モダンタイムス(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 11567
レビュー : 973
  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770798

作品紹介・あらすじ

5年前の惨事-播磨崎中学校銃乱射事件。奇跡の英雄・永嶋丈は、いまや国会議員として権力を手中にしていた。謎めいた検索ワードは、あの事件の真相を探れと仄めかしているのか?追手はすぐそこまで…大きなシステムに覆われた社会で、幸せを掴むには-問いかけと愉しさの詰まった傑作エンターテイメント。

感想・レビュー・書評

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  • 浮気をしたら、妻の依頼した拷問のお兄さんがやってくる…。そんな恐妻家のシステムエンジニアは、謎の失踪をとげた先輩五反田の後をついで、発注元すらわからない出会い系サイトの仕様変更を請け負うことになる。
    そのサイトのシステムの謎を解析するうち、複数の検索ワードに行き当たる。その検索ワードを調べた者に、次々と不幸が襲っているのだ。

    伊坂ファンは多いけれど、私はこれまでぴったり嵌ったことがなくて、周囲の評価や人気とのギャップに、何で私にはわからないのだろうとこっそり「伊坂コンプレックス」だった。
    この本は、その伊坂コンプレックスを払拭できたかも?と思わせてくれた。これから好きになるかも、みたいな仄かな予感!わくわく。(と書くと恋みたい)
    ぽんぽんとテンポのよい会話は気持ちよく、大きなうねりの中で翻弄されながら少しずつ真実に近づいていく流れが絶妙で、面白かった。

    非現実的な出来事が次々と起こり、妙に飄々とした主人公がなぜかそれに巻き込まれていく…という流れは伊坂流そのものと思う(というほど伊坂さん読んでないけど、たぶん)。
    私がこのモダンタイムスにしっくりきたのは、伊坂さんがあとがきでも「この作品にとって重要なのは、事件の真相を隠そうとする力、その力に翻弄されることで、真相そのものではない」と書いているように、メッセージ性がはっきりしていたからだろう。

    “誰それが悪いっていうんじゃなくてな、『そういうことになっている』としか言いようがない出来事であふれている。”
    “アリは賢くないが、コロニーは賢い”
    “真実は、姿を変える。見えているものがすべて本物とは限らない。”

    そして、ツボだったのは奥さんですね。
    いかに妻に気を遣い恐れているかを話す上司たちの話を聞き、「恐妻家にプロアマがあるとすれば、あなたがたはアマもアマ、アマ中のアマだ」と内心毒づく夫(主人公)が面白い。
    世の中で一番嫌いなのは浮気。何事にも動じず潔く、ありえない破天荒っぷり。こんなスーパー奥さんになってみたい(笑)。
    “「人間は大きな目的のために生きてるんじゃないの。小さな目的のために,行動したら?」”
    ここぞというところの台詞がかっこいい。
    最初は単なる恐ろしいだけの奥さんだったのが、事件に巻き込まれていくうち、主人公の奥さんを見る目がどんどん変わっていくのもいいなぁと思った。

    あとがきで、作中の作家を「井坂好太郎」としたのは、単純に小説家の名前を考えるのが面倒だったから自分の筆名を変化させただけだとある。
    でも、作中の「井坂好太郎」の台詞は、伊坂さんの気持ちが多分に込められていたと思う。

    「小説は、一人一人の人間の身体に沁みていくだけだ。」「小説で世界なんて変えられねえ。逆転の発想だ。届くかも。どこかの誰か、ひとり」

  • 伊坂さんの作品の中で一番好きかも。
    全体の感想はうまくまとめられないので、とりあえずひとつだけ。

    最後のシーンがすごくいい。
    「勇気は彼女が持っている。俺がなくしたりしないように」
    この台詞、たまらなく好き。

  • ある言葉を検索した人は皆襲われたり事件に巻き込まれ、友人井坂には新作原稿を託され、たどり着いた先には可愛い老女と元美人モデルがいて、刺客は何故か拷問され、古い映画にヒントを探す主人公。

    そのうえ井坂には連絡が取れず、結果的に彼から託されたメッセージをもとに、失踪していた先輩と共に国家の英雄を待ち伏せ。

    この辺りからちらりと、ゴールデンスランバーに似ている…と思ったら、やはり同時期に書かれた作品であり、あとがきには「 二卵性双生児のような作品 」とあった。

    システムエンジニアだった伊坂幸太郎本人の経歴も生かされているような、不思議に色々な要素が入り組んだ作品でした。
    「 そういうことになっている」とすべてがシステムの一部にされている不気味さはなんだかリアルで生々しい。

    「 人間は大きな目的のために生きているんじゃない、もっと小さな目的のために生きている。 」
    『 小説で世界なんて変えられねぇ。でも届くかもしれない、どこかの誰か、一人 』この言葉が印象的。

  • ある複数の言葉を同時検索すると、社会的抹殺の憂き目にあうという話。その裏には国家的プロジェクトが失敗したという秘密が隠されていた。「魔王」「モダンタイムス(上)(下)」の3冊を続けて読んで、作者の伝えたかったことがやっとわかった。「ゴールデンスランバー」にも通じることだが、国家という大きな組織が個人に牙をむいたとき、個人は抗いようがない。今回の場合、さらに「国家命令」を実行に移している個々人には、その忌まわしい事態に加担しているという意識もなく、まさに「モダンタイムス」の歯車のごとく粛々と働いている不気味さ。

  • 村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』を思い出した。
    ソフィスティケートされた社会では、投げた小石が誰にぶつかるか分からない。それは自分に跳ね返ってくるかもしれない。
    作品のテーマはそんな感じ。

    伊坂作品を久々に読みましたが、作品のテンポ感を「そうそう、こんな感じだった」と思い出しながら楽しみました。
    もうちょっと重さが欲しいかな。

  • システムと戦う話。魔王から50年後の世界ということで、安藤潤也くんや詩織ちゃんが出て来ると嬉しい!のにめちゃくちゃ怪しい商会になっててびっくりしたし、主人公の奥さんはプロの恐妻家でかっこよかったです。いやこわいけど。でもすごい強いし、主人公の勇気はおうちに忘れないように奥さんが持っててくれるというのが好きでした。あと岡本くんの痛えよくそ!っていう場面がなんか好き。

  • 『モダンタイムス』読み終えました!
    なんだか、『ゴールデンスランバー』に雰囲気似てるなぁ~と思ったら、
    同時期に並行して書いていたんですね。

    あとがきにも書かれていますが、
    「二つの作品は、生真面目な兄と奔放な弟とでも言うような、
    二卵性の双生児に似ています。」とのこと。

    確かに・・・どちらも国家権力とか社会システム全体といった
    目に見えない大きな敵に立ち向かっているところは同じ。
    ただ、『ゴールデンスランバー』はひたすら逃げる!のに比べて、
    『モダンタイムス』は真正面から立ち向かっています。
    そう言うと、『モダンタイムス』の方が面白そうなんだけど、
    私的にはやっぱり『ゴールデンスランバー』の方が面白かったなぁ。

    『モダンタイムス』に出てくる登場人物は、
    超能力があったり、主人公渡辺の奥さんが異常に強かったり、
    (というか、あの奥さんはほんとに何者だったんだろう・・・?)
    伊坂好太郎という女たらしの作家が出てきたり・・・遊び心満載♪
    読んでて楽しかったけど、感動!とかそういう感じではないかな。

    決定的な悪者(独裁者)がいない中で、
    知らないうちに”そういうことになっている”ってあり得そうで怖い。。
    細かいところでスッキリしない部分はあるけど、
    それでも伊坂さんが伝えたいメッセージはわかるような気がしました。

    「播磨崎中学校 個別カウンセリング 安藤商会」
    これで検索すると、大変な目に遭う・・・という話なんですが、
    思わず検索しちゃいました。(笑)
    そしたら、めっちゃ出てきた。同じように検索する人多いってことですね♪
    出会いすぎちゃうくらい出会っちゃうサイト が出てきてびっくり。
    ↑講談社さんもなかなかやりますね。(モダンタイムスのサイトです)

  • 社会・国家という巨大なシステムに抗う物語。個人で立ち向かうには余りにも強大すぎるものを前に人間は諦観しがちだが、その中で自分の手が届く範囲だけでも、もがき抵抗する姿は勇ましい。
    ただ社会のシステムの1部品として生きて行けば平穏に生活する事ができる。しかし罪悪感も無く行った行動が、巡り巡って誰かを傷つけいる可能性があるのだとしたら、それは不気味で恐ろしい事だ。故に主人公の最後の選択も私は強く共感できた。

  • 人は、知らない事があったら、まずネットで検索する。

    けど、この本を読むと、検索をするのが怖くなる。

    検索したことで、自分の興味を持っていることを知られたり、誰かに情報を盗まれたり、と個人情報が漏れてしまうんじゃないかと不安になる。

    個人情報が漏れたことで、自分の身に危険が。それだけでなく、家族、身近な人達の身にまで危険が起こってしまうのではないかと。

    最近は情報社会で便利になったけれど、逆に危険なこともたくさんあると、改めて思った。




    印象に残った言葉。
    "人生を楽しむには、勇気と想像力とちょっぴりのお金があればいい"


    色んな小説にも引用されているチャップリンの台詞。

    逃げないで、恐れないで、踏み出そうとする勇気。

    それから、物事をじっくりと考える力、相手を思いやる心(イマジネーション)。

    それとちょっぴりのお金。
    有りすぎても、無さすぎても不幸になるのがお金。ちょっぴりあるくらいが一番幸せになれると思う。

    この言葉は、人生を支えてくれる言葉だな、と思った。

  • 上下巻読了。
    面白い!ラストは一気読みでした。

    最初、主人公の状況には救いがないし…全体的に暗くよどんだ雰囲気だし…。苦手だな。読むの止めようかな…。と思ってました。
    どのへんからだろうか。それがいきなりはまってて自分でもびっくり。そのまま後半はもうまさに一気読み!
    面白くて面白くて、ここで止まるのはもったいない!って。もうちょっとだけ!って、結局睡眠時間削られました(笑)

    そして相変わらずの軽妙な会話。つい真似して使いたくなる(実際日常で使ってたらすげー嫌なヤツになると思いますが(笑))
    でもこれだけはいつか言ってみたい。
    「その真相は気に入りません。チェンジです」って。
    痺れたなぁ~。

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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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