おまえさん(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.13
  • (363)
  • (458)
  • (197)
  • (13)
  • (3)
本棚登録 : 2834
レビュー : 329
  • Amazon.co.jp ・本 (616ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770736

作品紹介・あらすじ

父親が殺され、瓶屋を仕切ることになった一人娘の史乃。気丈に振る舞う彼女を信之輔は気にかけていた。一方、新兵衛の奉公先だった生薬問屋の当主から明かされた二十年前の因縁と隠された罪。正は負に通じ、負はころりと正に変わる。平四郎の甥っ子・弓之助は絡まった人間関係を解きほぐすことができるのか。『ぼんくら』『日暮らし』に続くシリーズ第3作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 南辻橋のたもとで、斬り殺された身元不明の亡骸が見つかる。
    それから間もなく、かゆみ止めの新薬「王疹膏」を売り出していた瓶屋の主人、新兵衛が斬り殺される。新兵衛亡きあとには、美しい後妻の佐多枝と、前妻との間の美しい一人娘・史乃が残された。
    本所深川の同心・平四郎は、調べに乗り出す。斬り口の類似から、この二つの事件の関連を調べるうちに、過去の因縁にたどりつく。

    ぼんくら、日暮らしに続くシリーズ3作目。
    美形の甥っ子・弓之助、若き同心・信之輔、岡っ引きの政五郎、記憶力抜群のおでこ、お菜屋のお徳…。
    なじみの面々に、新しく登場する玄徳医師や十徳長屋の丸助、信之輔の大叔父・源右衛門、弓之助の兄の淳之助らがからんで、ますますにぎやかに。
    キャラが立っていて、ストーリーも面白いのは面白いのです。
    が、前半で伸びに伸びた枝葉を、後半はちまちまとチョキチョキする感じで、だいぶ失速してしまいました。
    おでこのお母さん、おきえの話や、富札で大当たりして人生が変わった仙太郎の話、弓之助のお家騒動、お六と彦一の話(←前の話覚えてないし…)は、どれも本筋がわからなくなってしまうくらいの長さで、もういっそのこと、「おまえさん」は1冊にして、その他の話を短編集として別冊にしたらよかったのでは、と思いました。
    多少つながりはあるとはいえ、事件としてはほぼ別だし。色んな伏線を回収しているうちに、弓之助の冴えに冴えた推理の位置づけも曖昧になってしまってたのが残念です。

    目立たないけれどよかったのは、平四郎の奥方。ご慧眼でした。
    “「罪というものは、どんなに辛くても悲しくても一度きれいにしておかないと、雪のように自然に溶けてなくなることはないのだと、父は申しておりました。」”
    そして、不細工、不細工、不細工としつこいほどに表現されて(金壺眼だとか表現の仕方は色々ですが)、ちょっと可哀想になる信之輔でしたが、苦難のときを乗り越えて、同心として大きく成長し顔つきも変わり。
    彼の今後の活躍が楽しみになり、どうか素敵な出会いもありますようにと思うのでした。(にしても、彼の恋心は、平四郎が煽りに煽ったんじゃないのー、可哀想に。)

  • 今年の「読み初め」にしようと思って我慢していた、とっておきの一冊。元日と二日にわたって読みふけって、たっぷりと堪能した。こういう全幅の信頼感を持って読んでいける作家さんはちょっと他に思いつかない。素晴らしかったです。

    時代小説は苦手で、宮部さんの作品も現代物が好きだ。でも、本作に連なるシリーズは楽しんで読んできた。いつも感じるのは、登場人物がみんな生きていて、ほんの端役に至るまで人間としての奥行きがあることだ。のっぴきならない「その人らしさ」が立ち上ってくるようだ。特に、善人とは言えない人たちの描写に力がある。「人間」というものを抉りだしていくその筆致は、現代物ではしばしば胸に痛すぎる気がしてしまうが、こういう時代物ではワンクッションある感じがして、ほっとする。

    善人といえば、本シリーズおなじみのお徳さんがその代表だろうが、本作では丸助さんという、これまた絵に描いたような「いい人」が登場していて、しみじみ温かい気持ちにさせてくれる。こういう人たちが、宮部作品では実は主役なんじゃないかといつも思う。こういう人間を書きたいから小説を書いているんじゃないかなあと勝手に思ったりしている。

    考えてみると宮部さんの書かれるものではいつもそうかもしれないが、本作では特に、印象的で語りたくなる人物が目白押しだ。老番頭の善吉さん、本宮源右衛門、弓之助の兄淳三郎、玄徳医師、夜鷹のお仲…、まだまだいるが、どの人をとっても主人公となる物語が作れそうだ。いやまったく素晴らしいです。

    • じゅんさん
      ホントに!ホントに!(*^_^*)
      ほんの脇役である人までが、しっかりと血肉を持った人物として立ちあがってくるのが嬉しいですよね。
      玄徳...
      ホントに!ホントに!(*^_^*)
      ほんの脇役である人までが、しっかりと血肉を持った人物として立ちあがってくるのが嬉しいですよね。
      玄徳医師だって、お仲だって、顔の輪郭や佇まいまで私の頭の中に浮かんでますもの。

      そっか、お徳さんや丸助さんが主役・・。(*^_^*)うんうん、そんな風に思うと、新年早々気持ちが温かくなります。
      たまもひさん、どうぞ今年もよろしく!でございます。
      2012/01/03
    • たまもひさん
      こちらこそ、今年もよろしくお願いいたします。
      昨年は多くの方にとって大変な年になってしまいました。被災者の方を思えばたいしたことはないので...
      こちらこそ、今年もよろしくお願いいたします。
      昨年は多くの方にとって大変な年になってしまいました。被災者の方を思えばたいしたことはないのですが、私個人もちょっと辛いことの続いた一年でした(たなぞうがなくなったことも、その中のちっちゃな一つかもしれません)。
      今年はなんとか良い年になってほしいなあと祈りながら、力づけられるお話をまず読みたいと思い「おまえさん」をとっておいたんです。本当に宮部みゆきさんはすごいですね。
      今年もたくさんお話しさせてください。今年の初コメントありがとうございました。
      2012/01/04
  • 男はどこまでも莫迦で。
    女はどこまでも嫉妬やきだ。
    どっちも底なしだ。
    俺はもう勘弁してもらうよ。

    長い1200頁以上にも及ぶ本格時代推理モノの今回は、本格的な恋のあれこれの話だった。

    人間の心は底なしである。

    宮部の小説はいつも長いが、描いていることはいつもその一点だ。

    雑誌での連載は09年に終わり、後は終章を描くだけになっていたのに、今まで延びてしまい、「申し訳ないから……」と単行本と文庫同時発売になったいきさつは、推測するほかはないが、宮部が恋の落し処に未だ迷っているという証左なのだ、と私は思ったね。同じ年齢(とし)の私が思うのだから、間違いは無いと思うよ。

    白髪の多い薄い鬢を指で掻いて、源右衛門は初めて恥じ入ったようにうつむく。
    「やはり、わからん」
    むしろ学問を続けるほどに、わからないことが増してゆくようだった。
    「それでも、儂は学問をしてよかった。人というものの混沌が、その混沌を解こうとして生み出した学問が、儂にわからぬことの数々を教えてくれた」

  • 「ぼんくら」「日暮らし」に続くシリーズ三作目。ぼんくら同心・平四郎や煮売り屋のお徳、政五郎親分など大人たちの相変わらずぶりと、あれ?と言った感じに書かれる弓之助やおでこさんの成長談がとても楽しいです。宮部さんって!!!!と、いくらでも!!をつけたくなるくらい面白い!&上手い!のお話でした。

    これまでのお馴染みのメンバーに加えて、人目をひくくらいにぶさいくな若手同心・信之輔や、死体の検分を好むご隠居・源右衛門、そして、事件に関わる瓶屋や大黒屋の面々など、新キャラの人々がほんの端役に至るまで、その心理の動きを丁寧に追われ、気持ちの奥底に持っている屈託、歪み、嫉妬などを焙りだされる。しかもしかも!そんな暗いものを提示しているというのに、結局は人間の温かさや優しさをたっぷり感じさせてくれる宮部さんには、もう脱帽、というしかないです。

    一行、一行がよく練られていて、速読のヘキがある私(これ、すっごくイヤなんだよね、自分ではなんとか改めたいと思っているんだけど)が速読できなかった、という嬉しさ。
    だって、台詞の一言や、(そもそも、台詞にカギカッコを使うか否かも含めて)地の文の中の一単語、にいたるまでじっくり味わって読まないとその人物の気持ちが本当には読者に伝わらない、というのがはっきりわかるから、これは何がなんでもゆっくり読まないと、と思わせられるんだものね。

    分厚い上下二巻の物語で、事件の背景の複雑さを解明しながらも、一番のテーマは、人を恋うる気持ちなんだなぁ、と。

    色々な恋が描かれ、それぞれの切なさ、どうにもならなさ、に悲しくなったり、幼い恋にふふっと気持ちが和むと同時に、でもまたやるせなくなったり。う~~ん、上手く言えない!!

    “おつむりと顔のいい”弓之助の、一見ちゃらんぽらんな兄・淳三郎がとても好きだった。
    彼の人たらしぶりにはもう、ホント、参っちゃってね。
    まだこのシリーズは続くんだろうから、淳三郎のその後が読みたくてたまらない。

    宮部さん、また、お願いしますよぉ~~~!(*^_^*)

    • じゅんさん
      >どんぐり様
      (*^_^*) (*^_^*) どんぐりさんとは気が合うなぁ、と思っていたら速読のヘキまでご一緒でしたか。人からは速く読めて...
      >どんぐり様
      (*^_^*) (*^_^*) どんぐりさんとは気が合うなぁ、と思っていたら速読のヘキまでご一緒でしたか。人からは速く読めていいね、なんて言われるけどせっかくの楽しいお話をあっという間に読み終えてしまうのが勿体なくて。
      うふふ・・どんぐりさんも淳三郎にやられちゃいましたか。商売をやっても、女性関係でも(*^_^*) うまくいきそうな淳三郎。いいですよね~~。うん、弓之助より大人の分、奥行きがある感じ、そして弟の賢さを可哀想がっている優しさも好きでした。
      私、「おまえさん」は今年のベスト5に入る(あとの4作は決めてないけど)こと間違いなし!です。
      2011/10/06
    • そよかぜさん
      じゅんさん、お久しぶりです。
      登録後じゅんさんのレビューを読んだらまさにまさに私の思いと同じで、「そうそう、そうなのよ!」と握手したいくら...
      じゅんさん、お久しぶりです。
      登録後じゅんさんのレビューを読んだらまさにまさに私の思いと同じで、「そうそう、そうなのよ!」と握手したいくらいです(笑)
      淳三郎は隠し玉的存在でしたね。
      ここでこんなに魅力的な人物が登場するとは、と思わずうなちゃいました。
      三部作っていっていますが、これで終わりじゃないですよね。(ってじゅんさんに詰め寄ってどうする)
      私も宮部さんに「またお願いしますよ~~~!」って言いたいです。
      2013/02/03
    • じゅんさん
      >そよかぜ様
      お元気でしたか!(嬉)こちらこそご無沙汰してしまって。
      ね、ね、ね!宮部さんって優しい&巧いですよね。人間を見る目に奥行があっ...
      >そよかぜ様
      お元気でしたか!(嬉)こちらこそご無沙汰してしまって。
      ね、ね、ね!宮部さんって優しい&巧いですよね。人間を見る目に奥行があって、温かくて。
      淳三郎、私、現実の世界であったら間違いなく恋しちゃいますね。ゴメンね、なんて言われて玉砕しちゃうだろうけど。(大汗)(*^_^*)
      2013/02/03
  • 手に手を取って姿を消した二人、消えた娘を想う若い同心、その他もろもろ番う男女と居場所のない者のお話を散りばめながら人斬りの事件は解決を迎える・・・

    あ~、丸助おじさんが癒し・・・。
    今回お徳さんはひたすら美味しい料理をふるまうおかみとして登場。もっと長屋のしっかりもののおばちゃんとしての彼女が見たかったなぁ。弓之助のお兄ちゃん淳三郎がいいキャラとして新登場。
    分厚い上下巻でしたが、宮部センセは一人の人間を描くのでもある時は人のいい人物としてまたあるときは卑小な輩として両面を描くようにしているのかしら。
    単なる悪役でもなく、ただの気弱な運のない人でもなく。
    描かれ方がぶれなかったのは平四郎さん、奥方、お徳さん、弓之助&三太郎(おでこ)&淳三郎兄ちゃん、政五郎夫婦、丸助おじさん。
    この人たちは役割が固定しているからブレないのかな。
    星がみっつなのは、下手人が何を考えどういうつもりでそうしたのか、また思い違いを誰かが正したりしなかったのが悔しいのでこんだけです。
    恋ってそんなに人を狂わせるものなのかしら。
    共感できず。

  • 宮部みゆきの時代小説。「ぼんくら」「日暮らし」に次ぐシリーズ3冊目。
    2006年から2009年にかけて連載され2011年に刊行された近作です。

    「ぼんくら」の2年後、「日暮らし」の翌年、同じ舞台で前作以前から登場しているキャラクターと近作で新たに登場したキャラクター、いずれ劣らず魅力的な彼ら彼女らのエピソードが一つ一つ丁寧に描かれます。
    こういう作品を表すのにいい言葉はないのか見回してみて、どうやら「群像劇」が一番しっくり来るのではないかと思いつきました。

    本作では生薬を商う瓶屋にまつわる事件を、人情味溢れる井筒平四郎と切れ者超絶美少年弓之介という二大主人公にとどまらず、その周りのキャラクターとの関わりを通して描きます。
    試しに、思いつくままに登場人物を書き出して見ます。
    井筒平四郎、弓之介に加え、名前が与えられていない平四郎の細君の存在感が増しています。弓之介の生家からは、新たに四男弓之介の上の兄、三男の淳三郎が登場人物に加わり、今作特に下巻ではやや影の薄い弓之介を差し置いてその世慣れた振る舞いで読者を篭絡します。
    回向院の茂七親分チームでは、相変わらず圧倒的な存在感を放つ政五郎は「女」に押され気味で、一方おでこの三太郎は異能を活かした便利なツールであったはずが、「日暮らし」に増して扱いが大きくなり、生みの母おきえのエピソードにとどまらず彼女すらできそうな勢いです。
    「鉄瓶長屋の心」の二つ名を持つお徳は煮売り屋から大出世を果たし、前作からの2人に加え本作で3人目の使用人を抱え、随所に美味そうな料理や弁当を手配しています。前作から登場している彦一とお六は所帯を持って一膳飯屋を営むことになりそうです。さらにお徳の男版の丸助は、調子のよい丸助節を駆使し、読者の心をほっこりさせてくれます。
    そして信さんチームでは、本作の最重要人物といっても過言ではない「金壺眼」間島信之輔と本宮源右衛門。それぞれ莫迦な男と居場所のない男という、本作で繰り返し語られるテーマを体現しています。
    最後に美女トリオの史乃、佐多枝、女差配人おとしは、それぞれ「女」として容姿にコンプレックスのある信さんを苦しめます。特にみすずに次いで超絶美少女枠に収まった史乃が、不幸へと一直線に向かう道を誠実な男の手を振り切ってまで歩み続けるさまは、乃南アサの「結婚詐欺師」を思い出しました。

    ほんの少し振り返っただけでこれだけたくさん思いつく登場人物一人ひとりにつき、その人となりが語られ、事件との関係が明かされ、登場人物同士がかかわりあって世界がどんどん厚みを増していきます。各キャラクターに十分な紙幅を割き、先を急がずにじっくりとと語る作者の姿勢からは大人気作家となった余裕すら感じられます。

    自分は、そんな群像たちの中で、誰よりも信さんこと間島信之輔に肩入れしながら読みました。むき出しのコンプレックスにごしごしと塩を擦り込まれるような体験を通じて町方役人の顔になった信さんと一緒に酒でも飲みたいと思う一方で、擦り込んだ側が自らが選んだはずの不幸に落ち込んだのを見て、ちょっと溜飲を下げ、その後、うんと遠くへ行ってしまったことに歯噛みしました。ああいけないいけない、こんな気持ちが募るとネットリンチに参加するようになってしまうかもしれません。

    まだまだ語りつくされていないこの世界、何よりも弓之介の養子問題が決着していませんし、新キャラ淳三郎と一回り成長した信さんを見てみたいですし、おとく屋二階の耕人堂の様子も気になります。
    「初ものがたり」のあと書きにもあったように、ゆっくりでいいので、これからも語り広げていただきたいと切に希望しておきます。



    初出
    「おまえさん」小説現代 2006年8月号~08年9月号
    「残り柿」 小説現代2006年11月号~09年1月号
    「転び神」 小説現代2009年2月号~4月号
    「磯の鮑」 小説現代2009年5月号~7月号
    「犬おどし」 書き下ろし

  • このシリーズは本当に登場人物の人物造形が魅力的。新たに登場した弓之助の兄、淳三郎がまたとてもいい。軽い、女あしらいが上手い、顔もいい、一見馬鹿に見えるけどそうではない。読者としても彼の魅力はよく分かるし、普段は大人びている弓之助がいちいち彼に突っかかるのも微笑ましい。
    そして間島信之輔が思い悩むシーンが多かった今作だが、彼の苦しみもよく分かる。この下巻は普段より恋愛に焦点が当たっていたようだが、お徳の「幸せ者のそばには必ず気の毒な者がいる。それは仕方ないことなんだから、それに一生囚われたままでいる方が不幸だ」という台詞が胸に染みた。
    ただ、ミステリーとしては前作『日暮らし』の時も感じたことだが、あまりにも弓之助の推測頼り過ぎるのでは。彼にも間違うことがそろそろないと割に合わないと思ってしまった。
    とりあえず弓之助ロスになってしまっているので、次回作に期待したい。いつか出るのかな、、

  • 3シリーズの中で1番面白かった。
    シリーズごとに味のある新しい登場人物がが次々と出てくるのも、お話を飽きさせずにさせている。

    さすが宮部さんというべきか、この2冊の本の中に様々な人が出て来て、それぞれに深い物語がある。決してその物語同士が絡み合っているわけではなく、全くの別のお話。
    でも、その深いところにある因縁は同じだったり、その出来事を通してある登場人物が人間として成長して行ったり…そして最終的に3人の人殺しの犯人追求に至ります。

    決して難しいわけではないが、とても複雑に構成されたお話。
    読み応えがあります。

    私が1番好きなお話は、おでこの母親、おきえのストーリーでしょうか。
    ただ、冷たい母親ではなかった。辛い決断をすることもあるけれど、それを背負って行く覚悟がある女性の強さ、そして母としてのなくすはずのない子を思う優しさ。胸が温かくなるというよりは、心が引き締まる思いがした。

    このお話をはじめ、宮部さんのお話には色々な生き方をしている女性が登場する。
    夫に死なれ、お菜やを営むおせっかいのお徳、子供を捨てて女として生きて行くおきえ、2人の夫に死なれるさたえ、夜鷹のお継とお仲、失恋する娘、好いた人を亡くす娘…
    どんな境遇にあってもいづれも、心の根っこは温かい。
    自分もそうでありたい、と思った。

  • 実に良かった!! もうお見事というよりほかない!

    上下巻かなりのボリュームだが、読んでいる間一度もだれることなく読ませる力がある。
    読んでいることが楽しく、しかも読み飛ばすのではなく丁寧に読ませるのだ。もったいなくて読み飛ばすことなどできない。

    登場してくる人物それぞれが丁寧に描かれ、誰一人として端役といえない気がしてくる。
    人の気持ちの歪みや暗い闇の部分も書かれているのに、読んでいる間また読後になんともいえない温かさを感じさせる。
    これぞ宮部みゆきという作家の真骨頂だろう。

    一人の人間の持つ様々な面、年をとってからの生き方、若さゆえの迷いや悩み、どうしようもない想いへの決着のつけかた。
    その他にも様々あったと思うけれど、どれも深く胸にしみてくる。
    自分もある程度年をとった今読んだからこそのこの思いかもしれないけれど。

    この本を読めて幸せでした。宮部さん、ありがとうございました!!

    • カレンさん
      いつか読もう・・・と思っているうちに忘れていました。五つ★だぁ。
      宮部さんの時代物にハズレは無いと思っておりますが、そんなに良かったのです...
      いつか読もう・・・と思っているうちに忘れていました。五つ★だぁ。
      宮部さんの時代物にハズレは無いと思っておりますが、そんなに良かったのですね。
      今度こそ忘れないうちに予約しま~す。
      (今頃のコメントで失礼しました)
      2013/02/23
    • そよかぜさん
      カレンさん、ご無沙汰しております。
      この本、本当に良かったです!
      最近は宮部作品のなかで時代物が一番好みですが、これはその中でも一番かも...
      カレンさん、ご無沙汰しております。
      この本、本当に良かったです!
      最近は宮部作品のなかで時代物が一番好みですが、これはその中でも一番かもしれません。
      是非おすすめしたいです!
      2013/02/28
  • みっちり書き込まれた充実の時代小説。
    第三弾ともなると、元気ないつものメンバーだけでなく、関わり合う多くの庶民達もいきいきしてきますねえ。
    二十年前の因縁まで含めた複雑な人間関係を解きほぐしていくと‥

    瓶屋(かめや)の主人が殺された事件のあらましがわかってきたと、同心の平四郎は関係者を集める。
    話をするのは、平四郎ではなく、甥の弓之助。
    ほんの子どもだが大したおつむりの持ち主なので、笑わずに聞いてみてくれと。

    女ながら差配をつとめるおとしも呼び出され、納得いかない表情。
    気丈でいささか出しゃばりだが、それなりの理屈もある。
    瓶屋の後妻の佐多枝が印象的。
    夫を亡くして程なく隣家に再嫁し、病がちで離れに暮らしているといういかにも頼りなげな女性だったが。実は意外に芯がありそうなのだ。

    瓶屋新兵衛亡き後は、一人娘の史乃(ふみの)が若いながら店を仕切っていた。
    父の再婚で、父との間に溝が出来たらしい‥
    再婚のいきさつを誤解したままだったせいもあったのだ。

    弓乃助の名推理や、おでこの記憶力で主に話が進んでしまうのでは物足りなかっただろうけど、そんなことはなく、大人達もそれぞれに活躍。
    少年には理解出来ないだろう男女の機微も描かれて、読み応えたっぷり。

    十徳長屋に住む丸助という老人もいい味出してます。
    そこへ弓乃助の兄で、河合屋の三男・淳三郎が登場。
    弓乃助ほどの美貌ではないがむしろこれぐらいの方が誰にでも好かれるだろうという外見。明るい性格で、絵に描いたような遊び人だが、女にはもてまくり、どこにでも溶け込む。
    平四郎は、これは探索に役立つとさっそく頼むことに。
    今後の登場も楽しみです。

    若き同心の間島慎之輔の物語ともなっていて、真面目一方の堅物だが、まだあまりにも青すぎて、知らず知らず私情で動いてしまった。
    そういう思いも経て、同心の顔になっていく。
    良い終わり方でした。

全329件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

おまえさん(下) (講談社文庫)のその他の作品

おまえさん(下) 単行本 おまえさん(下) 宮部みゆき

宮部みゆきの作品

おまえさん(下) (講談社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする