さようなら窓 (講談社文庫)

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レビュー : 44
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062771665

感想・レビュー・書評

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  • 家を出て
    ひょんなことから
    ゆうちゃんの家に転がり込むことになった
    きいちゃん。

    一人暮らし歴が長く
    ジャムだって作れる
    美容師のゆうちゃん。

    少し情緒不安定な
    二十歳の女の子・きいちゃんと
    困っている人をほっとけない
    優し過ぎる青年・ゆうちゃんの
    甘く切ない恋模様を描いた
    連作短編集です。



    ガソリンの匂いと共に食べた晩御飯の思い出、

    長生きしたカブトムシの話、

    アメリカ帰りの
    優しいおばあさんの話、

    不思議な転校生・サルコの話、

    特撮会社の岩職人、
    岩ちゃんの話、

    身体が小さくなる病気を患った
    先輩美容師ミリさんの話、

    など
    いつからか眠れなくなったきいちゃんのために
    毎晩話してくれる
    ゆうちゃんのちょっと不思議で
    切ないお話の数々。


    このひとつひとつの物語が
    本当に面白くて
    ついつい引き込まれていく。
    (ゆうちゃんの語り口の上手さと
    きいちゃんの素直な合いの手の妙!)



    優しくはあるけれど
    どこかドライで覚めた
    ゆうちゃんの言葉と、

    深い繋がりをいつも求めている
    きいちゃんの想いとの
    悲しい温度差。


    ほんの僅かな
    すれ違いから
    次第にギクシャクしてくる二人の関係。


    そこから自分の生活を見つめ直し、
    ゆうちゃんに依存した
    楽だけどふわふわしただけの場所から、

    自分の足で歩いていこうと
    もがき続けるきいちゃんの姿に
    なんか共感してしまいました。


    それにしても
    切なさを内包した
    キラキラとした言葉や、

    本業が歌人である東さんだけに、
    独特のリズムで進む文章が
    妙に心地いい。


    劇的な出来事なんてなくても
    当たり前に揺れ動く小さな感情を、
    壊れ物を扱うように繊細に積み重ねていく
    小説に心惹かれます。

    その意味でも
    この小説はまさにツボで、
    夢見るように儚くて
    切なく胸に残る、
    あたたかい文章に
    一気にファンになってしまったくらい
    そこに流れる空気感が好きなんです。



    二人手を濃い紫色に染めての
    ぶどうジャム作り。

    二人の指で作った
    ほどけない知恵の輪。

    微笑ましい
    ベッドの中のキツネ遊び。


    好きな誰かと過ごす
    永遠を感じるひととき。


    独り身の人は
    二人でいることの自由をうらやましく思うだろうし、

    たった一人の理解者と
    今を生きている人には
    いろいろと参考になる恋愛小説だと思います。

  • すごく良かった。西加奈子さんの解説にあるように、東直子さんの本は、人間の危うさを描いている気がする。それを彼女は「こわさ」と言っている。
    この本の主人公のきいちゃんを観ていると、昔の自分を見ているようで、自分でもよくわからない断崖絶壁をきいちゃんがフラフラと渡り歩いている様は、ハラハラした。
    きいちゃんは、ゆうちゃんと出会って、支えてもらって、大切にされて、少しずつ足りなかった何かを取り戻していくようだった。
    でも、それでも、それが心から漏れていくスピードの方がずっと早くて、きいちゃんはいつも何かに飢えている。それは愛情だったり、死だったり、孤独だったり、いろんな形で、ゆうちゃんの物語に溢れているのだ。
    深い愛情に支えられて、きいちゃんは真っ暗な闇の中で、立ち直りたいと願うけど、結局最後の最後に立つことが出来たのは、彼女自身の強さゆえだった。そうしなきゃいけない、という義務感と、そうすれば何かが変わるかもしれないと思える希望が、きいちゃんを奮い立たせる。
    それをそっと後ろで見守って、ゆうちゃんも一つ決心するのだ。
    本当に昔の私を見ているようだった。この世に万ある本の中で、昔の自分にそっくりな主人公が出てくる本なんて、なかなかない。これもまた巡り合わせなのかもしれないなぁと思った。
    きいちゃんほどの修羅場は、私にはなかったけど、それでも、個人的には沢山辛いことがあった。私は彼と乗り越えることを選んだし、それを後悔していない。
    きいちゃんには、まだまだこれから辛いことがいっぱいあるだろう。でも、それ以上に素晴らしいことも沢山あるだろう。一つ乗り越えるたびに、彼女を褒めてあげたいと思う。過去の私が、今の私を少しだけ褒めてやりたいのと同じように。

  • ほんわかした中にさみしさが詰まっている物語。
    自信なさげなきいちゃんと、どこまでも優しいゆうちゃん。読みながら「東直子」の世界だなぁ、とずっと感じていた。
    小説はもちろんよかったが、西加奈子のあとがきで、ストンと気持ちが落ち着いた気がする。

  • よいん。

    甘い水とかミトンさんとかも読んだけど、こっちのがすき。
    連作短編。

    ぎゅっと切ない、爽やかな残酷さ。


    言葉のとうめいさ。

  • わたしは多分ずっとゆうちゃんみたいなひとを探してるんだろう。だからわたしにとってこの物語はかなしかったけど、いとおしくてたまらないものだった。
    きいちゃんを抱きしめてあげたい。よく頑張ったねえらいねって言って、一緒にわんわん泣きたい。

  • オリオン書房で平積みされてておもわずジャケ買い。ぜんっぜんきいたことなかったけど、タイトルと可愛い装丁に惹かれて。
    なんというか、解説の西加奈子さんの言葉を借りて、
    やさしくて、こわい
    話だと思いました。
    2013/02/10読了。

  • 最初の数ページから泣いてしまった…家で読んでたら泣きっぱなしだったと思う。甘やかされることで腐っていくじぶんを見ながら、どうしようもあるのに、どうしようもないとこにこだわることで、うまく生活のポケットの中に隠れる。学生だからこそできるし、家族だからこそ逃げられないし、遂に優しさが甘やかしにしか感じられなくなる…っていうのは、あーもーなんだかなぁ。究極でさびしすぎる一連のごっこ遊びに、いちいち泣いてしまいました。
    東さんの小説初めて読んだのですが、短歌の世界が解かれたような不思議さを感じて、これはどういうことかなーと思ったんだけど、たぶん複数の短編から構成されてるからだと思う。章立てというよりは、それぞれが独立してるように思えて、より世界観が切り取られた感じになるような。

  • ふわふわときゅんとする、感じが好きです。
    ゆうちゃんはすてき男子。こんな人いたら甘え過ぎてしまいそう。

    不安定な人ってすごくいるけど、ただ甘えてるんじゃなくって、心が弱いんじゃなくって、難しいところにいるんだと思う。
    きいちゃんのように、何かのタイミングで気づいたり変われたりするといいな、って思う。

  • とても優しいけど、切ないお話しでした。

  • 守るべきものがあると強くあれるというような身の助け方もあるのかもしれないなと、ゆうちゃんを解する術としてはそのような印象。

    眠れない夜に傍らで物語を紡いでくれる恋人って素敵だなぁ。

著者プロフィール

1963年広島生まれ。歌人、小説家。絵本や童話、イラストレーションも手がける。「草かんむりの訪問者」で第7回歌壇賞、『いとの森の家』で第31回坪田譲治文学賞を受賞。歌集に『十階』、小説に『水銀灯が消えるまで』『とりつくしま』『さようなら窓』『薬屋のタバサ』『晴れ女の耳』、エッセイ集に『短歌の不思議』など。穂村弘との共著に『回転ドアは、順番に』がある。

「2019年 『しびれる短歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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