ファミリーポートレイト (講談社文庫 さ 105-1)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (703ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770620

作品紹介・あらすじ

最初の記憶は五歳のとき。公営住宅の庭を眺めていたあたしにママが言った。「逃げるわよ」。母の名前はマコ、娘の名前はコマコ。老人ばかりが暮らす城塞都市や奇妙な風習の残る温泉街。逃亡生活の中でコマコは言葉を覚え、物語を知った。そして二人はいつまでも一緒だと信じていた。母娘の逃避行、その結末は。

感想・レビュー・書評

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  • この本は桜庭一樹が全て詰まっている。
    「私の男」のザラザラした不快感。「砂糖菓子の弾丸は打ち抜けない」のティーンエイジャーの複雑で理解不能な闇。「荒野」も「製鉄少女」も、そして全編通して「地獄行き」。前半はマコとコマコの非現実世界での、リアルで暗い逃避行。後半は駒子の幸福へ背を向けて大人になる姿。相変わらず靄のかかった暗い世界なのだが、なぜか読み出したらやめられない陶酔感。長い話でしたが、とても印象的な心に刻まれる小説でした。

  • 完全な人間に物語など必要がない。でも完全な人間などいないから、誰にでも物語というものは必要…本当にそう思います。完全とまではいかなくても、真っ当な人も物語を必要としないよな、とも。このお話だと、真田みたいな。
    圧倒されました。母と娘、お互いしかいないというのは悲劇だけれどとても幸福なのかもしれないです。
    幸福から立ち直る…初めて接する言葉だけれどこの感覚はわかるので不思議。とても悲しいけれど、生き続けるには欠かせないです。
    母と娘ってこうだな、と思いました。これが濃いか薄いかの違いで。ここまで描写出来るって凄いな。
    眞子と駒子の頃と、駒子の余生と。息苦しいけれど、物語の力も感じられました。体力奪われる読書でした。

  • 大人になりきれない母親と、そんな母親にすがって生きて行くことしか出来なかった娘が、不憫だ。
    負の連鎖を感じる。
    そんな母だけど、娘のことは愛しているんだろうな。重い話でした。

  • 幸福から立ち直らなきゃいけない

    マコとコマコのどうしようもなく幸せだった時間から
    立ち直れないでいることは
    普通に生きてきた私からしたら
    とんでもなくおかしいのに

    おかしいからこそコマコのように生きれるし。

    現実味があるようでファンタジーな世界観。

  • 母と娘の物語。

    1部は母と娘の逃避行、2部は娘コマコにとっての余生。
    最後までコマコは母に縛られ続けるけど後半になるにつれ歪んだ愛情くるものから穏やかな気持ちへと変わっていくのが文章を読むだけでも感じられてた。決別じゃなく受け入れ乗り換えた感じが良かったなと。

    作中で家族を鎖に例えるセリフが好きだ。
    一番もろい箇所がその鎖の強度。
    この言葉を知ったあと1部を思い返すとまた新しい感じ方ができた。
    守りたいね。

  • マコとコマコ(母と娘)の逃避行。
    親子というよりは、コマコを所有物、時にはいないものとして。絶対服従の関係。
    10年間。
    絶対服従は変わらないのだけれど、コマコも成長し、マコに対しての愛情に変化がでる。

    マコがいなくなったコマコはそのあとをどういきるのか。
    破壊行動、暴力。
    止められない衝動。

    マコはピンク、コマコは水色。
    いろんなものを演じられるけど、自分は演じられなかったコマコ。

    書くことから逃げた後に、出会った真田との関係。
    きれそうで切れない、失ってしまうかもしれない、快適で柔らかな朝には戻りたくない、合わないし、自分を変えられないと思うのに、気になる存在。
    コマコの本は読まないと言っていたのに、関係がギクシャク、彼女を変えてしまった(もとに戻りつつある、戻っただけ)その原因を知るためか、コマコの本が部屋の中に。コマコは、見て見ぬふり。
    最後までどうなるか、途中で別れてしまうのか気になって読んだ。

    第二部の文字に眠るは、少し苦手だった。
    嘘の話をつくって語るシーンが多くて。
    出会いの場面は良かった。
    いろんな人と出会って、この時はわからなくても鍛冶野さんが語った意味や、繋がりをふりかえる、作家として動き出す(作家になるんだろうなと思った)大事な章なのだろうと思ったから、時間がかかったけれど、嘘の物語をとばさず読んだf(^_^;
    ポルノスターの彼女との出会い。
    父親から連絡がくるのをずっと待つ。
    来ないんだろうな、最後がどうなるかは想像通りだったけど、彼女の叫びがつまった章。

    p681-12~16

  • 共感し、ぐっとくるフレーズが目白押しだった。計画性がなく自己中心的で、自分の為に娘を使う母親と、それでもその母親が自分のたった一人の唯一無二の特別な人間で、何をされても愛している娘。「母親でも女でありたい」という女性の典型的な例みたいな母親と対照に、男性への魅せ方や愛し方が不完全な娘。第一章は、対照的な母と娘の生き方が不憫で歯痒くて仕方ない。
    でも、個人的には母マコと娘コマコが一緒に生きている時の話の方が好き。
    それから第二章へ進み、母マコの幻影に囚われながら生き続ける娘コマコの人生が綴られていく。死んでしまった人間は圧倒的で神のよう。母に囚われ続けるコマコに共感の嵐。それでもコマコが、自分の仕事と結婚相手が見つかったことにほっとした。物語を必要とする人間は満たされていない人間なのかもしれないと、本を読む自分にドキっとした。
    母と娘が旅したありそうでない街たちの描写も素敵だった。大事にされなくて、虐待されていたとしても、それでも母親が大好きな子供が切ない。そんな親だったら離れた方が良いと第三者は思うけれど、当の本人からしたら離れたくないんだろうと思うと、昨今の虐待問題が切なくてたまらない。「幸福から立ち直る」ってズシンとくる言葉だ。
    自分を痛めつけることでやっと生きていくコマコ。苦しいけれど、ページをめくる指が止まらない

  • 第一部の 旅 はそれぞれの町が現実に在りそうで、
    少しファンタジーな感じで、温泉街の風習とか
    豚の脚とか。
    コマコの夢なのかな?とも読めた
    第二部のバーでの一人語りにその旅の経験が形を変えて出てくると、コマコが実体験したことなんだと、マコとの濃さを改めて感じた。

    読み進めるのが苦しくて
    でも読みたくて 終わらないでほしいけど
    絶妙なところで終わった

  • 母娘ものには滅法弱い。マコとコマコの絶望的な愛。前半は、母親の穢れと少女の無垢さが完美に描写されている。後半は、母親を喪った少女が生き抜く姿。これは、比喩的自叙伝なのかなと思わせられる部分もあり、桜庭一樹さんがなぜ男性名のようなペンネームを語っているのか解ったような気がした。眞子は母親なりに、娘の駒子を愛していたし、自分の人生を犠牲にしてまで守りたいものだった。彼女の描くテイスト、かなり私好みであるのは確か。

  • 日本語がとてもきれいで、どの話も浮世離れしている感じがとても好きでした。

    厚いので、読了前は寂しさがこみ上げてきました。
    桜庭さんらしい物語で、言葉の選び方がとても綺麗だと思います。

    私の中では、桜庭さんの作品で1番好きかもしれません。

    本当に、とてもとても素敵でした。

    駒子さんラブ!

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著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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