ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 7749
感想 : 717
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062772242

作品紹介・あらすじ

事件を起こすなら、私のほうだと思ってた。

母を殺してしまった娘と、母との確執を抱える娘。どんな母娘(おやこ)にも起こりうる悲劇。

地元を飛び出した娘と、残った娘。幼馴染みの二人の人生はもう交わることなどないと思っていた。あの事件が起こるまでは。チエミが母親を殺し、失踪してから半年。みずほの脳裏に浮かんだのはチエミと交わした幼い約束。彼女が逃げ続ける理由が明らかになるとき、全ての娘は救われる。

辻村深月2009年書き下ろし作品が待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルの「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」という意味が、ラストでやっとわかった時に、この物語の全てがそこには詰まっていて、なるほどこのタイトルのつけ方は秀逸だなと思いました。

    母子関係をテーマとした物語は他にもいくつかあって、これまで印象に残っているのは、湊かなえさんの「ポイズンドーター・ホーリーマザー」「夜行観覧車」。最近気になっているのは、角田光代さんの「坂の上の家」。
    作家さんが、母子関係をテーマとした作品を手がけるとき、きっと、自分自身の生い立ちと向き合うだけでなく、心の奥底に沈めた記憶や生々しい感情が溢れてくる。苦しくて、忘れたいから封じた過去、それと、対峙していく作業。
    親との関係は、親子の間でなされることだから、みんな自分の親子関係の異常性には気付かない。誰かからみたらある人の親子関係は異常だし、ある人から見たら誰かの親子関係は異常だ。だから、自分では自分の親との関係性こそが普通だと思っていて、その関係性が、後に自分の人間関係のベースとなってゆく。だんだんと社会が広がってゆく中で、自分の親の異常性に気付く。

    チエミの母子関係を、異常と思うかどうか。わたしは異常、とまでは思わなかったけれど、チエミがチエミの力で切り開いていく力を、奪う存在だったのかな、という気はする。この点では及川さんと同意見だ。
    子どもに様々な選択肢があるのは、親が様々な選択肢を呈示することができ、かつ、子どもに選択する力があるからだ。子どもに力があったとしても、親がその力を元から奪っていては、選択肢なんてなんの意味もない。選択肢だけがあってもダメなんだ。親が、奪うこと、それが何よりの悲劇なんだ。略奪は支配のはじまりだ。まずは、親が子どもを信頼すること、それが、すべてのはじまり。

    • さてさてさん
      naonaonao16gさん、こんにちは!
      いつも感想読ませていただいています。
      この作品、naonaonao16gさん書かれている通り、親...
      naonaonao16gさん、こんにちは!
      いつも感想読ませていただいています。
      この作品、naonaonao16gさん書かれている通り、親子関係について色々と考えさせられるものがありました。ある意味閉じた世界なので、なかなか自分の家の関係というものが世の中と比べてと、比較することもままならず、異常性というものに気づきづらいというのは全く同意見です。一日で読むには結構な文章量でしたが、思うところ多岐な一冊だと思いました。
      今後ともよろしくお願いします。
      2020/05/11
  • 女性作家の方でないと、これは書けなかったのではないか。と、思う。微妙な女性の心の動きや気持ちを、何ならものすごく複雑に書き綴っている。共感するところも、共感しないところもありながら、ただただ、胸が苦しくなった。
    婚活、結婚、仕事、出産、そして地方都市と東京…みずほとチエミ。
    30歳という歳だからこそ疎遠になった彼女たちの、複雑な思いが絡み合った友情関係。物語はチエミの母親の殺害事件と同時に彼女の失踪事件でもう一度、手を繋ぎたい、探したいとみずほが腰を上げるところから始まる。
    当時、仲の良かった友達と、チエミの会社の同僚などに話を聞き、みずほが連絡を断っていた期間のチエミの背景を掘り下げていく中で、チエミの、そしてみずほの、周りの人たちの複雑な女性特有の感情が溢れ出す様に渦を巻いていく。そこに、赤ちゃんポストという大きな存在が。
    少しづつ、真相に近づいていく感じは、ミステリーの様でした。
    そして、私は悲しかった。30歳という年齢の迫りくる強迫観念は痛いほど分かるし、あのドロドロ感もとても分かる。でも多分、この小説はそれだけじゃなくて、これから先、歳を重ねていく過程の中で、それがこの時期の必要な試練だったのであれば、どう乗り越えるのか。自由に解き放たれて色んな生き方や幸せが、特殊なことじゃなく、普通に転がっている世界になればいいなと思う。

  • 家族病理を問う長編。長いよ! 辻村先生。そして自身の内面を鋭く抉られるんです。自身の傲慢さと他者視点にはどう足掻いても立てないことに愕然とするんです...。秀逸なプロットと終盤の回収。みずほ編とチエミ編のボリュームの対比が...。この感覚は自身で手に取って感じて欲しい。

  • ここで書かれている結婚や恋愛の価値観とは無縁で生きてこれたから、大変だなあという感慨しか湧かなかった。
    それよりもグサリと来たのが、チエミの幼さ。
    この幼さは、たしかに、自分の身に覚えがある。

    タイトルの正体は割と序盤に察しがついた。「気持ち悪いくらいの仲良し母娘」の象徴かなぁ、なんて思いながら読んでた。けど、そこに込められていたのは形はどうあれどまっすぐな母の愛だった。ように思った。だから、どうしてもラストに救いを見いだせなかった。

    私も母とは確執がある。この本に手を伸ばしたのも「全ての娘は救われる」という謳い文句につられたからだった。読書でお手軽に救われたいなんて甘い考えに、平手打ちを食らったようだ。
    これは、子供のまま育った大人が自分も周りも破滅に追いやる物語、ではないか。とても息苦しい気持ちになっている。

  • 『傲慢と善良』 https://booklog.jp/item/16/29557043 の中の "女たち”の記述がまったく容赦なく、これまで 自分は 辻村深月の何を観てきたのか?と唖然とした。

    そういえば 登場する女性たちがアンマリだ と誰かが言ってた...と 思い出したのが ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。2009年だから10年前の作品ですね。

    『傲慢と善良』が結婚をめぐる男女を描いたのに対し、こちらは 地方都市に生きる女子の 知性や生きる力の格差 が如実に描かれている。
    教育熱心な”いいお家”の子だが幼い頃 母に”虐待されて”いたみずほ。
    事件のヒロインの チエミは 両親に可愛がられて育ったようだがその実、子供のまま囲われているような女性。自立とは程遠い。

    幼馴染のふたりは高校進学で人生が離れていくが 社会人になってから 知的ではないがタフな政美の交友関係にも巻き込まれ、繋がり続ける。
    華やかで可愛いが不倫を止められない果歩。
    帰国子女で建築士の亜利沙 などなど ... 複雑な女子社会の力関係が展開する。
    容姿・学歴・実家の太さ そういうものが影響しあって 羨んだり 手札にされたり 非常にややこしい ...

    他の子よりも”条件がいい” みずほ。
    彼女のパートナー選択は実に賢明。
    一方、チエミはダメ男にひっかかってしまう。
    しかも、その男にバッサリ切られる。
    「だけど俺と付き合ってなければ それこそ あの子には何もなかったと思うよ 」 ...(出会いがないのよぉ......ってやつだ .. ))
    ところが チエミ自身はよくわかっていない。狭い世界と乏しい想像力しか持たないのだ。いや、持たない人間に育てられてしまったのだ。

    まるで違う みずほとチエミ。

    だが みずほは チエミをあきらめない。 そこには女性ならではの事情も絡む。
    20代から30代の女性は かくも壮絶 ...... キツイ世代だよなぁ .......
    仕事の評価が唯一最大の関心事である男子多勢には想像できんだろう。
    「すべての娘は、自分の母親に等しく傷つけられている。」
    一方、息子たちは母親に+α愛されて育ちますし。

    力とカネと話題性がある人物に簡単になびく、そこになんの思考も働かせないような "カワイイ”女性たちは 個人的にはいささか不可解なんだが、怖気とともにマルッと剥いて”チエミ”という姿で見せてくれたことがインパクトあった。

    たとえ優秀じゃなくても、勝者になれなくても、他者から軽んじられないよう踏ん張る力は男女関係なく 必要ではないか?
    やっぱり 知は力 勉強はしよう!

    • adagietteさん
      そうか、辻村さん、山梨出身なんだ!
      高校は私立の特進コース。
      てっきり千葉の人だと思ってたわ〜
      そうか、辻村さん、山梨出身なんだ!
      高校は私立の特進コース。
      てっきり千葉の人だと思ってたわ〜
      2019/04/06
  • 元親友が母を殺して失踪した。進路を違えてから疎遠になっていた親友とその母も、殺人事件を起こすような母娘ではなく、むしろ自分の母と比べてうらやましくなるような温かい人だったのに、どうして……。主人公は、元親友との過去のやりとりをヒントに彼女の周囲の人間に事情聴取を行い、事件が起きた謎を探っていく。

    という物語なのですが。
    母と娘のあいだに横たわる確執はもちろん描かれていますが、それ以上に強烈なのが、女同士の友情。友情というか、マウントというか、憧れと嫉妬、同調圧力といったドロドロした感情が、男とのもつれた恋愛も絡めて、リアリティたっぷりに色濃く延々と描かれる。はたしてこの物語は謎を解決して終わるのかしら……? と途中で投げ出したくなりつつも、文章力に引き込まれて読んでいたら、さすが辻村さんでした。ラストにどんでん返し。タイトルの意味がわかった時は泣きたくなった。

    なんでしょうかね、女の幸せは結婚と出産という価値観に縛られた社会。SNSで大袈裟に祝福される女のイベント。雑誌で盛られる「モテ」の定義。それに翻弄されるアラサー女達。親世代と子世代の価値観の違いや、社会の闇が引き起こした殺人。それに比べてタイトルに込められた意味が光る。母にとって娘はいつまでも娘で、大事な宝物なのだね。

    つまりは、自分をしっかりと持ちましょうという話(←まとめすぎ)

  • 久しぶりに読む辻村深月さんの作品。
    あの独特の「胸に迫る感じ」が欲しくなり、購入、読了。

    最初から最後まで、ひたすらにずっともやもやしながら読んだ。
    読んだ後も、なぜだかすぐに感想が出てこず…というか難しい…ただただ、胸がざわついているというか、そんな感じだった。

    なぜか?と考えてみると、この小説の中に出てくる友人との関係性に自分にも思い当たる節があるからかもなぁ…と感じた。

    仲が良い友人に対しても、実は蔑んでいる部分もある。
    でも、羨ましい部分もある。
    そして、その上で成り立っている友情もある。
    その現実的に成立している、でも少し気持ち悪い関係性を鋭く指摘されたようなところがあるのかなぁと、そんな風に感じた。

    人間って、なんでみんな同列では満足できないんだろうか。
    「人より抜きん出たい」っていう発想が無ければ、みんな飯くらいは食べられる幸せな人生を送れるかもなぁなんて、思ったりするけれど…
    限りなく甘ちゃんの発想かな(笑)

    なんかこう、生きるって難しい。

    色んなものが無くなってしまったチエミ。
    でも、父親からの信頼と、そしてみずほとの友情は残っている。
    重たい話ながら読後感が悪くないのは、そこの救いがあるからかな。
    チエミの幸せな今後を願ってやまない。

    <印象に残った言葉>
    ・将来、同じ年の子のお母さんになろうよ。(P115、チエミ)

    ・あんたが普段ちゃんと管理しておかないから、懲らしめるために、試すためにやったのよ。みずほ、これからもきちんとしなさい。(P235、みずほの母)

    ・自分の人生の責任を、人に求めて不満を口にして終わり。そんな生き方、楽じゃないですか。与えられるものを待つだけ、自分で選ぶのではなくて、選ばれるのを待つだけなんです。その証拠に、会社にどれだけ不満を持ったところで、契約の更新がされるかどうかに怯え、彼女の口からは一度として転職という言葉が出なかった。自分で何かを決断したことがないから、変化が怖くてたまらない。(P297、亜里紗)

    ・すべてを人のせいにして呪うなら、悪いのは高校の先生じゃない。あなたの限界を決めたのはあなたの親だ、と。(P299、亜里紗)

    ・お母さん。これは、ひどい。(P364、みずほ)

    ・私には、最初から、何もなかった。(P476、チエミ)

    <内容(「Amazon」より)>
    地元を飛び出した娘と、残った娘。幼馴染みの二人の人生はもう交わることなどないと思っていた。あの事件が起こるまでは。チエミが母親を殺し、失踪してから半年。みずほの脳裏に浮かんだのはチエミと交わした幼い約束。彼女が逃げ続ける理由が明らかになるとき、全ての娘は救われる。著者の新たな代表作。2013年おすすめ文庫王国 エンターテインメント部門 第1位。(講談社文庫)


    事件を起こすなら、私のほうだと思ってた。

    母を殺してしまった娘と、母との確執を抱える娘。どんな母娘(おやこ)にも起こりうる悲劇。

  • ああなんて恐ろしいものを読んだのだろう。なんて恐ろしいものを書いたのだろうこのひとは。そう思った。こんなにしんどーい気持ちになったのは、少なくとも、本を読んでということになるとはじめてかもしれない。
    「ぼくのメジャースプーン」で描かれた「悪意」と「勇気」の物語の根底にみつかる「どうしようもないこと、よのなかにあふれている悲しみ」がこの物語にも、ファンタジー要素なく描かれている。
    チエミはわたしのまわりに、いる。こんな子、多少の個性のちがいはあれど、ありふれている、つまり私自身でもあるし、親友である彼女でもある。
    みずほが「なぜわたしではなかったのか」と問うが、母との関係から救われない世の中の女にとってそれは、切実な叫びだ。
    最後に救われるという表現の帯なのだが、…救われないよ?なんら救われないよ? と思う。決して物語が嫌いなのではないのだけれど。物語を通してみた現実は、あまりに暗澹としている。

  • みずほやチエミ、他の女子達と性格や環境が全く違うはずなのにすごくわかる気がするのは何故だろう。インタビューから謎が徐々に明らかになる過程が面白くて、まだ皆この先があるようなラストも良い。

  • 作中にゼロハチゼロナナが登場したときの、溢れる想いが伝わってきました。
    あの人は駄目な人だけど悪い人じゃない、それを受け入れられない自分を少し変えられたかなと思えました。

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』など著書多数。

「2021年 『闇祓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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