風の中のマリア (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 751
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062769211

作品紹介・あらすじ

命はわずか三十日。ここはオオスズメバチの帝国だ。晩夏、隆盛を極めた帝国に生まれた戦士、マリア。幼い妹たちと「偉大なる母」のため、恋もせず、子も産まず、命を燃やして戦い続ける。ある日出逢ったオスバチから告げられた自らの宿命。永遠に続くと思われた帝国に影が射し始める。著者の新たな代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 予てより
    (虫になってみたい…)という、
    決して叶わぬ願いを、
    ついに百田さんが叶えてくれた♪

    強いヤツにとっつかまって、
    速攻死んでしまうのだけは御免なので、
    出来れば
    最強の虫!
    (カブトムシか、クワガタがいいなー)
    なんて願望だけはさすがに叶わなかったものの、
    物語の主人公は
    最強、というよりは最恐!

    本当に恐ろしい『大スズメバチ』であった。

    百田さんは
    彼らに言葉と名前を与え、
    人間から見れば
    (なんて過酷で残酷な!)と、思われがちな一生を、
    彼ら自身は、どう思うか?どう思っているのか?
    を、
    興味深くシュミレートしてくれた。

    おそらく虫に感情などは無く、
    ただ
    自分の使命、果たすべき役目、のみが叩き込まれた本能に従って行動し、
    食う、食われる、の世界で短い一生を終えていくだけ、
    なのであろう。

    主人公のマリア(ワーカーなので、子は産めず、一生狩りをし、巣を守り続けていくだけの働き蜂。)
    も、言葉を与えられた事により、
    フッ、と、自分の一生に空しさを覚えたりもするけれど、
    それもほんの一瞬の事。
    そんな思いも、自分の果たすべき使命の前では速攻打ち消えてしまうのだ。

    私はマリアを通じて
    虫や動物が言葉を必要としないワケがなんとなくわかった様な気がした。

    自分がこの世に存在する意味、を
    正しく知る者に、哲学は必要ないんだ。

    いかに生きるか?を考えなくてもいい虫達ではあるが、
    いかに生き延びるか?は、考えなくてはいけない。

    その戦略もまた、大変興味深くて面白かった。
    虫界にも
    諸葛孔明や韓信の様に優れた軍師が絶対にいる、としか思えないほど、見事な戦術の数々。

    読後、
    この虫達の戦術動画を探してみると、
    いやぁ~、本当にある、ある!
    自分の体よりも大きな『大スズメバチ』の噛み千切られた頭部を見て、驚き慌てふためいているミツバチの様子を見ていたら、
    (彼らに気持はない、って誰が言ったんだっけ?)

    なんて、ふと思ってしまった。

  • 子どもに、読ませたいなぁ。
    とくに昆虫が好きな男の子や、すべての女の子に(蜂の世界は女性でなっている社会)中学生くらいからいけるだろうか。
    昆虫NGな人にはおすすめできないが、昆虫の生態の中に、生物としてのたくましさ、もの悲しさ、とにかく学ぶことが多い一冊。物語仕立てなのでよんでていも飽きないしね。

    ファーブルやシートンや椋鳩十、子供時代に読んだ本は私の心のどこかで消化吸収され、滋養となっている。

    このごろ、子供に与えたいな~と思う本を読むと、軽く眉間にしわがよる。

    悩ましいのだ。良いものは与えたい。
    でも、与えるって難しくて、最短距離では意味がない。
    自分で出会うからこそ価値のあるものも多い。
    いつか、子供と読んだ本の話ができたら、いいなぁ、と思うにとどまるに限るのだ。

  • オオスズメバチの生態に詳しくなった。
    擬人化されているので、楽しく学ぶことができたという印象。
    生物の一生の見方が変わった。

  • 想定外の面白さだった!
    オオスズメバチの生態、世界を描いた小説ということで若干のハードルの高さがあったのだけれど、読み始めたらすっかりこの世界の虜になった。

    女王バチが率いる帝国、その帝国を守るために、産卵もせずにひたすら他の虫と戦い、妹幼虫たちを育て、羽化してからおよそ30日の命をけずっていくマリア(オオスズメバチのワーカー)たち。
    実際に蜂は「帝国を守る」「戦うために生まれた」などと考えたりはしないのだろうけれど(それでも読後は、蜂たちは考えているのではないかとすら思ってしまう)、自らの役割をただひたすら全うし、命すら捧げていくさまには、彼女たちの誇り高さや高貴さすら感じる。

    なぜ、スズメバチが女王バチと働きバチにわかれるのか、他の生き物とどのように戦うのか、性別はどのように決定されるのか、これらの生態についても非常に詳しく説明がなされているのでとても興味深い。

    マリアの生きざまがかっこよく、オスバチ、ヴェーヴァルトとの出会いは切なかった。ワーカー、働き蜂として生きたマリアが、ヴェーヴァルトと一瞬とはいえ出会っていて良かった・・・と、完全にスズメバチに肩入れしてしまう作品。

  • まさかまさかのハチ視点。

    生々しいけど面白い。

    描写はグロいとこあったけど、文章が好きだったからハイペースで読んじゃった。

    妹たちを育てるために戦う、帝国のために戦う、という本能はすさまじい。

    虫とか魚とかって気持ちとかあるのかな。

    マリアみたいにいろいろ考えられるんだったら人間より強くなってると思う。

    人間が一番ってわけじゃないけど、なんていうか勢力的に。

    考えるから人間は本能が弱いというか、抑えられるのかもと思いましたm(__ )m


    最後、妹が無事女王バチの帝国繁栄させられてよかったね!

  • 「風の中のマリア」というタイトルのこの作品が、まさかオオスズメバチの生涯を描いた小説だとは思いもよらなかった。なかなかに思い切った試みだなとずっと気になっていた。ハチが主人公というと、どうしてもミツバチのマーヤやハッチ等が真っ先に思い浮かぶ。オオスズメバチの画像を検索してみたところ、あまりのいかつさにちょっとたじろいだ。本書を読むまでは、恐ろしく、忌むべき存在でしかなかったオオスズメバチに対する印象が、ガラリと変わった。
    ワーカー(働きバチ)のマリアは、「疾風のマリア」の異名を持つ凄腕のハンター。幼い妹たちを養うため日々狩りに精を出すが、羽化直前の虫だろうと、他の虫の獲物だろうと、容赦なく命を奪う非情さに、「殺すことしか知らない残虐な戦士!」と虫たちから罵られることもしばしばだ。子孫を残すために雄と雌が出会い、産卵する。大半の虫がそんな生き方をする中、オオスズメバチのマリアは雌でありながら恋もせず卵も産まず、帝国の維持のために戦い続ける。そんな生き方を自問自答するマリア。それでもひたすらに命を燃やして戦うマリアの勇ましさは、人間の私から見ても惚れ惚れするほどかっこいい。
    思いがけない雄バチとの出会い、少しずつ綻び始める帝国、次世代を育むための大規模な襲撃…後半の目まぐるしく凄絶な展開は、自然界では当たり前に起こっていることなのだろうが、その激しさには驚くばかりだ。非情だけれど、こうやって弱いものは淘汰されていくのだ…死にゆく虫たちの叫びが痛ましい。特にクライマックスのキイロスズメバチとの死闘シーンは、圧巻。アマゾネス達の命を賭した戦いは、攻める方も守る方もそれぞれに必死で、壮絶でありながら胸が熱くなる。
    社会性昆虫の生活の緻密さがよくわかり、自然界に対し興味が湧くと同時に、自分の人生についても何だか考えさせられるような不思議なメッセージ性を持った小説だ。日々生きるか死ぬかのオオスズメバチのワーカーと、のらりくらりな人間の自分とを比べるなんてスケールが違いすぎる、共通項は「女」のみだけど…同じ「女」として、マリアに心底憧れ、そして彼女を尊敬する。
    斬新だけど、間違いなく心に深く刻まれる一冊。自然ってすごいわ!!

  • 2018年6月6日読了。オオスズメバチのマリアは、帝国と女王のため狩猟と戦闘に明け暮れる日々を送るが、いつしか自らの人生(蜂生)に疑問を抱き…。スズメバチに関する研究についてリサーチし、熱い思い入れをもとに小説にする、というのは優秀なテレビマンである著者のもっとも得意とするところか、戦闘の描写やストーリーは普通に面白いし、読んで「なんだか頭が良くなった気がする」感覚を読者に持たせるあたりこの人の小説のうまさを感じる。自身の子孫を残さず巣のために一生を捧げるスズメバチの行動が、「より多くの遺伝子を残す」ことを生物の目的と置くと実に合理的にすべての行動が説明できる、という考え方は面白い。これを研究する研究者の本は面白そうだ、著者がそれに大いに興味をいだいている様子も伝わるが、作中でいちいちしたり顔で研究の知見を説明してくるクモやシデムシの存在感が微笑ましいというか、なんというか。

  • おもしろかったーーー!!
    オオスズメバチはじめ、昆虫の生態が詳しく書かれているのも楽しかった。

    ドラマとしてもとても楽しめた!!

    よく身近で恐れられているスズメバチはなにスズメバチなのかなー??

  • 2017/12/31-2018/1/2
    オオスズメバチの生態を読みやすく小説にまとめた本。言うなればインターステラーのようなもんか。(それよりも、より正確なものだけど)
    なんせ、2度刺された経験から、ハチ嫌いな自分には想像するたび気持ち悪かったのだけれど、それでも読めたのは物語性があり、読み応えがあったからだろう。

  •  本書の解説で養老孟司教授が、虫が寝ること、小さいけれで脳があることが最近わかってきたと述べている。だとすると、虫にも「意識みたいな活動がある」可能性も期待できるそうである。なるほど・・・実に面白い。オオスズメバチ恐るべし 

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プロフィール

百田 尚樹(ひゃくた なおき)
1956年生まれ、大阪府出身の放送作家・小説家。『探偵!ナイトスクープ』の放送作家として活躍。
50歳の時にはじめて執筆した『永遠の0(ゼロ)』で作家デビュー。ヒット作となり、映画化されている。
ボクシング青春小説『ボックス!』が第30回吉川英治文学新人賞候補、第6回本屋大賞の5位に選出され、映画化もされた。『海賊とよばれた男』で2013年本屋大賞大賞受賞。コミック化、映画化された。

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