長い終わりが始まる (講談社文庫)

  • 講談社 (2011年10月14日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770705

作品紹介

大学4年生になっても就職活動もせずマンドリンサークルで練習に打ち込む小笠原。彼女が演奏する音楽というものには常に終わりの予感が漂うけれど、大学のサークルという小さな輪の中では絶えず人間関係が堂々めぐりを繰り返し、合奏は永遠に終わらない。そんな青春の切ない痛みを描き出した傑作小説。

長い終わりが始まる (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • この本を手にとったのは、米子のイオンにあったビレッジバンガード。一人旅でARTに触れ、友人とその子どもに二組続けて会いに行き、一緒に行ったショッピングセンター。帰りの飛行機で一人になることを考えて、本を買おう、と立ち寄った。

    特別これが読みたかったわけではない。平積みされた表紙の色が、初めて買ってもらった自転車の色だったこと、そして、4拍子が描かれていたこと。それだけ。

    本との出会いって、そんなもの。

    大学のマンドリンサークルの話だった。母が大学の時、マンドリン部に所属していたらしい。私はテニスサークルに入って、そこで形成される「トモダチ」の定義が、あまりしっくりきていなかった。そのふたつが、関係ないのにつながってちょっと思い出す。

    ひとと一緒に音を作る、という経験をしたことのある人なら、必ず通る道程が描かれている。音楽用語が幾つも出てくるので、なじみのない人はそこで引っかかってしまうかも。ただ、誰かと一緒に何かを作ったり目指したりしたことがあるなら、共感、というか、ああ、と思える描写が、あるはず。

    本文より
    「最後に急に転調して、終わりの雰囲気を無理に作り出そうとしている曲って、嫌いだ、とフィーネの記号を指で擦る。

    それにしても、終わりを認識する感度を、人間はどのように身につけてきたのか。

    趣味のオーケストラの中でだけ親密だった関係は、金を稼いで生活するようになれば、気色の悪い思い出に変わっていくのだろう。」

    大学のサークルとは、私にとっては、あまり、大切な場所ではない。それは、今となっては、の話だけでなく、多分その当時もそうだった。
    内部進学生と、中高一貫の私立校から指定校推薦で入ってくる人が多い大学。そこで、数十名からなり、代々連綿と続く人間関係。その中に、浪人生活を経てなお、失敗した、という挫折を持ち込んで加わった私は、「自分を承認して欲しい、自分はここにいると精一杯アピールすること」が、好きじゃなかったんだと思う。そして、自分自身でその「絆」を断ち切った時に投げられた言葉は、「もう友達じゃなくなるね」だった。サークルとは、終わりが始まる場所だった。

    そんなゆがんだ記憶を、何処かから掘り起こしてきてしまい、ちょっと置き場所に困っているところ。

    山崎ナオコーラさんの紡ぐ物語は、どこかチクッとしたりヒリヒリしたりする、その感覚が、生、を実感させる。そこがとても好きだ。

  • これはにがい 未熟で幼稚な人間をこれでもかというくらい真っ直ぐ捉えて書く

    その未熟さ故に譲れない部分がコミュニティの欺瞞だったり、狡猾さだったりする
    でも、それは自分も持ってる
    その持ってる事も逸らさず書く
    だから苦い

    ナイフの様な鋭いナオコーラ節に戦慄する

    田中という男子大学生を好きになった小笠原
    マンドリンサークルの仲間の二人
    コミュニケーション能力の低い小笠原はサークルでも浮いている
    男子学生からは浮く田中
    でも、田中はそのコミュニケーション能力の低さを可愛さに変えて女子の仲良くする狡い奴

    恋に幼稚で魅力のない小笠原をいいように利用する田中は本当に狡い

    でも、小笠原も負けてばかりじゃない
    ナオコーラさん独特のフェミニズム論が愉快だった
    セックスの終わりは男の射精ではない
    能動的に女子が決めてもいいんだ
    この辺りのかっこよさが好き

    音楽をするのが目的ためのサークル活動の手段が自分をどう見せるか?社会でどう生きるかという目的にすり替わる矛盾
    人間がよく陥る矛盾の書き方が上手い

    明確な終わりは自分で決定できないからこそ長い終わりが人生だと言える

    ナオコーラさんの感性鋭さ
    平易な言葉で心を抉られる
    誰もが覚えのある苦さではないでしょうか
    完敗

  • 小笠原が直情的過ぎてストレスがたまる。己のナイフの切れ味を知っていながら躊躇なくノーガードで振りかざす様は幼稚園児のようだ(切れ味を知っている分タチが悪い)。
    小笠原はガードができないのだ。盾を全く持ち合わせていないから。

    こう書いているうちにだんだん小笠原に興味が湧いてきた。
    読んでいるときはイライラしたのに、読み終わったそばからまた会いたくなってきている。
    不思議だ。

    渋谷に構える大学にの小さなサークルのお話。

  • 読んでいるあいだは小笠原への反感でいっぱいで面白くもなかったけど、読み終わって思い返すときは話の余韻が続いていて良い流れだったなと思う。
    人のセックスを笑うなの方が、言葉のつながりとか思いがあって良かった。

    人の気持ちが全く考えられない、でも繊細で鋭い女の子。

  • ナオコーラさん、読んでみたくて初読了。

    話自体は割とうつうつとしていて、あまり好きなタイプでなかった割に、ストレスはなく読めた。
    サークル、やってなかったけど、集団生活はいろいろあるよね、そして、大学生特有の空気感。
    彼らを繋いでいるものは、お金でも責任でもない。思い出とかそういった類のなにか。

    小笠原の不器用さと男の見る目なさにイライラさせられるが、
    大丈夫、大学時代にアレコレあった男なんか、まーじでどうでも良くなるからさ、すぐに。といってやりたくもなる。


    ラストページのこの文章は胸を打つ。そーだよ、わたしも全くその通り。と頷くしかない。

    小笠原は好きな人とラーメンを食べたことがない。小笠原を好きな人がいない。小笠原を雇いたいと思っている人もいない。社会から必要とされていないのだ。小笠原は真剣にひとりっきり。今まで生きてきて、誰からも好かれたことがない。

  • 大学時代の終わりは、急にやって来ない。でもみんないつか終わる。大学3回生の私は、今月サークルを引退し、来月最後の講義を受ける。あと1年、沢山の最後を経験して、私の大学時代は終わる予定である。主人公小笠原と同じく協調性の無い私は、サークルの活動方針や目的意識の違いに悩まされてきた。けれど彼女がわかっているように、私もわかっている。何かに一生懸命打ち込むのは素晴らしいし、それはそれで認められなくもないけれど、結局はみんなと仲良くやっている人の方が平和なのだ。私たちは周りからしたら疎ましいことが往々にしてあるのだ。大学生活が終わるということを、一事実としてではなく、自分の感情の上で認識し始めた人に読んでもらいたい。

  • 主人公の小笠原は私とは真逆の人間。すぐに「ばかだ」と言う所はむかついたが、惹きつけられた。
    大学生はサークルという実に狭い世界で生きている。いつも人と繋がることに必死だ。
    音楽にストイックな小笠原はかっこいい。
    しかし必死な人間たちも、私は愛したい。

  • (2015.5.25)
    (192P)

  • 二人にとって、サークルとは世界のことだ。

    サークルの中での、恋愛、友情を通して、人との考え方の相違に順応できずもやもやするなど、モラトリアムの生々しさを物語っている。
    その過程で就活に行き当たるが、同時に自分が他者に必要とされるとは何かという考えに行き当たる。

    この物語は区切りに数字をいれなかったり最後は本の終わりではなくまだ人生が続いてるように内容も続く形になっており、主人公のゆっくりとした壊死を題材にした作品である。

  • 読了日 2012/4/15

    國學院のマンドリンサークルの話。
    人好きの私にはちょいとブルーになる話でした。

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