エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062769587

作品紹介・あらすじ

エコール・ド・パリ-第二次大戦前のパリで、悲劇的な生涯を送った画家たち。彼らの絵に心を奪われ続けた有名画商が、密室で殺された。死の謎を解く鍵は、被害者の遺した美術書の中に潜んでいる!?芸術とミステリを融合させ知的興奮を呼び起こす、メフィスト賞受賞作家の芸術ミステリシリーズ第一作。

感想・レビュー・書評

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  • 読者への挑戦状も付いてて、久しぶりに血がたぎったんですが、うーん…これはちょっとアンフェアくさいぞ(笑)。

    肝心のミステリーも「芸術蘊蓄」に比べると、地味さが際立って消化不良。脇役な筈の警部の灰汁が強すぎて、キャラは弱くない筈の主人公が霞んでしまったのも残念。
    メフィスト作家の描く主人公って、どことなくステレオタイプだよなあ…。

    ただ、各章の冒頭に差し込まれた《被害者が書いた評論》は面白かった。絵画に全く興味のない私でも、思わずネットで絵を検索しましたからね^^本編よりもこっち推しな作風で書けば、更に面白くなったかも。


    ※以下は《被害者が書いた評論》の要約・抜粋なので信憑性は保証できません^^;
    ※私が超気になったのでまとめてるだけですよ〜


    ●エコール・ド・パリ(1910〜20年代)
    一人一派の絵画/明確な定義は不可能/蜂の巣《ラ・ルッシュ》という長屋に住み着いた外国人中心(キスリングはモンマルトル)/芸術家の実人生と芸術作品に対する評価の相関関係の考察


    ●アメディオ・モディリアーニ
    不遇の天才(線の単純化・構図の不安定さのバランス)/詩人・画商の友人ズボロウスキーの援助/一度だけ開催された個展では一枚も売れず裸婦像が押収されただけ/最晩年に得た名声/貧窮の中で病に倒れる(享年35)/画商達は絵の高騰を見越して援助しなかったという説/絵のモデルで妻になったジャンヌは夫の死の二日後に自殺

    ●ハイム・スーチン
    モディリアーニが認めた才能/毀誉褒貶が二分/不快感を与える作風/極貧/成功後も先鋭化する作風/ナチスから逃げ回り胃潰瘍で死亡

    ●ジュール・パスキン
    乱痴気騒ぎを好むプレイボーイ/遊興費を稼ぐ為に画商好みの作品を濫作/個展前日に自殺

    ●キスリング
    社交的な成功者

    ●モーリス・ユトリロ
    幼少からの飲酒癖/治療の一環として絵筆を取る/詩的な街並みを切り取る天才/結婚後は周囲に言われるまま若い頃の作品を模写〜晩年の作品の評価低落

    ●藤田嗣治
    おかっぱ頭にロイド眼鏡/隠れた努力家/乳白色の肌の色の秘密/戦意高揚の絵を手掛け、戦争責任を仲間達に追及されそうになり、画壇に失望した藤田はフランスに帰化



    悲劇的な生涯を送った画家たちの絵に心を奪われ続けた有名画商が、密室で殺された。死の謎を解く鍵は、被害者の遺した美術書の中に潜んでいる!?

  • メフィスト賞受賞作家のシリーズ作、芸術探偵シリーズの
    第一弾作品。1920年代、フランスのパリで悲劇的な生涯を
    送った画家達...エコール・ド・パリを主軸にしながら、その
    画家達の生き様と作品を、単純に知的好奇心を満足させる
    作品としての側面と、その作中作とも言える、「呪われた
    芸儒家たち」の章を伏線にしつつ、ミステリとしての好奇心を
    満たす本格推理小説という、別の側面も待つ、実験的で
    アクロバチックな作品。

    その割には、案外、どちらの読み物としても
    読み易く、しかも面白いというのは、なかなかの
    力作ではないでしょうか? 基本的に全く興味の無い
    絵画...しかも、どちらかというと超マイナーな画家たちの
    作品や生涯にも充分面白く、興味深く読めます。

    今作ではさほどメインとなって事件を解決するような
    活躍を見せなかった探偵役の「瞬一郎」にやや肩透かしを
    食った感があるのと、メインとなる画商の殺人事件が
    繋がった形で露になる他の事件との関連が、どうもイマイチ
    不自然に見えてしまった...というミステリ面での満足度が
    個人的には...あと一歩っス。贅沢かしら?

  • 芸術探偵・神泉寺瞬一郎シリーズの一作目。 エコール・ド・パリの画家に魅了された画廊の屋敷での密室殺人を描く。 
    目を惹くのはあちこちに散りばめられた芸術論だろう、この絵画にまつわるエピソードを楽しめるかにどうかが問題だ。 そして芸術家ゆえに展開される推理劇は芸術に興味なくても瞠目することだろう。 深水作品は殺人事件、高度な蘊蓄も堅苦しくなくて良い。

  • 4+

  • 芸術とミステリの融合といってるように、エコールドパリの知識が付くっていうお得感あふれるミステリ。
    瞬一郎の生き方「ゲリラ・ランダム・アメーバー」いいなと思う。
    警察の面々がキャラが濃すぎてバカミス的な印象を受けるけど、まさかの犯人で面白かった。

  • 『美人薄命』で魂を射抜かれた(と言っては大げさか)作家。それで著作を大人買いしたのに、その次に読んだ『言霊たちの反乱』はイマイチ、いやイマサンぐらいでガクッ。この「芸術ミステリシリーズ」には手を出せずにいましたが、数日前に西宮大谷記念美術館で開催中の藤田嗣治展に行き、読むなら今しかないでしょうということで。

    エコール・ド・パリブームをつくったともいうべき、有名画廊のオーナーが刺殺される。いわゆる密室殺人事件。豪邸に居合わせたのは、何十年も仕える執事、被害者の妻子、知的障害のある作男のみ。

    450頁超のボリュームのうち、こりゃ要らんやろと思う部分多数。推理する登場人物が皆、能書き薀蓄垂れで勿体つけすぎの感あり。誰にも共感できず、特に悪態つくのが仕事と公言してはばからない警部には怖気が走ります(笑)。画家の名前が出るたびにやらかすボケはまったく笑えず、しばいたろかと思うほど。とはいえ、このボリュームを一応は飽きずに最後まで読ませてくれます。ミステリーとしてはどうなんだと思うものの、エコール・ド・パリについてわかりやすく書かれているところはとても良い。

    「日本人全体がエコール・ド・パリになるべき」、すなわち一人一派となるべきだと。一理あり。

  • エコール・ド・パリとは著者そのもの
     エコール・ド・パリ ー 名前は聞いたことがあっても、明確な定義があるわけではない彼らについて知る人は少ないでしょう。モディリアーニや、シャガールなどの作品は実際見たことがありますが、華やかな印象派の画家たちと比べるとあまり好きな画風ではありませんでした。
     作品についてですが、作中作に当てはまる「呪われた芸術家たち」という美術論を筆頭に、美術ミステリとしてこれ以上ない水準だといえます。反対に、個人的にはフェアだとも巧妙だとも思えない読者を誘導させる例のアレや、よく分からないミスリード、真相諸々、あまり好みでない要素が多かったです。あまりにも浮いている警部の存在もさることながら、オーソドックスに見せかけて一筋縄ではいかない内容です。

  • エコール・ド・パリについて美術の教養の無い私のような読者にも興味深くまた分かった気にさせる絶妙なバランスの作中作の筆致が好きだ。最後まで読み終えて登場人物に嫌いなヤツが一人もいないの、凄いです。

  • 2015年11月30日読了。
    2015年208冊目。

  • 作者のデビュー・・じゃない、2作目か。なんというか、そういう粗削りっぽい感じはするものの非常にまとまりがよく楽しく読めました。美術論みたいなものが間に挟まりそれがちゃんと内容にリンクしていたり逆に示唆していたり、と。そういう分野に疎い自分でも面白く読めました。先日読んだのが「いちいち長々した説明を挟む」一冊だったので対比的な意味でも面白く感じてしまった。

    しかしここから探偵役である神泉寺瞬一郎だったり、破天荒な大癋見警部がスピンオフしていくことを思うと、非常に濃いメンツ揃いのお話だったんだな、ともw

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著者プロフィール

1963年、山形県生まれ。2007年に『ウルチモ・トルッコ』で第36回メフィスト賞を受賞してデビュー。2011年に短篇「人間の尊厳と八〇〇メートル」で、第64回日本推理作家協会賞を受賞。2014年、『最後のトリック』(『ウルチモ・トルッコ』を改題)がベストセラーとなる。2015年刊『ミステリー・アリーナ』で同年の「本格ミステリ・ベスト10」第1位、「このミステリーがすごい!」6位、「週刊文春ミステリーベスト10」4位となる。

「2021年 『虚像のアラベスク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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