原子炉の蟹 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (457ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062771115

感想・レビュー・書評

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  • 原子炉内の高線量地帯で、原発作業請負会社の社長が消えた。北海道にいる、殺されたなどの噂の飛び交う中、中央新聞の原田は作業員から殺人があったことを示唆され、担当者に当たることで確信を得て記事にするが、当の関東電力からの圧力で、捏造記事とされてしまう。そうこうしているうちに、担当者がまた原子炉内で殺害され…。

    著者は記者上がりなのか、非常に新聞製作の細かなところを描いており、その辺りは非常に真に迫っている。一方で、舞台である原発に関しては、「東京に原発を」同様の資料をばらまいて不安を煽るような書き方をしており、その辺は時代のものと目をつぶって読むべきであろう。むしろ、結構前であるにもかかわらず、原発の孫請け、ひ孫受けのピンはねシステムを書いていることは、評価できるのではないか。

    読み始めから出てくるものの、何がしたいのか非常にジャマな人物、曾我の存在がいかんともしがたいにも関わらず、おそらく主人公なのはどうにかならないのか。普通に新聞記者を主人公に据えておいたほうが良かったのではないか。

    また、会話の口調が、「変な関西弁をしゃべる」剣崎以外はおっさんから女子高生まで同じであり、更に結構端折った喋り方で描かれるため、会話部分が非常にだるいのも困ったものである。

    ストーリーとしては非常にシンプルだし、判じ物の殺人なので、動機を含めて理解はしやすい。多くの人は背景が説明される段になった時点で犯人がわかる。

    にも関わらず、金田一耕助ばりに事件を読み解いてしまうおっさんがジャマでなあ…。

    江戸川乱歩賞をとった作品なのかもしれないが、読みやすい佳作程度かな。

  • 原子力発電所内で起きた密室殺人事件をかいたミステリー。
    原発の是非を問う内容ではなく、あくまでも事件がメイン。

    1981年に書かれたものと知って驚き。
    古さは少し感じるものの違和感は感じず。
    福島の原発事故が起き、原子力発電所内の映像を見る機会は増えたものの、やはり謎に包まれる場所。

  • 今から30年以上前に書かれた社会派ミステリー。さすがに描写に時代を感じるが、5年前の福島第一原発事故を予言したかのような仔細な原発作業の描写に驚く。また、原発を舞台にした密室トリックにも説得力があり、読み応えがあった。

    九十九里浜原発の建屋で起きた殺人事件を追う新聞記者が組織により隠蔽された真実に迫る。

  • 昔ながらのちゃんとしたミステリーっていう感じがした。でも複雑な条件設定にはついていけなかった。年だから。

  • タイトルが気になって手に取った作品。
    原子力発電所内で起きた連続殺人を扱った社会派ミステリーってところ。書かれたのが1981年なので、舞台装置や台詞が古い感じがするのは仕方ないかな。でも、密室&見立て殺人と本格の要素を含み、ミステリーとしての古さはそんなに感じない。
    今でこそ世間の関心も高く、一般人でもある程度の知識を持っているけれど、30年以上前に原発といういわゆる巨大な密室を題材にしたところは興味深い。

  • 原子力発電所内での密室殺人を扱ったミステリです。社会派推理小説との評価ですが、「サルカニ合戦」の見立てがあって社会派だけに留まっていません。一見無理のある展開も、それほど違和感なく最後まで読み進めることができます。

  • 保有状況:売却&購入日:41274&購入金額:780

  • タイトルに引かれて読んでみました。
    読みながら、登場人物の話し方が、「なんか、古風だなぁ」
    と思っていたら、1981年初版の作品でした。
    そりゃ、いまと違いますよね。
    でも、1981年だとしても、登場人物の話し方は、古風すぎる・・・。

    内容は、原子力発電所で発生した、連続殺人事件の話。
    でも、原子力発電所を描写する内容で、3.11の福島第一原発事故を
    彷彿させるような表現がされていたのには、驚きました。

  •  タイトルを見て311以降に書かれた本かと思いきや、1981年に書かれた本のようです。デビュー作ということなので、確かに若干性急な展開はあるものの、それでも骨太で読み応えのある物語でした。

     ……しかし、なんていうか、うん。若干出オチという気がしないでもない。

  • 昔読んだのを再読。今年は原発の話題が多かったのでこの本を思い出して読みたいと思っていたところ、ちょうど新装版が出たので手にとりました。作者が元新聞記者だったということで、描写が細かくリアルな感じを受けました。哀しい話です。

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