新世界より(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 10230
レビュー : 872
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062768535

作品紹介・あらすじ

1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力」を得るに至った人類が手にした平和。念動力の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた…隠された先史文明の一端を知るまでは。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    面白い小説を探すにあたり、人に聞いてもネットで検索しても、必ず一度は耳にする「新世界より」。
    上中下3巻という中々のボリュームでしたが、どのような内容か一切わからないままチャレンジしました。

    本作品を一言で表すならば、「和製ハリーポッター」という感じでしょうか。構成のクセがスゴイ!!
    サイコキネシスを操る人類と、その文明の中に存在する色々な変わった生物たち。
    やはり世界観についての説明はMUSTで、やや蛇足多め、ファンタジーを文章化するとこうなるのかといった感想。
    正直上巻の最初の方では、本作品のファンタジーに満ちた世界観を理解するのに骨が折れました・・・・・
    言い換えれば、この本の構想はそれほど奥が深く、作者への畏敬の念を感じざるを得ませんでしたね。

    さて、上記の通り、世界観を理解したり読み進めるの難儀はしたものの、物語序盤から読者の関心を惹きつけて離さないオーラが本書にはあります。
    最初の最初である上巻9ページ目で、
    「多くのものが灰燼に帰した、あの日から、十年の月日が経過した。」
    「この間、時間を見つけては、過去の歴史をひもといてみたのだが、再認識させられたのは、人間というのはどれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎた途端に忘れてしまう生き物であるということだ。」
    こんな記述があったのだから、一体なにがあったの?!って気になって仕方がない(笑)

    上巻の途中までは、本当に「和製ハリーポッター」で、主人公の早季たちの成長の過程が全人学級の授業を通して緩やかに描かれていくだけなのだが、野外学習で「ミノシロモドキ」に出会ってから展開は一変する。
    この世界が、如何にして現代を迎えたのか。
    「ミノシロモドキ」を介して「旧世界から」の通達、知ってはいけない過去を早季たちは受けてしまう。

    知ってはならない「パンドラの箱」を開けてしまった早季たちの運命は?
    とまぁ、こんな具合で上巻は幕を閉じる。

    個人的に、ミノシロモドキが言っていた内容の中でも特に、「混乱を収拾するために、それまでは歴史の傍観者に徹してきた科学文明の継承者たちが、ついに立ち上がったのです」の伏線が気になりますね。
    「科学文明の継承者たち」は、一体なにをしたのでしょう?そうやって歴史は大きく動いたのか?
    あと、全体を通して、「もし〇〇だったなら、結果的に〇〇にならなかったのに・・・」や、「この時は、〇〇のようなことを想像もしていなかった」など、期待を煽る記述が多すぎるのも気になったが、結果的に面白いのだから良しとしよう。

    中巻、下巻の続きがとても気になります。


    【あらすじ】
    ここは汚れなき理想郷のはずだった。
    1000年後の日本。伝説。消える子供たち。
    著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説!

    子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。
    いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!


    【引用】
    1.多くのものが灰燼に帰した、あの日から、十年の月日が経過した。
    この間、時間を見つけては、過去の歴史をひもといてみたのだが、再認識させられたのは、人間というのはどれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎた途端に忘れてしまう生き物であるということだ。

    2.「早季は、面従腹背って言葉を知っているか?表面は従っているが、腹のなかでは違う事を考えているっていう事だよ」

    3.「僕らの社会は、どうやって生まれたんだ?知りたいのは、それだけだ」
    五百年間の暗黒時代は、奴隷王朝の終焉によって幕が引かれました。
    日本列島を支配していたすべての王朝は、世代間の厳しい淘汰によって、ついにPK能力者の血統が絶えてしまったのです。
    重しの取れた国々は、わずか数十年の戦乱により、過去五百年の間にPKによって虐殺された死者をはるかに超える犠牲が生じました。
    この混乱を収拾するために、それまでは歴史の傍観者に徹してきた科学文明の継承者たちが、ついに立ち上がったのです。

    「その後、現在に至る歴史について、信頼の置ける文献はきわめて少数です。そのため、残念ながら、ご質問の点に関しては不明です」



    【メモ】
    p9
    多くのものが灰燼に帰した、あの日から、十年の月日が経過した。
    この間、時間を見つけては、過去の歴史をひもといてみたのだが、再認識させられたのは、人間というのはどれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎた途端に忘れてしまう生き物であるということだ。


    p14
    初めてこの話を聞いたときには、私は自分が間接的に親友の命を救ったことに大きな喜びを覚えたものだが、今はその事を思い出すたびに複雑な思いにかられる。
    もし、真里亜がこの世に生まれてこなかったとしたら、結果的にあれほど大勢の人が命を落とすこともなかったはずだから…


    p17
    「早季は、面従腹背って言葉を知っているか?表面は従っているが、腹のなかでは違う事を考えているっていう事だよ」


    p230
    わたしたち五人は、魅入られたようにミノシロモドキの語る長い話に聞き入っていた。話の内容は1%も理解できなかったが、わたしたちの耳から脳に流入した言葉は、乾いた地面を潤す雨水のようにスムーズに吸収されていった。
    それまでのわたしたちの世界に関する知識は、最も重要なピースが欠けているジクソーパズルのようなものだった。
    だが、ミノシロモドキの言葉によって欠落を埋め好奇心の渇きを癒してくれるものの、それにより浮かび上がってくるのは、身の毛もよだつような地獄絵図であることは、想像もしていなかった。


    p244
    わたしは身震いした。わたし自身、呪力を使うのによく似たイメージを用いたことがあり、闇を飛翔する巨大な猛禽の姿が、はっきりと脳裏に浮かんだのだ。
    「・・・王朝末期になると、王を後継者が殺害して王位を簒奪するのが通例になりました。後継者が思春期になり、PKが発動した瞬間から、先王の命は風前の灯火となったのです。そのため、王子たちは常に厳しく監視され、叛心(はんしん)ありと見なされれば、先手を打って殺害されたり、両目を潰されて地下牢に幽閉されたりということも、日常茶飯事でした。。。。」


    p246
    「僕らの社会は、どうやって生まれたんだ?知りたいのは、それだけだ」
    「五百年間の暗黒時代は、奴隷王朝の終焉によって幕が引かれました。日本列島を支配していたすべての王朝は、世代間の厳しい淘汰によって、ついにPK能力者の血統が絶えてしまったのです。重しの取れた国々は、わずか数十年の戦乱により、過去五百年の間にPKによって虐殺された死者をはるかに超える犠牲が生じました。この混乱を収拾するために、それまでは歴史の傍観者に徹してきた科学文明の継承者たちが、ついに立ち上がったのです」

    「その後、現在に至る歴史について、信頼の置ける文献はきわめて少数です。そのため、残念ながら、ご質問の点に関しては不明です」


    p465
    「一番、人間に忠実だからこそ、注意が肝要なんだよ」
    覚は、大儀そうに眉をしかめた。
    「なぁ。昨日から僕らは、生きるか死ぬかという場面が続いてきただろう?だけど、賭けてもいいよ。今現在が、多分、これまでで一番危険な状態だ」

  • 1000年後の日本。呪力と呼ばれる超能力を使う人々。主人公の早季、覚たち同級生5人は、キャンプに出かけた先で偶然出会ったミノシロモドキ(移動型自動国会図書館)から、文明の崩壊が呪力によるものだという事を知り・・・。導入部はかなり長かったが、多分必要。ミノシロモドキに出会うあたりから、物語は急速に展開していく。うん面白い。バケネズミたちが妙に愛おしくなる。

  • 最初の印象は宮崎駿のアニメを連想した。
    読み進むうちにどんどん加速度がついていく感じ。

  • H29.12.16 読了。

    ・初貴志祐介作品。1000年後の日本の神栖66町を舞台にした物語。しめ縄に囲まれた町、神の力といわれるサイコキネシス、悪鬼、業魔、バケネズミ、風船犬などなどの独特な世界観。たまりませんね。
    中巻も楽しみです。

  • 著者:貴志 祐介
    発行日: 2008/1/24
    評価:★★★★★  (所要時間:2.5時間)
    読破冊数: 26/100冊


    ■こんな人におすすめ

    ・怖い思いをしたい人
    ・不気味なものを見たい人


    ■概要

    受賞歴
    第29回(2008年) 日本SF大賞受賞

    内容紹介
    ここは汚れなき理想郷のはずだった。
    1000年後の日本。伝説。消える子供たち。
    著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説!

    子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。
    いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!(amazonより)


    ■この本から学んだこと

    ・知人に薦めで読むことになった本。
    「とにかく気持ち悪さに浸りたい。重松清の疾走みたいなのが理想なんだが、何か知らないか」
    という私のリクエストに知人が
    「不気味さが後を引くよ」と薦めてくれたのである。

    内容だが、確かに不気味である。
    (重松清みがあるかは不明)
    まだ上巻。
    更なる恐怖が待ち構えている伏線がすでにあるし、読み進めるしかなさそうだ。


    ・中でも興味深かったのは「ボノボ(ヒト科チンパンジー属に分類されるサル)」についての記述だ(ここはノンフィクション)。
    ボノボは、ストレスが高まり、他の霊長類であれば暴力的になってしまう場面で、平和的に事態を解決する動物である。
    その解決の仕方が、なんと「性交」だ。

    普通チンパンジーは、繁殖目的でしか性行動をしない。
    だが、ボノボは違う。
    力で事態を解決する場面を、性交で解決するのだ。
    しかも、おとなの雄同士や雌同士、おとなと子ども、子ども同士など幅広い組み合わせで。

    びっくり。

    だからと言って人間も試してみたらどうでしょう?とはいかない。
    だが、この物語の世界では、登場人物たちもそれをする。

    主人公の早季、優等生の瞬のことが好きなのに、いつも皮肉屋だが本当は優しい、覚とする。
    その事実だけ記述すると、結構文春な事態だ。
    確かに文中だとその流れが唐突なのだが、何と言うか、いやらしさがなくナチュラルだったのだ。
    それくらい、この世界では普通の出来事だからそう書かれていたんだろう。
    本来、繁殖や性的興奮どうこうのみでなく、
    お互いを落ち着けたり、スキンシップの意味でのそういうことが
    もしかしたら大切なのかもしれない・・・
    人間に足りていないのはそこ、なのかも?
    そんな風に思った。

  •  書店で目にし、どうしても読みたかった。2008年、第29回日本SF大賞を受賞した本書です。

    1000年先の未来。
     文明はある理由で滅び、生活は明治以前の電気の無い時代に良く似ています。
    江戸時代と違うのは、人々は「呪力」を持ち、「呪力」に頼って生活しています。

     読み始めてすぐに「ハリーポッター」と連想しましたが、改めて思うと
    「悪意や攻撃性を題材にした、グロテスクな日本版ハリポタ」と言った感じでしょうか。(あくまでも私感です)

    設定はSF的ですが、内容はファンタジー。ミステリーな要素も含んでます。不思議な気持ち悪い動物も数多く登場します。

    下巻まで一気の読んで分かった。(と思ってる)
    「悪鬼」や「業魔」はいつも私たちの心の中にあり、潜んでいます。相変わらず無くならない悲惨な事件のほとんどは、この「悪鬼」や「業魔」のせいです。
    恐らく、混迷する政治もコレのせい。
    物語に出てくる「攻撃抑制」と「愧死機構」を持つ必要のない世の中になる事は、現代においても恐らく実現することは無いんでしょうね・・・

     恥ずかしながら、著者(貴志さん)の本は全く読んだことが無く、名前さえ知りませんでした。ホラー小説を良く書かれる方のようで、なるほどと思わせるエグイ描写が多いです。

    「リング」で著名になった鈴木光司と同じく、ホラー小説家が書くファンタジーは素晴らしい。

    「新世界より」当たりでした。

  • 貴志祐介さんはやはりどこか狂気じみた才能の持ち主だ。
    千年後の世界より、さらに千年後の同胞に向けられた語り。
    超能力を持つ人間ばかりの集落、その人間を神と畏れ労働力として使われているバケネズミ、ミノシロや風船犬、カヤノスヅクリ等得体の知れない生物たち…この不気味な世界で何が起こるのか。伏線がはりめぐらされている気がする上巻、読了。

  • 1000年後の日本ていうsfチックな設定。上・中・下は長いけど出だしは良い。

    12月はもっとたくさん読んでいきたい。

    • ゆうさん
      面白そうやな。
      「新世界より」っていう交響曲があるから聞いてみてちょ(絶対聞いたことある)
      面白そうやな。
      「新世界より」っていう交響曲があるから聞いてみてちょ(絶対聞いたことある)
      2019/12/01
  • 描写が映像的なのだろうか。読了後、新世界…の世界観のはっきりした夢を見た。

  • 読んで考えたことが山程ある。

    アニメで見ていたので大筋は知っているのだけど、その時はなぜこんな行動を取ったのか、何を考えていたのかが分からなかったし、現実には存在しない道具や生物についても詳しくは分からないままだったので、原作を読んで納得した。

    知らなかった言葉が沢山。特に生物の名前が大量に出てくるし、実際に存在するものの中に架空の生物を当然のように混ぜ込んであるので調べないと判別ができない。
    他にも知らない漢字や語句を調べながら読んでいたので、調べている時間の方が長かったかも……。
    原作は早希の回想という形で書かれているため、お茶を濁すと言うか、答えをはっきり言わずに話が進んでいくこともあり、粗筋は知っていても謎が積もっていく。


    本編からは脱線するけど気になった言葉が二つ。

    「土蜘蛛」はこの作品に出会う前から何となく知っていた言葉だけど、実際に古代日本でそう呼ばれる人達がいたことは全く知らなかったし、そもそも私は日本史で習ったレベルでしか古代日本、更に歴史全体を知らないことに気付かされた。日本人だけど、そのルーツは知らないも同然。すごく知りたくなった。
    「黥面文身」は全く知らなかった言葉で、まずアイヌや琉球で刺青の文化があったことも最近知ったし、(言葉が正しいかは不明だけど)本土でも広まっていた風習で、しかも中国の書物に証拠として残っているなんて。ますます興味深い……。


    アニメと印象が違ったことと言えば、早希が覚に対してかなり厳しく当たること。対して覚は原作の方が早希のことをよく見ているし、いざという時に守ってあげるし、かなり頼りになる。土蜘蛛の兵士に追われてバラバラに逃げている時、早希のことを見つけたのも偶然ではなさそう。
    バケネズミの考えもより伝わってきて、知能の高さが感じ取れた。

    著者の頭の中の、超能力が存在する1000年後の未来が面白すぎる。身分証は紙切れと化し、図書館は自走型アーカイブへ。文明は非常に進んでいるのに人間社会はなぜか原始的な生活に。まるでナウシカのような世界。

    今、全人類が突然PKを持つようになったらどうなるか。恐らく短時間で地球のほとんどの地域は最悪の結果になると思われる。それは極端な例えかもしれないが、皆が強力な武器や核兵器を持ったと考えれば同じことが起きる可能性が高いだろう。
    結局、「ヒトという生き物を社会性を持った哺乳類にすぎないと捉え直す」「ようやく人類は神の力を手に入れたのに、あまりにも強力すぎる力を制御するため、自らを、人から猿、猿からただの哺乳類へと、貶めていかなければならなかった」ということになるのかもしれない。

    早希が手記を書いた動機が深い。
    「人間というのは、どれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎたとたんに忘れてしまう生き物であるということだった。」
    人間は過去を忘れたら終わりなのだと思う。過去から学ばなければ人類自らを滅ぼすことになる。だから、この作品で起こることや早希達がそこから得る教訓は、現実世界への風刺になり得るのでは。

    無瞋上人の言葉で納得できないことがひとつ。「他人の痛みを、わがこととして感じられる」ことが「人と獣を分かつもの」だと言っているけれど、獣だって自分の子供や飼い主を守ったり助けようとしたりする。
    痛みを感じるから人間、感じないなら人間ではない=獣、ということではなく、人間だって動物の一種であるし、痛みを感じないのは単に病気だから、精神疾患を患っているから、ただその違いだけだと思う。だから人間だろうが犯罪は犯すしいじめるし、そこに生物として優位なことは全く無いと考える。
    まぁ無瞋上人は早希に印象付ける為に例えで言ったのかも知れないけれど……。


    私の調べ学習は続く。

    20190917

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学経済学部卒。96年『十三番目の人格-ISORA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2017年 『ダークゾーン 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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