原発労働記 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770002

作品紹介・あらすじ

「これでは事故が起きないほうが不思議だ」。放射能を浴びながらテイケン(定期点検)に従事する下請け労働者たちの間では、このような会話がよく交わされていた-。美浜、福島第一、敦賀の三つの原子力発電所で、自ら下請けとなって働いた貴重な記録、『原発ジプシー』に加筆修正し27年ぶりに緊急復刊。

感想・レビュー・書評

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  • 『原発ジプシー』のタイトルで1979年に現代書館から出版され(その後講談社文庫化)、20余年を経て、今回の東電福島原発の事故を機に再構成し復刊されたもの。最初に読んだときは大学1,2年生の頃で、先輩から紹介された。こうした世界があるのか、という衝撃を受けたことを覚えている。その後、高校の教員として現代社会の授業で原発を取り上げた際、紹介した本でもある。当時の生徒はこれを覚えていてくれているだろうか。
    この本から浮かび上がってくるのは、「クリーン・エネルギー」という言葉が、いかに原発の労働現場を知らないものがはいている無責任な言葉であり、その労働現場の過酷さと、手配師が労働者を斡旋するという前近代的世界である。
    著者は30歳のころ、原発労働者としてその労働実態を自ら体験し、ルポルタージュとしてまとめた。その後著者は死線をさまようような病気をし、現在も体調がすぐれないということであるが、今回の復刊に当たって作成した一枚のグラフが跋文のところに記されている。そこには、現場で被爆している労働者の圧倒的多数が東電社員ではなく、下請け、孫請けの労働者であるという事実が示されている。
    この期に及んで、原発を肯定的に語ろうとする人は、こうした事実をまっとうな世の出来事として受け入れることができるのか?

  • 2011年刊行。命を懸けた3K職場、福井県美浜原発、福島第一原発、敦賀原発の点検下請業務への潜入レポ(1978年時)。過ぎた無知を痛感。東日本大震災や福島の原発事故に関し自衛隊や警察等の献身的行動を称賛する声は大きく、それ自体は否定しない。が、平時こそ気づかれない貢献が隠れている。本書が暴く不安定就労かつ危険が隠蔽された職場は、給与や就業面では安定している自衛隊等とは全く対照的。電力会社職員とも差別を感じさせる待遇の中、驚く程の低給で原発の管理維持・点検業務の実務に勤しむ彼らに光が当たってもおかしくない。
    「テレビに映ることも、人々に感動を与えることも、称賛されることもなく、コンクリートに囲まれた原子炉内の暗い暑い現場に入り込み、…放射能をその全身に浴びながら、ただひたすら黙々と働く下請け労働者たちがいること…労働者…の被ばく作業無くして原発は決して動かない…との重い現実にも想いを寄せていただければ」とのあとがきに感嘆。なお、低線量放射線付きゴミなどの粉塵を口から吸い、内部被爆の危険に晒されているのは、どのような結果を招くか。データを取ろうとしていない政治・電力会社の不実にも注意。
    言うまでもないが、原発がクリーンかつ低価格であるというのは幻想(特に後者)で、経済的弱者の犠牲、見えないものを見ていないこと(一次二次を問わず、放射性廃棄物の処理方法がないことも含む)に由来するという意を、さらに強くした。

  • 新書文庫

  • 原発へ下請け会社から派遣された労働者の体験を書く.下請けの労働環境が良くない,と言うのはあらゆる大規模事業に言えていることなのか.元請け(電力会社)と下請け職人が受ける被爆検査も元請けのほうが良い設備を使っている(いた?),だとかは衝撃的.「ハイテク」と信じられてきたプラントの周辺設備が,人出に頼った管理で保たれていることが分かる.

  • [ 内容 ]
    「これでは事故が起きないほうが不思議だ」。
    放射能を浴びながらテイケン(定期点検)に従事する下請け労働者たちの間では、このような会話がよく交わされていた―。
    美浜、福島第一、敦賀の三つの原子力発電所で、自ら下請けとなって働いた貴重な記録、『原発ジプシー』に加筆修正し27年ぶりに緊急復刊。

    [ 目次 ]
    1 美浜原子力発電所
    2 福島第一原子力発電所
    3 敦賀原子力発電所

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 30年近く前に書かれた本に加筆修正し、再出版。

    技術の粋を集めた原発を支える労働者の記録。
    著者自らがまさに命がけで見てきた原発の実態。

    技術の最先端であるはずの原子力発電を支える前時代的な労働の実態。約30年後の現在、どの程度そうした労働条件が改善されているのかわからないが・・・。

    まさに「命を削って働く人々」がいて、わたしたちは原子力の恩恵を受けていたのだな。

  • 本書は27年も前のルポルタージュなのだが、著者のあとがきによれば、どうやらその実態は今もさほど変わってはいないようだ。そもそも、土建事業などと同様に、親会社(原電、東電等)から受託された仕事が、子受け、孫受け、ひ孫うけと受け渡されて行き、会社の立場も労働者の立場も、この順序で弱くなっていくという構造だ。また、安全管理に対してのあまりにも事なかれ主義的な姿勢には驚くばかりだ。労働災害もなかったことにされ、公式には「連続〇〇日無事故」となる。自分自身のことを振り返れば、目をつぶって来たことを恥じるしかない。

  • (2013.02.05読了)(2013.01.22購入)
    【2月のテーマ・[原発を読む]その①】
    【東日本大震災関連・その108】
    「原発ジプシー」現代書館、1979年
    「原発ジプシー」講談社文庫、1984年
    「原発ジプシー-被曝下請け労働者の記録-増補改訂版」現代書館、2011.05.31

    「原発ジプシー 増補改訂版」現代書館、を一度、川崎の図書館から借りたのですが、読む前に返却期限が来てしまい返却してしまいました。その後、岩手に引っ越したので、近場の図書館にはなく、読むのを諦めました。
    1月に上京した際、古書店でこの本を見つけたので、大喜びで持ち帰り、読むことが出来ました。この本は、「原発ジプシー」の内、自分の体験部分は、残したけど、仲間の労働者の詳細や彼らが抱くさまざまな心情についての部分はかなり削除してあるとのことです。
    そのぶん薄くて読みやすくなったと言えるでしょう。
    「原発ジプシー」という本の題名から、原子力発電所をあちらこちらと渡り歩く労働者の実態をリポートしたものという風に思っていたのですが、著者が自ら原発労働者として、三つの原子力発電所で働いた手記でした。
    働いた時期は、1978年9月28日から1979年4月19日までです。労働の実態は、今日もあまり変わっていないだろうと思われます。
    堀江さんが働いている期間中の1979年3月28日にスリーマイル島の原発事故が起こっていますが、仲間の原発労働者に動揺はなかったようです。自分たちにも起こりうる事態とは受け止めていなかったということでしょう。
    東日本大震災の際に、福島第一原発の事故の拡大を防ぐために自衛隊員や消防士の活動が報じられましたが、原発労働者たちの日常は、放射線を浴びながら毎日作業しているということですので、その作業の大変さが想像できます。
    著者も作業中に肋骨を折る怪我をしていますが、作業現場での事故という扱いにはしてもらっていません。原発は安全という神話を壊してはいけないのです。そんなことをしたら、もはや仕事をさせてはもらえないのです。本人だけではなく、本人の所属している下請に影響が及ぶのです。
    原子力発電所の設計の酷さが、マスコミ等で指摘されたりしますが、この本でも随所で出てきます。定期点検やメンテナンスのことが考慮された設計がされていないというのです。
    極めつけは、入るための蓋のところに手すりが設置してあって、そのままではあけることが出来ない、というのです。設計者は、出来上がりを想像できないのでしょうか。
    装置とまわりの設計者が別なのでしょうか。
    原発労働者の実態がわかるいい本でした。

    【目次】
    原発へ
    Ⅰ 美浜原子力発電所
     管理区域の外で
    原発内での労働
    Ⅱ 福島第一原子力発電所
     放射線―そして事故
     再びの福島
    Ⅲ 敦賀原子力発電所
    解説  松岡信夫
    跋にかえて  堀江邦夫

    ●何をやっているのか(47頁)
    「高圧給水加熱器」のピン・ホール検査をやったとき、この装置がどのような働きをするものなのかという疑問に、先輩の西野さんや、四年間も原発の作業をしてきた石川さんでさえ、「わからん」と口を濁してしまっていた。
    近代科学の粋を集めたと言われている原発だから、それなりの高度で複雑な構造を持っていることはわかる。だが、自分たちが何をやっているのかもわからぬままで仕事をしていることほど、「おもしろみ」のない労働もない。こんな〝疎外された労働〟だからこそ、石田さんがグチをもらすのではないかと、ふと思った。
    ●怪我したら謝る(65頁)
    「これからは、構内で怪我した人は、電力(関西電力)さんに謝りに行くことになりまして……」
    ●定期点検(80頁)
    「原発の設計には、定検作業が考慮に入れられているのか」
    例えば、定検のたびに蓋を開けなければならないのに、そのための設備はない。それどころか、障害物が設けてある。
    ●基準の変更(119頁)
    作業は、線量の関係でもう従事できないと言われていた「雑固体焼却助勢」。計画線量が当初の10ミリレムから、三倍の30ミリレムに引き上げられたという。実際に浴びた線量が計画線量をオーバーしかけると、その労働者を作業から外すのではなく、逆に、計画線量のほうを上げてしまう……。所詮、「計画線量」とは、この程度のものでしかないのだろう。
    ●気分が悪くて(140頁)
    両脇から仲間に抱きかかえられるようにして、服を着替える場所にたどり着く。立っているのがやっとだ。放管がガムテープをはがし始める。思うように取れない。「早くしろ!」と叫びたいのを、必死の思いで押し殺す。マスクが外れた。その瞬間、汗が一度に吹き出すのを覚えた。下着までびっしょりだ。思わずその場にへたり込んでしまう。そして幾度となく深呼吸。ここは言うまでもなく原発内部だ。まわりには放射性物質が浮遊している。
    ●注意するように(211頁)
    ポケット線量計は、わずかな衝撃を与えただけで、針が振り切れてしまう。通過衣や下着には、それを防止するための収納ポケットはついていない。洗面の場所にも、線量計を置けるような棚は設けられていない。どうしても、胸元でぶらぶらさせてしまう。そして、ちょっとしたはずみで物にぶつけ、振りきってしまう。放管は私達に「取り扱いに注意するように」というが、これは責任転嫁だ。
    ●左肋骨骨折(224頁)
    安全責任者「労災扱いにすると、労働基準監督署の立ち入り調査があるでしょ。そうすると東電に事故のあったことがばれてしまうんですよ。……ちょっとまずいんだよ。それで、まあ、治療費は全額会社で負担するし、休業中の日当も面倒見ます。……だから、それで勘弁してもらいたいんだけど、ねえ」
    ●『雇入れ時における安全教育調査票』(240頁)
    氏名・現住所・家族構成・免許・健康状態などの各欄が週刊誌大の用紙にびっしり埋まっている。
    そのなかに以下の三つの質問事項が
    〈原子力の安全性〉一、安全と思う 二、わからない
    〈原子力発電所の必要性〉一、作った方が良い 二、わからない
    〈原子力発電所は地域に有益か〉一、有益と思う 二、わからない
    これらの質問は、明らかに「思想調査」だ。
    ●アラーム・メーター(248頁)
    木村さんが「IHI」の下請け労働者として福島原発で働いていた時のことだ。そこの労働者たちは、現場に着くとポケット線量計やアラーム・メーターなどをゴム手袋に詰め、それをバリア(木製の箱)の下に隠してから作業に取り掛かっていた。50ミリレムのアラーム・メーターが10分でパンクするような高線量エリアで、一時間から二時間の作業。

    ☆関連図書(既読)
    「私たちにとって原子力は・・・」むつ市奥内小学校二股分校、朔人社、1975.08.03
    「食卓にあがった死の灰」高木仁三郎・渡辺美紀子著、講談社現代新書、1990.02.20
    「チェルノブイリ報告」広河隆一著、岩波新書、1991.04.19
    「私のエネルギー論」池内了著、文春新書、2000.11.20
    「ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間」菅谷昭著、ポプラ社、2001.05.
    「原発と日本の未来」吉岡斉著、岩波ブックレット、2011.02.08
    「緊急解説!福島第一原発事故と放射線」水野倫之・山崎淑行・藤原淳登著、NHK出版新書、2011.06.10
    「津波と原発」佐野眞一著、講談社、2011.06.18
    「原発社会からの離脱」宮台真司・飯田哲也著、講談社現代新書、2011.06.20
    「福島 原発と人びと」広河隆一著、岩波新書、2011.08.19
    「福島の原発事故をめぐって」山本義隆著、みすず書房、2011.08.25
    「福島第一原発潜入記」山岡俊介著、双葉社、2011.10.02
    「災害論-安全性工学への疑問-」加藤尚武著、世界思想社、2011.11.10
    「さくら」馬場国敏作・江頭路子絵、金の星社、2011.12.
    「日本人は原発とどうつきあうべきか」田原総一朗著、PHP研究所、2012.01.12
    「官邸から見た原発事故の真実」田坂広志著、光文社新書、2012.01.20
    「見捨てられた命を救え!」星広志著、社会批評社、2012.02.05
    「ふたたびの春に」和合亮一著、祥伝社、2012.03.10
    「飯舘村は負けない」千葉悦子・松野光伸著、岩波新書、2012.03.22
    「これから100年放射能と付き合うために」菅谷昭著、亜紀書房、2012.03.30
    「闘う市長」桜井勝延・開沼博著、徳間書店、2012.03.31
    「おいで、一緒に行こう」森絵都著、文芸春秋、2012.04.20
    (2013年2月8日・記)
    (「BOOK」データベースより)
    「これでは事故が起きないほうが不思議だ」。放射能を浴びながらテイケン(定期点検)に従事する下請け労働者たちの間では、このような会話がよく交わされていた―。美浜、福島第一、敦賀の三つの原子力発電所で、自ら下請けとなって働いた貴重な記録、『原発ジプシー』に加筆修正し27年ぶりに緊急復刊。

  • 真面目に読むには面白過ぎる。

  • 今まで読んだ原発本の中で読んで一番恐ろしかった本です。
    3分の1程度読んだあたりでまず読むのがイヤになり、半分くらい読んだところで気分が悪くなりましたが、頑張って読みました。
    これは30年前の原発でおこっていたことですが、いまでも原発の作業員の方が同じような過酷な労働をさせられていたり、くだらない差別を受けているのだとしたら原発は即刻廃炉にするべきだと思います。
    でも廃炉にしたところでその廃炉作業をするのにまた被爆してしまう人が出るのだとしたら‥‥。
    この本を読んで以降なんだか電気を使うのがとても申し訳ないような気がしてしまいます。

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