親鸞(下) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770613

感想・レビュー・書評

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  • えええまだ浄土真宗開かないの!?に集約されているのではないか。数々の名前の変遷を経て、ようやく親鸞と名乗るところまで。いや、物足りないが上手い戦略とも言える…。読みやすく楽しいのでついつい続きが気になるからだ。
    軽い歴史小説にはありがちなように、やはり歴史的な出来事との相互関係の描写が浅い。歴史小説よりも時代小説よりになってしまっている気がする。

  •  平安末期から鎌倉初めにかけての混乱した京の様子が伝わる。大河ドラマ「平清盛」の画像が汚いと、どこかの知事が批判して話題になったが、もう少し後の時代とはいえ、当時の世相からすればそんなものだったのだろう。
     上巻の親鸞の少年時代(忠範)が出会う河原者たちの猥雑でかつ活力に満ちた描写がいい。親鸞を名乗るまでの青年期までのお話だが、青春活劇としての楽しませ方は流石だと思った。宗教者としての足跡を期待すると戸惑うかもしれない。史実とどうなのかは別にして、小説としては十分に楽しめる。
     続く「激動篇」にも期待。

  • これだけ馴染みの深い偉人なのに、その生涯や偉業に関して、恥ずかしながらあまりよくは知らなかった親鸞さん。この本はその半生までのお話。末法の世と言われた平安末期から鎌倉初期の描写はナマナマしく、その中で法然、親鸞らが広めた念仏というのがいかにすごいことだったのを初めて知りました。フィクションなので全てが史実通りではないでしょうが、念仏により仏教が為政者のものから万民のものになる過程はまさにパラダイムシフト。日本人の心の中の革命だったのかも…残りの半生を描いた続編が待ち遠しいです。

  • 厳しい修行を重ねつつも、真の仏の姿に触れることのできない親鸞の苦悩が描かれ、あっという間に読み進められると思います。巻末が近づくに連れ、どんな結末になるのだろう、このまま終わってしまうのだろうかと不安になりましたが、続編があることを知ってほっとしました。年明けに続編が単行本で出版されましたが、また文庫になるまでしばらく待とうと思っています。

  • 親鸞が親鸞となるまでの人間ドラマ、末法の世の混乱ぶり、その中で醸造されてゆく思想体系などが盛り込まれ、とても密度の濃い作品。しかしこの2冊ではもの足りなくなるのでやはり続きが楽しみ。

  • 読みやすかったです。

    念仏って何だかロックに似ていると思いました。

  • いやいや、面白いっつーの。

    という上巻と同じ感想が書けるのはそれを上回ったからで、
    なにしろ最後まで中だるみなく読まされてしまった。

    下巻もやはりエンターテイメントとして
    仏教の考えをひも解くわけですけど、
    案外深いところまでえぐってきます。
    この内容をこのテンションで描き切るのはすごいなあ。

    富も、名声も、戦うための武器も持たず、
    なんらかの姑息な悪事に手を染めずには生きられない
    何百、何千という貧しい人々が、
    一斉に腹の底から念仏を叫ぶ。
    それは自らの罪の意識や死への不安だけでなく、
    不当な体制や押し寄せる理不尽に対する抗議など、
    いろんな思いをないまぜにして、地響きを起こして絶叫する。
    その先頭にいるのが親鸞だ。
    彼は巨大な悪意に迫られても一歩も引かずに
    目を据え、地面を踏みしめてひたすらに念仏を唱え続ける。

    そら格好良いわけです。
    途中までは、こいつ能書きばっかりで結局なにもできないじゃん。
    と思ってたんですが、まあ立派になったというかなんというか。
    いや、何もできないのはできないんですけど。

    念仏を唱えるっていうと
    お葬式のイメージが出てきてどうにも辛気くさい感じがするんですけど
    仏教は当時もっと生活に根付いたものだったんですね。

    それは医学であり、哲学であり、建築であり、
    歌であり、娯楽であり、生きる術そのものだった。

    念仏は、修行を積んだ高僧や
    お布施を納めることができる一部の貴族のためのものではなく、
    罪を重ねざるをえない平民のためにこそある。
    彼らは救われなければならないのだ。という強烈な意志が
    色々な経験をへて、主人公の中に次第に固まっていきます。
    いいぞいいぞ。それそれー。

    登場するキャラクターの数は決して少なくないのですが
    それぞれが抜かりなく丁寧に描かれていて読みやすいです。
    全員が大事な役割を持った魅力的な人物達。悪役含め。

    それだけに最後まで頭の片隅で
    上巻冒頭に出てきた河原坊浄寛に
    もう一度会いたいなーと思いながら読んでました。

    だってあの人嫌いな人いる?

  • 馴染みのない仏法小説。
    とてもおもしろく読めた。
    こういう小説は無知であることが露呈する。。

  • 幅広い世代に読んでほしいってことかな、かなり読みやすい。ルビもやたら多いし。

    おもしろかったけど、サクサクと読み進んでいく感じ。もう少し読みごたえがあるとよかった。

  • 「聖の戒は,,無戒。これがおきてじゃ。無戒であるということは,仏法の常識や世間の常識など,それらすべてにとらわれず自由に生きることをいう。」
    「なむあみだぶつ,とは,南無,すなわち帰命する,ということでございます。帰命するとは,すべてを捨てて仏の前にひれふすこと。なにもかも,すべておまかせして信じ,決して迷わない。その誓いを南無というのです。そして,あみだぶつ,とは,阿弥陀如来という仏様をお呼びする声」
    「わたしはついに出会ったのじゃ。真の母のような仏様に。それが阿弥陀仏じゃ。多くの世の母親の中から,ただ一人の自分の母と出会う幸せを,選択(せんちゃく)という。そしてこの世のあわれな者を一人残らず救うぞという阿弥陀仏の誓いを,本願という。そのみ仏の本願を信じて,思わず体の奥から漏れ出る声,それが念仏というもの」
    「この世に生まれて,これほどまでに信じる人と出会えるということは,何という幸せなことだろう。」
    「本願をほこる,しかしそれしかほかにほこるものなき人びとのことを思えば,私の胸はひどく痛むのだ。母親に愛されていることにはじめて気付いた子が,度を超して甘えたとしても叱るわけにはいくまい。だから私は,遵西らを念仏門の悪として切り捨てることをしないできた」
    「選択(せんちゃく)というのは,二つの中からどちらかを選び出すことではない。それは片方を捨て,片方に身命をかけることで,魂が二つに引き裂かれる恐ろしい行為でもある。その引き裂かれた魂からしたたる血が念仏なのではないか」
    「もしも生涯の師弟というものがあるとすれば,師,高弟,弟子,門下といったつながりではなく,易行念仏を説きつつ人びとの暮らしの底にはそれぞれはいっていくところにあるのかもしれぬ。旅立つことが真の師との出会いなのだ」
    「法然は,区別なく,という立場で人びとに念仏を説いております。…しかしそれは法然のたてまえではないか,とわたくしは疑っております。強き者,富める者,身分の高き者たちを区別して,世間の大多数の貧しき者,弱き者たちを念仏ひとつで救おうというのが法然の真意ではありますまいか。悪人ですら往生できるのだ,いわんや善人はもちろんのこと救われる,と法然はいったと聞きますが,本心はその逆かも知れませぬ」「善人なおもって往生す,いわんや悪人をや,ということか。そこをつきつめていけば,親は病の重き子をこそ愛しく思う,という論になる」
    「善信は師の法然の示した道を,さらに一歩ふみだすことで,もっとも忠実な弟子となろうとしているのではないでしょうか。…悪人,善人の区別さえつけないという考えのように見えます」
    「わたしは浄土にはいったことがありません。ですから,師の言葉を信じるしかないでしょう。信じるというのは,はっきりした証拠を見せられて納得することではない。信じるのは物事ではなく,人です」


    予想以上に面白かった。全く知らなかった親鸞の人生,考え方について少しだけ理解した。次の激動篇も読みたい。

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著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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