IP/NN 阿部和重傑作集 (講談社文庫)

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レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770408

感想・レビュー・書評

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  • 別の出版社のを前に読んだけど再読するつもりで購入。

  • 阿部和重傑作集。
    「インディヴィジュアル・プロジェクション」。
    渋谷の映画館で映写技師として働くフリーターのオヌマ。日々身体を鍛えている。彼には特殊な過去がある。かつて故郷のスパイ塾でスパイの訓練を受け、ヤクザの組長を拉致しプルトニウムを強奪したことがある。しかし、いまは強奪したプルトニウムを巡って元塾生たちとヤクザの復讐から命を狙われている(ということらしいが・・・)。
    日記形式で綴られるオヌマの日常と過去はどこまで妄想で、全てがオヌマの想像と解釈も可能でどこまで現実なのか分からない。おそらく全て脳内の話ではないか、とさえ思えてくる。読み切ると身体感覚の希薄な時代と情報の渦のなかで暮らす危うさが浮き上がる。ただの偶然を必然と感じ、あらゆることに過剰な意味付けを行って、敵を推測し勝手に怯え不安になる。確かなものは何もない。だからこそひたすら身体を鍛え、鍛え上げた身体性のみが生存の拠り所になった卑小な存在としてのオヌマの姿は、いまの時代ほど身に刺さる。

    「ニッポニアニッポン」はこういう少年が実際に存在しそうで怖い。というかいるわな・・。自意識の歪みと思い込みが醜悪を超えてもはや可哀想。初恋相手にフラれストーカーとなり、地元から放擲されたニートで童貞の鴇谷春生。名字に鴇の字を含む彼は特別天然記念物トキ(学名:ニッポニアニッポン)の境遇に共感を覚えネットでトキに関するあらゆる情報を徹底的に調べ自分と重ねる。が、繁殖のため交尾するトキの姿に激怒しトキを殺そうと決意する。ネットで武器を購入し入念に計画を練り、佐渡トキ保護センターへ向かう。


    どちらも好みの小説ではない。それなのに最後まで頁を繰る手が止まらなかった。こじらせた馬鹿男の妄想話として一笑に付すこともできる。が、人間に大なり小なり備わった承認欲求と自己顕示欲を過剰に肥大化させ、歪んだ自意識を持て余す青少年の物語は、鏡で若い頃の自分の内の最も醜いものを見せつけられた気分で、どうも寝覚めが悪い。

  • なんだか不思議な読後感。体調が悪かったのもあるかもしれんが、特にIPの方は読んだあと暫く現実感を失った。しかし、最後まで意味わからんかった。
    IPもNNもスタイリッシュ?といえばそうだが、壮大な中二病とも言える。

  • 個人的にIPが星3つ、NNが星4つ半ぐらいかな。やー面白かったです、ニッポニアニッポン。主人公のぶっとび具合がもう、一周回ってアホ可愛く思えてしまいます。勝手にトキを守ろうと決めたくせに、トキの交尾に逆ギレしてるあたりが笑える。

  • 「ぼく」という幻想。

    この本は『インディヴィジュアル・ブロジェクション』と
    『ニッポニアニッポン』という
    阿部の代表作を1冊にまとめたものである。

    感じたのは人称の問題だ。

    それは「ぼく」という幻想のありかを
    突き詰めていくことになる。

    1作目のは主人公は自分をスパイだと思う映写技師だ。
    「ぼく」という一人称で書かれることで、
    本当にスパイなのか、
    身の回りに危機が迫っているのかどうかが
    曖昧なままで物語は進んでいく。

    「ぼく」の実は平凡な日常が
    Гスパイ行為」というフィルターを通すと、
    非日常へ様変わりしていく。

    本当の「ぼく」は何なのか?
    存在自体が揺らいでいく。
    これは今を生きる「ぼくたち」の
    不在証明のようにも思えてくる。

    もう1作は、トキを逃がそうとする「春生」の物語だ。
    トキは学名ニッポニアニッポンであり、
    まさに日本を解放するという比喩である。
    その物語が3人称で書かれることで、
    行動の滑稽さが立ち上がってくる。
    これもまた「ぼくたち」のもうひとつの姿に思える。
    日本の今という現実に閉じ込められて、
    「ぼくたち」は歪んでいないだろうか?

    「ぼく」という存在の
    幻想を暴く1冊だ。

  • 自分が特別だと思いこみたいがために特別なことをしようとするんだけど所詮は平凡な青年。
    なんだろうな。この鼻持ちならない感じが身に覚えがあるだけに余計に嫌悪感を覚える。
    好きか嫌いか未だによくわからないけど、間違いなくこの人の本が一番ぞわぞわっとさせられる

    • ミツさん
      ぞわぞわっとさせられる、大いにわかります。
      ぞわぞわっとさせられる、大いにわかります。
      2012/04/28
  • ニッポニアニッポンがめちゃくちゃ面白かった。インディヴィジュアル・プロジェクションはいまいち掴めないというか・・・。あのラストあたりからの急激な展開はかなり読む者をソワソワさせるけど笑。

  • 本書は、もともと新潮文庫で刊行された「インディヴィジュアル・プロジェクション」と「ニッポニアニッポン」を纏めたもの。

    「インディヴィジュアル・プロジェクション」は、スパイ養成学校出身である主人公オヌマの日記を通して、プルトニウム爆弾やそれにまつわる撮影フィルムを巡るヤクザとの攻防が書かれている。
    日記は人の主観によって書かれているもの。それは、オヌマであっても同じことで、なんとも後味の悪い結末だった。

    「ニッポニアニッポン」は、主人公である17歳の引きこもりの童貞、鴇谷春生が自分の苗字に含まれるトキを自分のエゴにより救済しようとする。
    救済のために佐渡のトキ保護センターにいるトキを飼育・解放・密殺の3種類を考えそれぞれの可能性を検討する序盤。その中からある一つを選ぶに至った中盤。実際に佐渡に行き実行する終盤からなる。
    中盤から終盤にかけての勢いには惹きこまれた。

    この鴇谷春生の妹は芥川賞の「グランド・フィナーレ」や谷崎賞の「ピストルズ」で結構重要なキャラクターだったような。この2作を読み返したいな。

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著者プロフィール

1968年生まれ。『アメリカの夜』で第37回群像新人賞を受賞し作家デビュー。’99年『無情の世界』で第21回野間文芸新人賞、2004年に『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞・第58回毎日出版文化賞、’05年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞、’10年本作で第46回谷崎潤一郎賞をそれぞれ受賞。他の著書『クエーサーと13番目の柱』『IP/NN 阿部和重傑作集』『ミステリアスセッティング』ABC 阿部和重初期作品集』対談集『和子の部屋』他多数。

「2013年 『ピストルズ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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