ヘヴン (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.36
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本棚登録 : 3582
レビュー : 431
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062772464

作品紹介・あらすじ

<わたしたちは仲間です>――十四歳のある日、同級生からの苛(いじ)めに耐える<僕>は、差出人不明の手紙を受け取る。苛められる者同士が育んだ密やかで無垢な関係はしかし、奇妙に変容していく。葛藤の末に選んだ世界で、僕が見たものとは。善悪や強弱といった価値観の根源を問い、圧倒的な反響を得た著者の新境地。

2009年に講談社から発売され、芸術選奨文部科学大臣新人賞・紫式部文学賞をダブル受賞した話題作の文庫版です。

感想・レビュー・書評

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  • 川上未映子さんの深淵を覗いてしまった感…
    苛めに苦しむ「僕」と、同じく苛められている女生徒「コジマ」との交流を描く。
    苛めのシーンは辛いけど、注目するのはそこじゃない。
    苛めている側「百瀬」と僕の対話が始まる。
    203ページからずっと、頭を殴られ続けているような衝撃。
    これ感想「凄かった」で終わらせられない…

    ◉辛ければ辛いほど美しい(コジマの世界)
    コジマという痛いほど真っ直ぐな個性の描き方にハッとする。
    嬉しい時に出る「うれぱみん」にほっこり(*´꒳`*)
    しかしその愚直さが自分を追い詰める。
    辛いこと・苦しいことに「意味」を求めるコジマ。この辛さを乗り越えた先にきっとある、幸せな未来を想う。
    彼女がエスカレートしていく様はとても見ていられない。そのうち世界中の辛さをも自分が背負うことに美徳を感じるようになる。
    でも、コジマのような考えは誰もが持ってるはずなのだ。悲劇のヒロインになりたい気持ち。
    だからこそ読んでいて辛かった。

    ◉人生に意味はない(百瀬の世界)
    しょっぱなから「え?え?」の連続。
    だって常識が通用しないんだもん。

    苛めをしてはいけないって、それなんで?
    正しさなんて関係ない。
    やりたい欲求があり、できることをやる。
    それだけだろう?
    逆に君は なんで苛めができないんだ?
    罪悪感はないよ。いいことも悪いことも、全てはたまたま起こることであり、意味なんかないからさ。

    周りと自分との完全な分断。
    圧倒的に周りに期待しない、依存しない。
    凄く冷たい世界のように感じるが、苛めを受けている僕に対して「変えたいなら行動しろ」というメッセージも感じられる。

    コジマと百瀬は正反対だけど、どちらも自身を強く納得させるだけの世界観を持っていて、僕は翻弄される。
    しかしその事を考えているおかげで本当に危ない、鬱々としたところからは抜け出せたように思う。

    ◉理不尽な人生に意味をこじつけて何が悪い
    百瀬は「人生の辛苦さえ意味がないという事を受け入れられないのは、弱い人間だ」とバッサリ言ってたけど、私は色々な事に意味を見つけ出して生きていきたいと思っている。
    仮にこの先、死んでしまいたいくらいの辛い出来事があっても、自分で何かしらの理由を見つけて先に進む気力が湧くなら絶対にそっちのほうがいい。
    やり過ぎたらコジマみたいになってしまうけど…

    最後のくじら公園のシーンは圧巻。
    自分の道徳観を強く揺るがせた作品だった。

  • H29.4.23 読了。

    終盤のコジマの行動は、尊敬しちゃいます。
    主人公のボクとその母親のその後が気になりますね。

  • 脆くて不安定な思春期を描いた、痛々しくて生々しくて、哲学的な本だった。

    嫌なことからただ逃げるのではなく、つらくてどうしようもない、他に術がないのだとしたら、そこから逃げたっていい。
    自分の世界は自分で守らないといけない。
    壊れてしまう前に。
    壊してしまう前に。

    そして、自分を支えるもの、生きていく糧になるもの、軸になるものをゆっくりと見つけていけばいい。

    大人になった今だからそう思える。
    それを知らない子供達に少しでも伝わることを願って。

  • 同級生からいじめに耐える日々を送る「僕」。そこに現れたのは同じクラスでいじめを受けている「コジマ」。手紙や非常階段での会話を通して育てんだ密やかで無垢な関係。
    善悪、強弱の価値観を問う一冊。

    「僕」、「コジマ」、「百瀬」それぞれの考え方。見方を変えたらどれも妙に腑に落ちる。(百瀬の考えは感情を抜きにした場合、だし、コジマのいじめとのたたかい方について共感はできないのですが…)
    どの考え方を選んで生きていくか、ということなんだろな。

    いじめの話なので、全編通して苦しいです。
    それでも、「僕」が選んだ世界で、「僕」が最後に見たものはとても美しく描かれていて、少し涙が出そうになりました。

  • これで3度目。なぜこんなに読み返してしまうのか。死ぬまでにあと何回読むのかな。

  • ヒリヒリする本だ、先へ先へと一瞬で読み進めた。
    主人公の立場からすると悪魔のような百瀬の言うことも、大人の立場からするとある種間違っていない部分もあり、考えさせられる。みんな誰でも良いし、やりたいことをその時の気分でやっているだけ、それを止めることはできない、と。ひどい話だが、あちこちでそういうことが起きているのだ。
    だからこそ、いたくない場所に留まらなくても良い、いくらだって自分のしっくりくる場所にうつっていい、どうか縛られないで。って、主人公にもコジマにも、大人のわたしは思った。

    コジマは、いたぶられる自分の状況を、ある種の信仰のように受け止めていた。わざと自分を汚くして、いじめを受け入れることの中に自分の存在意義をみつけていたけれど、本当に彼女はそれで良かったのか。武装の奥、本当の願望の中に、普通におしゃれをして、キレイにして、優しくされて幸せに生きたいっていう気持ちがあるんだったら、いつだって生まれ変わっていい、って言ってあげたかった。世界の広さを知った大人だから言えることだっていうのはわかってるけど、でも。
    だから、主人公が最後斜視を直して、美しい世界に驚嘆するところは、心から良かった、って思った。

    自分の人生だから、自分が心地よいように、生きやすいように、どんどん選択していっていいと思う、私は。
    まぁ、言葉で言うのは簡単でも、それを実行に移すのがなかなか難儀だと言うのは、わかるけれど。

  • なぜ人間は他人を攻撃するのか?いじめの描写は、読み手に、加害者への怒りを引き起こす…。でも、自分の子ども時代に、自分と異なるタイプを仲間外れにして優越感に浸った経験があり、自分自身もまた加害者と同じ線上にいること、違いは実行への距離だけだと、怖くなる。大人になった今、他者に優越したい思いは、社会化された形に変化したものの、確かに自分の中にまだ存在する。人間は怖い、哀しい。

  • 虐められる子たちの複雑な家庭環境。
    子どもの時から自分の気持ちを押し殺して日々過ごしてきたのだろう。
    そんな彼らに付け入るように、狙う子は狙いを定めてやってくるのだろう。
    百瀬を通して虐める側の心理を見事に描写している。
    川上未映子さんの描く虐める側の心理を読めば読む程、自殺は無意味な物として、一種の救いすら感じる。まともな大人達に気付かれぬまま、残酷な目に遭わされてそれでも耐え抜いて生き延びる姿。日々通う中学校での出来事に次は死んでしまうのでは?と心配で先を読まずにいられなかった。
    虐められる側は決して悪くない。
    自分の弱さを目の当たりにする様で、逃げたくなるけど、信頼出来る誰かに出会って、自分の状況を説明して、基本的人権が守られた日常へ早急に戻るべき。
    治せるものは早く治して正しく世の中を見るべきだと思う。

  • 斜視の中学生「僕」は毎日暴力的な酷い虐めを受け続けている.クラスにはもう一人,コジマという女子も苛められていて,二人の間には密かな共感が生まれる.虐められることに言わば宗教的な意味を見出そうとするコジマ,一方「僕」は,虐め首謀者の一人百瀬と2人きりでした話をきっかけに,善悪や強さ弱さの意味を考え始める.読むことに苦痛を伴うが,読者は「僕」と一緒に考えることを求められる,そんな小説.

  • 「わたしく率イン歯ー、または世界」のように最後の場面の怒涛の感情の吐露、主人公の思考が百瀬とコジマを行ったり来たりする場面は読んでいる側も引き寄せられた。最終的に清らかなバットエンドという印象。ただのハッピーエンドにしなかったことだけでも川上未映子の力量を伺えた。百瀬に関しては強者の理論だと思った。百瀬と主人公の見る角度が違うだけで、2人とも間違っていない。悪いのはどちらか、と聞かれたら百瀬だけどそんなことを言っても百瀬はだからなんだい、と笑うだろう。システムの話なんだと。このシーンがあることにより、より明度を上げた小説だったように思う。

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著者プロフィール

川上未映子(かわかみ みえこ)
1976年大阪府生まれ。大阪市立工芸高等学校卒業。2002年から数年は歌手活動を行っていた。自身のブログをまとめたエッセイ『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』で単行本デビュー。2007年『わたくし率 イン 歯ー、または世界』『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』で早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞、2008年『乳と卵』で芥川賞、2009年詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞、2010年『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部文学賞、2013年詩集『水瓶』で高見順賞、『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞、2016年『マリーの愛の証明』でGRANTA Best of Young Japanese Novelists、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞を受賞。2017年、『早稲田文学増刊 女性号』で責任編集を務める。2019年7月11日に『夏物語』を刊行し、注目を集めている。

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