原発労働記 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770002

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  • 原子力発電所は、日雇い労働者の(大量?)被爆に支えられていた。
    原発の是非についての議論は、「絶対安全」という神話を前提になされているとするならば、その前提そのものを揺るがすショッキングな内容だ。
    無知は罪だと思った。

  • 福島第一原発の事故を受けて
    27年ぶりに緊急復刊されたノンフィクション。
    美浜、福島第一、敦賀の三つの原子力発電所で、
    自ら下請けとなって働いた貴重な記録。

    まず、原発で働く人たち、下請け孫請けの労働者たちが、
    いかに過酷な環境での仕事を強いられているかに驚く。
    およそ30年前の記録だが、福島第一原発事故の報道からすると
    今も基本的には変わっていないということだろう。
    放射線の管理がとにかくずさん。

    そして、科学知識が結集されている”はず”の原発だが、
    実際には専門知識のない人たちが放射線にさらされながら
    肉体労働をしないと動かない設計になっていることに再び驚く。
    電力会社社員とその他の「協力会社」の労働者の間には
    被曝量の圧倒的な格差があるという。

    福島第一原発事故は収束するのか?
    工程表通りに進むのか?
    そこに世界が注目しているが、そこには
    コンクリートに囲まれた原子炉内の現場にはいりこみ放射線を
    全身に浴びながら、ひたすら働く下請け労働者がいること、
    こうした労働者たちの被曝しながらの作業なくては原発は
    動かないし、原発事故は収束しないという重い現実を
    突きつけられる。

  • 筆者が1978年から1979年にかけて、美浜原発、福島第一原発、敦賀原発で実際に原子力発電所内で働いていた事実や体験を元にしたためたルポルタージュ。初期に「原発ジプシー」として表した著作を加筆修正して新たなタイトルとして出版されたものです。

    昨今、原発労働についての実態、特に下請け孫請けに代表されるが問題にされているなかで、どのような作業を行っているのかを知る貴重な資料となっています。

    原発が危険であるとか、経済性の指摘など、いろいろと論点がある中、原子力発電所で働くことの安全管理や意識改革は、今に至るまで改善されることが無かったのではないかと判断せざるをえない内容です。

    個人的には人の安全を軽視するようなスタンスが一番哀しく思い、また憤りを感じます。そのなかで実際に働いている方々の実態を知るということは、その方々をひっくるめて、問題を考えて行動するための欠かせない一冊と考えます。

    最後に跋(ばつ)に変えて、というあとがきで、地震に対するお見舞いの気持ちともともに、事故に対する見解をするすとともに、そこで陽に暗に働く人たちへの思いもつたわってきます。ほんの少しだけ触れられている筆者自身の健康状態も気がかりでなりません。

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