物たち。
    やはり世界観についての説明はMUSTで、やや蛇足多め、ファンタジーを文章化するとこうなるのかといった感想。
    正直上巻の最初の方では、本作品のファンタジーに満ちた世界観を理解するのに骨が折れました・・・・・
    言い換えれば、この本の構想はそれほど奥が深く、作者への畏敬の念を感じざるを得ませんでしたね。

    さて、上記の通り、世界観を理解したり読み進めるの難儀はしたものの、物語序盤から読者の関心を惹きつけて離さないオーラが本書にはあります。
    最初の最初である上巻9ページ目で、
    「多くのものが灰燼に帰した、あの日から、十年の月日が経過した。」
    「この間、時間を見つけては、過去の歴史をひもといてみたのだが、再認識させられたのは、人間というのはどれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎた途端に忘れてしまう生き物であるということだ。」
    こんな記述があったのだから、一体なにがあったの?!って気になって仕方がない(笑)

    上巻の途中までは、本当に「和製ハリーポッター」で、主人公の早季たちの成長の過程が全人学級の授業を通して緩やかに描かれていくだけなのだが、野外学習で「ミノシロモドキ」に出会ってから展開は一変する。
    この世界が、如何にして現代を迎えたのか。
    「ミノシロモドキ」を介して「旧世界から」の通達、知ってはいけない過去を早季たちは受けてしまう。

    知ってはならない「パンドラの箱」を開けてしまった早季たちの運命は?
    とまぁ、こんな具合で上巻は幕を閉じる。

    個人的に、ミノシロモドキが言っていた内容の中でも特に、「混乱を収拾するために、それまでは歴史の傍観者に徹してきた科学文明の継承者たちが、ついに立ち上がったのです」の伏線が気になりますね。
    「科学文明の継承者たち」は、一体なにをしたのでしょう?そうやって歴史は大きく動いたのか?
    あと、全体を通して、「もし〇〇だったなら、結果的に〇〇にならなかったのに・・・」や、「この時は、〇〇のようなことを想像もしていなかった」など、期待を煽る記述が多すぎるのも気になったが、結果的に面白いのだから良しとしよう。

    中巻、下巻の続きがとても気になります。


    【あらすじ】
    ここは汚れなき理想郷のはずだった。
    1000年後の日本。伝説。消える子供たち。
    著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説!

    子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。
    いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!


    【引用】
    1.多くのものが灰燼に帰した、あの日から、十年の月日が経過した。
    この間、時間を見つけては、過去の歴史をひもといてみたのだが、再認識させられたのは、人間というのはどれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎた途端に忘れてしまう生き物であるということだ。

    2.「早季は、面従腹背って言葉を知っているか?表面は従っているが、腹のなかでは違う事を考えているっていう事だよ」

    3.「僕らの社会は、どうやって生まれたんだ?知りたいのは、それだけだ」
    五百年間の暗黒時代は、奴隷王朝の終焉によって幕が引かれました。
    日本列島を支配していたすべての王朝は、世代間の厳しい淘汰によって、ついにPK能力者の血統が絶えてしまったのです。
    重しの取れた国々は、わずか数十年の戦乱により、過去五百年の間にPKによって虐殺された死者をはるかに超える犠牲が生じました。
    この混乱を収拾するために、それまでは歴史の傍観者に徹してきた科学文明の継承者たちが、ついに立ち上がったのです。

    「その後、現在に至る歴史について、信頼の置ける文献はきわめて少数です。そのため、残念ながら、ご質問の点に関しては不明です」



    【メモ】
    p9
    多くのものが灰燼に帰した、あの日から、十年の月日が経過した。
    この間、時間を見つけては、過去の歴史をひもといてみたのだが、再認識させられたのは、人間というのはどれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎた途端に忘れてしまう生き物であるということだ。


    p14
    初めてこの話を聞いたときには、私は自分が間接的に親友の命を救ったことに大きな喜びを覚えたものだが、今はその事を思い出すたびに複雑な思いにかられる。
    もし、真里亜がこの世に生まれてこなかったとしたら、結果的にあれほど大勢の人が命を落とすこともなかったはずだから…


    p17
    「早季は、面従腹背って言葉を知っているか?表面は従っているが、腹のなかでは違う事を考えているっていう事だよ」


    p230
    わたしたち五人は、魅入られたようにミノシロモドキの語る長い話に聞き入っていた。話の内容は1%も理解できなかったが、わたしたちの耳から脳に流入した言葉は、乾いた地面を潤す雨水のようにスムーズに吸収されていった。
    それまでのわたしたちの世界に関する知識は、最も重要なピースが欠けているジクソーパズルのようなものだった。
    だが、ミノシロモドキの言葉によって欠落を埋め好奇心の渇きを癒してくれるものの、それにより浮かび上がってくるのは、身の毛もよだつような地獄絵図であることは、想像もしていなかった。


    p244
    わたしは身震いした。わたし自身、呪力を使うのによく似たイメージを用いたことがあり、闇を飛翔する巨大な猛禽の姿が、はっきりと脳裏に浮かんだのだ。
    「・・・王朝末期になると、王を後継者が殺害して王位を簒奪するのが通例になりました。後継者が思春期になり、PKが発動した瞬間から、先王の命は風前の灯火となったのです。そのため、王子たちは常に厳しく監視され、叛心(はんしん)ありと見なされれば、先手を打って殺害されたり、両目を潰されて地下牢に幽閉されたりということも、日常茶飯事でした。。。。」


    p246
    「僕らの社会は、どうやって生まれたんだ?知りたいのは、それだけだ」
    「五百年間の暗黒時代は、奴隷王朝の終焉によって幕が引かれました。日本列島を支配していたすべての王朝は、世代間の厳しい淘汰によって、ついにPK能力者の血統が絶えてしまったのです。重しの取れた国々は、わずか数十年の戦乱により、過去五百年の間にPKによって虐殺された死者をはるかに超える犠牲が生じました。この混乱を収拾するために、それまでは歴史の傍観者に徹してきた科学文明の継承者たちが、ついに立ち上がったのです」

    「その後、現在に至る歴史について、信頼の置ける文献はきわめて少数です。そのため、残念ながら、ご質問の点に関しては不明です」


    p465
    「一番、人間に忠実だからこそ、注意が肝要なんだよ」
    覚は、大儀そうに眉をしかめた。
    「なぁ。昨日から僕らは、生きるか死ぬかという場面が続いてきただろう?だけど、賭けてもいいよ。今現在が、多分、これまでで一番危険な状態だ」

  • H29.12.16 読了。

    ・初貴志祐介作品。1000年後の日本の神栖66町を舞台にした物語。しめ縄に囲まれた町、神の力といわれるサイコキネシス、悪鬼、業魔、バケネズミ、風船犬などなどの独特な世界観。たまりませんね。
    中巻も楽しみです。

  • 【文庫で再読】2020年積読本消化29冊目。
    前読んだ時より夢中にならないだろう…と思っていたけど甘かった。
    早季に祝霊が来た頃には、もうノンストップ本と化していた。

    上巻は「若葉の季節」と「夏闇」
    夏キャンプに行ってミノシロモドキを捕まえて、血塗られた先史文明を知り外来種バケネズミに襲われて、スクィーラに助けられる…あたりまで。

    怖いシーン…
    離塵氏の言葉とは裏腹な狂気と万能感。
    あとはスクィーラの狡猾さ。「…もしかすると、神様は……もう、神様ではなくなったのですか?」あたり。

  •  書店で目にし、どうしても読みたかった。2008年、第29回日本SF大賞を受賞した本書です。

    1000年先の未来。
     文明はある理由で滅び、生活は明治以前の電気の無い時代に良く似ています。
    江戸時代と違うのは、人々は「呪力」を持ち、「呪力」に頼って生活しています。

     読み始めてすぐに「ハリーポッター」と連想しましたが、改めて思うと
    「悪意や攻撃性を題材にした、グロテスクな日本版ハリポタ」と言った感じでしょうか。(あくまでも私感です)

    設定はSF的ですが、内容はファンタジー。ミステリーな要素も含んでます。不思議な気持ち悪い動物も数多く登場します。

    下巻まで一気の読んで分かった。(と思ってる)
    「悪鬼」や「業魔」はいつも私たちの心の中にあり、潜んでいます。相変わらず無くならない悲惨な事件のほとんどは、この「悪鬼」や「業魔」のせいです。
    恐らく、混迷する政治もコレのせい。
    物語に出てくる「攻撃抑制」と「愧死機構」を持つ必要のない世の中になる事は、現代においても恐らく実現することは無いんでしょうね・・・

     恥ずかしながら、著者(貴志さん)の本は全く読んだことが無く、名前さえ知りませんでした。ホラー小説を良く書かれる方のようで、なるほどと思わせるエグイ描写が多いです。

    「リング」で著名になった鈴木光司と同じく、ホラー小説家が書くファンタジーは素晴らしい。

    「新世界より」当たりでした。

  • すごい本に出会ったとそう思える。

    一見普通の子供たちに見える主人公たちが特別な力を扱う。そんな設定の話をもう何度も繰り返し読んだが、これほど作り込まれた話は初めてかもしれない。

    主人公の早希は、平和な日常を過ごしていた。全人学級と呼ばれる教育機関で学んでいる。ある日、校外学習に出かけた先にミノシロモドキと言う謎めいた生物を見つける。それは大人たちから接触を禁止されている生物だった。捕まえてみると、それは図書室の役割を持つ、人為的な生物だった。早希たち5人は各々、質問していく中、この世界の成り立ちや秘密を知っていく。

    なんだか、薄気味悪い。

    読んでいく中、そう思えた。主人公たちが動物を捕まえてきゃっきゃと話している場面がよくあるが、出てくる動物の名前をわたしは一つも知らない。呪力の話を日常的にしているのに、わたしはついていけない。捻れた日常とでも言えばいいのだろうか。わたしが思う日常と彼らの日常は決定的に違う。それをまじまじと見つめて、この薄気味悪さの正体はなんなのか考えさせられる。まだ上を読んだばかりだが、テンポよく続く構成に早くもハマりそうだ。

    もしかしたら、こんな日常もあるのかもしれない。中、下巻も早く読みたい。





  • 著者:貴志 祐介
    発行日: 2008/1/24
    評価:★★★★★  (所要時間:2.5時間)
    読破冊数: 26/100冊


    ■こんな人におすすめ

    ・怖い思いをしたい人
    ・不気味なものを見たい人


    ■概要

    受賞歴
    第29回(2008年) 日本SF大賞受賞

    内容紹介
    ここは汚れなき理想郷のはずだった。
    1000年後の日本。伝説。消える子供たち。
    著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説!

    子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。
    いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!(amazonより)


    ■この本から学んだこと

    ・知人に薦めで読むことになった本。
    「とにかく気持ち悪さに浸りたい。重松清の疾走みたいなのが理想なんだが、何か知らないか」
    という私のリクエストに知人が
    「不気味さが後を引くよ」と薦めてくれたのである。

    内容だが、確かに不気味である。
    (重松清みがあるかは不明)
    まだ上巻。
    更なる恐怖が待ち構えている伏線がすでにあるし、読み進めるしかなさそうだ。


    ・中でも興味深かったのは「ボノボ(ヒト科チンパンジー属に分類されるサル)」についての記述だ(ここはノンフィクション)。
    ボノボは、ストレスが高まり、他の霊長類であれば暴力的になってしまう場面で、平和的に事態を解決する動物である。
    その解決の仕方が、なんと「性交」だ。

    普通チンパンジーは、繁殖目的でしか性行動をしない。
    だが、ボノボは違う。
    力で事態を解決する場面を、性交で解決するのだ。
    しかも、おとなの雄同士や雌同士、おとなと子ども、子ども同士など幅広い組み合わせで。

    びっくり。

    だからと言って人間も試してみたらどうでしょう?とはいかない。
    だが、この物語の世界では、登場人物たちもそれをする。

    主人公の早季、優等生の瞬のことが好きなのに、いつも皮肉屋だが本当は優しい、覚とする。
    その事実だけ記述すると、結構文春な事態だ。
    確かに文中だとその流れが唐突なのだが、何と言うか、いやらしさがなくナチュラルだったのだ。
    それくらい、この世界では普通の出来事だからそう書かれていたんだろう。
    本来、繁殖や性的興奮どうこうのみでなく、
    お互いを落ち着けたり、スキンシップの意味でのそういうことが
    もしかしたら大切なのかもしれない・・・
    人間に足りていないのはそこ、なのかも?
    そんな風に思った。

  • 上中下巻の上巻。
    普通に面白い。
    説明が長いけど、この世界を知るには必要なのか。
    無条件に信じていた世界に少しずつ綻びが見え始める。

  • 上巻はいまいち。これから面白くなることに期待する。

  • 貴志さんで一番好き。続き気になりすぎ、スケールでかい良いSF。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2020年 『コロッサスの鉤爪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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