小さなトロールと大きな洪水 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062769402

感想・レビュー・書評

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  • トーベヤンソンは、祖父母が建てた大きな家で、彫刻家の父と画家の母の長女として、1914年に生まれる。1歳半の時にお母さんの真似をして、絵を描いていたという。それから、絵を描き物語を作るのが好きだった。本人は、お母さんを目標として、画家を目指した。
    父親は、トーベが3歳のときに勃発したフィンランド内戦に政府側の兵士として戦争に行く。幼い頃の思い出が、その父親がいないことが、お母さんと一緒にパパを探す物語のモチーフになる。
    美術学校にも行き、絵の才能が認められ、展覧会にも出品していた。しかし、フィンランドにソビエト軍が押し寄せ、ドイツ軍と手を組むことで、ユダヤ人狩りも行われた。父親は、その政府の立場を支持していた。トーベヤンソンは、その戦争好きで、ユダヤ人を排斥する父親に反対して、衝突し、絶縁状態にもなる。絵を描いても、戦争によって色彩を失われていくことで絵を書くのを断念する。トーベヤンソンは、ムーミンの物語を書き始めて、1945年の戦争中にこの物語を作り発表する。
    トーベヤンソンは、童話にはハッピイエンドが必要だと考えていて、パパ探しは、パパと会うことと大きな家を見つけることとなる。トロールとは妖精の意味で、叔父の家に少女の頃泊まった時に、お腹が空いて冷蔵庫でつまみ食いをする。そのことで、叔父から、暖炉の裏からトロールが、出てきて首筋に息を吹きかけるという話から、熟成されてムーミントロールとなる。この第1作は、まだムーミントロールはふくよかではなく痩せている。パパを探す時に、いつも母親は力強く困難を乗り越えていく。青い髪の美しい少女チューリッパ、大変な怖がりのスニフ、パパはニョロニョロと一緒に旅をする。
    そんな中で、大きな洪水で流されたパパを発見するのだ。
    私は、ムーミンの物語って、もっとほのぼのしたものだと思ったが、戦争の中で苦しんだトーベヤンソンがあったことを初めて知った。そして、彼女は、戦争に男はいくのだからといって、恋をするが結局子供を産まないという決断さえもする。そういう背景が、豊かな詩情あふれ、パパに対する思いを綴る物語を紡ぐ。

  • 日常に疲れた時、ふと、違う世界に行きたくなる。そんな時にちょうどよい本だと思います。ムーミン独特の世界観が、なんとも言えず心地よい。
    何度も戻ってきたくなる場所です。

  • 小さなトロールと大きな洪水(講談社文庫)
    著作者:トーベ・ヤンソン
    発行者:講談社
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
    facecollabo home Booklog
    https://facecollabo.jimdofree.com/
    幻の第一作目。

    • facecollaboさん
      いいね有難うございます。
      いいね有難うございます。
      2023/12/21
  • 一気読みしました。他作品と比べるとボリューム控えめです。ムーミンたちは最初からムーミン谷に住んでるイメージしかなかったので、ムーミン谷に住む事になった経緯があり、そこからシリーズが始まっていったと知り、感慨深いです。あとママ、パパ大好きなんだなと。会いた過ぎてスニフへの対応辛辣(笑)

  • 子どもの頃にTVアニメで楽しんでいたムーミンシリーズ。パパを探すところから始まっていたとは知りませんでした。

  •  キャラクターとしては有名だけど、話の内容は全然知らないなと思って、読んでみた。

     ファンタジーって、不可解で、ただ振り回されて、何が面白いのかよく分からないって本もあるけど、ムーミンはわくわくさせてくれる作品だった。作者の価値観がちらっとみえる瞬間があって、大人が読んでも楽しめる本だと思った。挿絵も、表現の仕方に個性があって、可愛らしいし、細部までこだわって描いていることに感動した。世界観が魅力的。

     全9巻まであるから、しばらくの間の毎日の楽しみになりそう。しばらく児童書にハマりそう。

  • ムーミンコミックスの翻訳者の冨原眞弓が翻訳。遥か昔、ムーミンのテレビアニメが好きだったがボンヤリした記憶しかない。スニフの性格を初めて知った。トーベ・ヤンソンを主人公にした映画『トーベ』は、日本でも公開されるだろうか。今年は一度も映画館に行っていないが、映画が気になる。

  • 家で過ごす時間が増えて、やたらと昔の失敗を思い出してしんどくなったときに、脳内にスナフキンが出てきて「すんだことだよ、ね、きみ」と語りかけてきた。
    でも、わたしはムーミンをアニメでも小説でも履修してないのだ。
    昔、ビンゴの景品でムーミン名言集みたいな本をもらったからそれか?と思ったけどもう手元にない。
    ミィのポーチ使ってたくせに、よく考えるとムーミンのことなにも知らないな、と気付いた。
    いい機会だから出典元を探すついでに履修しようと思って、ムーミンのボックス(単に本屋に行ったら売ってたのがそれだけだった)を買った。
    時間があるとシリーズ物に挑戦できる。それだけはすばらしい。

    で、ネットで調べて「幻の1作目」とされてた本作から手に取った。
    なんだこれ面白い!
    短いお話ではあるけど、怒涛の展開ですぐに最後まで読んじゃった。
    ムーミントロールはストーブの後ろに住んでるんだ、寒い国らしい夢がある設定だ…。

    なによりも序文が印象に残りました。

    「1939年、戦争の冬のことです。仕事はぱたりといきづまり、絵をかこうとしてもしかたがないと感じていました。」

    「でも、王子さまや、王女さまや、小さな子どもたちを登場させるのはやめて、かわりに風刺画をかくときにサインがわりにつかっていた、怒った顔をした生き物を主人公にして、ムーミントロールという名をつけました」

    「とにかく、これはわたしにとってはじめての、ハッピーエンドのお話なのです!」

    続きを読むのが楽しみだ。

  • 飯能市にムーミンパークができたということで、ムーミンを読んでみたいと思い購入。この話はムーミンのお話の第1作だったけれど、翻訳が出たのはムーミンシリーズが終わった後だったらしい。幻の第1作。

    読み終わってほっこりした気持ちになれた。ニョロニョロが可愛かった。

    どうでもいいけど、挿絵に裸の女性がいたけど、これは大丈夫なのかしら? お尻が丸出しだったり、乳首が描かれていたりしたけど。小学生の時にこれを読んだら、もうドキドキして夜眠れなくなるんだけど、、、

  • 妖精たちのさざめきを描いた作品。
    物語というより、観察して記録したような客観性を感じる。
    イラストにしたってムーミンもママも可愛くないし(癖になる味はあるけど)、物語の大部分は森が舞台だからか、なんだか鬱蒼として暗い雰囲気。
    それでも、「たのしいムーミン一家」よりも好きだ。
    ふわふわ楽しい物語よりも、泥臭い方が私は面白い。

  • ムーミン谷シリーズ、第一作。
    いいなぁ。好きだな。

  • フィンランド行きにあたってちゃんと原作読んでみるか、と思って手にとったムーミンの原作第1巻。
    この巻はまだムーミン谷に居を構える前で、パパがどっか失踪しちゃってる中で、洪水の中、住処を探してさまようムーミントロールとママが主軸。あんまりほんわか感はないが、パパの消息を知ってから一変して元気になるママが面白かった。

  • ムーミントロールたちが、ムーミン谷にたどり着くまでの物語。

    お日様の光を求めて、というところが夏の短い北欧の感覚が出ている気がする。

  • あとがきの方が長い。

  • パパはここにはいないけれど、もう待っていられない。冬が来る前に家を建てなくちゃ。ムーミントロールとママは不気味な森や沼を抜け、様々な存在と出逢いながら荒れ狂う海を越えて暖かな場所へ向かいます。穏やかな日々は、はたして訪れるのでしょうか。第二次世界大戦中に出版され、長い時を経て復刊されたムーミンシリーズの記念すべき一作目。

    一応カテゴリは児童書で。この表紙じゃないやつなのですが、文庫で読みました。まったくムーミンに関しては無知だったのですが、原作はこんな感じだったんだなあ。これは一作目だけど遅くに復刊されたのもあって雰囲気が違うと思いますが、根底にある暖かみとか優しさとかあるいは皮肉さとか(他の作品をまだ知らないけど)原点になってるんだろうな。ニョロニョロが好きなので最初から出てきて嬉しかったです。何故か昔からめちゃ惹かれるニョロニョロ、不思議ないきもの。ヘンだけどかわいい。個人的に結構意外だったのが、ママがパパを見つけた時すごくうれしそうだったところ。わりとドライな関係の夫婦だと思っていたので(何故)あれっ、こんなにすごく喜ぶんだ、こんなに好きなんだーって意外でした。行き着いた土地がムーミン谷ってことでいいのかな。続きのシリーズも手に入り次第読んでいくことにします。

  • ふふふ、買ってしまいました。文庫特装版セット。
    表紙のデザインに満足。あとがきや解説も載っていて良いです。

  • ムーミンシリーズの第一作。

    冒頭から、ムーミントロールとムーミンママは暗い森をさまよっている。
    パパは旅に出てしまって不在。
    母一人、子一人、たちはだかる暗い森。

    なかなか不穏な出だしである。
    これは、本作が第二次大戦中に書かれたことと無関係ではないらしい。
    でも、序文で作者のトーベ・ヤンソンは述べている。
    「とにかく、これはわたしにとってはじめての、ハッピーエンドのお話なのです!」
    だから、安心して読むことができた。

    チューリップの妖精、チューリッパのお話が好き。
    青い髪の少女と、赤い髪の少年は惹かれあう。
    ニョロニョロの存在感も良い。
    ひとことも喋らずに、ニョロニョロしながら放浪を続ける謎の生物。

    そしてムーミンは、思っていたよりもずっと小さい生き物なのかも。
    小さいトロール、というくらいだから。
    コロボックルくらいだろうか。

  • 小学生の時読んで以来、また読み返したくなって買ってみた。ハッピーエンドなのに、途中のじめじめと湿った感じがムーミンらしくて、また初期の本当にシンプルなお話である感じが逆に良かった。

  • 続けて読んだムーミンシリーズ。これが最初なのね。滅亡へと向かう世界で、不在の父親を探す母子の物語。
    続く不安、現実逃避、ここでない場所への憧れ。チューリッパが救い。
    冬戦争でソ連に勝利したものの、対ソ的にはナチスドイツと協力せざるを得なかったフィンランド、その中でスエーデン系の少数民族であるヤンソントーベ・ヤンソンが書いたのは「童話」ではなく「寓話」。
    「ムーミン谷 The Begining」で。

    「まわりが池波正太郎とかドラッカーとか読んでるのにムーミンシリーズって大人の男としてどうなの?」とムーミントロールに尋ねられる。

  • 【本68】ムーミンシリーズ第一作目。児童書のように読めるが、背景には第二次世界大戦での世相が反映されている。ムーミン谷の彗星が久しく第一作だと思われてきたが、後になって出た本書が第一作目である。

著者プロフィール

1914年、ヘルシンキ生まれ。画家・作家。父が彫刻家、母が画家という芸術家一家に育つ。1948年に出版した『たのしいムーミン一家』が世界中で評判に。66年、国際アンデルセン賞作家賞、84年にフィンランド国民文学賞を受賞。主な作品に、「ムーミン童話」シリーズ(全9巻)、『彫刻家の娘』『少女ソフィアの夏』(以上講談社)など。

「2023年 『MOOMIN ポストカードブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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