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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784062773393
作品紹介・あらすじ
昭和52年夏、密室状態のホテルの部屋から一人の女性が消え失せ、海岸で死体となって発見された。孤独な少年・ヨウイチの隣人で、女性の知人でもあった男は「透明人間は存在する」と囁き、納屋にある機械で透明人間になる薬を作っていると告白する。混乱するヨウイチ。心優しき隣人は犯人なのか? やがて男は外国へ旅立ち、26年後、一通の手紙がヨウイチのもとへ届いた。そこには驚愕の真相が記されていた! (講談社文庫)
昭和52年夏、日本海側のとある町。母子家庭に育った少年・ヨウイチは、友達に恵まれず孤独な毎日を送っている。そんな彼が唯一心を開き、尊敬しているのが、印刷業を営む隣人・真壁さんだ。心優しき真壁さんもヨウイチとその母に心を寄せ、ヨウイチにさまざまな話をしてくれる。外国には、花が咲き誇り、貧富の差もいっさいない理想郷が存在すると説き、お母さんも連れて一緒に行こうと誘う。その一方で、「透明人間はこの世にいるんだよ」などと不思議な話をすることもあるのだ。そうしたなか、密室状態のホテルの部屋から女性が消え失せ、海岸で死体となって発見されるという不可解な事件が起きる。被害者の女性は真壁さんのところへ出入りしていて、ヨウイチも見知った人だった。世間が事件の謎をめぐって騒ぎ出していたさなか、ヨウイチは真壁さん宅の納屋にある印刷機に興味を持ち、動かしてくれるようにねだるが、真壁さんはいつになく表情を固くし、じつはこの機械で透明人間になる薬を作っていると告白する。混乱するヨウイチ。真壁さんは殺人事件の犯人なのか? 疑念は深まり、ヨウイチは真壁さんに厳しい言葉を投げつけてしまう。やがて真壁さんは印刷業を人手に渡し、外国へ旅立っていく。そして26年後、一通の手紙がヨウイチのもとへ届いた。そこには驚愕の真相が記されていた!
みんなの感想まとめ
孤独な少年・ヨウイチと心優しい隣人・真鍋の物語は、不可解な失踪事件を背景に展開されます。真鍋が語る「透明人間」の存在や理想郷への夢は、ヨウイチにとって憧れの象徴ですが、同時に彼の心に疑念を生む要因でも...
感想・レビュー・書評
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少年は事件を透明人間の薬を使った犯行と考えたが,26年後手紙で衝撃の真相が分かる。不可能トリックは正体判明で可能に。近くて遠い国の来訪者真鍋は透明人間の身の上。理想郷を信じ裏切られた真鍋が痛ましい。
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「透明人間の存在」を作り上げた工作員の技は小さな窓からでも自由に出入りでき、そこにあった「蜘蛛の巣」は証拠を隠滅するに十分だった。蜘蛛の巣は「1時間もあれば1年も前からそこにあるような厚いものになる」という事実を警察は見逃していた。蜘蛛の巣の習性を知る、知らないでこの事件は大きく動いたのだ。
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本格ミステリでありながら、島田荘司作品には珍しい着地。
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島田荘司の長編ミステリー。余りにも不可思議な密室、そして殺人事件と、切なすぎるラストが印象的な作品。島田荘司は御手洗シリーズばかり読んできたが、御手洗のいない作品でもこれ程の衝撃的な物語があるのかと驚愕。また、最後は余りにも悲劇的な結びに絶句してしまった。それ程に印象的な作品。
小学生のヨウちゃんと彼の家の隣にたつ印刷所で働く真鍋さんとの物語。ヨウちゃんは学校生活が上手くいかず、家庭もシングルマザーの母親が夜の街に出ており深夜まで不在。そんな中、隣の印刷所で働く真鍋と仲良くなり、様々な事を教えてもらう。
小学生からすれば三十歳位は物凄く大人で、憧れや尊敬を抱いている。彼が印刷所の納屋で謎の機械を動かしているが、その中には透明人間になる薬が入っていて、日本では唯一だと知らされる。
一方、彼らの周りでとある失踪事件が発生する。全く不可解な状況下、女性がホテルから消失してしまう。そして数日後、海で散らかされた彼女の死体が発見される。
ヨウちゃんと真鍋の関係は、小学生時代にだれでも感じた大人への憧れを見事に再現している。どことなくノスタルジーを感じるのは世界線もそうだが誰もが体感したであろう経験に基づく。
また、透明人間が全くの幻想という家事では無く、きちんと意味をなし、伏線回収している部分にこの作品の深みがある。
解決編はヨウちゃんが大人になり、彼の母親も年老いてからになる。ヨウちゃんが小学生時代にした「罪」は、確かに真鍋さんを苦しめたのかもしれないが、真鍋の人生は一変の悔いがなくヨウちゃんと母親に愛情が向けられている。
現実的な目線で余りにも不条理な悲劇であるが、現実においてもおそらく同じことが起きている可能性もあり、島田荘司の社会に対する問題提起が発売当時どのくらい世間に浸透したのかなぁ。
真鍋さんが描いていた理想郷がいつか訪れる事を願いつつ。余りにも悲しい結末でやるせない思いになるが、ヨウちゃん達は自分達を責め続ける事がない様に祈るばかりだ。 -
御手洗清だと思い込んで購入したのだが、これは違った(^-^;
こういうのも書かれるのだなぁ・・・。
何だかわからないが、文章が読み易い所為なのか?凄く物語に引き込まれる。
まさか、透明人間なんてオチじゃないよなぁ~って思いながら読み進めていき、結末は!!
全く想像していない結末・・・。
楽しく読ませて頂いたが、御手洗清が出てこないのは何となく物足りない(^-^; -
ミステリーランドの一冊と言うことで、児童書との事です。確かに理解しやすかった様に思います。
でも、しっかりとミステリィで楽しめました。
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図書館。ふと目に入って。
図書館の子ども用の棚からこの作品を手に取ったのは、ある種運命的だったかも。職場の隣席の陰謀論者に読ませてあげたいと思った。ネットの情報を鵜呑みにしてあの政治家を応援しているあなた、某国に憧れているあなた、何度も歴史は繰り返すんだよって。 -
世界を判断するには、知識という補助線が必要だ。
けれど子どもには、それがない。
ないからこそ、無知で無垢で残酷だ。
その無垢な残酷さで、悪意もなく何かを傷つけていたと気付くのは大人になってから。
虫の足をむしるのも、誰かの心を壊すのも、本質的には同じ行為だ。
取り返しのつかない失敗を、社会や次の世代に繋ぐことで償っていく。
これはそんな物語だと思う。 -
最後のタイトル回収が秀逸。透明人間とは…。
過去への憧憬とともに語られる、子供の目線だからこそ分からない大人の事情。
子供だった自分と世界がいかに残酷か、大人になってから気付くやりきれなさ。
頼り甲斐のある大人の有難さ…。
子供向けと思い少々見くびっていた。
漢字にはルビがふってあり、子供向けに作られてはいるが、際どい描写があるにはあるので注意が必要?
表紙・挿絵のおどろおどろしさも良い。綺麗な装丁と相まって手放し難い一冊。 -
孤独な少年ヨウイチが唯一心を許し、尊敬する人物である、隣人の真鍋さん。彼は、透明人間が存在すること、そして、納屋で透明人間になる薬を作っていることをヨウイチに告白する。
そんなある日、密室状態のホテルから一人の女性が蒸発するかのようにいなくなり、海岸で死体となって発見される。
真相が明らかにならないまま、26年の月日が経ち、一通の手紙を受け取ったヨウイチは驚愕の事実を知る・・・
子どもも読者として想定している為か、かなり展開が早く、SF的な要素も含んだ軽いお話かな?と思いきや、終盤の手紙をきっかけに、急に現実的で大きな話へと展開します。
自分を取り巻く環境でどうにもならないことがあったり、自分の未熟さを悟ったり、自分の選択を後悔したり・・・少年の視線で語られるストーリーを通じて、ちょっと切なくなる作品でした。。 -
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時代は昭和52年の夏、孤独な少年ヨウイチの唯一の楽しみは、家の隣で印刷所を営む真鍋との語らい。身近なこと、宇宙のこと、将来のこと、様々な事柄を真面目に語り合った二人だが、一人の女性の消失事件が二人の運命を変えることになる。
島田荘司氏らしい奇想と、昭和50年代という某国がまだ理想郷と一部に思われていた時代背景がマッチして、良質なミステリーに仕上がっている。少年向け作品らしいが、時代を知っている大人のほうが味わい深いかも。 -
小学生のヨウちゃんは、近所で印刷会社を経営する真鍋といろいろな話をするのが唯一の楽しみ。真鍋はヨウちゃんにさまざまなことを教えていく中で、「透明人間は存在する」と言いきります。そんななか、ヨウちゃんと真鍋の住むF市で殺人事件が起きます。殺害時の状況は、被害者が透明人間になったとしか思えないものでした。事件から少し経つと、真鍋はF市から去ります。
犯人は誰なのか?透明人間は本当に存在するのか?
この文庫版に限ったことかもしれませんが、挿絵の抽象画がとにかく恐怖をあおります。
途中まで、透明人間になる薬は本当に存在するのではないかと疑ってしまうような上手い書き方がされていて、引き込まれました。ソ連アゲをしていた序盤の記述と時勢から、真鍋の正体はうすうす気づけるものではありましたが、透明人間のトリックは破れませんでした。悔しい…(笑)
真鍋のような境遇の人間に、一時でも生きる幸せを感じさせることが出来たヨウちゃん。彼自身は真鍋との別れ方を後悔すると思いますが、真鍋自身は彼らに出会えたこと自体が幸せだったろうと思います。
「この納屋に、これまでのぼくのすべてがあった。生きる意味のすべてが。」 -
ミステリーランドシリーズというのが何なのかよく知らないんだけど、これはその1冊ということだ。若い世代向けなのかな。ただし、島田荘司のことだからもちろん手を抜いていない。きっちりしたミステリーに仕上がっている。
分類でいうと人間消失トリックということで、透明人間になって抜けだしたのではということになってそれらしい伏線も張ってあるのだが、もちろん実際にそんなことはあり得ないので合理的な解決がされる。この著者をたくさん読んでいればこの程度のトリックには驚かないし、ありきたりだなというほどのものだけど。
ストーリー展開はさすがに手慣れてうまい。真鍋さんとヨウちゃんの掛け合いがほのぼのとして、それでついだまされてしまう。ほんとに透明人間や宇宙人だったらどれだけ素敵だったろう。実際は年中きれいな花が咲き乱れて、お金がなくてもみんな平等に暮らしていける国なんてこの世にはありえないし、あるとすればそれは洗脳された頭の中だけだ。明らかにされる事実はあまりにも現実的というか、ああそういうことねと暗澹とするしかない。こういうプロットをすらっと書けるというのはしかし強い作家だなと思う。 -
う~ん…
ストーリーは島田荘司ワールド全開なのですが、この謎解きはいま一つ…いかんでしょう…
設定もいかにも陳腐では…?
あ、そうか、この作品、もとは「かつて子どもだったあなたと少年少女のため」というコンセプトの講談社「ミステリーランド」向けの書下ろしなのでしたね。子ども向け。
…でも、子ども向けでこのストーリーはちょっと…では?(^^;; -
なんとなく買うときから予感はしてたけど、前に読んでた。
でも再読してみても面白かった。
島田さんは初期の作品は文句なく名作揃いだけど、後期はやや当たり外れがあると思う。特に社会派の傾向が強いほどイマイチに感じる。この作品はそれらと比べても独特のテイストがあり、異彩を放っている。
トリック?はまあさほど重要ではなく、主人公の少年独特の切なさがたまらない。 -
透明人間は存在する。人間を透明にする薬もある。透明人間になると1度は自然に元に戻る。けど、2度目に飲んだら、もう戻れない…。
聡明で孤独な少年ヨウイチとそれを見守り愛情を注ぐ隣人の真鍋。夏休みに起こった殺人事件をきっかけに、彼等の平和な暮らしは終わる。
色々なヒントがあるので、大体予想はつきます。つくのですが、なんとも切ない。 事件そのものの謎よりも、背景にあるものの方が興味深い。個人の力ではどうしょうもない事があるのは事実。短い時間でも、たとえ偽りでも、根底に愛情があれば伝わると思いたい。 子供の頃には解らなかった事も、大人になると解ってしまう。 大人になるってせつない。 -
#読了 密室状況のホテルの一室から女性が消えた事件が発生する、島田さんらしいトリッキーな方法で脱出していた
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読み終わってこその満足でした。
すっきりする話は良いですね。
ファンタジーとミステリーの融合、
素敵な世界観でした。
著者プロフィール
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