わが母の記 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 259
レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062772228

作品紹介・あらすじ

枯葉ほどの軽さの肉体、毀れた頭。歩んで来た長い人生を端から少しずつ消しゴムで消して行く母-老耄の母の姿を愛惜をこめて静謐な語り口で綴り、昭和の文豪の家庭人としての一面をも映し出す珠玉の三部作。モントリオール世界映画祭審査員特別グランプリ受賞ほか、世界を感動に包んだ傑作映画の原作。

感想・レビュー・書評

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  • 全編にわたり、母への強い思慕を感じさせる本だった。
    いつまでも元気だと思っていた親がだんだんと老いてゆく。老いてゆくだけではなくて、だんだんと壊れてゆく。壊れていって、そのうち、家族のことを忘れてゆく。
    認知症で次第に記憶や社会性を失っていく母の姿を、時に冷静に厳しく綴っているが、その筆致は冷酷でも残酷でもなく、親が子を戒めるような愛情あるものとなっている。
    次第に我を失っていく親の姿は同時に、次第に親を失っていく子どもの切なさと悲しみを投影していて、心を打つ。
    ひっそりと、しんみりと、気がつくと父母を想う気持ちになっていた。

  • 映画を観てからの原作
    映像を想いだしつつ
    映像に言葉を盛っていくように読む。

    母の毀れかたを
    レコードで表現されているのが
    わかりやすくて

    レコード盤を失ってしまったか、
    あるいはもともとそうしたレコード盤を用意してなかった
    というところも、子の母へ想いいれが切なくて可笑しくて

    母のことをこんな言葉で残せたら…
    幸せだなって考える

    87歳で亡くなった祖母にも
    少し毀れかたが似たところがあって

    だけど一緒に笑った表情が脳裏に浮かぶのが、嬉しい

    私が小さい頃、祖父がかまってくれなかったりすると、「傳治(でんじ)のバカ」って祖父を呼び捨てにしてあとを追いかけていたらしく

    それを会う度に何度も何度もリピートして、ゲラゲラ笑って喜んでた、祖母との楽しい想い出(*^_^*)

    母ともそんな想い出が増えていくのかな⁉

    映画での役所広司さん、樹木希林さん
    間違いなく素敵な親子でした‼

  •  人が年老いていくと食べて排泄するだけの一本の管になる。そもそも、それこそが生物の基本的な活動なんだと・・・他の出来事は薄ぼんやりと霧の彼方へ・・・DNAを無事に次世代へ引き渡したのなら、わが身は死を待つばかりなり(合掌

  • 最近、井上靖にはまっています。文章が好き。幸いにして家族一同無病息災であったのですが、1年半ほど前に祖父がなくなりました。短い闘病生活でしたが、その時、親を看取らんとする両親の、叔母の背中を見ていた気持ちを思い出しました。今の私の立場は孫娘にあたる芳子のようなものですが、いずれ立場が筆者や、その姉妹、ひいては母へと移っていく。本当に素晴らしい手記でした。

  • 最後の年表で名前は変えられているんだなと知る。よって、ノンフィクションのカテゴリではないかな。親が死んで自分と死との距離が近くなる。親が死から自分をかばっていてくれたんだなという文豪ならではのセンスが光る。

  • 映画を見た時、作中に使われる詩が好きで
    原作の方にも手を出したが、家族構成も違って詩も出てこなくて、映画はけっこう脚色されていたのだとわかった。

    では、映画でうたわれたあの詩はどこから来たのだろう。


    〝おかあさんと 渡る 海峡〟

  • 映画も見たんだけど記憶にはあまり残らない。樹木希林が演技がうまいなぁ、さすが。とは思った気はする。

  • 自分の母親の晩年を、死を、この様に言葉という形で表現できる作家という生業を羨ましく、また尊敬の念を抱かずにはいられない。

    認知症の祖母を想う。今祖母は、どのような世界を生きているのだろう。
    祖母と過ごした時間が愛おしく、また両親を思慕させられる一冊だった。

  • 物語終盤の、雪についての会話がとても綺麗

  • 「もう面倒見切れない気持ちになっている」実の母親をそんな風に言う場面なんて嫌だなぁ。そう思った時、昔私の祖母が呆けた時を思い出して頭を抱えた。   そうだ、中学生の私も母が大変そうで『大好きな』ばーばに腹が立っていた。   身近な人間が急激に変わっていくのをすんなりと受け入れられる人間なんてそうはいないんだった。それでも暖かく忘れていく母を見守っていくささやかな愛の詰まった一冊でした。

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著者プロフィール

井上 靖(いのうえ やすし)
1907年5月6日 - 1991年1月29日
北海道旭川で生まれ、天城湯ヶ島、三島・沼津で18歳まで過ごす。その時代までのことは『しろばんば』をはじめとした「自伝的小説三部作」に詳しい。金沢の第四高等学校(現・金沢大学)で詩作を始め、京都帝国大学を卒業後大阪毎日新聞社に入社。
小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950年デビュー。現代小説、歴史小説、エッセイ、自伝的小説、シルクロード西域関連の作品、詩集など創作範囲は多岐に及ぶ。主な代表作に、『風林火山』『氷壁』『天平の甍』『おろしや国酔夢譚』などがある。
1964年日本芸術院会員に。同年『風濤』で第15回読売文学賞、1980年菊池寛賞、1985年朝日賞などをそれぞれ受賞。1976年には文化勲章も受章しており、多数の受賞歴がある。

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