新装版 ムーミン谷の冬 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062769365

作品紹介・あらすじ

まっ白な雪にとざされたムーミン谷。松葉をたっぷり食べて、ムーミンパパとムーミンママといっしょに冬眠にはいったのに、なぜかたった一人、眠りからさめてしまったムーミントロール。パパもママも起きてくれない。時計までとまっている……。はじめて見る雪の世界で、ムーミントロールにさまざまな出逢いがあります。自分のしっぽが世界一すばらしいと思っているりすや、いつでも元気なちびのミイ、そして、ムーミントロールのご先祖さまや、水小屋に住んでいるおしゃまさん……。

9作あるムーミン童話のなかで、唯一冬のムーミン谷を描いて印象的な物語。
文と絵を手がけたヤンソンは、この作品を発表後、さらに評価が高まり、国際アンデルセン賞を受賞しました。

感想・レビュー・書評

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  • 今年1冊目に選んだのはオススメの一冊。途中、りすの件で欄外に筆者の追記があるように、本編の随所から優しさと暖かさが溢れ出る作品。ムーミントロールと冬の住人たちのやりとりは、「気に食わない子だっているし、いろいろな人間がいるけども角度を変えたら意外といいヤツやん」みたいな雰囲気ははっとさせられます。人間関係のメタファーのようで、それすらしんしんと飲み込む雪や氷の描写もたまらない。独特の世界観を構築しており、特に今の時期の読書にぴったりだと思います。#moomin_jp #読書好きな人と繋がりたい

  • なぜかたった一人で冬眠から目覚めてしまったムーミントロール。
    パパもママも眠っているし、スナフキンは春にならないと戻ってきません。
    一面銀世界のムーミン谷で、ムーミントロールははじめての冬を過ごします。

    森で出会ったおしゃまさんはムーミントロールに「ものごとってものは、みんな、とてもあいまいなものよ。まさにそのことが、わたしを安心させるんだけれどもね」と言います。
    だけど、ムーミントロールは冬という季節のあいまいさやとりとめのなさに馴染めません。
    見慣れたはずのムーミン谷は全然別の場所のようだし、冬に起きている者たちは内気でひっそり過ごすのが好きなので、なかなか親しくなれないし。
    でも、戸惑ったり、苛立ったりしながらも、共に冬を過ごすうちにムーミントロールはいろいろなことに気付きます。
    春を迎えたムーミン谷でクロッカスの芽を見つけたときの一言に、ムーミントロールの成長が詰まっていて、冬の間の彼を見守り続けた一読者として、なんだか誇らしい気持ちになりました。

  • 面白かった。
    体育会系で、寒い屋外での運動や明るいことが大好きでそれが好きじゃない人を見ると「そうなんだ。でもいつかは私が正しかったとわかるはずだ」と言うヘムレンさん。それにハマれない人たち。
    そこの描き方がすごく好きでだと思った。キラキラしている一般的に「善い」とされること。全員がそのやり方にはまれるわけじゃないし、はまり続ける事ができる人は滅多にいないし、別にそれにはまれなかったからと言ってその人が「悪い」わけではない。
    というのを描いてくれたのが私にとってはすごくよかった。
    それから、そんな曲者のヘムレンさんも、「悪い人」という訳ではなく、「いい人なんだけどムーミンには合わない人」と位置づけて断罪しないでいるところが好きだと思った。
    こういうのを豊かさだと思う。

  • 冬が来たら読もう、そう思っていたところ、真冬は終わり雪がどんどん解けていく今、読み終わりました。読み始めたときには時を逸したか、と思ったのですが、読み終わったらベストの時に読んで大成功、と思っています。
    真冬の時期を乗り越え、しかし乗り越えというものの、実際にはムーミントロール、存分に冬を楽しんだように思います。冬でなければ出会えない者たちとの貴重な出会い。出会いこそが成長の種なんですね。
    冬から春へ、それは死と再生の物語。
    ひょっとしたら冬の物語はこの世にあらざる者たちの物語。トロールにとってしても、見えない者たち、普段なら相いれない者たちとの成長譚でした。
    雪に触れるムーミンの肌の質感が伝わってきました。
    それから、ムーミンママになぜか磯野舟さんを感じました。慈しみと安定感というのでしょうか。大丈夫ですよ、という感じ。
    ムーミン谷の冬はとても素敵です。

  • 一家揃って冬眠中のムーミンが、家の中でたったひとりだけ目を覚ましてしまい、目がさえてますます眠れなくなり、よせばいいのに寒い寒い外に飛び出します。初めて見る雪にびっくりたまげながら、お日さまの消えてしまった白夜の世界の中で、冬をエンジョイする生きものたちとの交流を描いた作品です。

    ・・・、と、しれっと書いていますが、わたしはムーミンが冬眠するものだということを忘れていました。

    そんな感じでとても新鮮な気持ちで読み始めたので、「雪は地面から生えて来るものだと思ってたぁ~」と空からどすどす落ちてくる雪にびびったり、スキーでえらい目に遭うムーミンのじたばたする様子tが、もう、おかしくておかしくて、肩はふっふっと震えながら、しかし何食わぬ顔で電車の中で読んでました。

    そして、現代でもなお、真冬には太陽がどっかに行ってしまう白夜の寒い厳しい季節を生き抜いている北欧のみなさんに敬意を表したくなるのでした。

    ムーミンといえばやっぱり日曜朝のアニメ劇場で育った世代なので、ほわほわな世界だと思っていましたが、大人になって活字もので読み返すと、けっこう奥深いのでびっくりしました。
    「おしゃまさん」や「ちびのミイ」が、たまに吐き捨てる言葉の中に、すごく良い人生訓が見えるのです。めっちゃいいこと言ってます。
    こんなに深みのある作品だったとは!
    そして、無鉄砲なくせに思い切りが悪く、さばっとしているわりに押しの弱いムーミンの様子を見ていると、とても人間くさく思えてきて、何か自分の事を言われているようでもあり、とても親近感がわいてきます。

    結局、ムーミンママが予定より(?)若干早く冬眠から覚めてくれて、そしてその頃には早い春がやってきているのですが、読んでいるこちら側も漆黒の冬の世界に連れて行かれていたので、ページが進むにつれて少しずつ冬から春へと変わり行く時間の流れとともに、「冬、まだ行かないで~!」という気持ちと、「早く春になってこの人たちにぽかぽかしてもらいたい」という気持ちがないまぜになります。春が来てしまうと物語が終わってしまうから。

    ムーミンママの前向きさと割り切りの良さ!
    物語のラストにもらった大収穫です。

  • 冬眠中に目覚めてしまったムーミンの冒険。
    太陽は隠れ、大地は雪に覆われている、暗くて寒い世界で出会う人々を通してムーミンはいろいろなことを学びます。どんなものごとも、いずれは解決に到る力を持っているのです。

    冬は何のためにあるの?
    やがてめぐってくる春を待つため。再び新しい若葉を芽吹かせるため。次の命を生み、育てるため。そう、冬の中に春はひそかに息づいている。冬は眠るためだけの時間ではないよ。自らの力で呼び寄せた春の光はどこまでも眩しくて。過ぎ去っていく季節を名残惜しむ気持ちと、待ちわびた季節を喜ぶ気持ちと。

  • 冬眠中のムーミントロールは、まだ真冬なのにどういうわけか目が覚めてしまって、冬眠を続けられなくなってしまう。ムーミントロールが初めて経験する冬。それは北欧ならではの厳しさと孤独感と神秘に満ちた冬の様子で、私達アジア圏で経験する冬ともひと味もふた味もまたちがう。ムーミントロールと一緒になって、初めての冬を過ごすかの様になにもかもが新鮮だ。文章が寝床で聞く母親の物語のように暖かく美しい。ムーミントロール悩みや驚きや感動、 悲しいエピソードも静かに心に染み込んでくる。冬を乗り越えていく希望と勇気を分けてもらえる。真冬のような試練もかならず明るい春の日差しを浴びき希望に変わっていくことをしみじみと感じた。

  • ムーミン一家は、クマのように冬は冬眠するという。ムーミントロールだけが目醒めてしまって、外は白銀の世界。孤独かと思いきや、おしゃまさんやミーやご先祖さまが現れて…。春がくれば、やがて、スナフキンが帰ってくるのだろう。
    個人的にはヘムレンさん好きのサロメちゃんが可愛かったです。

  • おしゃまさん、トゥティッキは、トーベのパートナーの穏やかで芯の強い性格を反映している、と知り興味深く読めた。

  • ミイがたくさん出てきて可愛かった!
    イラストも性格も可愛い♩
    フィンランドで生きる人たちの冬の印象ってこういうかんじなんだなあ。

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著者プロフィール

1914年、ヘルシンキ生まれ。画家・作家。父が彫刻家、母が画家という芸術家一家に育つ。1948年に出版した『たのしいムーミン一家』が世界中で評判に。66年、国際アンデルセン賞作家賞、84年にフィンランド国民文学賞を受賞。主な作品に、「ムーミン童話」シリーズ(全9巻)、『彫刻家の娘』『少女ソフィアの夏』(以上講談社)など。

「2023年 『MOOMIN ポストカードブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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