- Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062770255
作品紹介・あらすじ
明治初頭、長崎港外の深堀に士族の娘として生まれた蝶は、父の形見の『学問のすゝめ』を読んで育つ。かくれキリシタンの少女ユリとも仲良しになり、文明開化の夢がふくらむものの、コレラの流行で母と祖母を失って運命は一変。小学校を卒業すると同時に丸山遊郭「水月楼」の女将の養女となって長崎へ-。「蝶々夫人」の真実の物語。
感想・レビュー・書評
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オペラで不思議に感じていたことが実はこういうことかと認識できました。日本人だから、アメリカ人だから、そう考えるのねーと。
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「蝶々夫人」は実在した、という前提で掘り下げられた小説です。ドラマ「おしん」的不幸の物語にならないのは、当時の長崎の描写に相当力を入れていることと、蝶々さん自身が本当にひどい目にあったとは思ってないからかもしれません。主人公は蝶々さん個人ではなく長崎という町そのものかも。元々外交の要所として発展してきて、さまざまな国や文化を受け入れ独自の空気を作り上げてきた場所。多様性を認め、時には翻弄されながらも個のあり方を確立してきた歴史。それを蝶々さんという一人の人間として描いているように感じました。
蝶々さんに関する歴史的な資料があるわけではないので、話の展開や人間関係には首をかしげることもありました。木原くんはそんなに蝶々さんのことを知ってる訳ではないと思うし、「あれは蝶々さんじゃない、蝶々さんに申し訳ない」というなら伊作の方が適任ではないかと。あの話に出てくる蝶々さんなら、アメリカへ渡るのにもっと賢い道を選ぶこともできたと思うし…。そういうところが小説の醍醐味だと言われてしまえばそれまでですが。 -
やはり時代小説なだけあって始めの導入部はややかたい。蝶々さんの身にふりかかる幸運と不運。不運の出来事が目立つものの私は蝶々さんの出逢い運は凄いものだと思う。いつの時代も人生は出逢いによって変わるのかもしれないと思った。下巻早く読み始めたい!!
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市川森一は、たまたまDVDで『淋しいのはお前だけじゃない』(1982年放送のTVドラマ)を見て以来、とても気になる作家になった人で、今夜(2011年11月19日)のNHKで放送のドラマ『蝶々さん 最後の武士の娘』の原作が本書ですが、はたして時代に翻弄された薄幸の女性・蝶々夫人こと伊東蝶を、宮崎あおいがどう演じるのか、今からドキドキしているところです。
TVドラマ出演としては『篤姫』以来3年ぶりですが、あの時の興奮は細部にわたってすぐ思い出せると同時に、まったくあきれるほどの彼女のみごとな名演は、本筋のストーリーを満足して見ること以上に、私の眼と心にカタルシスを与えてもらったのでした。
たしかに『純情キラリ』(NHK朝ドラ・2006年)よりも、またはるかに進化(深化!)した彼女でしたが、3年という時間を経て、いったいどこまで遠く行ってしまっているのか、ワクワクしています。
先だって放送されたメイキング番組で、脚本も手がけた市川森一が、書いているときの蝶々のイメージに、宮崎あおいを抱いて、期待に胸を膨らませて大変だったと告白していました。特に、台詞がないときの無言の状態の彼女の演技は絶品で、沈黙のときに彼女のような、その人物が醸し出す具体性を創造できる俳優は、他に誰もいないみたいなことも言っていた気がしますが、これは私の思い入れが過ぎた感想なのか、今となっては定かではありません。 -
難しかった。けど面白い。
いつも現実を受け入れる蝶々さんの姿に圧倒される。
下巻も買ってこよう。 -
蝶々夫人、なんてタイトルくらいで内容もよく知らない。だからあの蝶々夫人が実在していた!と帯にうたわれていてもへぇぇくらいだった。
それでも夢中になった。
貧しくてどちらかといえば恵まれない人生を生きたお蝶の“美しい生き方”に魅せられ、顛末のわかっている物語なのにつんのめるように先へ先へ読み進め、今し方すべてを読み終えた。
長崎の情景がすばらしく、憧れが増した。
今度はお蝶の生きた跡を探そう。