風の中のマリア (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 7093
感想 : 880
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062769211

作品紹介・あらすじ

命はわずか三十日。ここはオオスズメバチの帝国だ。晩夏、隆盛を極めた帝国に生まれた戦士、マリア。幼い妹たちと「偉大なる母」のため、恋もせず、子も産まず、命を燃やして戦い続ける。ある日出逢ったオスバチから告げられた自らの宿命。永遠に続くと思われた帝国に影が射し始める。著者の新たな代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 予てより
    (虫になってみたい…)という、
    決して叶わぬ願いを、
    ついに百田さんが叶えてくれた♪

    強いヤツにとっつかまって、
    速攻死んでしまうのだけは御免なので、
    出来れば
    最強の虫!
    (カブトムシか、クワガタがいいなー)
    なんて願望だけはさすがに叶わなかったものの、
    物語の主人公は
    最強、というよりは最恐!

    本当に恐ろしい『大スズメバチ』であった。

    百田さんは
    彼らに言葉と名前を与え、
    人間から見れば
    (なんて過酷で残酷な!)と、思われがちな一生を、
    彼ら自身は、どう思うか?どう思っているのか?
    を、
    興味深くシュミレートしてくれた。

    おそらく虫に感情などは無く、
    ただ
    自分の使命、果たすべき役目、のみが叩き込まれた本能に従って行動し、
    食う、食われる、の世界で短い一生を終えていくだけ、
    なのであろう。

    主人公のマリア(ワーカーなので、子は産めず、一生狩りをし、巣を守り続けていくだけの働き蜂。)
    も、言葉を与えられた事により、
    フッ、と、自分の一生に空しさを覚えたりもするけれど、
    それもほんの一瞬の事。
    そんな思いも、自分の果たすべき使命の前では速攻打ち消えてしまうのだ。

    私はマリアを通じて
    虫や動物が言葉を必要としないワケがなんとなくわかった様な気がした。

    自分がこの世に存在する意味、を
    正しく知る者に、哲学は必要ないんだ。

    いかに生きるか?を考えなくてもいい虫達ではあるが、
    いかに生き延びるか?は、考えなくてはいけない。

    その戦略もまた、大変興味深くて面白かった。
    虫界にも
    諸葛孔明や韓信の様に優れた軍師が絶対にいる、としか思えないほど、見事な戦術の数々。

    読後、
    この虫達の戦術動画を探してみると、
    いやぁ~、本当にある、ある!
    自分の体よりも大きな『大スズメバチ』の噛み千切られた頭部を見て、驚き慌てふためいているミツバチの様子を見ていたら、
    (彼らに気持はない、って誰が言ったんだっけ?)

    なんて、ふと思ってしまった。

  • 主人公はオオスズメバチのマリア。
    ワーカー(ハタラキバチ)であるマリアの役目は、獲物を狩り、巣を守り、妹たちを育てること。
    自らは恋もせず、子どもを宿すこともなく、帝国のために命をかけてはたらく戦士です。

    物語の中で、オオスズメバチをはじめとした昆虫たちは人間の言葉を話しています。
    しかし、頭の中でイメージする彼らの姿は容易に擬人化できません。
    それは、オオスズメバチの生態を忠実に描いているから。
    しとめた獲物の肉を団子状に丸めて口にくわえて飛んだり、巣に戻ってから幼虫から口移しで甘露をもらったり…かなりリアルなオオスズメバチの姿が描かれていて、科学の本を読んでいるようなわくわく感がありました。

    その一方で、女性の生き方を考えさせられる場面もありました。
    恋をして子孫を残す多くの虫たちとは対照的に、個ではなく帝国の繁栄のために生きるオオスズメバチ。
    その宿命に誇りをもっているマリアですが、時折「これが私たちの生き方なのだ」と自分に言い聞かせているようにも感じる瞬間があって切なかったです。

  • 戦士マリアを通じて描かれたオオスズメバチの生態
    ワーカーとして生まれ、獲物を狩り妹達を育て、一生を帝国に捧げる。
    神が設計したような合理性で遺伝子を次世代に繋げる生態を科学的知見に忠実に表しながら実にワクワクする冒険譚になっている。
    繁栄を極めた帝国とマリアの運命はいかに!

  • 超!が付く程の虫嫌いなので、「うわー。」とか「おえー。」と思いながら読みました(笑)他の虫達を殺す描写がキツすぎて挫折しかけたんですが、読み進めていく内に興味が湧いてきて、いつの間にか読み終えていました。女王蜂は生まれながらにして女王蜂だと思ってたのでビックリ!!さらに蜂は蜂でも種類によって攻撃の仕方も様々だったり…と、色々勉強になりました。

  • 子どもに、読ませたいなぁ。
    とくに昆虫が好きな男の子や、すべての女の子に(蜂の世界は女性でなっている社会)中学生くらいからいけるだろうか。
    昆虫NGな人にはおすすめできないが、昆虫の生態の中に、生物としてのたくましさ、もの悲しさ、とにかく学ぶことが多い一冊。物語仕立てなのでよんでていも飽きないしね。

    ファーブルやシートンや椋鳩十、子供時代に読んだ本は私の心のどこかで消化吸収され、滋養となっている。

    このごろ、子供に与えたいな~と思う本を読むと、軽く眉間にしわがよる。

    悩ましいのだ。良いものは与えたい。
    でも、与えるって難しくて、最短距離では意味がない。
    自分で出会うからこそ価値のあるものも多い。
    いつか、子供と読んだ本の話ができたら、いいなぁ、と思うにとどまるに限るのだ。

  • 虫嫌いですが、面白く読めました!
    生態系の話は興味深いですね!

  • 想定外の面白さだった!
    オオスズメバチの生態、世界を描いた小説ということで若干のハードルの高さがあったのだけれど、読み始めたらすっかりこの世界の虜になった。

    女王バチが率いる帝国、その帝国を守るために、産卵もせずにひたすら他の虫と戦い、妹幼虫たちを育て、羽化してからおよそ30日の命をけずっていくマリア(オオスズメバチのワーカー)たち。
    実際に蜂は「帝国を守る」「戦うために生まれた」などと考えたりはしないのだろうけれど(それでも読後は、蜂たちは考えているのではないかとすら思ってしまう)、自らの役割をただひたすら全うし、命すら捧げていくさまには、彼女たちの誇り高さや高貴さすら感じる。

    なぜ、スズメバチが女王バチと働きバチにわかれるのか、他の生き物とどのように戦うのか、性別はどのように決定されるのか、これらの生態についても非常に詳しく説明がなされているのでとても興味深い。

    マリアの生きざまがかっこよく、オスバチ、ヴェーヴァルトとの出会いは切なかった。ワーカー、働き蜂として生きたマリアが、ヴェーヴァルトと一瞬とはいえ出会っていて良かった・・・と、完全にスズメバチに肩入れしてしまう作品。

  • まさかまさかのハチ視点。

    生々しいけど面白い。

    描写はグロいとこあったけど、文章が好きだったからハイペースで読んじゃった。

    妹たちを育てるために戦う、帝国のために戦う、という本能はすさまじい。

    虫とか魚とかって気持ちとかあるのかな。

    マリアみたいにいろいろ考えられるんだったら人間より強くなってると思う。

    人間が一番ってわけじゃないけど、なんていうか勢力的に。

    考えるから人間は本能が弱いというか、抑えられるのかもと思いましたm(__ )m


    最後、妹が無事女王バチの帝国繁栄させられてよかったね!

  • 面白かった!
    百田尚樹さんとっても敷居が高いと思ってましたが、読書歴が短い私も楽しく読めました。

    勇敢な戦士マリアの目線で、オオスズメバチの一生を学べます。
    1匹の女王が築く女だけの帝国。
    それぞれが与えられた役割をこなして生きていく。
    単体での狩りや集団での狩り。
    女王バチ殺しなど、めちゃくちゃオオスズメバチやその他のハチに詳しくなれます。

    冷徹で残酷な虫の世界。
    人間から見るとたった1ヶ月。
    恋をして交尾をする為だけに産まれてくる虫もいれば、偉大なる母と産まれてくる妹達の為だけに一生を捧げる虫もいる。
    自分は何故、何の為に産まれたのだろうと思う事って、虫も人間もあるのかなと…
    何かの歌詞ではないけど、わからないまま終わるのはなんだか嫌だなぁなんて。
    虫と喋らないことには実際には知り得ない事ので、想像がふくらみました。

    1匹ではなく巣全体で1つの虫だと言うのも考えさせられるし、マリアの最期も大変美しく感動しました。

    みなしごハッチはオスバチ、みつばちマーヤは働きバチだったなと思ったらあの頃のアニメにも深みが…

    って言うか離婚した元旦那の浮気相手もマーヤって名前だったなといらん事まで思い出した(笑)

    私の最期はどんなものだろうとも思った。

  • これは、その一生を真摯に生き抜いた女性の物語、です。

    アストリッドという名の女王に率いられる“帝国”と、
    そこに生きる家族を守るために、戦士としてその全てを捧げて。

    主人公はマリア、生まれたのは夏が終わり秋が色づき始めたころ、
    帝国にとっては一番厳しく、斜陽の気配も色濃い時代でした。

     “ 最後の瞬間まで戦士として生き、そして戦士として死にたかった。”

    この言葉通り、マリアはただ剣に生き、次代の繁栄をつくるために、
    最後は眠るように旅立っていきます、恋を知ることもないままに。

    マリアが属した種族の名は「ヴェスパ・マンダリニア」、
    これは学名で、よく知る名前にすると「オオスズメバチ」。

    とまぁ、ハチの一生を描いた物語でして、
    擬人化されているわけですが、非常に面白かったです。

    ハチの生態や「ゲノム」のつなげ方の効率性など、
    今まで全く知らなかった知識がスルッと入ってきました。

    働き蜂は大体30日前後、巣自体も一年しか使われないとは、意外でした。
    生きるってことは戦いで、情けも容赦もないな、と実感です。

    それにしても百田さん、本当に引き出しが広いなぁ、、
    ファンタジー小説の骨格としても面白そうです、なんて。

    • kickarmさん
      百田さんのコレも、気になってます。
      百田さんのコレも、気になってます。
      2013/10/09
    • ohsuiさん
      kickarmさん
      非常に読ませる内容でした、子どもも中学生くらいなったら読ませてみたいかなぁ、とか思いました。
      kickarmさん
      非常に読ませる内容でした、子どもも中学生くらいなったら読ませてみたいかなぁ、とか思いました。
      2013/10/09
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著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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