エクソシストとの対話 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062771597

作品紹介・あらすじ

オカルト的な興味本位の対象として認識されてきた"エクソシスト"。だが、現在イタリアでは、ヴァチカン公認のエクソシストが人々の精神的な闇を癒す存在として、にわかに見直されている。実際に悪魔祓いの儀式にも参列し、数々の"現代のエクソシスト"たる神父を取材。その真実の姿に迫ったノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • <ナンパとパスタだけじゃなかった。エクソシストの国イタリアにふれる?>


     注目の島村菜津さん著作。『スローフードな日本!』(https://booklog.jp/users/kotanirico/archives/1/4104011037)に続けて『エクソシストとの対話』を読みました。栄えある21世紀国際ノンフィクション大賞優秀賞作受賞作☆
     単純な怪談集とは違い、本書が明らかにするのは、イタリアには「公式エクソシスト」が実在し、現実に悪魔退散を行っているということです。
     著者は驚くほどの綿密さでイタリア取材を敢行。最もすぐれたエクソシストとの呼び名も高き人物・カンディド神父の生涯を中心に追いかけ、彼を知る人物、他の現役エクソシスト、学者、司祭などを訪ね、ついに実際の悪魔祓いの場面にも立ち会ったのだ! ここまで取材したら内容が充実しない理由がありません。
     執拗なまでに(ほめ言葉です)真実を追いかける島村菜津さんの取材パワーは圧倒的で、その後も私は彼女の著作を求め続けることになっています。

     ところでふりかえるに、私がこの本に手を出したきっかけは、2012年2月のTV番組『ザ・ベストハウス123』内で流れた、悪魔祓いの映像です。記憶に残る悪魔祓いの現場は、相手の名を尋ねる、十字架などのアイテムをかざす、聖書の言葉を唱えるなどの、儀式的な慎ましさが特徴的でした。聖水も、ぱしゃっ☆とふりかける。バケツで頭からザーッとかけるような真似はしないのですね。
     何より記憶に強く刷りこまれたのは、悪魔って人間の体から退散する前に、必ず「め、めめ……、めめめ、めでたし、めでたし、まりあ……!」と声を上げるのですよ。「めめめ……」が、どうにも可愛すぎました☆
     どうしても「めめめ」の記憶が去らず、関連情報を調べたところ、出てきた本書。関連どころか、あの番組は思いっきりこの本に基づいた制作物でした! おなつかしい(笑)。

     もっとも、近年のエクソシストは悪魔以外の問題に遭遇する事例も多々で、精神科医と連携しながら活動するらしいです。人間の心の闇は、悪魔以上に手ごわそう……★

  • 素晴らしい仕事をしている本であり、
    文句なく力作だと思う。

    しかし読み物としては、なじみがないのと
    興味が沸かないのとで、読んでいてつまらん。
    論文つーかレポートつーか、娯楽で読むには
    適しておりませぬ。

  • 「バチカン・エクソシスト」を読んで、もうちょっと読んでみたかったので。

    カンディド神父の話を中心に、
    その死後に周囲の人々にインタビューした内容だが、
    バチカン・エクソシストでもでてきた神父さんが出てきて
    面白かった。

    「宗教」の真空地帯、日本人がくりだす質問のせいか、バチカン・エクソシストより神父たちが身近に感じられた。

    エクソシストを巡る旅、とでも言った感じ。

  • カンディド神父についての話がメイン。その他様々な人に取材した話が載っている。同著者の『エクソシスト急募』に載っていたものとかぶる話もあったが、こちらの方が詳細が描かれていた印象。

  • 「いってみれば、悪魔のおかげでより聖性を高めることができたといえるのです」 ー 153ページ

    たとえばスピリチュアルに代表されるように、悪が不在の「聖」というのももちろん存在はしている。けれど、様々な事例を見ている限り、悪を前提視した「聖」のほうが結束力というか凝縮力があるなと思う。仮想的がいるから仲良くなれる、というのももちろん大きいのだが、悪を意識することで自分の中の正義、聖というものを確固たるものにできるのがその背景にあるのだろう。

    すべてが「聖」であると考えること、あるいは「聖」のものにしか接しない生きかたというのは、「悪」が存在している世界観に比べて構築が難しい。「悪」が存在している世界はよりシンプルであるが故に力強い。ここには否定の持つ作用、力強さが出ていると思うし、「悪」を無視しようとする人、あるいは「悪」を否定しようとする人こそ、それをまず認めるべきなのだと思う。

  • 日本人にはどうしてもなじめない話ばかりだが、島村さんが実体験を通じて一生懸命説明している。
    キリスト教がわからないと難しかったが、勉強になった。

  • エクソシストと言う言葉をフリードキン監督の同名映画で知ったという人が多いのではなかろうか?私は原作となったピーター・ブラッティの小説の方で知った。初めはキワモノかと思ったが、どうしてなかなか読み応えがある。気になる頁に付箋を貼りながら読み、読了後に数えてみると前半部に集中していた。著者が取材を始める4カ月前に死んだ高名なエクソシスト・カンディド神父の友人関係者を巡る様に話は進む。証言を通し沈黙と瞑想の生涯を送った老神父の姿がゆっくりと浮かび上がってくる。もはや叶わぬ思いなれど一度お会いしたかった…と思う。


    未だ、悪魔の存在証明はなされていないが、エクソシスト(カトリックで悪魔祓いをする人)は存在する。 2012年11月09日

  • 興味本位のオカルト本ではありません。バチカン公認のエクソシスト、カンディッド神父を中心に、その活動の実際と、周辺の人々の証言で構成されたノンフィクションです。もちろん医学者や心理学者など、宗教関係者以外への取材もされています。
    本書を読んで知ったのは、エクソシズムはオカルトとは無縁の、厳格な形式をもった祈りの儀式だということです。エクソシズムとは告解であり、人と向き合い、その心の声に耳を傾けること。エクソシズムの本質は魂の救済にありました。
    悪魔という概念は、クリスチャンでない者にとっては理解しがたいものですが、悪魔憑きと呼ばれた瞬間から、人の苦悩は意味を持ち始めるという一文は印象的でした。
    心とは何か?信仰とは何か?ということを深く考えさせられ、聖職者のあるべき姿に感動を覚える一冊でした。

  • エクソシストも神経科医も、方法は違えど、様は依頼者の苦痛を和らげ安定をはかる事に従事している。
    心霊的だの宗教だのといった、色眼鏡を外して見れば、歴史と手法が違うだけで、彼らの目指すものやアプローチの仕方は、一緒なのではないだろうか。
    そう思いつくと、テレビの心霊特集に出て来る霊能者やお祓い師がいかに胡散臭いかが良く解った。

  • 読むのに時間がかかった…。エクソシズムについての、実際の取材記で、結構有名な本なので、読んでみたんだけど…キリスト教が分かっていないと全然ダメ。
    無宗教だけど、キリスト教の知識は持ってたいな、イタリアとかあっちを行く前にもう一度読んで勉強しよう。
    濃密な本。。。なかなか読み進めれませんでした(ΘωΘ)

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著者プロフィール

島村 菜津:ノンフィクション作家。福岡県出身。東京藝術大学芸術学科卒業。十数年にわたって取材したイタリアの食に関する『スローフードな人生!』(新潮文庫)はスローフード運動の先駆けとなった。著書に『フィレンツェ連続殺人』(新潮社、共著)、『エクソシストとの対話』(小学館、21世紀国際ノンフィクション大賞優秀賞)、『スローフードな日本!』(新潮社)他。最新作は『バール、コーヒー、イタリア人~グローバル化もなんのその~』(光文社新書)。

「2017年 『ジョージアのクヴェヴリワインと食文化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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