おまえさん(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.08
  • (389)
  • (619)
  • (240)
  • (19)
  • (3)
本棚登録 : 4195
感想 : 334
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (616ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770729

作品紹介・あらすじ

痒み止めの新薬「王疹膏」を売り出していた瓶屋の主人、新兵衛が斬り殺された。本所深川の同心・平四郎は、将来を嘱望される同心の信之輔と調べに乗り出す。検分にやってきた八丁堀の変わり者"ご隠居"源右衛門はその斬り口が少し前に見つかった身元不明の亡骸と同じだと断言する。両者に通じる因縁とは。『ぼんくら』『日暮らし』に続くシリーズ第3作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ぼんくらシリーズ
    いいなあ〜宮部みゆき、どこからこんな人物を生み出してくる?
    相変わらず平四郎、いい味出してる
    ただ怠け者風にしてるのではない。
    いろんなことを考えてる、
    それに弓の助、政五郎、三太郎「おでこ」
    本を読むということは、会えるはずのない人に会え
    そして学ぶ醍醐味。

    一人が欠けても違う。ただ事件が起きて解決するのみならず
    時代背景からなのか、人情のきび
    あわれ、
    文章の中からでてくる
    会話の妙、ここで出過ぎてはいけない。
    間、「ま」待つ事の大事な場面
    身分制度ゆえの
    己を知っている、弁えてるその加減。
    いろんな部分に学ぶ点が多い。
    現代は自由というもとに、いろんな所作、振る舞いが品がなくなってる気がする。
    ずっーと宮部みゆきの時代物を敬遠してたのが大きな損だった
    慌てて、取り戻してる次第です。

    時代とはいえ、起こることは悲しすぎる。

    余談だけど自分は手下のことをてしたとおもってた。
    まさか手下「てか」とはーずっとしらなかった。

    本文よりー
    人はなんにでもなる。ー

    だから怖い。

    • ごはんさん
      トミーさん
      コメントありがとうございます。
      嬉しいです!

      宮部さんの作品は私も推理犯罪ものから入りましたが、最近は時代ものの虜です。

      時...
      トミーさん
      コメントありがとうございます。
      嬉しいです!

      宮部さんの作品は私も推理犯罪ものから入りましたが、最近は時代ものの虜です。

      時は違えど、人間の弱さ脆さを上手に浮き立たせるいい作品ですね。
      多作の作家さんなので、これからも楽しみですね。
      2020/06/20
    • fufufuyokoさん
      本棚作り始めたばかりです。
      私もぼんくらシリーズの登場人物大好きなのです。なので今さらですがいいねさせていただきました!
      本棚作り始めたばかりです。
      私もぼんくらシリーズの登場人物大好きなのです。なので今さらですがいいねさせていただきました!
      2020/08/09
    • トミーさん
      fufufuyokoさん
      コメントありがとうございます。
      ホント、登場人物いいですよねぇ。
      fufufuyokoさん
      コメントありがとうございます。
      ホント、登場人物いいですよねぇ。
      2020/08/09
  • 上下巻まとめてのレビュー。
    最近「ぼんくら」「日暮し」のドラマをとあるBSで再放送されていたのをたまたま見て、読み返したくなった。
    初読は10年近く前だと思うのですっかり中身を忘れてしまっていた。新たな気持ちで読めたのは良かったし、ドラマを見たばかりということもあって主要人物たちの顔がドラマで演じられていた俳優さんに脳内変換されて読みやすかった。

    「ぼんくら」「日暮し」では可愛らしい助手、あるいは名探偵といった役どころの弓之助とおでこ(三太郎)が、「日暮し」から2年経ち少し大人になっている。弓之助の美しい顔はますます磨きがかかり、おませな感じだった物言いはさらに大人びて平四郎の頼れるブレーンになり、一方で身内である兄には丁々発止のやり取りも見せてくれる。おでこは実母の接触未遂にも周囲の大人たちに守られ、初恋の味も知る年になっている。
    今回初登場の同心・真島信之輔と、弓之助のすぐ上の兄・淳三郎は正反対なキャラクターながらどちらも魅力的。

    相変わらず長い長い物語で時に非常に回りくどく感じることもあるものの、シリーズのレギュラー陣である平四郎、お徳を始め、信之輔の大叔父・本宮源右衛門や市井の人々それぞれの視点でそれぞれの物語を丁寧に描いてあり、生きる上での苦しさ虚しさ切なさが痛いほど伝わり、一方でそれでも前を向いて必死に生きていこうとする姿や飄々と飲み込んでいる姿なども見えて、彼らのこれからを応援したくもなった。

    これだけ長々と引っ張ったのだが、結局事件の動機の真相というか芯の部分は分からない。
    弓之助の賢いおつむりによる謎解きに、平四郎や政五郎親分や源右衛門の長い人生経験で得た肉付けをして犯人の心の内を理解したつもりになっているに過ぎない。
    だがそれで良いのかも知れない。現代の裁判ですら事件の真相、芯の部分は誰にも分からない。本人にすら分からないのかも知れないのだから。
    犯人に振り回され巻き込まれた人々を考えるとますます辛い。

    おしんや信之輔が分かってしまった理不尽による傷はこれからも事あるごとに彼らを苛むだろうし、この先弓之助やおでこ達にも降りかかるものかも知れない。それでも『皆、愚かなのだ。おまえだけではない』と悟った信之輔たちには明るい未来が待っていると信じたいし、理不尽や不条理がある一方で、平四郎や政五郎や源右衛門やお徳や丸助のような素敵な人々もいるのだから世の中はまだ大丈夫だとも思いたい。

    この作品が文庫化されたのが2011年、その後シリーズ作品が出ないところを見ると多分この三部作で完結ということなのだろう。
    さらに成長し大人になった弓之助同心と岡っ引きおでこの活躍も見たいように思うが、それは妄想するしかなさそうだ。

  • 「ものの端と端は離れているように見えても同じ。そうだ、両極は相通じる。正は負に転じ、負はころりと正に変わる。」
    世の中、極端な二元論に走りがちだが、江戸時代の庶民の暮らしを舞台に宮部さんが綴る人の心はとても味わい深い。正解も物の見方も、1つきりではないなあ。人間万事塞翁が馬だ。

    本作は一見繋がりが見えない3件の殺人事件を、同心の平四郎、甥の弓太郎、岡っ引きの政五郎たちに加えて、若い同心の新之輔と叔父の源右衛門が加わり、点を線にしながら手繰っていく。

    多めの登場人物のなかでも、実母に支配下でコントロールされ続けて生きてきた大店の千蔵の心の動きが秀逸だと感じた。

    幸薄い女性を見つけては、金をつぎ込み、大店の正妻に迎える。ほどなく、その女に飽きては、次の薄幸な女性に気を移す。悪い男だが、弱くて寂しい男の心の内が露わになる。

    幼い頃大人たちに、自分の思うことに注意を払って聞いてもらい、なるほどとうなずいてもらうこと。存在を認めてもらうこと。こんな経験を重ねずに、母の意のままにいると、自分を失い生きることから外されるのだなあ。

    支配する人がいなくなると、哀しいことに、次は自分が支配する側に回る。弱い対象を見つけては、支配コントロールすることで、失ってきた自分や自信を無意識にも操作して手に入れようとしてしまうのだ。家族不全の問題に通じるなと、あれこれを思い起こす。

    なかなかの長編なのだが、残すところあとこのシリーズも「おまえさん」の下巻のみ。忘れないうちに、読もうと。面白かった!

    • トミーさん
      まんぷくさん。
      素晴らしい
      今前後して、同じ思いに浸ってると「勝手に」思いますと
      読者仲間「勝手に」繋がりを感じます。
      独断と偏見ですが。す...
      まんぷくさん。
      素晴らしい
      今前後して、同じ思いに浸ってると「勝手に」思いますと
      読者仲間「勝手に」繋がりを感じます。
      独断と偏見ですが。すみません。
      2020/06/20
  • 橋のたもとで遺体が発見された。
    背中からばっさり袈裟懸けに。
    遺体を運び出しても血の跡が消えない。幸兵衛長屋の面々はこれは祟りか呪いかと騒ぐが、平四郎の若い同心仲間信之輔が調べる中信之輔の大叔父源右衛門は「遺恨の傷」だと言い切る。

    イケ面ではないけど爽やか生真面目青年信之輔に亡骸を検分する目はピタリと正確なヘンテコな大叔父源右衛門を加え、少し背の伸びた弓之助とおでこ、お菜屋に手を広げたお徳、手下(?)のおもん&おさん、政五郎親分とお紺さんに活きのいい手下たち。生薬屋の看板娘瓶屋の史乃、大黒屋の藤右衛門、十徳長屋の丸助とキャラクター続々でますます賑やかになっています。
    佐吉さんには赤ちゃんが生まれたりして、これまでのキャラクターの名前も出てきてサービス満点。

    このシリーズのお馴染みサンにはたまりません。
    お徳さんの料理がますます美味しそう。食べてみたいなぁ。

  • 上巻はまだ、伏線はりに忙しい。それにしても、顔の造作をこんなに気にする小説は初めて。

  • 「ぼんくら」「日暮らし」の前2作と異なり、
    短編仕立てがいくつか続いて、本題の流れではなく、
    本題「おまえさん」で始まる。
    生薬屋 瓶屋の主人が殺され、その店で神さまのように祭られている瓶様。
    主人にまつわる、娘、後妻、差配人の美女3人。
    なかなか消えない身元不明の亡骸の血の跡。

    ほんの少しホラー感がただようキーワードがちらほら。

    初お目見えの"ご隠居"源右衛門がクスッと笑える。

    前作よりも"事件"自体に重点が置かれているような気がした。弓之介やおでこちゃんも少し大人びて、事件の真相へと引っ張っていく。
    平四郎は、いつもの調子良い語り口は現在。
    前作よりも、大人びた子供たちや若手の同心 信之輔と一緒にワイワイというよりも、少し達観しながら、調べを進めていく。

  • 江戸の風景が目に浮かぶ。事情を抱えて生きる人々の様子が活き活きと描かれている。
    下巻で事件の真相がどう展開していくか。
    楽しみ。

  • 「ぼんくら」「日暮し」に続く、本所深川の同心・井筒平四郎が
    主人公の、江戸を舞台のした時代劇シリーズ、第三弾。
    ・おまえさん 一~十八
    始まりは身元不明の亡骸。
    次いで、生薬屋瓶屋の主人、新兵衛が殺される。
    別々の点は探る中で線となり、繋がっていく。
    過去の事件が暴かれ、そして更なる殺人事件が!
    また、合間に起こる事件の数々も絡み、
    複雑な人間模様は縺れる毛糸玉の如し。
    主人公の平四郎を筆頭に、お菜屋のお徳、岡っ引きの政五郎、
    成長した弓之助とおでこ等、お馴染みの人物に加え、
    若き切れ者の同心・信之輔、ご隠居・源右衛門が加わり、
    難事件に挑む。
    嫉妬、欲、恨みつらみは多々あれど、だからこその人間。
    富札一つだって、身を持ち崩す者あり、身請けで女を救う者あり。
    加えて、男女の愛憎は絡みに絡む。
    この巻のラストで捜査は思わぬ方向へ・・・特に佐多枝の話は。
    殺人事件と合間に起きた幾つかの事件が、どう決着を迎えるのか、
    下巻が楽しみです。

  • 登場人物が多いので、忘れちゃう。 外国小説みたいに、カバーの裏側に登場人物の簡単な紹介が欲しいところ。
    ストーリー展開がゆっくりしてますね。

  • 宮部みゆきの時代小説。
    2006年から2009年にかけて連載され2011年に刊行された近作です。

    「ぼんくら」の2年後、「日暮らし」の翌年で、主要な登場人物はそれぞれ年を重ねました。特に弓之助は声変わりこそまだではあるものの、大人へと変わる直前、もうすぐ元服という微妙なお年頃になりました。風鈴売りを見かけたときのエピソードなど、「もう子供ではない」ことに読者としても彼の子供時代を懐かしく思いだし、何となく親目線になって泣きそうになりました。そう言えば「日暮らし」までは度々あったおねしょも、今作では治ったようです。

    「ぼんくら」「日暮らし」と同じく、平四郎を初めとする魅力的な登場人物が行き交う世界がじっくり語られます。主人公の人間味満載・平四郎と探偵役の超絶美少年・弓之助、かつての「鉄瓶長屋の心」お徳、回向院の茂七の一の子分・政五郎、人間離れした暗記力の持ち主・おでこなどのこれまでの登場人物に加えて、弓之助と正反対の超絶醜男でコンプレックス持ちの間島信之輔、平四郎に輪をかけてマイペースの本宮源右衛門、お徳に取って代われそうな程の人情味の持ち主・丸助、不足しがちな美少女成分担当・史乃など、新たなキャラクターも増えました。

    特に今作の相棒役で弓之助よりも目立っている間島信之輔は、切れ者で爽やかで生真面目な好青年なのに金壺眼で端役のおさんやおもんにすら色恋の対象と認めてもらえないほどのご面相。『顔の輪郭がごつごつしている。右と左で耳の高さが違う。ついでに言うなら眉毛もそうだ。この若さで髪が薄いのか、あるいはひどい猫毛なのか、髷は小さくぺったりとしている。そのくせ、髭の剃り跡だけは青々と濃い。鼻はだんびろで唇は分厚い。とどめはいわゆる金壺眼だ。落ちくぼんだ眼窩の底に黒目が収まっている様は、巣の奥に隠れて頭だけちょっぴりのぞかせている虫でも見るようだ。笑うと金壺の口を絞ったようになって皺が寄る。』と、作者が念入りに描写するほどです(醜男の容貌をここまで念入りに描写した文章は初めて読みました。他が秀でている俊英であればこそ一層気の毒になるその短所は、超絶美少女(こちらは『濃いめの型押し柄の小袖の襟元からほっそりとした首がのびて、その上に、お雛様のように小さく整った顔が乗っかっている。』と、描写にそれほど気合いが入っていません。作者は同性には厳しいのかもしれません)と対峙し、あっさり惚れ込んでしまったことで、なお一層強調されます。

    そして「ぼんくら」が井筒平四郎の、「日暮らし」が弓之助とおでこのお話だったとすると、この「おまえさん」は信之輔のお話です。彼の劣等感、失意と落胆から下巻での立ち直りまで、読者としては感情移入しやすいキャラクターだっただけに信之輔の気持ちで読み通すことができました。プライベートでも幸せになれますように。

    以前にも書いたことですが、作者が大家になって「世界」をいくらでも作り込めるようになったので、読者としても安心して楽しむことができるようになりました。ゲームで言えば隅々まで作り込まれたオープンワールドを、本筋とは離れて寄り道しまくるような楽しみ方ができます。おさんやおもんのようなサブキャラクター、弓之助の兄太一郎のエピソードや平四郎の地口など、脱線気味に饒舌な作者の語りに先を急がずに付き合っていると、この世界がどんどん楽しくなってきます。

    信之輔と史乃の、どう見てもハッピーエンドになりそうにない関係がどうなるか、果たして弓之助は正式に養子として迎えられるのか、気になりながら下巻を読んできます。



    初出
    「おまえさん」小説現代 2006年8月号~08年9月号
    「残り柿」 小説現代2006年11月号~09年1月号
    「転び神」 小説現代2009年2月号~4月号
    「磯の鮑」 小説現代2009年5月号~7月号
    「犬おどし」 書き下ろし

全334件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

宮部みゆきの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部 みゆき
宮部 みゆき
三浦 しをん
伊坂 幸太郎
宮部みゆき
宮部 みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×