新世界より(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 10065
レビュー : 866
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062768535

作品紹介・あらすじ

1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力」を得るに至った人類が手にした平和。念動力の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた…隠された先史文明の一端を知るまでは。

感想・レビュー・書評

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  •  書店で目にし、どうしても読みたかった。2008年、第29回日本SF大賞を受賞した本書です。

    1000年先の未来。
     文明はある理由で滅び、生活は明治以前の電気の無い時代に良く似ています。
    江戸時代と違うのは、人々は「呪力」を持ち、「呪力」に頼って生活しています。

     読み始めてすぐに「ハリーポッター」と連想しましたが、改めて思うと
    「悪意や攻撃性を題材にした、グロテスクな日本版ハリポタ」と言った感じでしょうか。(あくまでも私感です)

    設定はSF的ですが、内容はファンタジー。ミステリーな要素も含んでます。不思議な気持ち悪い動物も数多く登場します。

    下巻まで一気の読んで分かった。(と思ってる)
    「悪鬼」や「業魔」はいつも私たちの心の中にあり、潜んでいます。相変わらず無くならない悲惨な事件のほとんどは、この「悪鬼」や「業魔」のせいです。
    恐らく、混迷する政治もコレのせい。
    物語に出てくる「攻撃抑制」と「愧死機構」を持つ必要のない世の中になる事は、現代においても恐らく実現することは無いんでしょうね・・・

     恥ずかしながら、著者(貴志さん)の本は全く読んだことが無く、名前さえ知りませんでした。ホラー小説を良く書かれる方のようで、なるほどと思わせるエグイ描写が多いです。

    「リング」で著名になった鈴木光司と同じく、ホラー小説家が書くファンタジーは素晴らしい。

    「新世界より」当たりでした。

  • 貴志祐介さんはやはりどこか狂気じみた才能の持ち主だ。
    千年後の世界より、さらに千年後の同胞に向けられた語り。
    超能力を持つ人間ばかりの集落、その人間を神と畏れ労働力として使われているバケネズミ、ミノシロや風船犬、カヤノスヅクリ等得体の知れない生物たち…この不気味な世界で何が起こるのか。伏線がはりめぐらされている気がする上巻、読了。

  • 主人公の子供の頃の、ある出来事に関する物語。たくさんの登場人物や、現在とは全く異なる自然、掟、教育、生物、能力の世界観がとても面白いです。情景を想像しながら読むのは少し難しいですが、ここまで異なった世界観だとそれもまた楽しく感じます。
    ある地点から物語の進行速度が一気に加速するように感じました。そして、それまでの伏線の貼り方がすごい。


    私は、初版当時の分厚い上下巻で読みました。子供の頃分厚い本に憧れて購入しましたが、長い間読まずに棚の奥に。というのも、読書が苦手だった私には耐えられないくらい長い物語の序盤。世界観が全く違うので、初めは何が言いたいのか全くわからず少し退屈に感じてしまいました。
    上下2巻の上巻の終わり(文庫版だと中巻の真ん中くらいかな?)に、やっと物語の幕開けという感じでお話に動きがあります。

    それからは、早かったです。続きが知りたくてどんどん読み進めてしまう。退屈しながら読み進めた上巻は全て物語の伏線になっていて。最後まで読むと「この作品すごく面白い!また読みたい!」とハマってしまいました。面白いマンガって何度も読み返しますよね?それと同じ感じ。また読みたくなってしまいます。

    伏線を張りつつ、こんなに世界観を広げていくお話を私は初めて読みました。(そんなに本読んでいないので、あくまで個人的感想ですが。)

    現実を忘れて読みたい本です。

    この本をお勧めしたい方↓
    ・壮大な物語が読みたい方
    ・常識に囚われないSFが読みたい方
    ・時間をかけてゆっくりと進む物語が読みたい方

    逆に、短期間でサラッと読みたい方や長い話が嫌いな方にはあまりお勧めしません。

    この作品はアニメにもなったそうで。アニメは見たことないのですが、このお話だったらアニメになるほどの躍動感があるね、と感心しました。

  • H29.12.16 読了。

    ・初貴志祐介作品。1000年後の日本の神栖66町を舞台にした物語。しめ縄に囲まれた町、神の力といわれるサイコキネシス、悪鬼、業魔、バケネズミ、風船犬などなどの独特な世界観。たまりませんね。
    中巻も楽しみです。

  • 著者:貴志 祐介
    発行日: 2008/1/24
    評価:★★★★★  (所要時間:2.5時間)
    読破冊数: 26/100冊


    ■こんな人におすすめ

    ・怖い思いをしたい人
    ・不気味なものを見たい人


    ■概要

    受賞歴
    第29回(2008年) 日本SF大賞受賞

    内容紹介
    ここは汚れなき理想郷のはずだった。
    1000年後の日本。伝説。消える子供たち。
    著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説!

    子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。
    いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!(amazonより)


    ■この本から学んだこと

    ・知人に薦めで読むことになった本。
    「とにかく気持ち悪さに浸りたい。重松清の疾走みたいなのが理想なんだが、何か知らないか」
    という私のリクエストに知人が
    「不気味さが後を引くよ」と薦めてくれたのである。

    内容だが、確かに不気味である。
    (重松清みがあるかは不明)
    まだ上巻。
    更なる恐怖が待ち構えている伏線がすでにあるし、読み進めるしかなさそうだ。


    ・中でも興味深かったのは「ボノボ(ヒト科チンパンジー属に分類されるサル)」についての記述だ(ここはノンフィクション)。
    ボノボは、ストレスが高まり、他の霊長類であれば暴力的になってしまう場面で、平和的に事態を解決する動物である。
    その解決の仕方が、なんと「性交」だ。

    普通チンパンジーは、繁殖目的でしか性行動をしない。
    だが、ボノボは違う。
    力で事態を解決する場面を、性交で解決するのだ。
    しかも、おとなの雄同士や雌同士、おとなと子ども、子ども同士など幅広い組み合わせで。

    びっくり。

    だからと言って人間も試してみたらどうでしょう?とはいかない。
    だが、この物語の世界では、登場人物たちもそれをする。

    主人公の早季、優等生の瞬のことが好きなのに、いつも皮肉屋だが本当は優しい、覚とする。
    その事実だけ記述すると、結構文春な事態だ。
    確かに文中だとその流れが唐突なのだが、何と言うか、いやらしさがなくナチュラルだったのだ。
    それくらい、この世界では普通の出来事だからそう書かれていたんだろう。
    本来、繁殖や性的興奮どうこうのみでなく、
    お互いを落ち着けたり、スキンシップの意味でのそういうことが
    もしかしたら大切なのかもしれない・・・
    人間に足りていないのはそこ、なのかも?
    そんな風に思った。

  • 文庫で上、中、下に及ぶ超大作だが、一気に読める傑作。独特の世界観にドップリつかれるし、ボディーブローを浴びたような読後感。日本の童謡や怪談など土着的な気持ち悪さ、おどろおどろしさが楽しめる。もちろん手に汗握る逃走劇など、見せ場盛りだくさん。バケネズミや不浄猫など、名前を聞いただけで、それ一体何!?と、興味がわく不気味な生き物が続々と登場。ただ、超大作だけにちゃんと集約されるのか不安だったが、しっかりと落としどころに持っていき、きちんと終わる。脂汗をかいたり、冷や汗をかいたり、背後が気になったりと、正直疲れたがすごく面白かった。

  • 長い長い物語。独特の世界観を説明するための、前置きにあたる部分がまた長い。ここで挫折する人もそれなりにいるのでは?と思いますが、のれれば一気に読破できるようにも思います。

    以下、下巻までの感想を一気に。

    遠い未来、人口は激減、科学技術は衰退し、人々は「呪力」という一種の超能力に頼って生きている。争いごとのない、穏やかで平和な世界は、徹底的に管理された歪で冷酷な世界でもあった。子供の頃の冒険が、世界をあげて隠してきたその秘密を少しずつ紐解いていく。

    バケネズミという知能の高い生き物の争いを発端に、町は空前前後の危機に襲われる。しかし、人間達にはそれに対抗する術はなかった。

    主人公の回想という形式が、決死の戦いに挑む彼女が無事だったことのネタバレになってしまっています。その他にも、設定の粗が随所に・・・

    ただ、圧倒的な力をもってしまった人間の驕りとか、無意識の差別意識とか、支配欲とか・・・誰もがおそらくもっているであろう、人間の醜い部分の恐ろしさと、それを隠したり押さえ込んだりすることで生まれるゆがみの危険性とか、まかり間違えば、誰にも手のつけられない世界が生まれてしまうのかもしれない、という危機感とおぞましさのようなものが、読後感にゆらゆらと立ち上ってくるような読後感です。

    しかし、一番おぞましいのは、作品中の「教育」、「倫理」という言葉ですね。

    痛い表現、グロい表現が随所に。なのに登場人物たちは、あんまり気にしてなさそうな感じ。前半はそうじゃないように思うので、生きるか死ぬかの場面では気にならなくなる、ということなのか、だんだん麻痺してくるということなのか・・・。たとえば、奇狼丸の扱いはそんなもんでいいの? その判断に、後悔はないの? そういうところにも空恐ろしさを感じます。けど、たぶんその辺までは作者は意図しておらず、表面的になぞっただけのような。その点、ちょっと物足りない。

  • 気分的にすごく夏休みなので(実際は明日も仕事ですが)、小中学生の頃みたいに現実味のない長めのSFとか読みたいな。と思って本屋をうろついていたところ遭遇。この著者の『黒い家』とか『天使の囀り』とか『青い炎』とか、そういや中学生のとき読んだな・・・と懐かしく思い、手に取りました。

    現時点では、義務感で読んでます。面白く・・なるんだ・・・よね?と。SFはねー・・・どうしても世界の描写が長くなるからねー・・・
    歳をとるにつれ、そこでの想像力を湧かすことに熱中できなくなってきているのを感じます。

    とりあえず中巻の「読ませる力」に期待。時間かけて読むだけの読後感がありそうかどうか、中巻の1/3ぐらいを読み終えた時点で、判断したいと思います。

  • 読んで考えたことが山程ある。

    アニメで見ていたので大筋は知っているのだけど、その時はなぜこんな行動を取ったのか、何を考えていたのか、が分からなかったし、現実には存在しない道具や生物についても詳しくは分からないままだったので、原作を読んで納得した。

    知らなかった言葉が沢山。特に生物の名前が大量に出てくるし、実際に存在するものの中に架空の生物を当然のように混ぜ込んであるので調べないと判別ができない。
    他にも知らない漢字や語句を調べながら読んでいたので、調べている時間の方が長かったかも……。
    原作は早希の回想という形で書かれているため、お茶を濁すと言うか、答えをはっきり言わずに話が進んでいくこともあり、粗筋は知っていても謎が積もっていく。


    本編からは脱線するけど気になった言葉が二つ。

    「土蜘蛛」はこの作品に出会う前から何となく知っていた言葉だけど、実際に古代日本でそう呼ばれる人達がいたことは全く知らなかったし、そもそも私は日本史で習ったレベルでしか古代日本、更に歴史全体を知らないことに気付かされた。日本人だけど、そのルーツは知らないも同然。すごく知りたくなった。
    「黥面文身」は全く知らなかった言葉で、まずアイヌや琉球で刺青の文化があったことも最近知ったし、(言葉が正しいかは不明だけど)本土でも広まっていた風習で、しかも中国の書物に証拠として残っているなんて。ますます興味深い……。


    アニメと印象が違ったことと言えば、早希が覚に対してかなり厳しく当たること。対して覚は原作の方が早希のことをよく見ているし、いざという時に守れるしかなり頼りになる。土蜘蛛に追われてバラバラに逃げてる時、早希のこと追いかけたのも心配だからだよね。
    バケネズミの考えもより伝わってきて、知能の高さが感じ取れた。

    著者の頭の中の、超能力が存在する1000年後の未来が面白すぎる。身分証は紙切れと化し、図書館は自走型アーカイブへ。文明は非常に進んでいるのに人間社会はなぜか原始的な生活に。まるでナウシカのような世界。

    今、全人類が突然PKを持つようになったらどうなるか。恐らく短時間で地球のほとんどの地域は最悪の結果になると思われる。それは極端な例えかもしれないが、皆が強力な武器や核兵器を持ったと考えれば同じことが起きる可能性が高いと考える。
    結局、「ヒトという生き物を社会性を持った哺乳類にすぎないと捉え直す」「ようやく人類は神の力を手に入れたのに、あまりにも強力すぎる力を制御するため、自らを、人から猿、猿からただの哺乳類へと、貶めていかなければならなかった」ということになるのかもしれない。

    早希が手記を書いた動機は、「人間というのは、どれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎたとたんに忘れてしまう生き物であるということだった。」としている。
    人間は過去を忘れたら終わりなのだと思う。過去から学ばなければ人類自らを滅ぼすことになる。だから、この作品で起こることや早希達がそこから得る教訓は、現実世界への風刺になり得るのではないか。


    私の調べ学習は続く。

    20190917

  • 最初の印象は宮崎駿のアニメを連想した。
    読み進むうちにどんどん加速度がついていく感じ。

  • めちゃくちゃドキドキします!気味の悪さとミステリー(?)とが混ざり合って最高ですね。
    アニメから入りましたけど、結構忠実にアニメ化されてたんだと気付きました。ユートピアが実はディストピアだったって(ディストピアとは違うか?)最高にドキドキさせてくれます!

  • まだ上巻のみの感想ですが、単純にかなり面白い!
    ファンタジーものは久しぶりなのもありワクワクしながら読みました。

    ストーリーて思ったのは現代版ハリーポッターのような印象。学校に通いながら勉強や冒険で成長していく学園ものの側面と、教師を含め上層部に秘密を徐々に暴いていく点などが共通点でしょうか。
    にしても、独自のこの世界を直接ストーリーに関係なさそうなところまで詳細まで作り込んでいる事に関心します。

    続きを早く読みたい!

  • SFファンタジーと思って読んでいると、いつの間にかホラーやサスペンスを読んでいるような感覚に。
    かと思えば少年少女たちの恋愛や冒険スペクタクルになったり、得体の知れない怪物や人間同士のバトルもあったり、と1つのジャンルではくくれない作品。
    刺激的で、残酷で、過激な3部作になってます。

    冒頭にある悪鬼と業魔の説明を最後まで忘れてはいけません。

  • 1000年後の世界。
    人間の中で特殊な能力を持った人たちが、戦争を起こし、世界を支配してしまった。そのとき、支配する側と支配される側の人たちはどのようになったのか。
    はじめは、何を言っているのか分からなかったけど、読み進むにつれて、だんだんとのめりこんでいくような話だ。
    全3巻

  • どこかのブログで絶賛されてたので読んでみた。
    SF読むの久しぶりな気がする。
    後半になって展開が面白くなってくるので、中・下巻が楽しみ。

    「あなたは、他人の痛みを、我がこととして感じられる人です。そして、よくよく肝に銘じてください。その痛みこそが、人と獣とを分かつものだということを。」

  • 20160903
    職場の先輩に勧められて読みました!「現代文学の中で一番好き」「ファンタジーだし、好きだと思う」と猛プッシュでした。(笑)
    ハリーポッターは大好きですが、実はファンタジーってあんまり得意じゃなく…久しぶりにファンタジーを読みましたが、おもしろかった!!
    今から1000年後の日本とか、徳川家康について教科書では川をどうにかしたことしか記されてないとか、今があって成り立つファンタジーというか、そういう設定すごく好きです。基本的に通勤中しか本は読みませんが、家でも本を開きたくなるおもしろさでした。
    続きが気になります。アニメも見よっと。

  • 面白かった。総評を下巻に纏めます。

  • 前半が、割りと読まなくてもあまり困らないような箇所が多い。
    半分を越えた辺りから、だんだんメインの話にはいっていく。そうなると、どんどん読み進められる。

  • 秋の夜長に徹夜本!と思って、まとめサイトなどでも人気なこの本を読み始めた。

    最初は全部読み切れるかどうか心配していたが…220ページを過ぎたあたりから一気に面白くなった!
    他の方のレビューにもあるけれど、ちょっぴり退屈な200ページを耐えると、そのあとにはご褒美のような展開が待ち受けている。
    次はどうなってしまうんだ!という最後で、上巻は締めくくられている。

    2日で上巻を読み終えたので(予想以上に早かった)、次の休みにまた図書館へ行って続きを借りようとおもう。
    待ちきれない!
    読書休くれ!笑

  • 超名作。上中下とあるが4日で読んだ。これを読んだ後は普通の面白さの本を読んでも物足りなさを感じてしまうほど。
     未来の日本が舞台で、その世界では「呪力」と呼ばれる超能力が人間には備わっている。一見便利に見えるが使用には制限が多くあり、また主人公たちが暮らす共同体にも多くの禁忌がある。それに触れた子供たちはいなくなる。そうした正体不明の何かに怯えながらも彼らは好奇心を抑えきれずにその世界の様々な姿を知って行く。
    自分たちのルーツは? 呪力はなぜ存在するのか? なぜ禁忌が存在するのか? なぜ世界はこういう形をしているのか?
     なおアニメ化してる。あまりにも作画が崩壊してしまったため、新作画より、のタグをつけられる始末。テーマ曲「割れたリンゴ」はいい曲。
     

  • 舞台は、今から1000年後、未来の日本。
    現代文明が滅び歴史が途絶えた後、呪術と呼ばれる超能力を使える人々が、のどかな田園風景の村の中で平和に暮らしている世界。
    主人公の5人の少年少女が、ハリーポッターっぽい呪術の学校で青春したり、村の外で化け物の戦いに巻き込まれたり。
    そして、ひょんなことからこの世界に隠された秘密を知り、最終的には人間や化け物も含んだ大きな戦いに発展していく。
    ジャンルとしては、和風ベースのSF+ファンタジー+ミステリー+ホラー。
    上中下巻で全1500ページの大作だけど、上巻の中盤あたりで物語に入り込んで以降は、長さを感じず面白く読めた。

    小説で感じた魅力は、「緻密な世界観」「物語のルールを守りつつ予想を裏切るストーリー展開」「哲学的な問いかけ」の3点。

    1.緻密な世界観
    西洋ファンタジー小説だと、指輪物語とかの定番の世界観(地理・歴史・生態系・魔法理論など)があるのだけど、この小説は和風な世界観をゼロから構築したところが先ず凄い。
    特に、村の結界の外で生きているグロテスクな生物の描写が無駄にリアルで詳細。
    最初はその描写が気持ち悪いのと詳細すぎるのとで、上巻の序盤、読む気力が無くなりそうになった。

    でも、上巻の中盤、失われた歴史が明らかになる。
    途絶えた数百年の歴史の中で何が起こったのか、なぜその歴史は忘れ去られなければならなかったのか、なぜ1000年前と違う生物が生きているのか、なぜ住民皆が呪力を使えるのか。
    謎がいくつも提示されると、どんどん物語に引き込まれた。
    特に、1000年前の文明が滅んだ後の奴隷王朝の描写。無駄に残虐でホラーテイストなのだけど、最後まで読むと必要な部分だったかもと思う。

    2.物語のルールを守りつつ予想を裏切るストーリー展開
    僕の理解では、SF作品の大前提とは、初期設定として読者に公開された世界観、つまり我々が住む現実世界とは異なる「いくつかの嘘」の整合性が、物語の最後まで崩れていないということ。
    そして、優れたSF作品とは、主人公が与えられた試練に対し、その世界観のルールに則った形で、しかし読者の予想を裏切る方法で解決していく作品だと思う。
    SFファンタジーには、初期設定の世界観作りを頑張りすぎて、ストーリー展開がそれを活かしきれないものもたくさんあるような気がするけど、この小説は高度に両立していると思う。

    この小説の世界では、人が人に呪力で危害を加えようとすると脳内的にストッパーが働いて攻撃できない、という絶対的なルールが存在する(お蔭で人間同士の故意の殺人や戦争は起こらない)。
    物語の後半、このルールを逆手にとった混乱が起こり、何度も絶望的な状況が訪れるのだけど、物語上のルールは守りつつ、でもその裏をかいた形で主人公は試練を克服しようとする。
    読んでいて、何度も裏をかかれるのだけれど、物語の中のルールを破っていないので納得できるし、裏切られるのが気持ち良かった。

    3.哲学的な問いかけ
    もう一つ、僕が感じる優れたSF作品の要素は、哲学の思考実験的な命題に気付かせてくれて、読後にあれこれ悩ませてくれる作品。

    この小説で問われていることとして感じたのは以下の3つ。
    ・世界の真実の姿を知らないまま平和に暮らすのと、真実を知って苦しみのある世界に飛び込むのと、どちらを選ぶか?(同テーマの別作品「マトリックス」)
    ・万能の能力を持つことで人類は幸せになれるのか?(同テーマの別作品「デスノート」)
    ・自分と外見や思想の異なるもの(この小説では人間並みの知能を持つ醜い化け物)に対して、人は仲間意識を持てるか?(同テーマの別作品:「彗星のガルガンティア」)

    どれもはっきりとした答えは無いし、考えても仕方のないことかもしれないけど、現実世界の社会問題・国際問題に置き換えて考えることは意義のあることなんじゃないだろうか。
    まあでも、そんなことを考えなくても、素直に楽しめるエンターテインメント作品だとは思う。

  • 前知識としてアニメは見たのですが、やっぱ原作のほうが内容濃そうです。

    世界観にグイグイ引き込まれてます。
    中巻に続く。

    以下、あらすじ
    ============
    ここは汚れなき理想郷のはずだった。
    1000年後の日本。伝説。消える子供たち。
    著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説!

    子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。
    いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!

    第29回日本SF大賞受賞

  • 雰囲気、世界観、醸し出される空気といったものが巧みに描写されていてどっぷり世界にはまり込める作品でした。
    SF、ファンタジー、ミステリー、ホラー、どのジャンルに属するのかわからない、というより全ての要素が融合してとにかく凄く面白かったです。
    久しぶりに読む手が止まらなかった。

    ただ、やっぱりこの著者の描くグロテスクなシーンの描写の仕方?表現方法?があまり好きになれないですね。
    元々自分があまりそういったものが好きでは無いというのもありますが。
    一貫してそのような作品ばかり書いてるようですが、せっかくこれだけの世界観を構築し表現する筆力があるのだから、是非残虐さに捉われない作品も書いてみて欲しいです。

  • 「呪力」と呼ばれる超能力を、誰もが持った世界。
    イメージするだけで、物を壊したり、浮かせたり、なんでもできる世界。
    主人公の早季の手記から物語は始まる。
    大人になった彼女が、呪力を手にした子供のころから遡っていく。
    箱庭のような危険の無い世界で、早季は友人たちと何不自由なく暮らしていた。

    ジュブナイル的なホラーファンタジー。
    上巻は設定を理解するのにいっぱいいっぱいで、あまり楽しめるところまでいけなかったけども、
    話が転がり始めてからは、ページをめくる手が止まらない。

  • あまりにも恐ろしい。けれど目が離せない。これは、1000年後の日本。神の力を手に入れた子供たちの話である。安全な町から初めて外にでた子どもたちは、その隠された先史の歴史を知ってしまう。これはありえない、と思いつつも、もしかしたらありえる未来の話ではないか。

  • 世界観が凄い。人類がPK能力を持つと世界はどうなるか。「国立国会図書館つくば館」の端末機械である「ミノシロモドキ」が語るおぞましい歴史は大変説得力があった。持たざる者はやはり奴隷となるしかないのか。呪力というPKを持ち神様と呼ばれる人間側から物語は書かれているが、実は現在の私たち人間はバケネズミ側なのだ。今後の展開が楽しみ。同種間攻撃抑制のための愛の生活と愧死機構が興味深かった。

  • amazonで序盤は世界観とかが分かりにくいっていうレビューが多かったと思うけど、それ知ってたからかそうでもなかった。生活様式や生き物1つ1つに対して細かい描写があって、作者は世界を一から作り上げてるんだと妙な感動を覚えた。一字一句を大切に読めた作品。

  • 500ページ近い本だが、一気に読み終えた。渡辺早季による回想録という形態で書かれており、神栖66町や町を構成する七つの郷、人々の習慣、悪鬼や業魔などの背景情報について淡々と述べたあと、祝霊と通過儀礼、全人学級において麗子と学がいなくなったエピソード、バケネズミを助けたこと、それに付随してバケネズミのコロニーについての解説、そして夏季キャンプで図書館と出会い、早季と覚の孤独な土蜘蛛コロニーとの闘いが描かれ、奇狼丸によって闘いが終結したところまで。アニメが如何に忠実に作られていたかがよくわかった。
    アニメでは今ひとつわかりにくかった風船犬や離塵師の死因、愧死機構についても理解できてスッキリした。

  • すごい面白かった!魅力的なキャラクターたちに魅了されながら、独特の世界にどんどん引き込まれた♬早く中巻が読みたい!!

  • いかにも講談社ノベルスという感じの大長編でした。
    長いだけの価値はあります。

    高里椎奈や恩田陸みたいなふわふわしたファンタジーと思いきや、読み進めていくと SF という。
    どんどんどんどん、風呂敷が広がっていきます。

    ほんと、怖い。
    ホラーじみた世界観も怖いけど、なにより、風呂敷を広げるだけ広げて畳む気がないのだろうか心配になって怖いのです。

    (中)に続く。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学経済学部卒。96年『十三番目の人格-ISORA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2017年 『ダークゾーン 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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