彼女のこんだて帖 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 266
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770194

作品紹介・あらすじ

長く付き合った男と別れた。だから私は作る。私だけのために、肉汁たっぷりのラムステーキを!仕事で多忙の母親特製かぼちゃの宝蒸し、特効薬になった驚きのピザ、離婚回避のミートボールシチュウ-舌にも胃袋にも美味しい料理は、幸せを生み、人をつなぐ。レシピつき連作短編小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 「おふくろの味、というものを私は信じていない。」
    まさか本編ではなく、こんなクールな一行で始まるあとがきにこれほど泣かされるなんて。
    今は亡きお母様と料理の思い出を飾り気のない言葉で綴った角田光代さんの静かなのに溢れる思いの丈に、自然と涙がこぼれた。

    本編は料理にまつわる15帖からなるオムニバス小説兼レシピ集。
    四年間付き合った彼氏にフラれた女性が自分を奮い立たせるために作るラム肉のハーブ焼き。
    亡き妻の味を求めて料理教室に通った中年男性がようやくたどり着いた豚柳川。
    人目を気にせず好きなものを食べられる時間を謳歌する女性がつくるタイ料理。
    拒食症の妹を心配した青年が作ったピザ…。

    一編一編はとても短くてサラリとしているのだけど、料理をするということは、ただ単に食べるための支度というのではなく、自分の気持ちや誰かへの思いに向き合ったり、大切な記憶といった、個々人の人生に関わるものでもあるんだなあ、ということを、思い起こさせてくれる。

    そして、最後の〆は角田さんの思いが伝わる、あとがき。

    「どんなにかなしいことがあっても、日々は続いていく。日々が続いていくかぎり、私たちはごはんを食べなくてはならない。」
    「けれど私の個人的体験では、料理というものは、手間を超えた何かだった。食べることを超えた何かだった。」

    端的で静かなのに、どの言葉もとても胸に染みる。
    いつか、私も角田さんが体験した、さびしさと再生を体験するんだろうな、としみじみ思った。
    そして、年末には是非とも、母がお手製のつみれの味噌汁を食べたいとも思った。

    寂しい気持ちと優しい気持ちが一緒に胸に押し寄せてくるけど、なんだか少し元気になれるというか、心落ち着く作品集でした。

  • 前に同じ角田光代さんの料理エッセイ「今日もごちそうさまでした」を読んだ時に、これも面白いと薦めていただいた小説。
    まずぱらぱら捲ってみてびっくり。本編は4分の3くらいで、残りの4分の1は小説に出てくる料理のレシピ集(しかも写真つき!)になっているつくり。
    そして最後に角田さんのエッセイ的あとがきで締められていて、一粒で三度美味しい、初めて見るつくりの本でした。

    生きている限り、食べる、という行為は絶対に切り離せない。
    精神的、身体的な理由で食欲がわかない日もあるけれど、食べないでは生きていかれない。食に対するこだわりの有無は人それぞれあれど。
    たまには奮発して美味しいものを食べに出掛けよう、という日もあれば、面倒だから出来合いのもので済ませよう、という日もある。
    だけど毎日何かしらは口にしていて、それは人間の日常だ。

    この小説は、普通の人々の日常の中にある様々な料理を描いているのだけど、なぜかとてもスペシャル感がある。
    失恋したから食べるごはん、亡き妻の味を思い出しながら作るごはん、カップルのごはん、受験生のごはん、長年連れ添う夫婦のごはん…
    一編はごく短くさらっと読めるけれど、ゆるやかな愛情に満ちている。
    そして一話目の脇役が二話目の主役になり、二話目の脇役が三話目の主役になり、という形の連作になっている。最終話の仕掛けも良かった。

    温かく、そして少し切ない気分に。
    角田さんのあとがきを読んでいて、今は当たり前に食べている母親の料理もいつかは食べられなくなる日が来るのだ、と改めて実感。
    たまにしか食べられなかった時は有り難みがすごくあったのに、それが日常に溶けてしまうのはとても恐ろしい。
    それは夫婦なんかでもきっと同じで、作ってもらえることは当たり前ではないということを、頭の片隅にでもいいから置いておければ感謝の度合いは違ってくるのだと思う。

    作ってみたいレシピもいくつかあった。
    何より読んでいてお腹が空いた。笑
    食べ物を美味しく食べられるって素晴らしい。そんなことをしみじみ思った。

  • *「美味しい」は、心も体も恋(しあわせ)も育てる。男と別れた自分に作る肉汁たっぷりのラムステーキ、仕事で多忙の母親特製かぼちゃの宝蒸し、特効薬になった驚きのピザ、離婚回避のミートボールシチュウ――舌にも胃袋にも美味しい料理は、幸せを生み、人をつなぐ。レシピつき連作短編小説集*

    こころからほわりと優しい湯気が立つような、とても素敵な連絡短編集。それぞれのメニューの描写も温かく、一つ一つの物語がほろりと心に響きます。何気ない毎日の料理に彩られた時間を大切にしたいと思わせてくれる、珠玉の1冊。

  • 食の大切さを改めて感じられるとっても良い本でした。
    ご飯食べられるってなんてすばらしいことなんでしょう。
    毎日ごはんを作る人も、毎日ごはんを誰かが作ってくれてなにもしなくても自動で食卓にご飯が並べられる人も、読んでくれたら食べることがいかに幸せなことかわかるんじゃないかなあと思います。
    とにかく食の大切さに触れると、涙が止まらんくて、ほとんどのお話を泣きながら読んどった・・・

    個人的に好きなお話は、
    かぼちゃの宝蒸し、豚柳川、ピザ、うどん、マツタケごはん。
    全部好きやけどね。
    母親、奥さん、旦那さん、兄弟、子供っていう家族の大切さとか、マツタケごはんにおいてはお金と働くことの大切さも感じ取れた。

    レシピ付きなので、豚柳川(なんて読むんかわからんけど)食べたいと思います。

  • とても心地良い短編小説。
    「料理」がテーマの短編で
    途中で気がついた。

    これらの主人公が、実は繋がってた!!と。。

    気づいてから、興味深く
    遡って、相関図をアタマに描きながら
    また読んだ。。

    そして、そこに出てくるエピソードの料理が
    後ろのページに、レシピ付きで
    写真が載っているのだ!

    これは、たまらん。
    うまそーーーーー!!!!


    料理というのは、
    ぽん。と、そこに出てくるものでは
    決してないのだ。
    という、角田さんの料理への愛情も感じられる。

    そして、何より、その1つ1つのストーリーの
    短い中の、凝縮された、濃い濃いメッセージが
    素晴らしい!!

    失恋は、失ってなどなく
    たくさんのものを得ていたのだ!。とか。

    感動の1冊だった。

    • 円軌道の外さん

      レビュー上手いですね(笑)

      角田さんの書く文章が好きだし、
      料理を扱った小説に目がないし、

      読ませてもらったレビューが
      ...

      レビュー上手いですね(笑)

      角田さんの書く文章が好きだし、
      料理を扱った小説に目がないし、

      読ませてもらったレビューが
      生き生きとして素晴らしかったので
      是非読んでみたいって思いました(^_^)


      2012/03/05
  • 食べなくちゃ生きていけない。
    だれでも、どんなときでも。
    この本は食べることより
    料理することをメインに物語が組み立てられている。
    そういうと、レシピがメインみたいに聞こえるかもしれないけど、そうではなくて
    その料理を作るまでの背景だったり、
    人びとの思いがきちんと描かれている。
    短編集なんだけど、前の物語の脇役が次の主人公になっているリレー形式で、これまた引き込まれる。途中から次はこの人が主人公か?と予測しながら読むのも楽しかった。
    特に好きだったのが、
    4,5,7,8回目のごはん
    巻末にレシピもちゃんとついてるという
    なんとも嬉しい一冊。

  • 日常の料理にまつわるちょっといい話。1話目の脇役が2話目の主役になるという具合に、登場人物がリレーのように繋がる仕掛けも読んでいて楽しい。
    出てくる料理も美味しそうなものばかり。今夜はちょっとキッチンに立とうかな、そして食べてくれる人の反応を見たくなる小説である。勿論、レシピは巻末で。

  • 本屋に平積みされていたので、さぞ面白いのだろうと買ったのですが、そうでもなくてがっかりでした。料理が好きなので料理を題材にした作品が好きなのですが、この本の中では料理は出てくるけれどそれについての描写が少なく、その料理である必要性がストーリーの中にも感じられませんでした。短編連作な中で料理を一応メインにおいているせいか単調な話が続き、特に山場があるわけでもなかったので、本を読んで得られる体験というものが私にはなかったです。

  • すごくシンプル。ストーリーも言葉も構成もシンプル。でもなんか心に残る

  • はい。食欲の秋に買った本ですね
    短編でどれも美味しそうだし面白いんだけど
    特に「食卓旅行 タイ篇」が良かったな。
    あっ美味しそうだったという事。
    ・・・でこの本3/4位で終わったと思ったら後ろに
    物語に出て来た料理のレシピ付いてた~ニコちゃん
    しかもカラーで!これは嬉しい。

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著者プロフィール

角田光代(かくた みつよ)
1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
1990年、「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。受賞歴として、1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞を皮切りに、2005年『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で第22回伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で第25回柴田錬三郎賞、同年『かなたの子』で第40回泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で第2回河合隼雄物語賞をそれぞれ受賞している。
現在、小説現代長編新人賞、すばる文学賞、山本周五郎賞、川端康成文学賞、松本清張賞の選考委員を務める。
代表作に『キッドナップ・ツアー』、『対岸の彼女』、『八日目の蝉』、『紙の月』がある。メディア化作も数多い。西原理恵子の自宅で生まれた猫、「トト」との日記ブログ、「トトほほ日記」が人気。

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