にぎやかな天地(上) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062772891

作品紹介・あらすじ

この宇宙に死はひとつもない。
祖母の死について考え抜かれた言葉と、微生物の人知を超えた営みが織りなす壮大な物語

熟鮓(なれずし)、醤油、鰹節といった日本の伝統的な発酵食品を後世に残す豪華限定本を作ってほしい――。謎の老人松葉伊志郎から依頼を受けた船木聖司は、早速祖母の死とともに消えていた糠床を蘇らせる。その後、料理研究家の丸山澄男の協力で日本各地の職人を訪ねるうちに、微生物の精妙な営みに心惹かれていく。

この地球上にいる肉眼では見えない微生物の数は、人間どもの数億倍、いや数兆倍、いや、もう数を示す単位では表現できない個数にのぼるであろう。
そのなかには、人間に害を為し、死に至らしめるやつらも厖大に混じり合っている。
人間の肉眼で見ることができないのは、なにも遠くの宇宙の星々や星雲だけではないのだ。星も星雲そのものも、人間の持つ言葉を超えた巨大さで生死を繰り返し、微生物たちも、いまこの俺の掌のなかで、この部屋の空気のなかで、階段の手すりで、ドアのノブで、鼻の穴や口のなかや食道や肺のあちこちで、生死を繰り返しつづけている……。――<本文より>

感想・レビュー・書評

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  • 豪華限定本をつくるフリーの編集者・船木聖司は、松葉という人物から日本の伝統的な発酵食品を後世に残すため非売品で五百部の依頼を受ける。
     そして、丸山澄男という女好きで小々癖のある料理研究家と友人のカメラマンの協力のもとサンマの熟鮓、醤油などの取材を敢行する…。

    登場人物の会話、ほとんど軽妙な大阪弁だす。糠床の造り方のレシピを初め、グルメ本のようにお役立ち的な部分もあり( ..)φメモメモ。また阪神淡路大震災の記憶も呼び覚ますシーンもある。
    死というものは、生のひとつの形なのだ。この宇宙に死はひとつもない。こんな書き出しで始まるこの物語は、発酵食品を素材とした人間の生死と絆、愛を描いた壮大な物語だ! 
                                    (下巻へつづく)

  • トピックが多いなぁ。もう少し絞っても。

  • 私が普段、一切気にも止めないような、仕草や表情が描かれ、非常に興味深い拝読した。発酵食と同様に、哲学、自然、宇宙、人生など、壮大なスケールが、描かれている。タイトルにどういう意図が組まれているのは、今はまだわからない。

  • うーん、発酵食品の話とか豪華限定本作成の話とか最初は結構興味深く読んでるんだけど、なんか深まっていかないのに同じような内容が繰り返される気がして…。あと段々よく考えたら2012年の30代のまだ若者に分類されそうな登場人物たちの会話があまりにも若さを感じさせないかなあ…

  • 物語に出てくる題材が色々あり過ぎてあまりピンときませんでした。主人公や他の登場人物についても終盤になってもあまりハッキリとした結末には至っていなくて中途半端感が否めません。

  • 2016/11/21

  • 豪華本を作る 編集および職人 舟木は、
    独身 32歳だった。
    阪神大震災の 9年後。

    父親は、まったく 理不尽な形で 死んだ。
    舟木は まだ3歳だった。
    姉は 5歳で 現在は 看護士をしている。
    母親も 病院に勤めている。

    祖母につながる トーストというパン屋の大前美佐緒に
    一方的に 恋心を抱く。
    そして、そのつながりが どのように展開するのか?

    発酵食品の ルーツを探りながら 
    それを 豪華本の 題材とする。

    和歌山 熊野に 醤油の発祥があるという話は
    なんとなく ときめくものがある。
    鮎鮨、サンマ鮨、なれずし。
    発酵食品って 奥が深い。 

  • 嫁さんから面白いよと紹介された 宮本輝作
    「にぎやかな天地 」(上下巻)。
    本の装丁家の主人公が発酵食品の本を作るにあたって、
    長い年月をかけて出来る発酵食品のさまを取材することで、
    自分の仕事や生き方を見つめ直し再出発するストーリー。
    ということで、発酵食品の味噌を作りに教室に行って来ました。^_^

  • きっかけはあるちょっとしたひとこと、だったのだけど、迷いつつ入手、読み始めたらはやかった。文章というか文体がなじむのかな?宮本輝さんの作品はたぶん、二回目。使ってある言葉や表現が自分に近い感覚がある。そうしたささいなことが嬉しくなったりして・・・

    内容が濃いので言語化するのがむつかしい。
    まだ下巻があり、それを読み終えたころにはどんな感じになっているだろう?・・・なんだかたのしみだ。

    かなり厚みのある物語だからまずは無事に、そしてしっかりと読み取れるように。

  • 話が少しまどろこしいな。微生物の話は面白いけど。人生いろいろある話は、やっぱり疲れちゃう。宮本輝は、いろいろある話が多いけど、昔はもっと勢いがある話だったような気がするなあ・・・
    死ぬ前の何年間満たされたら、生まれてきてよかった、と思えるのか、という話と、アラビアンナイトの『不治の病とは何か』の話、は印象深い。

  • 面白い。続きが楽しみ。久しぶりに 好みの本にあたった。柴田主任から貰った本です。

  • 宮本輝さんの作品の登場人物は本当に優しい人ばかりで癒されます。
    悪人がいない。

    そして、今回ももれなく知識欲をくすぐるテーマあり。
    以前読んだ、「約束の冬」では葉巻にとても心惹かれたのですが、
    今回は「発酵食品」

    恥ずかしながら私にとっては、この本を読まなければ知ることがなかったであろう事柄です。
    日本の伝統食品の奥深さが垣間見えます。
    糠床はじめてみようかと思ってしまう…(無論ぐうたらな私には無理な話ですが)

    元々発酵食品に造詣の深い方にはわかりませんが、私のような無知の極みにとっては目から鱗の世界でした!

    あと、豪華限定本。
    編集の世界はまた奥深いです。私も編集の仕事に憧れを持った人間なので、かなり興味深く読ませて頂きました。
    松葉さんのお兄さまが魅せられた豪華限定本を見てみたい…。

    そして、本書を語る上で忘れてならない、阪神大震災の記憶。
    カズちゃん家族のエピソードなんかは本当に辛いですね。こういう辛く哀しい思いを抱えた人達が沢山いたのですよね。

    不思議な縁で繋がっていた祖母の息子・彦一さんや、意図せず父を殺害する形になってしまった佐久間さんの償い、豪華限定本に記された古典ラテン語の文章等、様々な謎が散りばめられ、物語は下巻へ続きます。

  • 2012年うめこ的ベスト作品!
    本を作る行為が個人的にツボだったばかりでなく,発酵食品のように主人公がじわじわと味を出していくというか成長していくような感じ,周囲の色んな関係の中で成熟していく感じが,じゅわっと味わい深いのです。胃腸にやさしくおいしいよ☆

  • イギリスにて。
    たんたんとした作品

  • 文庫になってはじめての再読。単行本で読んだ時から10年くらい経ってるかな?宮本作品の特徴である、読むごとに新発見・・・今回もいろいろ新しい発見がありました。

    あと、物語に影響されてぬか床をはじめてみました。

    ☆腹弱改善☆にぎやかなぬか床はじめました!
    http://rucca-lusikka.com/blog/archives/3991

    発酵食が持つ不思議なパワーを体験中です(^^)

  • はじめは、酵母や糠味噌の話しを延々読んでて飽きてしまうかもと思いました。しかし、「待つ」ということを大切にしている人々、時の流れを”発酵”として的確に表現していて、とても面白く読めました。

  • 出来事の作用、時間の作用。心の琴線に触れるどころか、心の襞にじわじわと染み入ります。宮本さんの本はやっぱり私の人生の友。

  • 下巻を借りる。なので買う。
    目に見えない、ちいさなゆたかな世界について。
    時間とやさしさについて。

    ・記憶がないこと、話さないこと。

    ○仕事をするかぎりは、いっさい手抜きをせず、仕事とはかくあるべきだというものをなさなければならない(233頁)

    ・勇気は必死で自分の中から引きずり出すもの
    ・勇気は知恵と世界を思いやる心を連れてくる

    ○この世の中のいろんなことに思いやりを持って、右往左往せず大きく包み込む心(254頁)

    ○死ぬ前の五年間が幸福やったら、人生は勝ちや(399頁)

    ・(ええ仕事をする人に共通してるもの)
    ○自分の仕事に、うしろめたさがないんや。そやから、仕事に関しては、いつでも堂々としてられる(402頁)

    ○祖母の姿からも、伝統的製法で発酵食品を造る人々からも、自分は「時間」というものによってのみ与えられる宝物が存在することを知ったのだ(414頁)

    2015.07.14 再読
    ・おいしそうな食べものと時間。

  • 先日、「テマヒマ」展を観に行って、数日前には、能登でていねいにじっくり作られたいしりを使ったお料理を堪能して、輪島で漆塗りの奥深さに感銘を受けてきたばかりで、偶然手にした本。いろいろなものが私の中で繋がってきて、ドキドキわくわくしてきた。発酵食品のことももっと知りたいけれど、作り手が気になる。そんなことも思いながらページをめくっていた。聖司のような仕事が現実にもあるのだろうか、あるといいなぁ。今、時間をかけることの意味、「待つ」ことの意義をかみしめている。下巻が楽しみ!!

  • 金沢発酵文化研究所 FBページから。

  • 濃厚。

    祖母の「死」がまるで一般化されたように始まって、そこから「生」へと絡んでゆく。

    祖母の糠床から繋がってゆく発酵食品についての豪華限定本の仕事。

    そして祖母の遺言から繋がってゆく聖司と美佐緒。

    阪神淡路大震災の記憶。

    それぞれについて丁寧にストーリーが仕上がっていくのは、さすが。読み応えがある。

    下巻も楽しみ。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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