- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062770880
作品紹介・あらすじ
「私はこれを読んで、小説家になった」角田光代
生まれたばかりのモモちゃんのところに、野菜たちがお祝いにやってくる! ママに怒ったモモちゃんが乗る電車が空を飛ぶ!? 優しく温かい物語の中に、生と死、結婚と離婚など“人生の真実”が描かれるモモちゃんシリーズが、酒井駒子の絵と共に文庫に。『ちいさいモモちゃん』『モモちゃんとプー』収録。解説・角田光代
※本書は、小社より1964年に刊行された『ちいさいモモちゃん』と1974年に刊行された『モモちゃんとプー』を一冊にまとめ、修正のうえ文庫化したものです。
感想・レビュー・書評
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モモちゃんは元祖ワーママの子ども、つまり保育園に通う子どもの本だという紹介をどこかで見て、読んでみなきゃ、と思った。
松谷みよ子さんの絵本は何冊か読んだことがあったけど、絵本よりもこのような物語形式の方が、松谷みよ子さんの魅力がより詰まっている!と感じた。
「影をなめられたモモちゃん」は、実際にお嬢さんがチューインガムを喉に詰まらせて死にかけた実話に基づいているらしいのだけど、そのエピソードが影をなめるウシオニの仕業として物語化されていて、なんだこの発想は?!と思った。あとがきに「みなさんのおうちの物語も書き留めてください」という趣旨のことを書いていらっしゃるけど、こんな芸当とてもじゃないけどできないぞ?!
このファンタジックなんだけどリアルな世界観がすごく楽しかった。子どもとして読んでも楽しかっただろうなと思うけど(人形の写真が表紙のハードカバー版見覚えはあるんだけど、小さい頃の私は本作を読んだことあったかな…?少なくとも内容は全く記憶にない)、大人の今読んでもとても楽しい。
他のお話にもいくつかコメントを…
「クレヨンドドーン」が刺さった。これ実子に言われたら一緒に泣いちゃうと思う…
(引用)「でももし(戦争が)そばまできたら、ママが、だめ!って怒るから、ね」
「でも、どこかでしているんだよ、それなのに、だめ!ってママ、いわないの?はやくいわないと、みんなしんじゃうよう」
ママの膝で、モモちゃんは、いつまでもしゃくりあげていました。
「モモちゃん怒る」では働いていて保育園のお迎えが遅くなったママへの怒りとそれでもママのことが好きなモモちゃんの複雑な気持ちが詰まっていて、
「みんな大きくなって…」では働きながら妊娠していて大変そうなママを支えるモモちゃんの成長ぶりに感動して、
「暗い野原で…」では出産の前々日まで働いていたママの凄さに絶句した……詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「おこってるんですよう」「ぼくじゃありませんよう」
プーがなんともいえずかわいい。
たぶん初めて読むのだと思う、松谷みよ子さんの本。
酒井駒子さんの絵と、長きに渡って読み継がれてきたのであろう、という本が醸し出す貫禄。読んでみたいなと思った。読んでよかった。大人になって初めて読んでも十分面白い本だと思う。
子供の時になんとなく感じていた、何かを怖いと思うどこから来るのかよくわからない感覚とか、見るもの見るもの新鮮で飽かずに見続けるような力とか、そういうものの姿がこういう本を読むと感じられる。そういう言葉にしにくいものが書かれている気がする。
とにかく想像以上によかった。自分が今の年齢で児童文学にこんなに感動させられるとも思わなかった。
角田光代さんの解説もなかなか素敵だ。小学校1年の時にこれを読んで松谷みよ子さんのような作家になりたいと思った、ってすごいな。本当になってしまうのだから。 -
松谷みよ子さんの「モモちゃん」シリーズが、2011年に講談社文庫で文庫版になりました。二十歳以上の人に読んでもらいたい、ということでそうなったらしいのです。もともと6作あるシリーズが2作ずつで1冊になっており、1冊目は「ちいさいモモちゃん」「モモちゃんとプー」が収録されています。
モモちゃんと私との出会いは、たしか幼稚園での先生の読み聞かせの時間でのことだったと思います。
私はモモちゃんのお話をいたく気に入ったようで、親に本を買ってもらって、後続のものまで含めて小学校低学年の頃までにかけて、よく読んでいました。そればっかり読むので親からモモちゃん禁止令が出るくらい、何度も繰り返し読んでいました。
ちいさい頃の私に何がそんなにウケたのか、今となってはそのままの気持ちは思い出せない。
けれど、角田光代さんの巻末解説がこれまた秀逸で(少なくとも、同じようにこどもの頃本書を愛読して大人になって読み返した者同士として評価するなら)、あの頃の読書体験に、可能な限り引き戻してもらえたように思えます。
角田さんに手を引かれて導かれるように、幼稚園の教室へ戻ってきて、板張りの床に三角座りをして、先生の顔と本の挿し絵を見上げると、赤ちゃんのモモちゃんが黒猫のクーをプーと呼んだからクーがプーになったことや、雨じゃないのに長靴をはいて傘をさすモモちゃんのことや、なにか悪いことをしたモモちゃんが押し入れに閉じ込められて泣いていたらネズミの世界に招かれてしまったことなどを、夢中に聞き入っていた自分に少し戻れたような気がします。
角田さんは、モモちゃんの世界を思い出すとき、物語に登場するママやパパは「脚」として思い出されると言っています。それは松谷さんが、こどもの目から見た世界を見事に描いているからだと言います。これには、はーなるほどと唸ってしまった。
いま読んでみると、働きながら子育てしているママ目線で描かれているシーンもたくさんあるのに、確かに私の記憶のなかの「モモちゃんのママ」って、「脚」かもしれない。いま読めばママの人格やママの気持ちも描かれているのに、こどもの頃は、ママとはただそこにある揺るぎない樹のようなものだった。
それがいま、自分が子育てをしている立場で読んでみると、仕事で帰りが遅くなるとモモちゃんが怒っていて、電車に乗ってお空へ行ってしまう話だとか、モモちゃんがウシオニという化け物に影を食べられて倒れてしまったときに、ママがすべて放り出してウシオニを追って駆け出していく話だとか、モモちゃんの妹が生まれる直前まで仕事をしていて体が疲れている感じや、お腹の大きいまま転んでしまったママが暗い野原をさまよう話など、ママの気持ちで読まずにはおれない自分に気づきます。
いやー、読み返してよかった。
あ、もうひとつ。せんそうの話が出てきます。
松谷みよ子さんは1926年生まれ。娘のモモちゃんは戦後生まれと思われますが、「ちいさいモモちゃん」の初版は1964年でベトナム戦争の最中。
今回読んだ「ちいさいモモちゃん」では、モモちゃんがテレビでせんそうを見て、おともだちのコウちゃんと一緒に画用紙とクレヨンを持ってせんそうをとめにいくというお話が入っていました。
もっと先のシリーズでも、もう少し大きくなったモモちゃんがせんそうはんたいのデモをやってけいさつと衝突するシーンがあったような、記憶があります(そう、私が「デモ」という言葉を知ったのは幼稚園の図書室でのことだった)。
こどもの頃の私にとっては、せんそうってなんじゃらほい、昔あったけど、いまはない、遠くであるけど、ここではない、そういうものでした。
自分のこどもがいつかモモちゃんを読むときに、せんそうは、昔あったけどいまはないんだよって、そう言えるだろうか。 -
とても愛おしいおはなし。
モモちゃんが生まれてから5歳ころまでの、ちょっと特別だったりなんでもない一日だったりの物語です。
現実とファンタジーとの境がぼんやりしているモモちゃんの世界は、やさしくて暖かくて、なんとなくおかしいところもあって、やわらかな色味の絵本を読んでいるような気持ちになりました。けれども、だからこそ、時折描かれる不安や恐怖の暗さが引き立ちます。大人たちも同じ世界観のなかで生きていることも魅力です。いっしょに子どもの時間を過ごしているんだなぁ、と。
自分のどこかに残っている「モモちゃんの世界」の記憶が、ちょっと呼び起されたような、読み終えた後はそんな気分でした。
もし自分に子どもがいたら、また違った感想になるかもしれません。大切にしたい一冊です。 -
懐かしいタイトルを見かけてそのままレジに持って行ってしまいました。
読み始めたときは「昔読んだ」という記憶はあっても内容をまったく思い出せませんでしたが、読み進めるうちにだんだんと思いだしてきました。
ジャガイモさんとニンジンさんと玉ねぎさんの話、空色の電車の話、ネコのジャムパンの話。どれも、ああそうだった、こんな話だった、と読んだとたんに膝を打ちました。
「何となく読んだような記憶はあるんだけど」って方は手に取ってみては?お話そのものよりも「昔はお話のこんなところが印象に残ったんだなあ」って、昔の自分を思い出せるかもしれませんよ。 -
私にとって、児童文学との出会い直しとなった一冊。
ちいさいモモちゃんの、ファンタジーが入り混じる生活が思いのほかリアルに馴染む感覚がありました。
本文の言葉から、ちいさな子どものいる日常がよみがえり、その世界に引き込まれました。
かわいらしさだけでなく、すぐ隣にある暗いもの、怖さを感じるものの存在も見え隠れしていて、それもまた、興味深かったです。 -
懐かしいモモちゃんの本を
見つけたので購入
読み出すと過去の自分が
思ったことが蘇ってきた
不思議な読書体験
ブックオフ妙興寺店にて購入 -
モモちゃんにもモモちゃんなりの考えがある。
うーむ。子どもができると感じ方変わるんだろうか、、また時間空けて読んでみよう。
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昔読んだプーとジャムの出会いの話がいちばん今でも好き。こどもの泣き声、言葉づかい、行動がとても自然だし、お母さんは当たり前のように大人だけど、こどもと動物たちと時には得体もしれないものと遊んだり戦ったりもする。とても変な世界なのにとでリアリティがあると思う。