彼女のこんだて帖 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2986
感想 : 333
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770194

作品紹介・あらすじ

長く付き合った男と別れた。だから私は作る。私だけのために、肉汁たっぷりのラムステーキを!仕事で多忙の母親特製かぼちゃの宝蒸し、特効薬になった驚きのピザ、離婚回避のミートボールシチュウ-舌にも胃袋にも美味しい料理は、幸せを生み、人をつなぐ。レシピつき連作短編小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 1話ごとに主人公が代わり、各エピソードは必ず手料理を中心に展開し、ほっこりと穏やかな結論で終わる15の短編集。

    第一話でも、第一章でもなく、"○回目のごはん"という章だてになっていて、最後には各回で出てきたメニューのレシピが載っているのも面白いが、元々は"ベターホーム"に連載されていたとのことで納得。

    個人的には、4回目のごはんの話がよかった。
    シングルマザーでずっと忙しく働いていたため、息子に手料理を作る余裕もなかったと嘆く桃子に、息子の彼女から、彼の好きなメニューの作り方を尋ねる電話があり、息子の誕生日の度に作っていた"かぼちゃのお宝料理"を今でも彼が好きだと知って、心満たされる。

    他にも、働く母が、忙しい中でも毎日料理をしてくれていたことに、大人になってから気づく、といった話が出てくるが、自分も改めて母に感謝したくなった。

  • 「おふくろの味、というものを私は信じていない。」
    まさか本編ではなく、こんなクールな一行で始まるあとがきにこれほど泣かされるなんて。
    今は亡きお母様と料理の思い出を飾り気のない言葉で綴った角田光代さんの静かなのに溢れる思いの丈に、自然と涙がこぼれた。

    本編は料理にまつわる15帖からなるオムニバス小説兼レシピ集。
    四年間付き合った彼氏にフラれた女性が自分を奮い立たせるために作るラム肉のハーブ焼き。
    亡き妻の味を求めて料理教室に通った中年男性がようやくたどり着いた豚柳川。
    人目を気にせず好きなものを食べられる時間を謳歌する女性がつくるタイ料理。
    拒食症の妹を心配した青年が作ったピザ…。

    一編一編はとても短くてサラリとしているのだけど、料理をするということは、ただ単に食べるための支度というのではなく、自分の気持ちや誰かへの思いに向き合ったり、大切な記憶といった、個々人の人生に関わるものでもあるんだなあ、ということを、思い起こさせてくれる。

    そして、最後の〆は角田さんの思いが伝わる、あとがき。

    「どんなにかなしいことがあっても、日々は続いていく。日々が続いていくかぎり、私たちはごはんを食べなくてはならない。」
    「けれど私の個人的体験では、料理というものは、手間を超えた何かだった。食べることを超えた何かだった。」

    端的で静かなのに、どの言葉もとても胸に染みる。
    いつか、私も角田さんが体験した、さびしさと再生を体験するんだろうな、としみじみ思った。
    そして、年末には是非とも、母がお手製のつみれの味噌汁を食べたいとも思った。

    寂しい気持ちと優しい気持ちが一緒に胸に押し寄せてくるけど、なんだか少し元気になれるというか、心落ち着く作品集でした。

  • 前に同じ角田光代さんの料理エッセイ「今日もごちそうさまでした」を読んだ時に、これも面白いと薦めていただいた小説。
    まずぱらぱら捲ってみてびっくり。本編は4分の3くらいで、残りの4分の1は小説に出てくる料理のレシピ集(しかも写真つき!)になっているつくり。
    そして最後に角田さんのエッセイ的あとがきで締められていて、一粒で三度美味しい、初めて見るつくりの本でした。

    生きている限り、食べる、という行為は絶対に切り離せない。
    精神的、身体的な理由で食欲がわかない日もあるけれど、食べないでは生きていかれない。食に対するこだわりの有無は人それぞれあれど。
    たまには奮発して美味しいものを食べに出掛けよう、という日もあれば、面倒だから出来合いのもので済ませよう、という日もある。
    だけど毎日何かしらは口にしていて、それは人間の日常だ。

    この小説は、普通の人々の日常の中にある様々な料理を描いているのだけど、なぜかとてもスペシャル感がある。
    失恋したから食べるごはん、亡き妻の味を思い出しながら作るごはん、カップルのごはん、受験生のごはん、長年連れ添う夫婦のごはん…
    一編はごく短くさらっと読めるけれど、ゆるやかな愛情に満ちている。
    そして一話目の脇役が二話目の主役になり、二話目の脇役が三話目の主役になり、という形の連作になっている。最終話の仕掛けも良かった。

    温かく、そして少し切ない気分に。
    角田さんのあとがきを読んでいて、今は当たり前に食べている母親の料理もいつかは食べられなくなる日が来るのだ、と改めて実感。
    たまにしか食べられなかった時は有り難みがすごくあったのに、それが日常に溶けてしまうのはとても恐ろしい。
    それは夫婦なんかでもきっと同じで、作ってもらえることは当たり前ではないということを、頭の片隅にでもいいから置いておければ感謝の度合いは違ってくるのだと思う。

    作ってみたいレシピもいくつかあった。
    何より読んでいてお腹が空いた。笑
    食べ物を美味しく食べられるって素晴らしい。そんなことをしみじみ思った。

  • 料理が出てくる連作短篇集って言ったらそれまでだけど、ぎゅっと日常のあれこれが詰まった作品だと思う。
    料理苦手だから巻末のレシピは挑戦しないかな…

  • 主人公がそれぞれに料理やお菓子を作り、味わう15篇の短編集に、物語に登場した料理のレシピがついた一冊。


    角田光代さんの作品は、これまで読んだのは長編ばかりで内容も重めだったので、この一冊で印象が変わった。
    ひとつの物語は8〜9ページ。
    その中にちらりと顔を出す人物が、次の物語の主人公として登場してつながってゆき、最後の物語で第一話の物語の主人公のその後につながり、ホッとしてページを閉じる…

    …んじゃなくて、そのままレシピページに。
    ここがカラー写真入りだから、紙が分厚いのかな?

    明日の自分の体は、今日自分の食べたもので出来ている。
    「いただきます」は、「その命をいただきます」を簡単に言った言葉。
    などなど、食べることの大切さを説いた言葉にはたくさん出会ってるのに、限られた一生の食事のうちのこの一回を、インスタントやコンビニ食で済ませてしまっている現実。
    ありゃりゃ、なんてもったいない。

    一冊の文庫本としてはあっという間に読み終わってしまうけれど、この週末には何か美味しい料理を食べたい、作りたい、と思わされる。

    ま、でもとにかく、健康に感謝して、何でも美味しく食べることにしましょう。

  • それぞれの、こんだてにまつわるお話。一人ずつ前作に登場してた人を次の話の主人公にする書き方も良い。料理とは。食べるとは。単に「食事のメニュー」じゃなくて「献立」と言うと、生活の中のって感じがして、お話も一人で食べようが誰かと食べようがあくまで「生活の中の食事」で、それが良かった。我が家も母親が料理が好きだしあれこれ作ってくれるのを何にも頓着せず食べてたなあ。干物のお話好き。

  • 食べるって良いな。手作りって良いな。
    丁寧に料理をして、堪能する。どんな高級料理にも勝るとも劣らない、そして何よりドラマがある。

    どんな物語にも主人公がいるが、視点を変えればみんなが主人公。誰もが人生の主役。

    情緒豊かな作品。心が満たされてお腹が空いた。


  • 人生のうちで誰しも作る料理と、それにまつわるその人の特別なストーリーが心に残った。
    私も何かあったら特別な料理を作りたい
    この本は大事にする

  • 付き合っていた彼と別れた、母が作ってくれた思い出の味、旅行先で食べた料理。

    様々な時に食べる料理。感じ方は人それぞれではあるが、その時の思い出とともに残る味ってあるのではなかろうか。

    僕だったら何かな。大学生の時。大学の近くにあったカレー屋で食べたカレーかな。

    登場人物に直接のかかわりはなにのだけれど間接的にはつながっている。そういうことってきっと多いんだろうなと思う

  • *「美味しい」は、心も体も恋(しあわせ)も育てる。男と別れた自分に作る肉汁たっぷりのラムステーキ、仕事で多忙の母親特製かぼちゃの宝蒸し、特効薬になった驚きのピザ、離婚回避のミートボールシチュウ――舌にも胃袋にも美味しい料理は、幸せを生み、人をつなぐ。レシピつき連作短編小説集*

    こころからほわりと優しい湯気が立つような、とても素敵な連絡短編集。それぞれのメニューの描写も温かく、一つ一つの物語がほろりと心に響きます。何気ない毎日の料理に彩られた時間を大切にしたいと思わせてくれる、珠玉の1冊。

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著者プロフィール

1967年生まれ。90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。著書に『対岸の彼女』(直木賞)、『八日目の蝉』(中央公論文芸賞)など。『源氏物語』の現代語訳で読売文学賞受賞。

「2022年 『にごりえ 現代語訳・樋口一葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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