新世界より(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 10117
レビュー : 869
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062768535

作品紹介・あらすじ

1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力」を得るに至った人類が手にした平和。念動力の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた…隠された先史文明の一端を知るまでは。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    面白い小説を探すにあたり、人に聞いてもネットで検索しても、必ず一度は耳にする「新世界より」。
    上中下3巻という中々のボリュームでしたが、どのような内容か一切わからないままチャレンジしました。

    本作品を一言で表すならば、「和製ハリーポッター」という感じでしょうか。構成のクセがスゴイ!!
    サイコキネシスを操る人類と、その文明の中に存在する色々な変わった生物たち。
    やはり世界観についての説明はMUSTで、やや蛇足多め、ファンタジーを文章化するとこうなるのかといった感想。
    正直上巻の最初の方では、本作品のファンタジーに満ちた世界観を理解するのに骨が折れました・・・・・
    言い換えれば、この本の構想はそれほど奥が深く、作者への畏敬の念を感じざるを得ませんでしたね。

    さて、上記の通り、世界観を理解したり読み進めるの難儀はしたものの、物語序盤から読者の関心を惹きつけて離さないオーラが本書にはあります。
    最初の最初である上巻9ページ目で、
    「多くのものが灰燼に帰した、あの日から、十年の月日が経過した。」
    「この間、時間を見つけては、過去の歴史をひもといてみたのだが、再認識させられたのは、人間というのはどれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎた途端に忘れてしまう生き物であるということだ。」
    こんな記述があったのだから、一体なにがあったの?!って気になって仕方がない(笑)

    上巻の途中までは、本当に「和製ハリーポッター」で、主人公の早季たちの成長の過程が全人学級の授業を通して緩やかに描かれていくだけなのだが、野外学習で「ミノシロモドキ」に出会ってから展開は一変する。
    この世界が、如何にして現代を迎えたのか。
    「ミノシロモドキ」を介して「旧世界から」の通達、知ってはいけない過去を早季たちは受けてしまう。

    知ってはならない「パンドラの箱」を開けてしまった早季たちの運命は?
    とまぁ、こんな具合で上巻は幕を閉じる。

    個人的に、ミノシロモドキが言っていた内容の中でも特に、「混乱を収拾するために、それまでは歴史の傍観者に徹してきた科学文明の継承者たちが、ついに立ち上がったのです」の伏線が気になりますね。
    「科学文明の継承者たち」は、一体なにをしたのでしょう?そうやって歴史は大きく動いたのか?
    あと、全体を通して、「もし〇〇だったなら、結果的に〇〇にならなかったのに・・・」や、「この時は、〇〇のようなことを想像もしていなかった」など、期待を煽る記述が多すぎるのも気になったが、結果的に面白いのだから良しとしよう。

    中巻、下巻の続きがとても気になります。


    【あらすじ】
    ここは汚れなき理想郷のはずだった。
    1000年後の日本。伝説。消える子供たち。
    著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説!

    子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。
    いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!


    【引用】
    1.多くのものが灰燼に帰した、あの日から、十年の月日が経過した。
    この間、時間を見つけては、過去の歴史をひもといてみたのだが、再認識させられたのは、人間というのはどれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎた途端に忘れてしまう生き物であるということだ。

    2.「早季は、面従腹背って言葉を知っているか?表面は従っているが、腹のなかでは違う事を考えているっていう事だよ」

    3.「僕らの社会は、どうやって生まれたんだ?知りたいのは、それだけだ」
    五百年間の暗黒時代は、奴隷王朝の終焉によって幕が引かれました。
    日本列島を支配していたすべての王朝は、世代間の厳しい淘汰によって、ついにPK能力者の血統が絶えてしまったのです。
    重しの取れた国々は、わずか数十年の戦乱により、過去五百年の間にPKによって虐殺された死者をはるかに超える犠牲が生じました。
    この混乱を収拾するために、それまでは歴史の傍観者に徹してきた科学文明の継承者たちが、ついに立ち上がったのです。

    「その後、現在に至る歴史について、信頼の置ける文献はきわめて少数です。そのため、残念ながら、ご質問の点に関しては不明です」



    【メモ】
    p9
    多くのものが灰燼に帰した、あの日から、十年の月日が経過した。
    この間、時間を見つけては、過去の歴史をひもといてみたのだが、再認識させられたのは、人間というのはどれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎた途端に忘れてしまう生き物であるということだ。


    p14
    初めてこの話を聞いたときには、私は自分が間接的に親友の命を救ったことに大きな喜びを覚えたものだが、今はその事を思い出すたびに複雑な思いにかられる。
    もし、真里亜がこの世に生まれてこなかったとしたら、結果的にあれほど大勢の人が命を落とすこともなかったはずだから…


    p17
    「早季は、面従腹背って言葉を知っているか?表面は従っているが、腹のなかでは違う事を考えているっていう事だよ」


    p230
    わたしたち五人は、魅入られたようにミノシロモドキの語る長い話に聞き入っていた。話の内容は1%も理解できなかったが、わたしたちの耳から脳に流入した言葉は、乾いた地面を潤す雨水のようにスムーズに吸収されていった。
    それまでのわたしたちの世界に関する知識は、最も重要なピースが欠けているジクソーパズルのようなものだった。
    だが、ミノシロモドキの言葉によって欠落を埋め好奇心の渇きを癒してくれるものの、それにより浮かび上がってくるのは、身の毛もよだつような地獄絵図であることは、想像もしていなかった。


    p244
    わたしは身震いした。わたし自身、呪力を使うのによく似たイメージを用いたことがあり、闇を飛翔する巨大な猛禽の姿が、はっきりと脳裏に浮かんだのだ。
    「・・・王朝末期になると、王を後継者が殺害して王位を簒奪するのが通例になりました。後継者が思春期になり、PKが発動した瞬間から、先王の命は風前の灯火となったのです。そのため、王子たちは常に厳しく監視され、叛心(はんしん)ありと見なされれば、先手を打って殺害されたり、両目を潰されて地下牢に幽閉されたりということも、日常茶飯事でした。。。。」


    p246
    「僕らの社会は、どうやって生まれたんだ?知りたいのは、それだけだ」
    「五百年間の暗黒時代は、奴隷王朝の終焉によって幕が引かれました。日本列島を支配していたすべての王朝は、世代間の厳しい淘汰によって、ついにPK能力者の血統が絶えてしまったのです。重しの取れた国々は、わずか数十年の戦乱により、過去五百年の間にPKによって虐殺された死者をはるかに超える犠牲が生じました。この混乱を収拾するために、それまでは歴史の傍観者に徹してきた科学文明の継承者たちが、ついに立ち上がったのです」

    「その後、現在に至る歴史について、信頼の置ける文献はきわめて少数です。そのため、残念ながら、ご質問の点に関しては不明です」


    p465
    「一番、人間に忠実だからこそ、注意が肝要なんだよ」
    覚は、大儀そうに眉をしかめた。
    「なぁ。昨日から僕らは、生きるか死ぬかという場面が続いてきただろう?だけど、賭けてもいいよ。今現在が、多分、これまでで一番危険な状態だ」

  • 最初の印象は宮崎駿のアニメを連想した。
    読み進むうちにどんどん加速度がついていく感じ。

  • H29.12.16 読了。

    ・初貴志祐介作品。1000年後の日本の神栖66町を舞台にした物語。しめ縄に囲まれた町、神の力といわれるサイコキネシス、悪鬼、業魔、バケネズミ、風船犬などなどの独特な世界観。たまりませんね。
    中巻も楽しみです。

  •  書店で目にし、どうしても読みたかった。2008年、第29回日本SF大賞を受賞した本書です。

    1000年先の未来。
     文明はある理由で滅び、生活は明治以前の電気の無い時代に良く似ています。
    江戸時代と違うのは、人々は「呪力」を持ち、「呪力」に頼って生活しています。

     読み始めてすぐに「ハリーポッター」と連想しましたが、改めて思うと
    「悪意や攻撃性を題材にした、グロテスクな日本版ハリポタ」と言った感じでしょうか。(あくまでも私感です)

    設定はSF的ですが、内容はファンタジー。ミステリーな要素も含んでます。不思議な気持ち悪い動物も数多く登場します。

    下巻まで一気の読んで分かった。(と思ってる)
    「悪鬼」や「業魔」はいつも私たちの心の中にあり、潜んでいます。相変わらず無くならない悲惨な事件のほとんどは、この「悪鬼」や「業魔」のせいです。
    恐らく、混迷する政治もコレのせい。
    物語に出てくる「攻撃抑制」と「愧死機構」を持つ必要のない世の中になる事は、現代においても恐らく実現することは無いんでしょうね・・・

     恥ずかしながら、著者(貴志さん)の本は全く読んだことが無く、名前さえ知りませんでした。ホラー小説を良く書かれる方のようで、なるほどと思わせるエグイ描写が多いです。

    「リング」で著名になった鈴木光司と同じく、ホラー小説家が書くファンタジーは素晴らしい。

    「新世界より」当たりでした。

  • 貴志祐介さんはやはりどこか狂気じみた才能の持ち主だ。
    千年後の世界より、さらに千年後の同胞に向けられた語り。
    超能力を持つ人間ばかりの集落、その人間を神と畏れ労働力として使われているバケネズミ、ミノシロや風船犬、カヤノスヅクリ等得体の知れない生物たち…この不気味な世界で何が起こるのか。伏線がはりめぐらされている気がする上巻、読了。

  • 描写が映像的なのだろうか。読了後、新世界…の世界観のはっきりした夢を見た。

  • 人間が超能力を持つようになった遠い未来の話。
    上巻では先の展開が全く読めないのですが、引き込まれているのは間違いない。

  • お休みだからって、つい読み始めちゃったらもう、止められない。
    寝不足必至…

    友人曰く、面白いかなって上巻をまず買って、読み始めたら
    嵌まり込んで、読後即追加購入中・下巻。
    会ってはよく読んだ本の話などする間柄な友で、この本の作者の
    貴志祐介作品は「悪の教典」が有名で、私も読んだ。
    で、本作は全く別の世界…殺戮バイオレンスではないから驚き。

    あー、現時点中巻の中間ぐらい迄進んどります。
    かっぱえびせん(昭和TVCMコピー「やめられないとまらない」より)状態。
    トイレに行くついでにブクログ書く。はよ続き読も。

  • 60

    面白い、徹夜本と聞いていた新世界より。
    SFだから世界観や用語説明などがあって、冒頭200ページ読むのに二週間かかった。苦手なの。
    最初から不穏な話だし、怖い~と思いながら読み進めてた。 でも、サマーキャンプのときから、止まらなくなって一気読み!
    疑問に思いながらも巧妙に隠蔽されていた事実が明らかになり、残虐な過去を知ったときから面白さフルスロットル!!
    一気に上巻を読みました。
    貴志祐介のグロさ好きなんだよね、何回も読みたくなる。

    そのままの勢いで中巻に行きました。

    20190825

  • 1000年後の話!?

    サイキッカーが住む世界で現代の文明の何らかを継承しているような世界!?

    バケネズミや風船牛など謎の生物!?

    五人の少年少女達がヒョンなことから知ってしまった世界の秘密!?物語は急転直下で進んでいく。


    ・前半の学園生活はハリーポッターのようにほんのりしてました
    ・世界観はナウシカやブルータワーのように近代文明が滅んだ後の世界のような感じです
    ・世界の秘密に触れている時ワンピースのオハラの人々の研究が頭をよぎりました


    何れにしても中巻が楽しみです!

  • まだ上巻。中巻と下巻が控えていることを承知で、上巻を読んだ感想を。

    前半では、能力を持つ前の子どもたちが育てられる途上を描く。
    子ども時代を振り返るという形式での記述が上手く、淡い懐古を感じさせる読み味。

    まだ世界の全容を知らない子どもたちが大事に育てられるのだけど、それでもどこか不穏な雰囲気が漂う。
    それはカズオイシグロの「わたしを離さないで」を想起させた。


    そして後半からは夏合宿と称して、子どもたちは旅に出る。
    子どもたちは世界の真相を知り、そして身を持って外界の恐ろしさをも知っていく。

    未だ危機の真ん中にいるままで上巻は幕を閉じるので、すぐに中巻を購入した。これは続きが楽しみ。


    あらすじを読んで、SF好きの自分にはハマりそうな内容であることは分かっていたけど、実際に読んでみるとSFとファンタジーの中間と言ったところ。
    そしてテイストはジュブナイル小説の色が濃く、子どもの頃に読んでおきたかったと思わなくもない。

  • 貴志祐介の最高傑作と聞いたから読んだけど、そうかな…?
    クリムゾンや黒い家の方が好きだな。
    余計なうんちくというか、生物やらなんやらの描写が詳し過ぎて前半読むのが辛かった。
    設定練り込んでるのね、てのは分かるんだけど。
    最後の方は勢い付いてきてグイグイ読めたけど、主人公が最後まで好きになれなかった。
    でも平均すればまぁ面白かったかな?という感想なのは、さすが貴志祐介という感じ。

  • 主人公の子供の頃の、ある出来事に関する物語。たくさんの登場人物や、現在とは全く異なる自然、掟、教育、生物、能力の世界観がとても面白いです。情景を想像しながら読むのは少し難しいですが、ここまで異なった世界観だとそれもまた楽しく感じます。
    ある地点から物語の進行速度が一気に加速するように感じました。そして、それまでの伏線の貼り方がすごい。


    私は、初版当時の分厚い上下巻で読みました。子供の頃分厚い本に憧れて購入しましたが、長い間読まずに棚の奥に。というのも、読書が苦手だった私には耐えられないくらい長い物語の序盤。世界観が全く違うので、初めは何が言いたいのか全くわからず少し退屈に感じてしまいました。
    上下2巻の上巻の終わり(文庫版だと中巻の真ん中くらいかな?)に、やっと物語の幕開けという感じでお話に動きがあります。

    それからは、早かったです。続きが知りたくてどんどん読み進めてしまう。退屈しながら読み進めた上巻は全て物語の伏線になっていて。最後まで読むと「この作品すごく面白い!また読みたい!」とハマってしまいました。面白いマンガって何度も読み返しますよね?それと同じ感じ。また読みたくなってしまいます。

    伏線を張りつつ、こんなに世界観を広げていくお話を私は初めて読みました。(そんなに本読んでいないので、あくまで個人的感想ですが。)

    現実を忘れて読みたい本です。

    この本をお勧めしたい方↓
    ・壮大な物語が読みたい方
    ・常識に囚われないSFが読みたい方
    ・時間をかけてゆっくりと進む物語が読みたい方

    逆に、短期間でサラッと読みたい方や長い話が嫌いな方にはあまりお勧めしません。

    この作品はアニメにもなったそうで。アニメは見たことないのですが、このお話だったらアニメになるほどの躍動感があるね、と感心しました。

  • 著者:貴志 祐介
    発行日: 2008/1/24
    評価:★★★★★  (所要時間:2.5時間)
    読破冊数: 26/100冊


    ■こんな人におすすめ

    ・怖い思いをしたい人
    ・不気味なものを見たい人


    ■概要

    受賞歴
    第29回(2008年) 日本SF大賞受賞

    内容紹介
    ここは汚れなき理想郷のはずだった。
    1000年後の日本。伝説。消える子供たち。
    著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説!

    子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。
    いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!(amazonより)


    ■この本から学んだこと

    ・知人に薦めで読むことになった本。
    「とにかく気持ち悪さに浸りたい。重松清の疾走みたいなのが理想なんだが、何か知らないか」
    という私のリクエストに知人が
    「不気味さが後を引くよ」と薦めてくれたのである。

    内容だが、確かに不気味である。
    (重松清みがあるかは不明)
    まだ上巻。
    更なる恐怖が待ち構えている伏線がすでにあるし、読み進めるしかなさそうだ。


    ・中でも興味深かったのは「ボノボ(ヒト科チンパンジー属に分類されるサル)」についての記述だ(ここはノンフィクション)。
    ボノボは、ストレスが高まり、他の霊長類であれば暴力的になってしまう場面で、平和的に事態を解決する動物である。
    その解決の仕方が、なんと「性交」だ。

    普通チンパンジーは、繁殖目的でしか性行動をしない。
    だが、ボノボは違う。
    力で事態を解決する場面を、性交で解決するのだ。
    しかも、おとなの雄同士や雌同士、おとなと子ども、子ども同士など幅広い組み合わせで。

    びっくり。

    だからと言って人間も試してみたらどうでしょう?とはいかない。
    だが、この物語の世界では、登場人物たちもそれをする。

    主人公の早季、優等生の瞬のことが好きなのに、いつも皮肉屋だが本当は優しい、覚とする。
    その事実だけ記述すると、結構文春な事態だ。
    確かに文中だとその流れが唐突なのだが、何と言うか、いやらしさがなくナチュラルだったのだ。
    それくらい、この世界では普通の出来事だからそう書かれていたんだろう。
    本来、繁殖や性的興奮どうこうのみでなく、
    お互いを落ち着けたり、スキンシップの意味でのそういうことが
    もしかしたら大切なのかもしれない・・・
    人間に足りていないのはそこ、なのかも?
    そんな風に思った。

  • 文庫で上、中、下に及ぶ超大作だが、一気に読める傑作。独特の世界観にドップリつかれるし、ボディーブローを浴びたような読後感。日本の童謡や怪談など土着的な気持ち悪さ、おどろおどろしさが楽しめる。もちろん手に汗握る逃走劇など、見せ場盛りだくさん。バケネズミや不浄猫など、名前を聞いただけで、それ一体何!?と、興味がわく不気味な生き物が続々と登場。ただ、超大作だけにちゃんと集約されるのか不安だったが、しっかりと落としどころに持っていき、きちんと終わる。脂汗をかいたり、冷や汗をかいたり、背後が気になったりと、正直疲れたがすごく面白かった。

  • 長い長い物語。独特の世界観を説明するための、前置きにあたる部分がまた長い。ここで挫折する人もそれなりにいるのでは?と思いますが、のれれば一気に読破できるようにも思います。

    以下、下巻までの感想を一気に。

    遠い未来、人口は激減、科学技術は衰退し、人々は「呪力」という一種の超能力に頼って生きている。争いごとのない、穏やかで平和な世界は、徹底的に管理された歪で冷酷な世界でもあった。子供の頃の冒険が、世界をあげて隠してきたその秘密を少しずつ紐解いていく。

    バケネズミという知能の高い生き物の争いを発端に、町は空前前後の危機に襲われる。しかし、人間達にはそれに対抗する術はなかった。

    主人公の回想という形式が、決死の戦いに挑む彼女が無事だったことのネタバレになってしまっています。その他にも、設定の粗が随所に・・・

    ただ、圧倒的な力をもってしまった人間の驕りとか、無意識の差別意識とか、支配欲とか・・・誰もがおそらくもっているであろう、人間の醜い部分の恐ろしさと、それを隠したり押さえ込んだりすることで生まれるゆがみの危険性とか、まかり間違えば、誰にも手のつけられない世界が生まれてしまうのかもしれない、という危機感とおぞましさのようなものが、読後感にゆらゆらと立ち上ってくるような読後感です。

    しかし、一番おぞましいのは、作品中の「教育」、「倫理」という言葉ですね。

    痛い表現、グロい表現が随所に。なのに登場人物たちは、あんまり気にしてなさそうな感じ。前半はそうじゃないように思うので、生きるか死ぬかの場面では気にならなくなる、ということなのか、だんだん麻痺してくるということなのか・・・。たとえば、奇狼丸の扱いはそんなもんでいいの? その判断に、後悔はないの? そういうところにも空恐ろしさを感じます。けど、たぶんその辺までは作者は意図しておらず、表面的になぞっただけのような。その点、ちょっと物足りない。

  • 気分的にすごく夏休みなので(実際は明日も仕事ですが)、小中学生の頃みたいに現実味のない長めのSFとか読みたいな。と思って本屋をうろついていたところ遭遇。この著者の『黒い家』とか『天使の囀り』とか『青い炎』とか、そういや中学生のとき読んだな・・・と懐かしく思い、手に取りました。

    現時点では、義務感で読んでます。面白く・・なるんだ・・・よね?と。SFはねー・・・どうしても世界の描写が長くなるからねー・・・
    歳をとるにつれ、そこでの想像力を湧かすことに熱中できなくなってきているのを感じます。

    とりあえず中巻の「読ませる力」に期待。時間かけて読むだけの読後感がありそうかどうか、中巻の1/3ぐらいを読み終えた時点で、判断したいと思います。

  • 読んで考えたことが山程ある。

    アニメで見ていたので大筋は知っているのだけど、その時はなぜこんな行動を取ったのか、何を考えていたのかが分からなかったし、現実には存在しない道具や生物についても詳しくは分からないままだったので、原作を読んで納得した。

    知らなかった言葉が沢山。特に生物の名前が大量に出てくるし、実際に存在するものの中に架空の生物を当然のように混ぜ込んであるので調べないと判別ができない。
    他にも知らない漢字や語句を調べながら読んでいたので、調べている時間の方が長かったかも……。
    原作は早希の回想という形で書かれているため、お茶を濁すと言うか、答えをはっきり言わずに話が進んでいくこともあり、粗筋は知っていても謎が積もっていく。


    本編からは脱線するけど気になった言葉が二つ。

    「土蜘蛛」はこの作品に出会う前から何となく知っていた言葉だけど、実際に古代日本でそう呼ばれる人達がいたことは全く知らなかったし、そもそも私は日本史で習ったレベルでしか古代日本、更に歴史全体を知らないことに気付かされた。日本人だけど、そのルーツは知らないも同然。すごく知りたくなった。
    「黥面文身」は全く知らなかった言葉で、まずアイヌや琉球で刺青の文化があったことも最近知ったし、(言葉が正しいかは不明だけど)本土でも広まっていた風習で、しかも中国の書物に証拠として残っているなんて。ますます興味深い……。


    アニメと印象が違ったことと言えば、早希が覚に対してかなり厳しく当たること。対して覚は原作の方が早希のことをよく見ているし、いざという時に守ってあげるし、かなり頼りになる。土蜘蛛の兵士に追われてバラバラに逃げている時、早希のことを見つけたのも偶然ではなさそう。
    バケネズミの考えもより伝わってきて、知能の高さが感じ取れた。

    著者の頭の中の、超能力が存在する1000年後の未来が面白すぎる。身分証は紙切れと化し、図書館は自走型アーカイブへ。文明は非常に進んでいるのに人間社会はなぜか原始的な生活に。まるでナウシカのような世界。

    今、全人類が突然PKを持つようになったらどうなるか。恐らく短時間で地球のほとんどの地域は最悪の結果になると思われる。それは極端な例えかもしれないが、皆が強力な武器や核兵器を持ったと考えれば同じことが起きる可能性が高いだろう。
    結局、「ヒトという生き物を社会性を持った哺乳類にすぎないと捉え直す」「ようやく人類は神の力を手に入れたのに、あまりにも強力すぎる力を制御するため、自らを、人から猿、猿からただの哺乳類へと、貶めていかなければならなかった」ということになるのかもしれない。

    早希が手記を書いた動機が深い。
    「人間というのは、どれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎたとたんに忘れてしまう生き物であるということだった。」
    人間は過去を忘れたら終わりなのだと思う。過去から学ばなければ人類自らを滅ぼすことになる。だから、この作品で起こることや早希達がそこから得る教訓は、現実世界への風刺になり得るのでは。

    無瞋上人の言葉で納得できないことがひとつ。「他人の痛みを、わがこととして感じられる」ことが「人と獣を分かつもの」だと言っているけれど、獣だって自分の子供や飼い主を守ったり助けようとしたりする。
    痛みを感じるから人間、感じないなら人間ではない=獣、ということではなく、人間だって動物の一種であるし、痛みを感じないのは単に病気だから、精神疾患を患っているから、ただその違いだけだと思う。だから人間だろうが犯罪は犯すしいじめるし、そこに生物として優位なことは全く無いと考える。
    まぁ無瞋上人は早希に印象付ける為に例えで言ったのかも知れないけれど……。


    私の調べ学習は続く。

    20190917

  • めちゃくちゃドキドキします!気味の悪さとミステリー(?)とが混ざり合って最高ですね。
    アニメから入りましたけど、結構忠実にアニメ化されてたんだと気付きました。ユートピアが実はディストピアだったって(ディストピアとは違うか?)最高にドキドキさせてくれます!

  • まだ上巻のみの感想ですが、単純にかなり面白い!
    ファンタジーものは久しぶりなのもありワクワクしながら読みました。

    ストーリーて思ったのは現代版ハリーポッターのような印象。学校に通いながら勉強や冒険で成長していく学園ものの側面と、教師を含め上層部に秘密を徐々に暴いていく点などが共通点でしょうか。
    にしても、独自のこの世界を直接ストーリーに関係なさそうなところまで詳細まで作り込んでいる事に関心します。

    続きを早く読みたい!

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学経済学部卒。96年『十三番目の人格-ISORA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2017年 『ダークゾーン 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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