風の中のマリア (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.59
  • (398)
  • (874)
  • (803)
  • (201)
  • (48)
本棚登録 : 6563
感想 : 850
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062769211

作品紹介・あらすじ

命はわずか三十日。ここはオオスズメバチの帝国だ。晩夏、隆盛を極めた帝国に生まれた戦士、マリア。幼い妹たちと「偉大なる母」のため、恋もせず、子も産まず、命を燃やして戦い続ける。ある日出逢ったオスバチから告げられた自らの宿命。永遠に続くと思われた帝国に影が射し始める。著者の新たな代表作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 予てより
    (虫になってみたい…)という、
    決して叶わぬ願いを、
    ついに百田さんが叶えてくれた♪

    強いヤツにとっつかまって、
    速攻死んでしまうのだけは御免なので、
    出来れば
    最強の虫!
    (カブトムシか、クワガタがいいなー)
    なんて願望だけはさすがに叶わなかったものの、
    物語の主人公は
    最強、というよりは最恐!

    本当に恐ろしい『大スズメバチ』であった。

    百田さんは
    彼らに言葉と名前を与え、
    人間から見れば
    (なんて過酷で残酷な!)と、思われがちな一生を、
    彼ら自身は、どう思うか?どう思っているのか?
    を、
    興味深くシュミレートしてくれた。

    おそらく虫に感情などは無く、
    ただ
    自分の使命、果たすべき役目、のみが叩き込まれた本能に従って行動し、
    食う、食われる、の世界で短い一生を終えていくだけ、
    なのであろう。

    主人公のマリア(ワーカーなので、子は産めず、一生狩りをし、巣を守り続けていくだけの働き蜂。)
    も、言葉を与えられた事により、
    フッ、と、自分の一生に空しさを覚えたりもするけれど、
    それもほんの一瞬の事。
    そんな思いも、自分の果たすべき使命の前では速攻打ち消えてしまうのだ。

    私はマリアを通じて
    虫や動物が言葉を必要としないワケがなんとなくわかった様な気がした。

    自分がこの世に存在する意味、を
    正しく知る者に、哲学は必要ないんだ。

    いかに生きるか?を考えなくてもいい虫達ではあるが、
    いかに生き延びるか?は、考えなくてはいけない。

    その戦略もまた、大変興味深くて面白かった。
    虫界にも
    諸葛孔明や韓信の様に優れた軍師が絶対にいる、としか思えないほど、見事な戦術の数々。

    読後、
    この虫達の戦術動画を探してみると、
    いやぁ~、本当にある、ある!
    自分の体よりも大きな『大スズメバチ』の噛み千切られた頭部を見て、驚き慌てふためいているミツバチの様子を見ていたら、
    (彼らに気持はない、って誰が言ったんだっけ?)

    なんて、ふと思ってしまった。

  • 主人公はオオスズメバチのマリア。
    ワーカー(ハタラキバチ)であるマリアの役目は、獲物を狩り、巣を守り、妹たちを育てること。
    自らは恋もせず、子どもを宿すこともなく、帝国のために命をかけてはたらく戦士です。

    物語の中で、オオスズメバチをはじめとした昆虫たちは人間の言葉を話しています。
    しかし、頭の中でイメージする彼らの姿は容易に擬人化できません。
    それは、オオスズメバチの生態を忠実に描いているから。
    しとめた獲物の肉を団子状に丸めて口にくわえて飛んだり、巣に戻ってから幼虫から口移しで甘露をもらったり…かなりリアルなオオスズメバチの姿が描かれていて、科学の本を読んでいるようなわくわく感がありました。

    その一方で、女性の生き方を考えさせられる場面もありました。
    恋をして子孫を残す多くの虫たちとは対照的に、個ではなく帝国の繁栄のために生きるオオスズメバチ。
    その宿命に誇りをもっているマリアですが、時折「これが私たちの生き方なのだ」と自分に言い聞かせているようにも感じる瞬間があって切なかったです。

  • 子どもに、読ませたいなぁ。
    とくに昆虫が好きな男の子や、すべての女の子に(蜂の世界は女性でなっている社会)中学生くらいからいけるだろうか。
    昆虫NGな人にはおすすめできないが、昆虫の生態の中に、生物としてのたくましさ、もの悲しさ、とにかく学ぶことが多い一冊。物語仕立てなのでよんでていも飽きないしね。

    ファーブルやシートンや椋鳩十、子供時代に読んだ本は私の心のどこかで消化吸収され、滋養となっている。

    このごろ、子供に与えたいな~と思う本を読むと、軽く眉間にしわがよる。

    悩ましいのだ。良いものは与えたい。
    でも、与えるって難しくて、最短距離では意味がない。
    自分で出会うからこそ価値のあるものも多い。
    いつか、子供と読んだ本の話ができたら、いいなぁ、と思うにとどまるに限るのだ。

  • 想定外の面白さだった!
    オオスズメバチの生態、世界を描いた小説ということで若干のハードルの高さがあったのだけれど、読み始めたらすっかりこの世界の虜になった。

    女王バチが率いる帝国、その帝国を守るために、産卵もせずにひたすら他の虫と戦い、妹幼虫たちを育て、羽化してからおよそ30日の命をけずっていくマリア(オオスズメバチのワーカー)たち。
    実際に蜂は「帝国を守る」「戦うために生まれた」などと考えたりはしないのだろうけれど(それでも読後は、蜂たちは考えているのではないかとすら思ってしまう)、自らの役割をただひたすら全うし、命すら捧げていくさまには、彼女たちの誇り高さや高貴さすら感じる。

    なぜ、スズメバチが女王バチと働きバチにわかれるのか、他の生き物とどのように戦うのか、性別はどのように決定されるのか、これらの生態についても非常に詳しく説明がなされているのでとても興味深い。

    マリアの生きざまがかっこよく、オスバチ、ヴェーヴァルトとの出会いは切なかった。ワーカー、働き蜂として生きたマリアが、ヴェーヴァルトと一瞬とはいえ出会っていて良かった・・・と、完全にスズメバチに肩入れしてしまう作品。

  • まさかまさかのハチ視点。

    生々しいけど面白い。

    描写はグロいとこあったけど、文章が好きだったからハイペースで読んじゃった。

    妹たちを育てるために戦う、帝国のために戦う、という本能はすさまじい。

    虫とか魚とかって気持ちとかあるのかな。

    マリアみたいにいろいろ考えられるんだったら人間より強くなってると思う。

    人間が一番ってわけじゃないけど、なんていうか勢力的に。

    考えるから人間は本能が弱いというか、抑えられるのかもと思いましたm(__ )m


    最後、妹が無事女王バチの帝国繁栄させられてよかったね!

  • これは、その一生を真摯に生き抜いた女性の物語、です。

    アストリッドという名の女王に率いられる“帝国”と、
    そこに生きる家族を守るために、戦士としてその全てを捧げて。

    主人公はマリア、生まれたのは夏が終わり秋が色づき始めたころ、
    帝国にとっては一番厳しく、斜陽の気配も色濃い時代でした。

     “ 最後の瞬間まで戦士として生き、そして戦士として死にたかった。”

    この言葉通り、マリアはただ剣に生き、次代の繁栄をつくるために、
    最後は眠るように旅立っていきます、恋を知ることもないままに。

    マリアが属した種族の名は「ヴェスパ・マンダリニア」、
    これは学名で、よく知る名前にすると「オオスズメバチ」。

    とまぁ、ハチの一生を描いた物語でして、
    擬人化されているわけですが、非常に面白かったです。

    ハチの生態や「ゲノム」のつなげ方の効率性など、
    今まで全く知らなかった知識がスルッと入ってきました。

    働き蜂は大体30日前後、巣自体も一年しか使われないとは、意外でした。
    生きるってことは戦いで、情けも容赦もないな、と実感です。

    それにしても百田さん、本当に引き出しが広いなぁ、、
    ファンタジー小説の骨格としても面白そうです、なんて。

    • kickarmさん
      百田さんのコレも、気になってます。
      百田さんのコレも、気になってます。
      2013/10/09
    • ohsuiさん
      kickarmさん
      非常に読ませる内容でした、子どもも中学生くらいなったら読ませてみたいかなぁ、とか思いました。
      kickarmさん
      非常に読ませる内容でした、子どもも中学生くらいなったら読ませてみたいかなぁ、とか思いました。
      2013/10/09
  • 「風の中のマリア」というタイトルのこの作品が、まさかオオスズメバチの生涯を描いた小説だとは思いもよらなかった。なかなかに思い切った試みだなとずっと気になっていた。ハチが主人公というと、どうしてもミツバチのマーヤやハッチ等が真っ先に思い浮かぶ。オオスズメバチの画像を検索してみたところ、あまりのいかつさにちょっとたじろいだ。本書を読むまでは、恐ろしく、忌むべき存在でしかなかったオオスズメバチに対する印象が、ガラリと変わった。
    ワーカー(働きバチ)のマリアは、「疾風のマリア」の異名を持つ凄腕のハンター。幼い妹たちを養うため日々狩りに精を出すが、羽化直前の虫だろうと、他の虫の獲物だろうと、容赦なく命を奪う非情さに、「殺すことしか知らない残虐な戦士!」と虫たちから罵られることもしばしばだ。子孫を残すために雄と雌が出会い、産卵する。大半の虫がそんな生き方をする中、オオスズメバチのマリアは雌でありながら恋もせず卵も産まず、帝国の維持のために戦い続ける。そんな生き方を自問自答するマリア。それでもひたすらに命を燃やして戦うマリアの勇ましさは、人間の私から見ても惚れ惚れするほどかっこいい。
    思いがけない雄バチとの出会い、少しずつ綻び始める帝国、次世代を育むための大規模な襲撃…後半の目まぐるしく凄絶な展開は、自然界では当たり前に起こっていることなのだろうが、その激しさには驚くばかりだ。非情だけれど、こうやって弱いものは淘汰されていくのだ…死にゆく虫たちの叫びが痛ましい。特にクライマックスのキイロスズメバチとの死闘シーンは、圧巻。アマゾネス達の命を賭した戦いは、攻める方も守る方もそれぞれに必死で、壮絶でありながら胸が熱くなる。
    社会性昆虫の生活の緻密さがよくわかり、自然界に対し興味が湧くと同時に、自分の人生についても何だか考えさせられるような不思議なメッセージ性を持った小説だ。日々生きるか死ぬかのオオスズメバチのワーカーと、のらりくらりな人間の自分とを比べるなんてスケールが違いすぎる、共通項は「女」のみだけど…同じ「女」として、マリアに心底憧れ、そして彼女を尊敬する。
    斬新だけど、間違いなく心に深く刻まれる一冊。自然ってすごいわ!!

  • 雀蜂の生き様から学ぶことが多くあり、最近呼んだ本の中で一番面白かった

  • オオスズメバチにとても詳しくなった
    働きバチは30日も寿命がない中で、よくここまで壮大に描いたと思う
    ハチにしては面白いが、百田さんだからこそという感じ
    百田さんの他の小説のほうが面白かった

    ハチがより自分の遺伝子に近い個体を育てようとする血縁選択理論は初めて知ったから驚いた
    ただ、自分のゲノムと何%合致するからうんぬんではなく、なぜそのような行動を取るのか、ハチの心理的描写をもっとしてもらえると、納得しやすいと思った

  • オオスズメバチの生態に詳しくなった。
    擬人化されているので、楽しく学ぶことができたという印象。
    生物の一生の見方が変わった。

全850件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

百田尚樹の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
百田 尚樹
高野 和明
伊坂 幸太郎
百田 尚樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×