レッドゾーン(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062769938

作品紹介・あらすじ

賀一華を先鋒に、次々と仕掛けられる買収策。繰り出される揺さぶりに翻弄され、追いつめられたアカマ自動車は、最後の手段として、ハゲタカ・鷲津が「白馬の騎士」になることを求めた。圧倒的な資金力を誇る中国に乗るか、旧態依然とした日本を守るのか、鷲津が繰り出した一手とは?大人気シリーズ第3作。

感想・レビュー・書評

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  • 感想
    下巻になってもなかなか鷲津の真打登場とはならず、CICとの睨み合いで我慢の時が続く。そんな鷲津も虚無感やイマイチ燃えないなど心情の変化があるところが面白い。そんな彼が本気を出した時こそが勝負所!見逃せない。

    最後の難局も、鷲津が描いた絵図にすっかりハマり、今回も大儲けした。アランの死の真相も分かり、物語としてはひと段落か。こんな取引を毎回してたら身体がもたなそう。

    あらすじ
    賀のTOBで揺れるアカマ自動車は、社長の古屋と副社長の赤間太一郎の争いが激化していた。そんな中、賀は株式の31%の取得を目指して着々と株を買い進めていた。

    鷲津はスイスに飛び、ファンドの資金集めの工作と、北京や上海を訪れて、賀やCICの動きを探っていた。賀に資金不足の噂があることや、CICを裏切って糸の切れたタコのようになっていると推測する。鷲津はホワイトナイトとして登場する機会を伺っていた。

    そんな中、アカマの防衛産業への乗り出しがスクープされ、古屋は賀から辞任を要求される。賀と太一郎が組んだ気配があった。

    芝野は、マジテックの再生をディーゼルエンジンのコア部品にできないか模索し、アカマにアドバイスする代わりにマジテックの社員がアカマの製造工場を見学させてもらう。マジテックの職人はロボットの高度化のためには町工場の技術が活きるのではないかと閃く。

    鷲津はアカマへ乗り込み、今後の方策を伝える。関係者を早急に処分し、副社長の太一郎にも引導を渡す。古屋は社長として残り、毅然と対応する。もしもの時の防衛策に備えて子会社をMBOの上、非上場化して主要技術者を移転させる計画まで立てた。賀はFBIからの指名手配で間も無く排除されたが、一息ついた折にアメリカのKKLの鷲津の師匠のアルがアカマの買収に乗り出すと発表する。

    彼はアメリカの自動車産業を憂い、CICがアメリカ政府に巨額の資金援助をしたことで担ぎ上げられた。鷲津はアメリカに向かい、アルと直接対決に打って出る。

    鷲津はアルとの会談で、絶妙な落とし所を提案し、受け入れられる。その後、このディールの全ての絵図を描いた香港の将英龍と会い、アランの死の真相とディールについてまとめる。

  • ハゲタカ、Ⅱに続き一気に読みました。
    日本の基幹産業のひとつ自動車会社を舞台に日本と中国の買収戦、米国はサブプライムローン問題で社会経済に打撃を受けている最中。ノンフィクションと思い違いするほどの臨場感で著者の取材力と構成力は本当に素晴らしいと思います。

    どのシリーズもスピード感溢れる展開と窮地に追い込まれて繰出される攻防戦にページをめくる手が止まらないのですが、レッドゾーンは中国の計り知れない深謀と鷲津の心理戦、自動車会社の創業一族を守るが故の混乱と苦悩が丁寧に書かれており読了後の満足感が高かったです。今読んでも全く違和感を感じず、20年以上前から中国の世界覇権を予感させる小説と思います。シリーズⅣを読むのが待ち遠しいです。

  • 【感想】
    上巻同様、最高に面白かった!!
    中国の交渉術の鮮やかさや余裕、したたかさは、読んでいて本当に畏敬の念を覚える。(中国人の皆が皆そうではないだろうが。)

    作中の一部分を抜粋。
    「だが、日本は隣国でありながら、常にこの国を蔑ろにし続けている。
    おまけに、アメリカ一辺倒をやめるべきだと薄々気づきながら、一向に変わる様子はない。
    そのツケをいつか払わされるだろう。」

    上巻の感想欄にも書いた、中国を卑下している日本人のこの目線は改めないといけない。
    アメリカ一辺倒どころか、今の日本人は本当に鎖国状態になっているからなぁ・・・

    話は少し逸れたが、、、
    1作品として本当に面白かった!!
    中国人の登場人物が見せる不気味さ、それに振り回されつつラストシーンでちゃっかりとオチをつけたアカマの室長の老獪さ、アランの因縁終着など、「レッドソーン」は本当に最高の作品だ。


    【あらすじ】
    この国に、守る価値が本当にあるのか?
    賀一華(ホーイーファ)を先鋒に、次々と仕掛けられる買収策。
    繰り出される揺さぶりに翻弄され、追いつめられたアカマ自動車は、最後の手段として、ハゲタカ・鷲津が「白馬の騎士(ホワイトナイト)」になることを求めた。
    圧倒的な資金力を誇る中国に乗るか、旧態依然とした日本を守るのか、鷲津が繰り出した一手とは?
    大人気シリーズ第3作。


    【引用】
    p9
    「副社長、外部の人間に坊ちゃんと呼ばれて、そんな顔をするのをやめるまで、いくらでもそう呼ばせてもらいますよ。あなたは交渉のイロハであるポーカーフェイスが、まったく身についていない。」


    p45
    「エンジンの仕組みは、単純に言うと、シリンダーという筒の中で燃料と空気を混ぜた混合気を燃焼させ、その際に出る熱エネルギーでシリンダー内のピストンが動き、クルマが駆動するというものです。」
    シリンダー内でガソリンを含んだ混合気が、圧縮・着火・燃焼した後に運動エネルギーとなる。


    p122
    中国は日欧米と上手に距離を取りながら、新興のロシアやインド、さらにはアフリカなどとの関係も強化している。
    彼らは国として生き残るためのありとあらゆる術を駆使しているように、鷲津には思える。

    だが、日本は隣国でありながら、常にこの国を蔑ろにし続けている。
    おまけに、アメリカ一辺倒をやめるべきだと薄々気づきながら、一向に変わる様子はない。
    そのツケをいつか払わされるだろう。


    p284
    「CIC相手にTOBをまともにやり合えば、勝ち目はありません。」
    「CICの怖さは、経済的合理性を無視した投資を行う点にあります。通常のファンドであれば、買収に際して世界中から資金を調達するのが一般的です。要するに、欲しいからといって湯水のように資金を使えるわけではありません。」
    「ところが、CICにはそんなルールがありません。確実に手に入るなら、CICは金額を惜しみません。」
    「極論を言えばCICの使命は、中国が保有するドルを無駄遣いすることです。なぜなら、下手に大きな利益を上げれば、外貨準備高を増やしてしまうからです。そんなことが続けば、世界中から人民元切り上げの圧力が高まります。それを避けるためには、利益を出してはいけないんです。」

    「どうせ捨てる金なら有効に使え。そういう恐ろしいミッションを、CICは課せられているんです。」


    p386
    「サム。俺が何を訊きたいか、分かってるだろ。」
    「正直言って、私には中国人が理解できません。彼らは日本人よりむしろ欧米人に似ている気もします。しかし、似て非なる部分が多すぎます。」
    「つまり、知れば知るほど、連中は不可解極まるという意味だな。」


    p410
    「人生は後悔の連続だ。それで潰れている暇はないんだ。いいか、英龍、家訓に一つ足しておけ。憎しみからは何も生まれない、とな。アランの復讐なんてしない。アランは女の誘惑に負けて命を落とした。それだけだ。」

  • 日本最大の自動車メーカー、中国の国家ファンド、香港富豪、米国最大のファンドと、壮大な内容にどう落とし前つけるのか、、と思いながら読み進めていましたが、なるほどです。中国国家を巻き込んでこんなに上手く行くのかというのはありますが、相変わらずの期待を裏切らない面白い展開でした。著者の綿密な事前下調べに敬服です。最後のアカマ自動車の社長室長の一言。鷲津さんどうするんだろう??

  • (上下巻合わせてのレビューです。)

    真山さん最新の文庫本。
    実は文庫化が待ちきれなくて、
    映画まで見に行った作品(しかも一人で)。
    予想通りというか期待通り、文句なしの★5つです。

    日本の架空の自動車メーカー(アカマ自動車)をめぐる
    主人公ゴールデンイーグルと中国ファンドの大買収合戦劇。
    中国という国家の大きさや複雑さが物語に表現されていて、
    今まで以上のスケールの物語になっています。

    ハゲタカシリーズもこれで3作目。
    もう続編はないのかなぁ。。
    なかなかこれまで以上の作品を出すのは難しいですが、
    真山さんには頑張ってもらいたいなぁ。。
    (なんて、思っていたら、続編が次々に出ているようです。楽しみ!)

  • 11月-2。3.0点。
    アカマ自動車争奪戦、下巻。スピード感、切れ味は相変わらず。ページを追う毎に速度が速くなる感じ。

  • なんか・・・尻すぼみな感じ
    結末に近づくと『どどどどー』といろんな人と物と利害関係が一気に押し寄せてきて
    意味わかんなーいって感じになっちゃいました
    どこに行ってしまった・・・《マジテック》に芝野建夫
    期待してたのに・・・・・
    存在消滅・・・・・
    中国人の怪し~人たちが入り乱れてきて「誰だっけこの人」
    疲れた仕事帰りの電車の中・・・眠気が押し寄せ意識朦朧の中で読んでいたこの状況
    憶えずらい中国人登場人物たち
    休みの日にゆったり読めばよかった
    http://momokeita.blog.fc2.com/blog-entry-205.htmlより

  • 終盤、説明が冗長でちょっと辟易する箇所もあったがやはり面白い小説だと思った。

  • ラストまで読んで、やっと少し分かった、、、

  • 自己実現欲求を満たした投資家は他己実現に移る様子がわかりやすく描写されていました。金がいくらあっても満たされないんだろうと。

    中国人の成長の仕方は見習うべきことが多々あると思いました。具体的には、躊躇せず行動する点、成功している型を真似る点。

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著者プロフィール

1962年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004年、企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』でデビュー。映像化された「ハゲタカ」シリーズをはじめ、 『売国』『雨に泣いてる』『コラプティオ』「当確師」シリーズ『標的』『シンドローム』『トリガー』『神域』『ロッキード』『墜落』『タングル』など話題作を発表し続けている。

「2023年 『それでも、陽は昇る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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