新装版 赤い人 (講談社文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062772594

作品紹介・あらすじ

明治十四年、赤い獄衣の男たちが石狩川上流へ押送された。無報酬の労働力を利用し北海道の原野を開墾するという国策に沿って、極寒の地で足袋も支給されず重労働を課せられる囚人たち。「苦役ニタヘズ斃死」すれば国の支出が軽減されるという提言のもと、囚人と看守の敵意にみちた極限のドラマが展開する。

感想・レビュー・書評

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  • H30.8.1 読了。

    ・明治期の無期懲役囚達が北海道に渡り、自分たちの生活の場である樺戸集治監(刑務所)の建築から周辺の原野を切り開いて開墾、道路建設、病院、寺などの建築などに携わり、まさに北海道開拓史を支えたことがすごくわかった。
     学校の授業では教えてくれない歴史がわかる貴重な作品だと思う。

  • 明治維新直後の日本。不平士族の反乱や政府部内での対立などで刑務所に収監される囚人が急増。その需要に応えるため、政府は新たな収監所として、北海道に目を向ける。厳寒の地での収監は刑罰としては適しているし、北海道開拓の労働者としても期待できる。囚人の人権なんて考える必要のない時代、政府は容赦なく囚人を北海道へ送り込む。

    囚人たちは番号のついた赤い服を着せられ、移送される。たどり着いた北海道で待ち受けるのは防寒対策が不十分な獄舎と粗末な食料、過酷な労働。使い捨ての開拓員としてこき使われた囚人のほとんどは凍傷に悩まされ、亡くなる者、脱獄する者が後を絶たない。

    第2次大戦後のソ連によるシベリア抑留に似たようなことが、被害者側の日本ですでに行われていたことに歴史の皮肉を感じる。そして、こうした犠牲によって北海道が開拓されたことは知っておくべきだ。

    名もなき囚人たちの壮絶な苦悩が歴史文学作家、吉村昭の丹念な取材力と淡々と事実を記す表現でより強調される。ただ、あまりに読者の気が滅入る事実ばかりを並べすぎた反動なのか、後半から脱獄犯列伝みたいになってしまうことに、すごい違和感がある。

  • 北海道樺戸集治監を舞台に労働力として押送された囚人達と看守達のドラマ、明治という時代にさまざまな思いが交錯する背景、細かな取材、さすが吉村昭
    ゴールデンカムイのモデルとなった人物も多数あり

  • 北海度の発展と囚人たち。淡々と語られるその内容は初めて知るものばかり。歴史とは…学校では習わない歴史の存在を痛感した。

  • 北海道開拓史の暗部。
    囚人による苛酷な強制労働の上に成り立つ。北海道開拓の一端を囚人達が担っていた。しかし、囚人達は国益のために使い捨ての労力として扱われていた。
    樺戸集治監の盛衰物語とも言える。
    ほんの少し昔の日本の暗部であり、史実でもある。
    それを多くの資料から掘り起こし、淡々とした筆致で描きる吉村昭氏。すごい。

  • ゴールデンカムイという漫画に影響され、網走旅行中に購入。

    明治維新後、国事犯や民権運動により囚人が牢獄に収まらなくなった。またソ連南下の脅威を感じている日本政府。そこで囚人たちに北海道開拓をさせることに。「苦役に絶えず死ねば国の出費も減る」とのこと積極的に囚人が送られた。

    現地の労働は超極寒の中、履物や手袋、食料までもが十分に支給されず命を落としていく。北海道に囚人が送られることは死と同義と言っても過言ではなく、自暴自棄になり脱獄を試みる囚人も多数。

    旭川から網走に道を一本作るのが一番過酷だったよう。交通網が国力に直結するのは理解できるが、国のために命を落としていく囚人を思うとやるせなくなる。

    この本は有吉が網走監獄博物館で買った。網走から旭川への帰路、この道は囚人無くして存在し得なかったと考えると囚人といえど頭が下がる思いである。

  • 明治以降の北海道開発は囚人が担った歴史の事実を記録する
    明治14年月形に樺戸集治監を作り、北海道開拓の労役に囚人を利用 コストのかからない労働力確保と、北海道開拓の早期実現
    当初の農業開墾から始まり、基幹道路の開削、石炭・硫黄の鉱物資源を掘出しなど、人間扱いされない労働力として消耗
    囚人の絶望と多数の死、そして脱走・恩赦などのドラマが織りなされた
    国家が危機に有るとき、国家権力がどれだけ暴力的になるのか、吉村昭氏は丁寧に描いている
    一人一人の囚人のドラマで有るとともに、明治の時代における国家存亡の危機という歴史も見事に描いている
    司馬遼太郎氏の坂の上の雲とは異なる影の部分にスポットを当てており、意義深い
    一点、囚人を活用したビジネスで得られた利益は誰がどの程度享受したのだろうか
    歴史の本質の一つはマネーである

  • 明治十四年から大正八年まで開拓のために囚人が次々と北海道へ送られた。
    北の最果て。
    無報酬。
    過酷な労働。
    猛威を振るう自然。
    人体実験紛いの行為。
    人権なんてない。
    時代のなせる業。
    三十八年で死亡者、延べ千四十六人。
    この囚人たちの上に北海道がある。

  • 明治期の北海道開拓には、樺戸集治監をはじめとする囚人たちの労働が大きな役割を果たしていた、というお話。囚人vs看守の緊迫した攻防はドキドキする。
    罪を犯して北海道におくりこまれるならともかく、囚人監視のために未開の地に送り込まれた看守の方がよっぽどお気の毒…という気がする…。
    冬の間に雪の上に囚人が埋葬されていくさまが、アンデス山中の飛行機事故で生き延びた「生きてこそ」を思い出して怖かった…

    ゴールデンカムイの元ネタのような話がいっぱい出てきて面白い。慶さんとか長庵とか四郎助とか。

  • 明治14年、無報酬の労働力として北海道の原野を開墾する赤い獄衣の囚人たち。極寒の中での過酷な肉体労働だが足袋も支給されず、凍傷で体は欠損していくものの酷使され続ける。維新で政治犯になった士族たちと混乱した世相で発生した凶悪犯たちは豊富な資源であり、死んでも補充されるだけ。脱走したら看守たちに殺され、死体は見せしめにされる。北海道にまず囚人たちの手で獄舎が出来、炭鉱が掘られ、道路、鉄道が敷かれていく。

     『... 掘りさげられた堅坑に可燃ガスの存在が懸念されると、看守の指令で囚人の体に綱が巻きつけられ、宙吊りにされておろされる。囚人が頭をたれ動かなくなると、ガスの存在がみとめられ、新たに換気孔がうがたれる。むろん、堅坑におろされて悪性ガスを吸った囚人の大半は、
    意識が恢復せず、一命をとりとめた者も痴呆状態になった。… (P211) 』

    『...看守たちはもどかしがって、樹木の一方に囚人たちを綱でぶらさげさせ、その重みで樹木を早目に倒すよう指示する。倒れる樹木を避けきれず、下敷きになる者もいた。… (P234)』

    『降雪期がやってきて、かれらは雪中で岩を砕き、巨木を倒して進んだ。その頃から逃走者が続出するようになり、それを看守が追って斬り殺し、銃弾を打ちこむ。路線の周辺には、病死者と逃走者の遺体が点在し、降りしきる雪に埋れていった。… (P235)』

    『...囚人は怠惰を好み他人の生活をあてにする「寄生虫」で、かれらを更生させるには働かなければ食物を口にできぬことを教える必要があり、そのためにも坑道内に追い込み採炭させることが最も効果があると論じていた。... (P241) 』

    『樺戸監獄の関係書類は旭川監獄に移されたが、それらの書類に記録されている共同墓地に埋葬された囚人の遺体は千四十六体で、そのうち遺族に引き取られたのは二十四体に過ぎない。死因は、心臓麻痺が八十三パーセント強にあたる八百六十九体、逃走にともなう銃・斬殺、溺死、餓死及び事故死、自殺が百十三体、その他四十体と記録されている。… (P306) 』

    2016/07/17

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著者プロフィール

1927-2006。東京生まれ、作家。純文学短編、記録文学、戦記小説、事件小説、歴史小説など。作品に『破獄』『陸奥爆沈』『天狗争乱』など。吉川英治文学賞、讀賣文学賞、大佛次郎賞、菊池寛賞ほか受賞。

「2019年 『はればれ、お寿司 おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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