モモちゃんとアカネちゃん (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062771481

作品紹介・あらすじ

靴だけが帰ってくるようになったパパ。体調を崩したママのところには死に神までやってくる。モモちゃんと妹のアカネちゃんは少し大きくなって-結婚のみならず、離婚や別れとはなにかを明確に教えてくれた、日本で初めての物語。『モモちゃんとアカネちゃん』『ちいさいアカネちゃん』収録。

感想・レビュー・書評

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  • 「[児童文学』というものは『子どもに夢を希望を与えるもの』だとしたら、どうも、『モモちゃんとアカネちゃん』はちがうものなのかもしれない。もっとなんというか、リアルなことが、この作品には書かれている。」ー高橋源一郎氏の本書解説より

    作者である松谷さんの実体験…ほんとうにあったことを元にしつつ、ファンタジックな要素もある、苦さも優しさもある、そんなおはなしたち。
    欠かせない隠し味は、モモちゃんとアカネちゃんにみんなが注ぐ視線に「愛情」がこもっていること。

    黒ネコのプーはモモちゃんが生まれた時におうちにやってきて、モモちゃんやアカネちゃんだけでなくおかあさんともおはなしができる(子どもだけが動物と話せる物語はよく見かけるけど、大人も動物と会話できる物語は新鮮だった)。
    アカネちゃんが生まれる前からおかあさんが編んだアカネちゃんのための双子の靴下・タッタちゃんとタアタちゃんは、アカネちゃんとだけおはなしができる。
    タッタちゃんとタアタちゃんがアカネちゃんのために奔走する姿は微笑ましい。
    他にもおかあさんが忙しい時においしい料理を作ったりして助けてくれる森のくまさん。
    森の動物さんたち。
    やさしいファンタジーがここにある。
    でも、おとうさんとおかあさんは「もっか けんかちゅう」になった末におわかれをすることになる。
    最初はおとうさんが帰ってくるのを待っていたおかあさん。でも足音がしてドアを開けると、そこにいるのはおとうさんの靴だけ。
    そんな現実のシビアさもファンタジーの中に伝えられている。
    児童文学なのにたまにドキッとするシビアさがところどころ現れる。
    でもシビアさもちょっぴりは必要なのかもしれない。
    子どもだって、現実はしあわせだけじゃないって、わかってると思うんです。
    その中で愛情に包まれて、笑って生きていく。
    たくさんの人(動物さんたちにも)に助けられながら。
    あとは、おかあさんの子どもたちへの思いの通じなさ、子どもたちからおかあさんへの思いの通じなさの描き方がリアルだなと思いました。

    たくさんたくさんあるお話のうちで、私が一番好きなのは、ーちいさいアカネちゃんーの中の「野原で」というおはなし。
    いたいのいたいの飛んでけっておかあさんがアカネちゃんにやったら、お山に飛ばしたらお山にいるおじいちゃんのおひざがもっといたくなっちゃうようと泣き出すアカネちゃん。
    困ったお母さんはラクラク山のうさぎさんにお電話をして、そちらへ飛んでいったいたいいたいはどうなっておりますかと聞きました。
    そのうさぎさんの答えがとても素敵なのです。

    いつも短編集は備忘録がてら目次を載せるのですが、あまりにも数が多いので今回は割愛。

  • 子供の頃に読んだハードカバーは、「ちいさいモモちゃん」「モモちゃんとプー」、そして3冊目が「モモちゃんとアカネちゃん」でした。

    だけど文庫になって、ハードカバー2冊分が1冊におさめられ、「モモちゃんとアカネちゃん」「ちいさいアカネちゃん」と続けて読むと、とても子供向きに書かれた本とは思えなくなりました。

    私の(勝手に思い込んでいるだけであっても)お友達であるはずの、モモちゃんのお話なのに。

    子供の頃、私が怖いと思ったのは、ママのところへ現れる死神ではなく、くつしか帰ってこないパパでした。家庭を顧みないパパなんだと思っていたのに、ママとモモちゃんとアカネちゃんが引っ越した後、置き忘れられたアカネちゃんのまりを見てたたずむパパの姿がさみしく思えて、混乱しました。

    文庫版には、ハードカバーにある挿絵は一切ありません。なのに、ページをめくると、この場面にはこんな挿絵、ここでのママはこんな顔をしていた、とひとつひとつが蘇ることに驚くと同時に、なんだかとても懐かしい、あたたかい気持ちになりました。

    もう何年も何年も、ずいぶん長いことモモちゃんには会っていませんでしたが、やっぱり彼女は今でも私の中に、あの頃のままで住んでいるのだと思いました。素敵な本に巡りあえたのだと、その幸運な出会いに感謝するばかりです。

    だから、本をよむのはやめられない。

  • ほのぼの感あるのに
    時々不穏な空気が
    暗喩されていたり
    そういうところが
    頭にずっと引っかかる感じ
    不思議な不協和音

    そしてやっぱり
    酒井駒子さんの
    けぶるような
    挿絵が良い

    ブックオフ一宮妙興寺店にて取り寄せ

  • タッタちゃんとタアタちゃんが、私にもいてほしい。

  •  児童書といっても、確かに幅が広くて、ヤングアダルトと分類されるものは、非常にリアルな現実が描かれていたり、大人が読んでも読みごたえがあるものがたくさんあるので、離婚や別れを描く本は、他にもあると思うのですが、モモちゃんとアカネちゃんが小さい幼児であること、しゃべる猫やモノたちなど、小さい子を読者対象としたようなファンタジーらしい内容であることを思うと、同時になんてリアルなのか、本当に対象は幼児や子どもなのか?と思う。むしろ、大人になった今読んでこそ、大人の読む本なのでは?と思ったり。

     別れることになった夫婦の二人を二本の木として、その在りようが異なることから、別れがお互いのために仕方ないものとして描かれている部分に、とても納得できました。
     ただ「歩く木」が仕事や世界を飛び回りたい活動てきなものをイメージはしたのですが、つい、気になってネットで他の作品や周辺情報など調べてしまったので、知った内容からは、もっと別の意味の「歩く木」かなとも思ったり。作品の中では、夫への非難めいたことは全く出てこないのですが、私なら納得できないし許せないなと思ったり。実際に、心の中がどうであったかわかりませんが。
     「さようならはしても パパはパパ、パパのパパもパパのパパ」と歌い、母子で夫の両親の元を訪れ、娘とパパおおかみで山登りをし。
     しかし、この絵本の続巻シリーズは、娘から離婚の経緯を知りたい、書いて欲しい、読みたいとの要請があってのものだそうなので、それなら父親を貶めるようなことは書かないかとも思ったり。それもと、仕事(芸)のためなら、そういう男はそれで仕方ないと思っていたのか、それでも愛していたということなのか。

  • とても素敵な本。
    この本が読みつづけられているのは、おとぎ話だけでなく、パパとママのさよならという現実が児童書に書かれているから大人からも読み続けているのだろうか。
    育つ木と歩く木の話は、少しリアル過ぎる気がしたが、表現としてなるほどと思った。
    おとぎ話としては、プーが金魚ではなく金魚水が好きなこと、ラクラク山のウサギがつくる雲の話が可愛く、子どもに読んであげたくなりました。
    子どもって純粋。だから可愛い。

    最後アカネちゃんが、ママに「パパもだれかにあげちゃったの?」は、なんてこたえるのが正解か長いこと考えてしまいました。

    • 9nanokaさん
      子供は純粋でどきっとするようなことを言いますね^^;
      あれは、聞かれたらどう答えればいいのかわからないです。
      私も木の話、なるほどと思い...
      子供は純粋でどきっとするようなことを言いますね^^;
      あれは、聞かれたらどう答えればいいのかわからないです。
      私も木の話、なるほどと思いました。歩く木の旦那さんは大変だなぁと^^;
      児童書ならではの表現が可愛いなと私も思いました。
      2014/11/03
  • モモちゃんとアカネちゃんの文庫シリーズ2冊目。

    とりわけ印象に残る「木のたとえ」。でもどうなのだろう。仮に自分の親が離婚する、となった時、このたとえにうなずくのだろうか。冷静な目で見ることのできる私には受け入れられる部分も多いけれど、当事者からしたら? 私としては直接それを示さずにたとえていることで心の奥の方まで言葉を持っていける、というようなことがあるのではないかと思うのだがどうだろう。「木のたとえ」はどんな人に対して十全に届くのだろう。

    この部分は比喩にしてもやや直接的なところだが、全体的に間接的に何かが伝わってくるようなものがこの本にはあると思う。その間接的なものを「大人の目」で探そうとしてしまうところが少し悲しいのだけれども。

  • 子供のときに大好きだったモモちゃんシリーズが文庫になっていた。帯に「結婚って、離婚って何?夫婦って何?これは、鳥肌がたつほど納得させられる物語です。」とあり、そんなお話だったっけ、という驚きとともに思わず購入。読んでビックリ、そして納得。こどもが読んでも大人が読んでも、こどもはこどもなりに、大人は大人として、離婚を受け止められるのではないか、というすごい内容。やはり実体験に基づいたフィクションは力強い。再読して良かった。帯には騙されることも時々ありますが、今回は踊らされてみて本当に良かったです。アカネちゃんのモデルとなった松谷みよ子さんの次女がまだこどものときに、「モモちゃんはおねえちゃんでアカネちゃんは自分なのだから、このお話の続きがあればどうして両親が別れてしまったかがわかるはず」と、松谷さんに「続きを書いて」とおねだりし、松谷さんがそこから時間をかけてようよう宿題を終えるような気持ちで書きあげたお話なのだそうです。すごい。

  • 家族の変化。ママとパパ。パパのパパ。
    離れる縁。つながる縁。
    夫婦が一緒に暮らせなくなる状況をこんなふうに描けるのだなぁと、興味深く読みました。
    植木鉢のたとえ、なるほどと思いながら読みました。

    いろんなことが起こりながらも続いていく日常が愛おしく思える物語でした。

  • 子供の頃読んだモモちゃんとアカネちゃんが大人向けに文庫になってると知って読んでみた。
    中身は子供の頃に読んだものと同じだと思うが、子供の頃には見えなかった背景が見えてきた。
    お母さんの気持ちがリアルに伝わってきた。
    離婚なんていう厳しい現実を児童書の中に伝えていたと言う事にも些か驚いた。
    子供の私はその時はどんな風に捉えたのかもう知る由も無い。

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著者プロフィール

1926年、東京生まれ。1944年頃より童話を書きはじめ、1956年、信州へ民話の探訪に入り、『龍の子太郎』(講談社)に結実、国際アンデルセン賞優良賞を受ける。以来、民話に魅せられ創作と共に生涯の仕事となる。日本民話の会の設立にかかわり、松谷みよ子民話研究室を主宰。著書に『女川・雄勝の民話』(国土社)『日本の昔話』『日本の伝説』『昔話一二ヶ月』『民話の世界』(共に講談社)『現代民俗考』8巻(立風書房)など。

「1993年 『狐をめぐる世間話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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