獣の奏者 4完結編 (講談社文庫)

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  • 講談社
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本棚登録 : 3113
レビュー : 314
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062773454

感想・レビュー・書評

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  • 闘蛇衆となった夫イアル。一方、エリンはロランの子供たちがなかなか成熟しないことに危機感を抱き、王獣捕りのオラムを訪ねる。

    人の手によりその形を歪められてしまった獣、闘蛇と王獣。そのことに心を痛めるエリンは、息子ジェシが自分のような獣ノ医師に憧れ、「王獣使い」になりたがっていることを知って・・・

    愛する者を守りたい、その気持ちが彼女を孤独な戦いに駆り立てる。秘められた多くの謎をみずからの手で解き明かす決心をしたエリンは、拒み続けてきた真王(ヨジエ)の命に従って王獣を増やし・・・

    ついにラーザ率いる闘蛇が攻め込んで来て、王獣軍を先導するエリンも最前線へ。

    神々の山脈からの客人により、「闘蛇が地を覆い王獣が天に舞う時、大災厄が起きた」とされる伝説の真相を知らされたジェシは母の身を案じて身重のアルに飛び乗り戦場へ赴くが、そこはすでに地獄と化していた・・・

    ラストは悲しい無惨なものでした。
    闘蛇も王獣も愚かで欲深い人間の犠牲になり、狂って惨禍はさらに大きくなる。
    その姿に原子力・核を重ねてしまうのは3.11以後にこの作品を読んでしまったからでしょう。

    出来ればもっと純粋に物語そのものを楽しめる子供のうちに読んでおきたかったなぁ。

  • ちょっと、呆然としてる。
    涙が止まらなくて、止まらなくて。
    エリンが生き延びて、幸せにくらしてく道を探ったけれど、
    この結末しか、
    「それから、母は四日生きた」
    このジェシの言葉にしかたどりつけなかったと上橋先生は書かれてたけれど、そうなんだろうなあっと思う。

    エリンは生きたかっただろうけど。
    もっともっといろんなことを知りたかっただろうけど。
    泣いているエリンをリランが何度も何度も舐めるシーンが胸にしみた。

    狂乱、と章題にあったから、怖ろしいことになるんだろうとは思いつつ、
    ずっと読んでいたのだが、いざその情景が目の前に広がると
    怖ろしいというより哀しくて、涙が止まらなかった。
    野にあるように生きていれば起こるはずもなかった悲劇。
    ぐるぐると廻りつづける闘蛇の群れ。
    その渦は、エリンが逃れようとも逃れられなかったもろもろのことにも思える。
    全てを明らかにして、その先に未来を、というエリンの願いは、
    少なからず叶ったといえるのだろう。
    王獣は野に還り、起こったことは全て後世へと残される。
    違う言葉をもつ生き物と心を交わしあいたい、
    そんな少女の純粋な気持ちが行き着いた場所があの哀しみなのだとしても、
    それでもリランとエリンの間に芽生えたものをなければよかったとは思えない。

    悲劇は何度でも繰り返すのだろう。
    それなら人など滅んでしまえばいい。そう思ってしまう。
    でも、それでも、とエリンは言う。
    そうじゃない道を探すのも人なのだと。
    考えて、考えて、死に物狂いにいきるのだと。
    心をつかれる言葉がいくつもいくつもこの作品にはある。
    私はここまで懸命に生きれるだろうか、と思う。
    後になんにも残せなくてもいい、ただすっぱりあっさり
    なにもかも終わって欲しい。不意にそういう想いが湧いてくるのは。
    きっと私がここまで懸命に生きてないからなんだろう。

    あの結末しかあり得なかったとしても、
    そのことに異論はないけれど、
    それでもイアルとエリンに2人で幸せに老いていって欲しかった、と心から思う。


    なんだか言葉にできないものがいっぱい湧いてくるような気持ちだ。
    本当にすばらしい物語を産んでくれて、感謝!!

  • どこで「残った人々」の話が出てくるのだろうと、はらはら、どきどきしながら読んだ。

    ジェシの親が結末でどちらかが亡くなることは想定できた。
    人を殺して、生き残って幸せでしたでは、話にならないだろうから。

    ジェシは、母親のエリンと同じように教壇についた。
    戦を避ける方法を見いだせないまま。

    処世術が参考になった。p303
    「意見が出つくし、議論が煮詰まったと思ったら、そこで<茶の一刻>を宣言なさい。その時機をしっかり見極めることが大切よ。時機を逃すと、すでに意見は出つくしているのに、まだ言いつのろうとする輩が、自分の主張をくり返して、場を倦ませてしまう。そうなるまえに、うまく断ち切りなさい。」

  • 4冊を通してのエリンの生き様が圧巻で涙。ある程度間を空けながら長期間にわたって読んだということもあって、長い間そばにいた感覚だったのもあると思う。
    ファンタジーなのに勧善懲悪ではない、美しい理想を追求しているわけでもない、逆に退廃的ディストピアでもない。人間の歴史を振り返って正面から向き合った結果を、ここで広い年齢幅で読めるよう描いていると思う。美しさも醜さも賢さも愚かさもその中間も。その上で、それでも人の生も動物の生も肯定している。
    殺し合いの戦場というところで渦巻くものは、敵味方やなにかきれいに切り分けたり整理したりできるものではなく、あのように怖ろしく混沌とした狂気の塊のようなものなのかもしれない。

  • 2013.9/15 エリン家族にも王獣リランたちにも最後には幸せがあるんだよね?と自問しながら読み進むが...物事の真理を探究すること、社会のあり方、教育とは...「物語」としてくくれない学びを提起してくれる本であった。

  • 涙が出てしょうがなかった。
    人間を含めた生き物の仕組みに真摯に向き合った物語だと感じた。
    上橋さんの言葉は不思議。言葉に過ぎないはずなんだけれども、手触りや匂いがある。
    母を助けに飛び込んだ闘蛇の沼、そのときの皮膚の感触や、お弁当に出された猪の香ばしいにおい、渓谷の身を切るような寒さ、そういったものがリアルに想像できる。見たこともない情景を懐かしいと思ってしまう。
    本を閉じて、エリンという人の一生を思ったとき、苦しみの中に微かに光る希望が見えてくる。
    幼いエリンの母への思い、母からエリンに受け継がれたもの、ジョウンが与えてくれた日々、リランとの絆、イアルと出会い育まれたもの、そしてエリンからジェシに受け継がれたもの…命の根源にあるのは愛なんだと、そう思わせてくれる物語だと思う。

    • komoroさん
      9nanokaさんの涙・・・、いいですね。
      それだけで十分読みたくなりました。
      次の本、何を読もうか悩んでいましたが、このレビューの最初...
      9nanokaさんの涙・・・、いいですね。
      それだけで十分読みたくなりました。
      次の本、何を読もうか悩んでいましたが、このレビューの最初の一行で即決めました。「獣の奏者」
      読む前からわくわくです。
      涙がでてしょうがない。って流れ出る感じ?
      でも、やっぱり9nanokaさんの涙みたいです。笑
      物語りも奥が深そうですね。
      レビュー素敵ですよ。
      2015/05/31
  • わからないことをわかろうとする。
    これが全てじゃないかと思う。
    古くから伝わる言い伝えも言葉を交わすことができない生き物も、自分が目にして耳にした小さな欠片を広い集めて想像するしかない。
    理解したという結果より理解しようとした過程が大切で、そうやって人生を生き抜いたエリンと王獣や闘蛇の歴史のお話。
    感想が上手く書けないのが悔しいけれど、王獣や闘蛇などの架空の生き物が生きるこの本の世界に浸って欲しい。
    物語の純粋な面白さだけでなく、現実に通じる何かを感じる人も沢山いると思います。
    大好きなシリーズ完結編。

  • 大好きなシリーズ。
    何気なく1巻だけ買って、すぐ続きを買いに走った。
    しばらくは寝ても覚めても獣のことばかり(は、言い過ぎかも?笑)
    動物出ると弱い…。切なすぎて再読には勇気がいる。
    素晴らしい傑作ファンタジーです。

  • ついに〈完結編〉
    これで終わってしまうのかと思うともったいなくて、でも先の展開が気になって一気に読んでしまった。

    この作品のテーマは何個もある。人がいるかぎり戦争は避けられないよとか、「獣」との付き合い方だとか。
    でも一番重要だと思ったのは「愛情」だ。

    エリンとジョウンにしてもそうだし、エリンとエサル、エリンと王獣のリラン。
    人同士だけでなく、人と獣の愛情も確かに存在する。

    極めつけはエリンとイアル、ジェシの家族愛。
    エリンとイアルは家族を守るために自分が犠牲になるかもしれない重大な決意をする。
    なんと美しく、儚いことか!

    なんとなく敬遠してたのだけど、もっと早く読んでおけば良かった。
    とにかく大好きな小説になった。

  • ファンタジーは想像できない世界が広がっていて、興味が無いと思って避けていたジャンル。
    主人公エリンを中心として、王獣・闘蛇をめぐる民族の歴史や争いなどを描いた物語。
    初めのうちはカタカナの登場人物に対して人間関係が分からず相関図を見ながら読み進めていたが、エリンと家族、闘蛇、王獣との描写を頭に思い浮かべて温かな気持ちになったり、想像もできない展開で先が気になり、一気に4巻まで読み進めた。
    エリンに協力的な人にはもちろん、反対側にいる人に対しても、それぞれの国や民族を思う気持ちを大事に描かれている。
    所々で前とのつながりが分からない場面や解読が難しい場面があったが、実際には存在しないものに対して想像を膨らますことができる壮大なファンタジー。
    編集後記で4完結編を想定してなかったと見て驚き。4完結編が無かったら今後が気になって物足りなく感じていたはず。
    これを見て、他のファンタジーを読んでみたくなった。

著者プロフィール

上橋 菜穂子(うえはし なほこ)
1962年、東京都生まれの児童文学作家、SF作家。
1992年『月の森に、カミよ眠れ』で日本児童文学者協会新人賞、2000年『闇の守り人』で第40回日本児童文学者協会賞、2003年『神の守人 来訪編、帰還編』で 第52回小学館児童出版文化賞、2004年『狐笛のかなた』で 第42回野間児童文芸賞受賞他、2015年『鹿の王』で第12回本屋大賞など、多数の受賞歴がある。
2014年には「小さなノーベル賞」とも呼ばれる世界的な賞、国際アンデルセン賞作家賞を受賞している。

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