ちいさいモモちゃん (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770880

作品紹介・あらすじ

生まれたばかりのモモちゃんのところに、野菜たちがお祝いにやってくる!ママに怒ったモモちゃんが乗る電車が空を飛ぶ!?優しく温かい物語の中に、生と死、結婚と離婚など"人生の真実"が描かれるモモちゃんシリーズが、酒井駒子の絵と共に文庫に。『ちいさいモモちゃん』『モモちゃんとプー』収録。

感想・レビュー・書評

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  • 再読の再読の・・・
    小学1年生の頃に出会って以来、何度読んだかわからないモモちゃんの本。なのに今回買ってしまったのは、巻末の、角田光代さんによる解説、これにつきます。

    私がここで言葉をつくしてレビューを書くよりもずっとずっと、子供時代の私がモモちゃんと出会って感じたこと、大人である今の私がモモちゃんの物語に対して思うこと、すべてすべて、まるで「あなたは私か!」と言いたくなるほど、どんぴしゃりに書いてくださっています。

    シリーズの別作品にも触れることになるけれど、「ちいさなモモちゃん」で私の心に残るエピソードは、誕生の日に、カレーをごちそうしようと野菜たちがやってくるお話だったり、おむつをとるのにママがパンツを30枚も縫う話だったり、可愛いほんわりしたお話ばかりです。が、シリーズ通して印象の強かったのは、帰宅するのはパパの靴だけ、というものでした。

    私は角田氏のように作家になろうとは思わなかったけれど、角田氏の言葉を借りるなら、私は角田氏の出会ったモモちゃんを知っています。たぶん、おんなじ子だと思います。私の知っているモモちゃんと、角田氏の出会ったモモちゃんが、同じ子だということを、涙が出るほど、本当に嬉しく思いました。

  • 「おこってるんですよう」「ぼくじゃありませんよう」
    プーがなんともいえずかわいい。

    たぶん初めて読むのだと思う、松谷みよ子さんの本。
    酒井駒子さんの絵と、長きに渡って読み継がれてきたのであろう、という本が醸し出す貫禄。読んでみたいなと思った。読んでよかった。大人になって初めて読んでも十分面白い本だと思う。

    子供の時になんとなく感じていた、何かを怖いと思うどこから来るのかよくわからない感覚とか、見るもの見るもの新鮮で飽かずに見続けるような力とか、そういうものの姿がこういう本を読むと感じられる。そういう言葉にしにくいものが書かれている気がする。

    とにかく想像以上によかった。自分が今の年齢で児童文学にこんなに感動させられるとも思わなかった。

    角田光代さんの解説もなかなか素敵だ。小学校1年の時にこれを読んで松谷みよ子さんのような作家になりたいと思った、ってすごいな。本当になってしまうのだから。

  • 松谷みよ子さんの「モモちゃん」シリーズが、2011年に講談社文庫で文庫版になりました。二十歳以上の人に読んでもらいたい、ということでそうなったらしいのです。もともと6作あるシリーズが2作ずつで1冊になっており、1冊目は「ちいさいモモちゃん」「モモちゃんとプー」が収録されています。

    モモちゃんと私との出会いは、たしか幼稚園での先生の読み聞かせの時間でのことだったと思います。

    私はモモちゃんのお話をいたく気に入ったようで、親に本を買ってもらって、後続のものまで含めて小学校低学年の頃までにかけて、よく読んでいました。そればっかり読むので親からモモちゃん禁止令が出るくらい、何度も繰り返し読んでいました。

    ちいさい頃の私に何がそんなにウケたのか、今となってはそのままの気持ちは思い出せない。
    けれど、角田光代さんの巻末解説がこれまた秀逸で(少なくとも、同じようにこどもの頃本書を愛読して大人になって読み返した者同士として評価するなら)、あの頃の読書体験に、可能な限り引き戻してもらえたように思えます。

    角田さんに手を引かれて導かれるように、幼稚園の教室へ戻ってきて、板張りの床に三角座りをして、先生の顔と本の挿し絵を見上げると、赤ちゃんのモモちゃんが黒猫のクーをプーと呼んだからクーがプーになったことや、雨じゃないのに長靴をはいて傘をさすモモちゃんのことや、なにか悪いことをしたモモちゃんが押し入れに閉じ込められて泣いていたらネズミの世界に招かれてしまったことなどを、夢中に聞き入っていた自分に少し戻れたような気がします。

    角田さんは、モモちゃんの世界を思い出すとき、物語に登場するママやパパは「脚」として思い出されると言っています。それは松谷さんが、こどもの目から見た世界を見事に描いているからだと言います。これには、はーなるほどと唸ってしまった。

    いま読んでみると、働きながら子育てしているママ目線で描かれているシーンもたくさんあるのに、確かに私の記憶のなかの「モモちゃんのママ」って、「脚」かもしれない。いま読めばママの人格やママの気持ちも描かれているのに、こどもの頃は、ママとはただそこにある揺るぎない樹のようなものだった。

    それがいま、自分が子育てをしている立場で読んでみると、仕事で帰りが遅くなるとモモちゃんが怒っていて、電車に乗ってお空へ行ってしまう話だとか、モモちゃんがウシオニという化け物に影を食べられて倒れてしまったときに、ママがすべて放り出してウシオニを追って駆け出していく話だとか、モモちゃんの妹が生まれる直前まで仕事をしていて体が疲れている感じや、お腹の大きいまま転んでしまったママが暗い野原をさまよう話など、ママの気持ちで読まずにはおれない自分に気づきます。

    いやー、読み返してよかった。

    あ、もうひとつ。せんそうの話が出てきます。
    松谷みよ子さんは1926年生まれ。娘のモモちゃんは戦後生まれと思われますが、「ちいさいモモちゃん」の初版は1964年でベトナム戦争の最中。

    今回読んだ「ちいさいモモちゃん」では、モモちゃんがテレビでせんそうを見て、おともだちのコウちゃんと一緒に画用紙とクレヨンを持ってせんそうをとめにいくというお話が入っていました。

    もっと先のシリーズでも、もう少し大きくなったモモちゃんがせんそうはんたいのデモをやってけいさつと衝突するシーンがあったような、記憶があります(そう、私が「デモ」という言葉を知ったのは幼稚園の図書室でのことだった)。

    こどもの頃の私にとっては、せんそうってなんじゃらほい、昔あったけど、いまはない、遠くであるけど、ここではない、そういうものでした。

    自分のこどもがいつかモモちゃんを読むときに、せんそうは、昔あったけどいまはないんだよって、そう言えるだろうか。

  • とても愛おしいおはなし。
    モモちゃんが生まれてから5歳ころまでの、ちょっと特別だったりなんでもない一日だったりの物語です。
    現実とファンタジーとの境がぼんやりしているモモちゃんの世界は、やさしくて暖かくて、なんとなくおかしいところもあって、やわらかな色味の絵本を読んでいるような気持ちになりました。けれども、だからこそ、時折描かれる不安や恐怖の暗さが引き立ちます。大人たちも同じ世界観のなかで生きていることも魅力です。いっしょに子どもの時間を過ごしているんだなぁ、と。
    自分のどこかに残っている「モモちゃんの世界」の記憶が、ちょっと呼び起されたような、読み終えた後はそんな気分でした。
    もし自分に子どもがいたら、また違った感想になるかもしれません。大切にしたい一冊です。

  • 懐かしいタイトルを見かけてそのままレジに持って行ってしまいました。

    読み始めたときは「昔読んだ」という記憶はあっても内容をまったく思い出せませんでしたが、読み進めるうちにだんだんと思いだしてきました。
    ジャガイモさんとニンジンさんと玉ねぎさんの話、空色の電車の話、ネコのジャムパンの話。どれも、ああそうだった、こんな話だった、と読んだとたんに膝を打ちました。

    「何となく読んだような記憶はあるんだけど」って方は手に取ってみては?お話そのものよりも「昔はお話のこんなところが印象に残ったんだなあ」って、昔の自分を思い出せるかもしれませんよ。

  • 懐かしいモモちゃんの本を
    見つけたので購入
    読み出すと過去の自分が
    思ったことが蘇ってきた

    不思議な読書体験

    ブックオフ妙興寺店にて購入

  • モモちゃんにもモモちゃんなりの考えがある。


    うーむ。子どもができると感じ方変わるんだろうか、、また時間空けて読んでみよう。

  • 昔読んだプーとジャムの出会いの話がいちばん今でも好き。こどもの泣き声、言葉づかい、行動がとても自然だし、お母さんは当たり前のように大人だけど、こどもと動物たちと時には得体もしれないものと遊んだり戦ったりもする。とても変な世界なのにとでリアリティがあると思う。

  • 再読。
    子どもの頃に出会って以来ずっと心の奥に宝物のように存在している作品。たまに垣間見える日常の裏や陰の部分にドキリとしながらも、姉妹という共通項で自分の物語のような気持ちで読んでいた。
    それが今、モモちゃんのママの気持ちに寄り添って読む自分がいる…感慨深い。
    月日が経ち、立場や視点が変わってまた再読するのも読書の醍醐味だなぁと思う。

  • 子ども向けの絵本ですが、働く母親、離婚、親の死、といった現代的な問題を先取りしてファンタジーとして子どもに説明する手法が見事で泣けます。

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著者プロフィール

1926年、東京生まれ。1944年頃より童話を書きはじめ、1956年、信州へ民話の探訪に入り、『龍の子太郎』(講談社)に結実、国際アンデルセン賞優良賞を受ける。以来、民話に魅せられ創作と共に生涯の仕事となる。日本民話の会の設立にかかわり、松谷みよ子民話研究室を主宰。著書に『女川・雄勝の民話』(国土社)『日本の昔話』『日本の伝説』『昔話一二ヶ月』『民話の世界』(共に講談社)『現代民俗考』8巻(立風書房)など。

「1993年 『狐をめぐる世間話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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