花競べ 向嶋なずな屋繁盛記 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.03
  • (45)
  • (80)
  • (31)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 434
レビュー : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770965

作品紹介・あらすじ

花競べ-最も優れた名花名木に与えられる称号・玄妙を目指し、江戸中の花師が育種の技を競い合う三年に一度の"祭"。恩ある人に懇願されて出品した「なずな屋」の新次は、そこでかつて共に修業した理世と再会する。江戸市井の春夏秋冬をいきいきと描く傑作「職人小説」。小説現代長編新人賞奨励賞受賞作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「恋歌」で直木賞を受賞した朝井まかてのデビュー作。
    デビュー作にしては達者で、さすが。

    「なずな屋」を営む若夫婦、新次とおりんが主人公。
    男前すぎて若い頃に女の子がぞろぞろ付いて来るほどだったため、女性に警戒心がある新次。
    おりんは家を出て子供に手習いを教えていて、しごくさっぱりした気性なのが新鮮だったらしい。

    感じのいい若夫婦に、新次の幼馴染夫婦や、新しいお得意さんの大店のご隠居と孫息子、新次が独り立ちする前に勤めていた大きな育種屋、夫婦が預かることになった男の子「雀」(本当はしゅんきち)などが絡んできます。

    苗や種を育て、時には新種を作り出す花師という仕事が、江戸では盛んだったのですね。
    「花競べ」とは、最も優れた名花名木に与えられる称号・玄妙を目指して、江戸中の花師が育種の技を競い合う三年に一度の祭。
    花や樹木を扱うすがすがしさが伝わるような筆致で、ムラサキシキブ、桜のソメイヨシノなどの命名をめぐるエピソードもあって楽しく読めます。

    新次は仕事先で、かっての勤め先のお嬢さんで、共に修行した理世と再会します。
    女ながら才能があり、今は家を継いでいる理世。
    身分違いだからと気持ちをはっきりさせずに店を出たままだった新次は‥?
    女性作家にしては、妻のおりんのほうをほったらかしなのがやや意外な展開。
    おりんの気持ちを追ったらさらに生々しくなるのを避けたのかも。
    気持ちにけりをつけるという展開とはいえ、理世のことが妙に浮き上がって見えるような。
    何もいわずに戻った新次を、おりんは黙って受け入れたようですけどね。
    子供のいない二人が預かって育てた雀こと、しゅん吉の未来が開けるので、話としてはまとまった読後感に。

  • 直木賞とった「恋歌」を読みたかったのだけど、予約数がすごかったのでまずはデビュー作を読んでみた。
    これが処女作ってこと?すごーい。
    普通にこなれててすごくおもしろいんだけど。

    町人文化が花ひらいた江戸でのお仕事市井小説。
    主人公はイケメン花師です。
    イケメンて印象さほどしないんだけどイケメン設定。

    草木を育み花を咲かせるという仕事がとても素敵で、自然の理との調和をとりながらも美しく強い花を咲かせようとする真摯な心意気が伝わってきます。
    女房のおりん、預り子の雀、留吉&お袖一家、上総屋六兵衛と辰之助、登場人物もいきいきとしてて皆の絆が深まっていく感じがいい。

    修行先の御嬢さん理世とのアレはちょっとむむむぅという感じがしましたが、その後の台詞にしびれたので良しとしよう。
    雀のお母さんの話と、辰之助と花魁吉野の恋はよかったなぁ。

  • 感動した!! 心を揺さぶられた!!

    恥ずかしながら、直木賞を獲ったことで名前を知った作家だ。直木賞作家の処女作はどんなものだろうと期待を込めて手に取ったら、予想を超える面白さだった。

    江戸中期に向島で花の苗や種を売る商いをしているなずな屋。店を営む新次とおりんの夫婦を中心に人間模様が描かれる。
    考えられる全ての要素を詰め込んだ最上級のエンタメ小説だ。登場人物達の恋やなずな屋を潰そうとする陰謀や新種の桜にまつわる謎解きをからめて、まったく飽きさせない。

    笑ったりほろっとさせられたり忙しけれど、久しぶりに読み応えのある小説と出会った。嬉しい一冊だった。

  • ぎゅっと、ぎゅっと、詰まった一冊。短編集になっているのが、もったいない。
    桜の描写も美しくて。
    来年の桜は、この話を思い出して切ない気持ちで見上げることになりそうです。
    辰之助の人生を、別冊でじっくり読んでみたいなぁ。

  • 種苗屋といえば、大阪天王寺にある赤松種苗店でをよく利用していて馴染み深い。伝統野菜の種など買つたりするし、そこのお店に行くと、江戸時代から歴々と受け継いでやってきている風情が職人さんや店構えに趣があって伝わってくる。種や苗、花を買いに行く、見に行くのが楽しみなんだけど、こういう時代劇小説で読んでみて奥が深い仕事だと思った。


    花師という職人の新次とおりん夫婦と、その周りのあったか人情物語。

    染井吉野の桜が吉原の花魁と繋がる、まさかの展開に に驚いたが、染井吉野の由来がわかって来年、桜を見る目がかわるだろう。
    橘の歴々の由来もわかったし。


    預かりっ子のしゅん吉みたいに門前の小僧さんみたく、読んでるうちに植物に詳しくなつていく、著者から、 いつのまにか学び知っていくあたりは門前の小僧気分である。

    江戸時代の遊び方って粋だなぁと思った。

  • 読書女子からオススメしてもらった本

    今まで時代小説とSFが苦手で読んだ事がなかったのだが
    オススメしてもらったからには・・・と手に取った。

    読み始めて読めない言葉の多いこと((+_+))
    読み方を調べながら読み進め途中からは楽しく
    最後には大好きになって読み終えました

    なずな屋の日常のような流れなのかなー?と思って
    読んでいたのだが染井吉野ですべてが1つになるところが
    とてもスッキリと読めた

    今の季節もちょうど春
    今年のソメイヨシノを見たら花魁の生き方を思い出すだろうと思うだけで今から楽しみになる

  • これでデビュー作?朝井まかて、恐るべし。
    確かに少々のぎこちなさはあるものの、一つ一つの短編風な章の完成度が高く、文章が読みやすいからか、ページを繰る手のリズム感も良い。

    それでいて、良くある普通の市井人情時代小説とはちょっと違う味付け、主人公が植木職人とその妻っていうのもひねった設定だし、彼らの子供の生い立ちや、主人公が修行した大店のお嬢との関係もまたヒネってあって、意外な有名人物が登場するかと思いきや。

    吉原炎上からの急展開に唖然。堰を切ったようにあれやこれやの出来事がドンと押し寄せて来て油断できない。ミステリーの謎解きとはまた違った「へー、そうなんや。えっ、こう繋がってくるんや」っていう出来事同士の繋がり方は、実に見事。

    草花への愛情、自然への憧憬。色んなことが積み重なって…この本を読んだことで、来春のサクラ花見は、今までと違った目線と思いで楽しめると思う。

    一つだけ苦言。好みは分かれるかも知れないけど、タイトルは原題「実さえ、花さえ」のままの方が、この小説に似合っているんじゃないだろうか。

  • 妹からの譲受本で、このジャンルも作家さんも初めて。

    私にとっては、新しいジャンルで、悪くはないけれど
    どうもこの夫婦+理世さんの印象が強すぎるのと
    終わりの方が、どんどん進みすぎてしまった感じがして
    そこが残念でした。

  • 植物がたくさん出てくる本が読みたくて読んでみた。
    すごく園芸が盛んだった江戸時代に、花を育て、品種改良で新種もつくる花師という職業があった。腕のいい花師である主人公が、奥さんや友人たちと毎度起こる難題に立ち向かう。
    とくに印象的だったのはクライマックスの桜の話。ソメイヨシノという品種はどこの誰が作り出したのかわかっていないらしいんだけど、その経緯がこうだったら面白いよね、っていう話。
    期待どおり、たくさんの草木が出てきて楽しめた。

  • 花師の新次と妻のおりんが営む「なずな屋」は隅田川のほとりも向嶋まで足をのばせば、一度はのぞいてみたいと言われる評判の苗物屋。
    現代でいう花屋さんと庭師・植木屋を合わせた感じでしょうか。真面目な仕事っぷりと、美しい花を咲かせる技術をもった新次は、花好きの江戸っ子の心をとらえていきます。

    タイトルにある「花競べ」とは「花合せ」ともいわれ、人々が二手に分かれ、それぞれ花(主に桜)を出し合って比べ、花についての和歌なども詠んで優劣を競う遊戯です。

    新次はお客さんに推薦され「花競べ」に出品することになります。そこで、かつて新次が共に修業し、気持ちを通わせ合った理世と再会します。

    お店をいろんなアイデアで盛り立てていく、サクセスストーリーでもありつつ、不器用な恋の物語でもあり、いくつもの要素が一冊に含まれています。

    図書館スタッフ(学園前):トゥーティッキ

    ----------
    帝塚山大学図書館OPAC
    http://lib.tezukayama-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&category-book=1&category-mgz=1&materialid=2410004298

全56件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

朝井 まかて(あさい まかて)
1959年生まれ。甲南女子大学文学部国文学科卒業後、コピーライターとして広告制作会社に勤務。独立。2006年から大阪文学学校で学び、2008年第3回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー。受賞作は『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』と改題され、講談社文庫に収録されている。
2013年、幕末から明治を生きた歌人・中島歌子の半生を描いた『恋歌』で第3回本屋が選ぶ時代小説大賞、2014年第150回直木賞を受賞。ほか、2014年『阿蘭陀西鶴』で第31回織田作之助賞、2016年『眩』で第22回中山義秀文学賞、2017年『福袋』で第11回舟橋聖一文学賞、2018年『雲上雲下』で中央公論文芸賞、『悪玉伝』で司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞。
他の著書に『ちゃんちゃら』『すかたん』『先生のお庭番』『ぬけまいる』がある。『眩』は2017年に宮崎あおい主演でドラマ化された。

朝井まかての作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
冲方 丁
三浦 しをん
三浦 しをん
朝井 まかて
池井戸 潤
三浦 しをん
伊坂 幸太郎
朝井 まかて
有効な右矢印 無効な右矢印

花競べ 向嶋なずな屋繁盛記 (講談社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×