- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062772464
作品紹介・あらすじ
<わたしたちは仲間です>――十四歳のある日、同級生からの苛(いじ)めに耐える<僕>は、差出人不明の手紙を受け取る。苛められる者同士が育んだ密やかで無垢な関係はしかし、奇妙に変容していく。葛藤の末に選んだ世界で、僕が見たものとは。善悪や強弱といった価値観の根源を問い、圧倒的な反響を得た著者の新境地。
2009年に講談社から発売され、芸術選奨文部科学大臣新人賞・紫式部文学賞をダブル受賞した話題作の文庫版です。
感想・レビュー・書評
-
川上未映子さんの深淵を覗いてしまった感…
苛めに苦しむ「僕」と、同じく苛められている女生徒「コジマ」との交流を描く。
苛めのシーンは辛いけど、注目するのはそこじゃない。
苛めている側「百瀬」と僕の対話が始まる。
203ページからずっと、頭を殴られ続けているような衝撃。
これ感想「凄かった」で終わらせられない…
◉辛ければ辛いほど美しい(コジマの世界)
コジマという痛いほど真っ直ぐな個性の描き方にハッとする。
嬉しい時に出る「うれぱみん」にほっこり(*´꒳`*)
しかしその愚直さが自分を追い詰める。
辛いこと・苦しいことに「意味」を求めるコジマ。この辛さを乗り越えた先にきっとある、幸せな未来を想う。
彼女がエスカレートしていく様はとても見ていられない。そのうち世界中の辛さをも自分が背負うことに美徳を感じるようになる。
でも、コジマのような考えは誰もが持ってるはずなのだ。悲劇のヒロインになりたい気持ち。
だからこそ読んでいて辛かった。
◉人生に意味はない(百瀬の世界)
しょっぱなから「え?え?」の連続。
だって常識が通用しないんだもん。
苛めをしてはいけないって、それなんで?
正しさなんて関係ない。
やりたい欲求があり、できることをやる。
それだけだろう?
逆に君は なんで苛めができないんだ?
罪悪感はないよ。いいことも悪いことも、全てはたまたま起こることであり、意味なんかないからさ。
周りと自分との完全な分断。
圧倒的に周りに期待しない、依存しない。
凄く冷たい世界のように感じるが、苛めを受けている僕に対して「変えたいなら行動しろ」というメッセージも感じられる。
コジマと百瀬は正反対だけど、どちらも自身を強く納得させるだけの世界観を持っていて、僕は翻弄される。
しかしその事を考えているおかげで本当に危ない、鬱々としたところからは抜け出せたように思う。
◉理不尽な人生に意味をこじつけて何が悪い
百瀬は「人生の辛苦さえ意味がないという事を受け入れられないのは、弱い人間だ」とバッサリ言ってたけど、私は色々な事に意味を見つけ出して生きていきたいと思っている。
仮にこの先、死んでしまいたいくらいの辛い出来事があっても、自分で何かしらの理由を見つけて先に進む気力が湧くなら絶対にそっちのほうがいい。
やり過ぎたらコジマみたいになってしまうけど…
最後のくじら公園のシーンは圧巻。
自分の道徳観を強く揺るがせた作品だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
H29.4.23 読了。
終盤のコジマの行動は、尊敬しちゃいます。
主人公のボクとその母親のその後が気になりますね。 -
「相手の立場に立って行動しろなんてことを言えるのは、そういう区別のない世界の住人だけだ。
矛盾のない人間だけだ。でもさ、どこにそんな人間がいる?誰だって自分の都合でものを考えて、自分に都合よくふるまってるだけなんだよ。自分がされたらいやなことなんてみんな平気でやってるじゃないか。肉食は草食を食うし、学校なんてのは人間のある期間における能力の優劣をはっきりさせるためのものだし、いつだって強いものは弱いものを叩くんだ。
きれいごとをあるだけあつめて都合のいいルールをならべてそのなかで安心しているやつらも、その事実から逃れることはできない。」
こんな台詞を中学生に言われたら、大人はなんて答えるのがベストなのだろう。
「したくない、つまりできないやつ
世のなかには色々なことができたりできなかったりする人たちでいっぱいだよ。
人にはできることとできないこと、したいこととしたくないことがあって、
できることはできてしまうという、シンプルな話だよ。
でもそれも全部たまたまのこと。
たまたまそれができる。
君はいまたまたま、それができない。
それだけのことだよ。」
うーん 頭を抱えたくなる。 -
「みんながおなじように理解できるような、そんな都合のいいひとつの世界なんて、どこにもないんだよ」
物語序盤に酔えた、主人公2人の救いの世界が変化していく様が重く辛い。
そして今現実で目にする戦火の画を思ってみても、棚上げ出来ないテーマに心が沈む… -
初の川上未映子作品。
スラスラと読めつつも、しんどい事この上ない内容でした。
百瀬のあの言葉。中学生にあんなセリフを言われたりしたら、わたしにはぐうの音も出ないかもしれない。
コジマはあの後、どうなったのだろう。
面白くてとゆうよりも、重くてドーパミン出ました。おもぱみん。 -
脆くて不安定な思春期を描いた、痛々しくて生々しくて、哲学的な本だった。
嫌なことからただ逃げるのではなく、つらくてどうしようもない、他に術がないのだとしたら、そこから逃げたっていい。
自分の世界は自分で守らないといけない。
壊れてしまう前に。
壊してしまう前に。
そして、自分を支えるもの、生きていく糧になるもの、軸になるものをゆっくりと見つけていけばいい。
大人になった今だからそう思える。
それを知らない子供達に少しでも伝わることを願って。 -
❇︎
わたしたちは仲間です
クラスメイトからの執拗で陰湿な苛めを
受け続ける僕に届いた差出人不明の一枚の紙。
新手の苛めと疑う中も手紙は届き続け、
恐る恐る呼び出された待ち合わせ場所に行くと
そこには同じように苛めを受けるコジマがいた。
誰かに知られるわけにはいかない二人は、
共犯者にも濃淡が違う同じ色にも見えます。
人は自分と違う理解できないことを恐れ、
嫌い、怖いからこそ排除しようとするだよ
というコジマ。
主人公の僕は斜視が原因で苛められてるが、
手術で治ると医師から知らされる。
悩む僕に母は、
「人と違うところが同じになったからといって、
大事なものが失われたり損なわれたりしない」
と手術に背中を押す。
本質は見え方が変化しても変わらない。
そのものが変わった時に初めて変化が現れる
と感じたラストでした。
深く複雑で重い読後感。
-
これで3度目。なぜこんなに読み返してしまうのか。死ぬまでにあと何回読むのかな。
著者プロフィール
川上未映子の作品






この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。





