ラジ&ピース (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 283
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770668

作品紹介・あらすじ

自分は醜いというコンプレックスを抱く野枝は、実家を出て群馬県のローカルFM局で人気番組を担当するようになる。誰からも干渉されない自由に閉じ篭もる野枝だが、その心の隙に気さくな方言で話す女医の沢音が入り込み…。横浜と会津出身の二人の女性の呼び合う心を描く「うつくすま ふぐすま」を併録。

感想・レビュー・書評

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  • 自分で捨てておいて、
    それなのに気づけば焦がれて
    奪われていたりする。

    我を通すのも、力むのも大変。

    とじこもるのは簡単。
    でも少しだけひらいてみると、
    なんだか気持ち良い。

    昨日と同じ景色なのに、晴々していたりする。

    「ラジ&ピース」
    「うつくすま ふぐすま」
    の二編が収められています。

    自意識とコンプレックスを盾に、
    世界とフィルターを通して向き合う野枝。
    ラジオのパーソナリティを田舎でしている野枝。
    そこに優しい姉さんみたいな女医の沢音が加わり。

    あいつもこいつも厭になる。
    触らないで、近寄らないで、悪意や打算しかないから。
    そーゆーの面倒だから。

    誰でも持っている感情を少し強めに押し出す野枝が、
    ラジオをしているのは
    やっぱり繋がりたいからなんだろうなあ。
    なんか繋がって
    届けて、届けてもらって。

    日常が少しだけ変化する時間を描いている「ラジ&ピース」

    そして、
    パンチの効いている「うつくすま ふぐすま」
    同姓同名の友情。
    女の友情。
    ちょっとだけ恋心に近いもの。
    狂人と変態ばかりの世界なんだもの。

    男に対してバッサリいく感じは、
    たぶん女なら少なからず共感すると思います。
    だから男性にはおすすめ出来ません。苦笑

    男に脳味噌はいらない。なんて、ちょっと憧れちゃいます。笑

    装丁は綺麗で可愛いのに、内容はピリっとスパイシーで
    読後は良いです。

  • おのれの弱さが他人の目には強さであるように映ることがある。
    なぜかといえばその強さとは、弱さを覆い隠し守るための鎧のようなものだからだと思う。
    でも内心、その鎧の重さに辟易していたりする。

    『ラジ&ピース』も『うつくすま ふぐすま』もそんな短編で、少し乱暴にまとめると30代の女が武装解除するという話。

    あまりにすとんと変化が訪れるので、ちょっと物足りなかった。

  • 絲山秋子の文体や作品の中に充満している空気感、曇り空からほんの少し覗く太陽の光のような、好転の兆しが本当に好きだ。

    大きな波が岩肌にぶつかって割れて散るような激しさはないけれど、密閉容器に煙がどんどん立ち込めていくような、静かな圧迫感が凄い。
    本の薄さからも分かる通り、言葉は少ない。
    けれども、こちらに投げられる野枝という女の、世界に対する期待感の無さや虚無感は計り知れないものがある。

    だからこそラストに訪れる、決して派手な大団円ではない、喉に刺さった小骨が抜けるような小さな解放が沁みる。
    これからずっと幸せだろうという予感ではなく、とりあえず明日は大丈夫だろうというくらいの幸福感を描くのが、絲山秋子は天才的に上手いと思う。
    そしてそんな幸福が、野枝のような不器用で、人との距離も上手くつかめない人間を一番豊かにしてくれると知っている。

    今作でも、ラストに近づくごとに自分がいかに身体に力を入れて生きていたか、思い知らせてもらった。
    肩に食い込む煩わしい荷物を下ろせても、それでもやっぱり日々の孤独は変わらない。
    けれど、このままでいい、何も無理に分かってもらおうとしなくてもよい、ここにいたらいい、怯えることはない、誰に命を取られるわけでもない、とそんな風に思えるだけで、そこは住みやすくなるし、リラックスできる場所になる。
    そうしたらまた明日を迎えてやればいい。

    絲山秋子の小説は、負のものでいっぱいに膨れて、少しでも激しく動いたり突き飛ばされたりしたら破裂しそうな私の身体に、いつも細い針で穴を開けてくれる。
    悪いガスが抜けていく速度はとてもゆっくりだが、いつか確実に抜けるだろう。
    そんな予感を、この本もまた私に与えてくれた。

  • サバサバと無駄をそぎ落とした文章がこの人の持ち味だろうが、本作はその極北とも言える世界。
    他の作品においては、文章こそ簡潔(ただし力強い)だが、個性豊かな登場人物(躁うつ病患者、アルコール依存症者、左翼活動家等々)たちが物語をコミカルに切なく彩っていた。
    本作では物語の展開や、登場人物たちの関係性も、限りなく平坦に描かれている。
    上りもしないし下りもしない。
    ただ一人の人間の絶対的な孤独だけが、白紙の上にスーと浮かび上がる。
    けれどその孤独は、柔らかな光に包まれている。
    そんな印象。

  • 気がついたら絲山秋子氏の新しい文庫が出ていたので、さっと買って、さっと読んだ。
    相変わらずの絲山調。

    諦めみたいな感覚から逃れることができずに(逃れようという気がそもそもないのだが)生きるアナウンサー。
    諦めの感覚から立ち直るでもなく、回復するでもなく、その感覚のまま肯定されていく心地良さ。
    だから、絲山秋子はやめられない。

  • あー、読み終わっちゃった。

    絲山さんはコンプレックスに塗り込められた人を描くのにとても長けている。
    自分に反射させて苦しくなるくらい。
    誰もが何かしらの劣等感を抱えているなら、全部底上げしてチャラにできたら楽なのに…と思うけどきっとそうはできない。
    だから、ひとがそこから解かれていく小説を心地よく読むんだと思う。

    開始18ページ、「ビジョーフ」の響きに完全にノックアウト。加えて、主要な登場人物の名前が文から浮かんで来るのも凄い。

    併録も良かったです。

    美しいかどうかは大切なだけど些末なことだと思う。

    今回も短くて、読後感がよくて、さらっとした満足感。好きです。

  •  うーん。
     この著者の作品を読むのはこれで3冊目。
     最初の2冊は割と面白く読めたけど、これは今一つ。
     人と人との微妙な距離感が判るようでもあり、判らないようでもあり。
     あくまでも女性主体、女性視線過ぎて、男性の僕には判らなかったのかも知れない。
     けっして嫌いな著者じゃないので、もう少し他の作品も読んでみようと思う。

  • 自分を醜いと思い込み、意固地になっていた野枝。現実世界では他人とつながることを拒否し、ラジオ局のスタジオの中でしか息ができない。例えば、気の置けない友人と一緒になって笑いたいが、どういう顔をして笑ったらいいのかわからない。そんな彼女が、群馬という土地で、少しずつ変わる物語。
    併録された「うつくすま ふぐすま」この表題の意味が分からないのは私だけ?

  •  あまり印象に残らなかったけど、嫌いではない。たぶん時間をおいてまた読んだら新たな発見があって、その都度好きになり、最終的に気に入りそうな本の予感はしたけど、それくらいの感じ。

     表題作の野枝のサバサバした感じ、世間に期待していない感じがちょっと好きだな~っていうのはある。沢音とは正反対のタイプなのに、気が合ってしまう感じもなんかわかる気がする。わかるけど、よくわかんないや。

     誰もがここにいる。ここに存在するっていう感覚が大切で必要なのかな。

  • 相馬野枝32歳独身。FMラジオのDJ。
    自分の容姿に強烈なコンプレックスを抱き、極端なほど他者との距離を保つ彼女が、唯一自分を解き放てるのが自らパーソナリティを務めるラジオ番組。
    仙台から群馬のFM局に転職した彼女が、半ば強引にできた女友達やリスナーとの関わりの中で、ほんの少しずつ自分を肯定していく・・・という標題作は、本当にFMラジオの番組を聞いているかのような孤独な心地よさ。
    群馬の小ネタ(高崎人は前橋人が嫌いとか・・・ホント?)も随所にはさまれクスッと笑える。

    併録された「うつくすま ふぐすま」は、短いながらスカッと晴れた空を感じさせるキレのいい作品。
    生ゴミのようだと感じる男とずるずる切れずにいる中野香奈(下から読んでもナカノカナ)が、もう一人の中野香奈と友達になり、違う世界を知ることできっぱりと別れを告げる。そのシーンがもう最高。
    ーー雲がみるみる晴れてきて日が差しこんできて、一斉に蝉が鳴き出したような嬉しさだ。誰にでも屑みたいな過去はある。でも私が忘れてしまえば、そいつは消える。なかったことになる。ーー
    なんと爽快!

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著者プロフィール

1966年東京都生まれ。「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。「袋小路の男」で川端賞、『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、「沖で待つ」で芥川賞、『薄情』で谷崎賞を受賞。

「2018年 『薄情』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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