獣の奏者 4完結編 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062773454

感想・レビュー・書評

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  • 最後約50ページ程の描写は、『風の谷のナウシカ』で王蟲の暴走を食い止めるナウシカのようでした❗読み終わった後は、何だか高揚感がいっぱいの作品でした❗

    決してハッピーエンドとは言えないけれども、希望のある終り方でとても気に入っています♫

    読む前は『守り人』シリーズよりも面白いはずがないと、勝手に決めつけていましたが、4冊読んでみると、甲乙つけがたい作品でした❗(ストーリーは守り人シリーズよりも深いと思います。)至福の時を過ごせたこの作品に感謝です。また、樋口さんのカバーデザインがとても綺麗で、とても気に入っています❗

  • 人生を一つ、生き直したような、凄まじい読後感。

  • いよいよ最終巻。
    王獣と闘蛇の秘密をほとんど解き明かしたエリン。
    過去の大きな災は王獣と闘蛇の接触により起きた可能性が高いことがわかりつつも、いよいよ戦争が始まってしまう。
    その接触がやはりとんでもない現象を起こしてしまい、それを止めるためにエリンは決死の行動を起こす。
    最後は感動でウルウルしました。
    上橋菜穂子さんの作品はリアルな設定の上に人間感情の機微が描かれ、夢中になって読める本当に面白い作品ですね。

  • 闘蛇衆となった夫イアル。一方、エリンはロランの子供たちがなかなか成熟しないことに危機感を抱き、王獣捕りのオラムを訪ねる。

    人の手によりその形を歪められてしまった獣、闘蛇と王獣。そのことに心を痛めるエリンは、息子ジェシが自分のような獣ノ医師に憧れ、「王獣使い」になりたがっていることを知って・・・

    愛する者を守りたい、その気持ちが彼女を孤独な戦いに駆り立てる。秘められた多くの謎をみずからの手で解き明かす決心をしたエリンは、拒み続けてきた真王(ヨジエ)の命に従って王獣を増やし・・・

    ついにラーザ率いる闘蛇が攻め込んで来て、王獣軍を先導するエリンも最前線へ。

    神々の山脈からの客人により、「闘蛇が地を覆い王獣が天に舞う時、大災厄が起きた」とされる伝説の真相を知らされたジェシは母の身を案じて身重のアルに飛び乗り戦場へ赴くが、そこはすでに地獄と化していた・・・

    ラストは悲しい無惨なものでした。
    闘蛇も王獣も愚かで欲深い人間の犠牲になり、狂って惨禍はさらに大きくなる。
    その姿に原子力・核を重ねてしまうのは3.11以後にこの作品を読んでしまったからでしょう。

    出来ればもっと純粋に物語そのものを楽しめる子供のうちに読んでおきたかったなぁ。

  • 『獣の奏者 Ⅳ 完結編』読了。
    息する間も無く読み終わってしまった。何かで結末を知ってしまったからお願い死なないでってすごく願いながら読んだな。
    人は愚かだ。欲深い生き物で欲を満たすために残酷なことを平気でする。
    その一方で人は考える生き物で必死に希望の光を見つよけうとしていた。
    登場人物たちが愛おしく感じたな…みんな一生懸命でいいほうへいいほうへ考え知ろうとしていた。
    そして知ったことを後世へ伝えるためにいろんな手段を用いようしていた。
    諦めない、その姿勢。なんか、カッコいいな…
    どんな結末でも、生き抜いた主人公がカッコよかった。
    やっと、獣の奏者を全部読むことができて非常に満足…あとは外伝を読むだけ…
    すごく3巻4巻読むまでに時間がかかってしまったけど…シリーズものを読むにあんまり間をあけない方がいいなって思ったわ。忘れるから。

    2020.8.23 (1回目)

  • ちょっと、呆然としてる。
    涙が止まらなくて、止まらなくて。
    エリンが生き延びて、幸せにくらしてく道を探ったけれど、
    この結末しか、
    「それから、母は四日生きた」
    このジェシの言葉にしかたどりつけなかったと上橋先生は書かれてたけれど、そうなんだろうなあっと思う。

    エリンは生きたかっただろうけど。
    もっともっといろんなことを知りたかっただろうけど。
    泣いているエリンをリランが何度も何度も舐めるシーンが胸にしみた。

    狂乱、と章題にあったから、怖ろしいことになるんだろうとは思いつつ、
    ずっと読んでいたのだが、いざその情景が目の前に広がると
    怖ろしいというより哀しくて、涙が止まらなかった。
    野にあるように生きていれば起こるはずもなかった悲劇。
    ぐるぐると廻りつづける闘蛇の群れ。
    その渦は、エリンが逃れようとも逃れられなかったもろもろのことにも思える。
    全てを明らかにして、その先に未来を、というエリンの願いは、
    少なからず叶ったといえるのだろう。
    王獣は野に還り、起こったことは全て後世へと残される。
    違う言葉をもつ生き物と心を交わしあいたい、
    そんな少女の純粋な気持ちが行き着いた場所があの哀しみなのだとしても、
    それでもリランとエリンの間に芽生えたものをなければよかったとは思えない。

    悲劇は何度でも繰り返すのだろう。
    それなら人など滅んでしまえばいい。そう思ってしまう。
    でも、それでも、とエリンは言う。
    そうじゃない道を探すのも人なのだと。
    考えて、考えて、死に物狂いにいきるのだと。
    心をつかれる言葉がいくつもいくつもこの作品にはある。
    私はここまで懸命に生きれるだろうか、と思う。
    後になんにも残せなくてもいい、ただすっぱりあっさり
    なにもかも終わって欲しい。不意にそういう想いが湧いてくるのは。
    きっと私がここまで懸命に生きてないからなんだろう。

    あの結末しかあり得なかったとしても、
    そのことに異論はないけれど、
    それでもイアルとエリンに2人で幸せに老いていって欲しかった、と心から思う。


    なんだか言葉にできないものがいっぱい湧いてくるような気持ちだ。
    本当にすばらしい物語を産んでくれて、感謝!!

  • シリーズ4作目で完結編(外伝を除く)。
    本当に素晴らしすぎる物語だった。今まで何で出会っていなかったんだろうと思うほど素敵で、たくさんの方におすすめしたい。

    でも、このタイミングで出会ったことにも何か意味があるように感じてならない。それは「戦」と人々の在り方、というこの本全体で投げかけられている視点。ハッとするような文章が沢山あった。エリンに「戦は無くならない」と言わせた上で、

    ・顔も知らない多くの人たちが生きた果てにわたしたちがいて、わたしたちが生きた果てに、また多くの人が生きていく
    ・人は、知れば、考える。(中略)知らねば、道は探せない。自分たちが、なぜこんな災いを引き起こしたのか、人という生き物は、どういうふうに愚かなのか、どんなことを考え、どうしてこう動いてしまうのか、そういうことを考えて、考えて、考え抜いた果てにしか、ほんとうに意味のある道は、見えてこない…
    ・人は群れで生きる獣だ。群れを作っている一人ひとりが、自分が何をしているのかを知り、考えない限り、大きな変化は生まれない。(中略)多くの人の手に松明を手渡し、ひろげていくことでしか、変えられないことがあるのだ

    といった文章の数々。自分には、知ることも、考えることも、足りていなかったなと反省させられるし、全世界の人々にこの物語を読んで考えてみて欲しいと思った。

    ジェシやエリンやイアルに感情移入してしまって、かなり切ない終わり方だけど、身を挺して全てを明らかにし人々に考えるきっかけを与えたエリンに感謝したい。

  • 4冊を通してのエリンの生き様が圧巻で涙。ある程度間を空けながら長期間にわたって読んだということもあって、長い間そばにいた感覚だったのもあると思う。
    ファンタジーなのに勧善懲悪ではない、美しい理想を追求しているわけでもない、逆に退廃的ディストピアでもない。人間の歴史を振り返って正面から向き合った結果を、ここで広い年齢幅で読めるよう描いていると思う。美しさも醜さも賢さも愚かさもその中間も。その上で、それでも人の生も動物の生も肯定している。
    殺し合いの戦場というところで渦巻くものは、敵味方やなにかきれいに切り分けたり整理したりできるものではなく、あのように怖ろしく混沌とした狂気の塊のようなものなのかもしれない。

  • エリンとイアルの強い意志とそれを見守るエサル師の凛とした態度。エリンの息子の思春期ならではの揺れ動きや両親へ想いと自分の夢とか内容が濃かった。
    当巻で全ての謎が解けるけれど、カレンタロウが実在していたこととその正体に、物語りがより深まって、この世界の歴史が明らかになる流れも作者の実力に圧感されました。
    自分で体当たりで謎を解明し人々に見せることを決意したエリンの不器用さとつよさには、最後までハラハラしたけれど、その結果が統治に活かされるあたりに、人間の目の当たりにしないと分からない習性というか、悲しさも感じた。きっと、また繰り返されてしまうのかなという印象も受け、うまい終わり方だなぁ。

  • どこで「残った人々」の話が出てくるのだろうと、はらはら、どきどきしながら読んだ。

    ジェシの親が結末でどちらかが亡くなることは想定できた。
    人を殺して、生き残って幸せでしたでは、話にならないだろうから。

    ジェシは、母親のエリンと同じように教壇についた。
    戦を避ける方法を見いだせないまま。

    処世術が参考になった。p303
    「意見が出つくし、議論が煮詰まったと思ったら、そこで<茶の一刻>を宣言なさい。その時機をしっかり見極めることが大切よ。時機を逃すと、すでに意見は出つくしているのに、まだ言いつのろうとする輩が、自分の主張をくり返して、場を倦ませてしまう。そうなるまえに、うまく断ち切りなさい。」

  • 2013.9/15 エリン家族にも王獣リランたちにも最後には幸せがあるんだよね?と自問しながら読み進むが...物事の真理を探究すること、社会のあり方、教育とは...「物語」としてくくれない学びを提起してくれる本であった。

  • 涙が出てしょうがなかった。
    人間を含めた生き物の仕組みに真摯に向き合った物語だと感じた。
    上橋さんの言葉は不思議。言葉に過ぎないはずなんだけれども、手触りや匂いがある。
    母を助けに飛び込んだ闘蛇の沼、そのときの皮膚の感触や、お弁当に出された猪の香ばしいにおい、渓谷の身を切るような寒さ、そういったものがリアルに想像できる。見たこともない情景を懐かしいと思ってしまう。
    本を閉じて、エリンという人の一生を思ったとき、苦しみの中に微かに光る希望が見えてくる。
    幼いエリンの母への思い、母からエリンに受け継がれたもの、ジョウンが与えてくれた日々、リランとの絆、イアルと出会い育まれたもの、そしてエリンからジェシに受け継がれたもの…命の根源にあるのは愛なんだと、そう思わせてくれる物語だと思う。

    • komoroさん
      9nanokaさんの涙・・・、いいですね。
      それだけで十分読みたくなりました。
      次の本、何を読もうか悩んでいましたが、このレビューの最初...
      9nanokaさんの涙・・・、いいですね。
      それだけで十分読みたくなりました。
      次の本、何を読もうか悩んでいましたが、このレビューの最初の一行で即決めました。「獣の奏者」
      読む前からわくわくです。
      涙がでてしょうがない。って流れ出る感じ?
      でも、やっぱり9nanokaさんの涙みたいです。笑
      物語りも奥が深そうですね。
      レビュー素敵ですよ。
      2015/05/31
  • わからないことをわかろうとする。
    これが全てじゃないかと思う。
    古くから伝わる言い伝えも言葉を交わすことができない生き物も、自分が目にして耳にした小さな欠片を広い集めて想像するしかない。
    理解したという結果より理解しようとした過程が大切で、そうやって人生を生き抜いたエリンと王獣や闘蛇の歴史のお話。
    感想が上手く書けないのが悔しいけれど、王獣や闘蛇などの架空の生き物が生きるこの本の世界に浸って欲しい。
    物語の純粋な面白さだけでなく、現実に通じる何かを感じる人も沢山いると思います。
    大好きなシリーズ完結編。

  • 王獣が家族がそして自分自身が自由に生きられる未来を信じて、エリンが人生を懸けて戦い抜いた物語。

  • 何と感想を述べて良いのやら...

    平和を望んでも得られぬ朝があったから、彼女は奏者になったのか。

  • 母の死という苦しみから始まった物語は、数えきれぬ人と闘蛇、そして王獣の無惨な死という1人の人間に耐えきれぬ程の苦しみの下で終結した。
    徹頭徹尾暗く、重く、そして鮮やかに命のあり方とその輝きを描いた壮大な物語の中に息づく意志というものの強さに胸を貫かれたような気持ちになった。

    エリンの一生は、しがらみの多いものだった。しかしその一生の中で素晴らしい出会いをし、その志を全うして大切な人の側で最後を迎えられた。

    イアルの一生は、苦悩の多いものだった。希望を抱かないように生きるしかなかったその生涯は、結果として最愛のものを見つけ穏やかに幕を閉じた。

    ジェシの子供時代は、他の子供とは少し違っていた。王獣を家族のように身近に感じ、そして両親は常に様々な思惑と争いの中に身を置いていた。その渦中で純粋な瞳でそれらを捉えたジェシは、両親の願いのとおり自由に生きていく。

    穏やかな日々のなかでも、常に災いが渦巻いていた物語。その結末は哀しくも晴れ渡った気持ちにさせてくれるものだった。
    胸が昂るこの余韻にいつまでも浸っていたくなる、素晴らしい物語だった。

  • 人と獣との間にある大きな隔たりを少しでも埋めたくて。 言葉が通じても思いは伝わらず争いが絶えない人という生きものの愚かさを知ってもなお、その先の道を探したくて。 知って、知って、考えて…。 エリンが探求し続けて得た知識が、 後世に長く継がれていくことを願います。

  • 全巻一気読みでした。止まらなかった。超長編でしたがダレることなく最初から最後まで物語に入り込める小説でした。ハラハラするし、ほっこりするし感動するし、本当に楽しめました。
    完結編にいたっては、終わるのが寂しすぎてゆっくりとじっくりと読んでしまいました。
    今まで読んだ小説のなかでもここまで入り込めたものはないんじゃないかなぁ。読了感もよかった。いい作品に出会えました。

  • 再読。1〜4巻まで、あっという間に読みました。
    一度目は、ただただその世界観にドキドキしてのめり込んだけれど、二度目は展開を知っているのでざーっと流しながら。

    そうすると、エリンが、ただただ自分の探究心と、『可哀想』といったような感情で動いた結果、こんな大きな災いを起こしてしまったんだよなぁと。

    自由に生きれない王獣が可哀想だから、ルールを無視して自分のやりたいように育てる。
    王獣と心が通い合うのが嬉しくてそうした結果政治に利用されることになる。
    偉い人が襲撃されて可哀想だから王獣使って戦って戦争に使われることになる。
    子供が可哀想だからルール違反も放っておいて好き勝手させて危険な目に合わせる。

    うーん、結構勝手だな!て面を強く感じてしまった。その行動がこの先何を引き起こすのか、わかってたからだろうなあ。

    でもせっかくのルールも何故そういうルールを作ったか、という理由がわからないと、結局もう一度悲劇を繰り返して学ぶしかないってことなんだな。

    エリンは扉を開けたけどきちんと次の扉を開いたという意味で世界はひとつ前に進んだのでよかった。

    3回目はまた違う視点で読んでみたいです。

  • 先々の人々が、自分の志を少しでも継いで行ってくれるのなら、死んでもあまり悲しくないなと思いました。残された方は悲しいけどね。
    志が絶たれてしまったとしても、いつか虫食いの芽のように、同じ想いを持つ人が現れるんだろうなと思いました。
    人って生き物なんだなぁ。

  • 『獣の奏者』を以前読んだのはいつ頃だっただろうか。<完結編>はおろか、文庫版もまだ書店に並んでいなかったと思う。硬い材質の厳かな表紙に包まれた<闘蛇編><王獣編>が、まるで二つで一つのような佇まいで、近所の本屋さんに平積みで置いてあった光景は、なぜだかすっと思い出せる。

    思えば初めて<闘蛇編>を読んだのは、冒頭のエリンと同じくらいの少女だった気がする。世間をまだ何も知らず(今でも知らないことばかりだけど)ただ本ばかりを読んでいた。

    親元を離れ、社会で働き、籍を入れるタイミングで、再び巡り合ったこの本は、<探求編><完結編><外伝>が追加されただけでなく、文庫どころかKindle版として、わたしの前に現れた。こう書くと、否応無しに時の流れを感じさせられますね。

    『獣の奏者』を読んでまず驚いたのは、冒頭からぐんぐん引き込まれること。序章1話、闘蛇の牙全てが死んでしまう事件が起きる。この話だけで、主人公エリンの生まれ育った環境や、闘蛇の重要さが伝わってくるし、何より大きく何かが動く予感を感じさせる。


    養蜂業で生計を立てるジョウンとの生活など、自然と共に生きる人間の描写が、本当に生き生きとして、リアルであった。この自然の描写、そして自然と人間の営み、国家政治が複雑に絡み合っていくのが、上橋さんの書く物語の、堪らなく好きなところだと思う。地理、経済、政治、自然現象が絡み合って物語となる。まさに新たな世界の歴史を生み出している。

  • ついに〈完結編〉
    これで終わってしまうのかと思うともったいなくて、でも先の展開が気になって一気に読んでしまった。

    この作品のテーマは何個もある。人がいるかぎり戦争は避けられないよとか、「獣」との付き合い方だとか。
    でも一番重要だと思ったのは「愛情」だ。

    エリンとジョウンにしてもそうだし、エリンとエサル、エリンと王獣のリラン。
    人同士だけでなく、人と獣の愛情も確かに存在する。

    極めつけはエリンとイアル、ジェシの家族愛。
    エリンとイアルは家族を守るために自分が犠牲になるかもしれない重大な決意をする。
    なんと美しく、儚いことか!

    なんとなく敬遠してたのだけど、もっと早く読んでおけば良かった。
    とにかく大好きな小説になった。

  • ファンタジーは想像できない世界が広がっていて、興味が無いと思って避けていたジャンル。
    主人公エリンを中心として、王獣・闘蛇をめぐる民族の歴史や争いなどを描いた物語。
    初めのうちはカタカナの登場人物に対して人間関係が分からず相関図を見ながら読み進めていたが、エリンと家族、闘蛇、王獣との描写を頭に思い浮かべて温かな気持ちになったり、想像もできない展開で先が気になり、一気に4巻まで読み進めた。
    エリンに協力的な人にはもちろん、反対側にいる人に対しても、それぞれの国や民族を思う気持ちを大事に描かれている。
    所々で前とのつながりが分からない場面や解読が難しい場面があったが、実際には存在しないものに対して想像を膨らますことができる壮大なファンタジー。
    編集後記で4完結編を想定してなかったと見て驚き。4完結編が無かったら今後が気になって物足りなく感じていたはず。
    これを見て、他のファンタジーを読んでみたくなった。

  • 家族の物語だった。
    ソヨンとエリンもそうだったけど、エリンとイアルとジェシの家族としての描かれ方がとても印象的だった。
    エリンとリランもジェシとアルも。
    哀しかったけど、満たされた読後感。
    著者後書きにもあったように、ジェシのラストのセリフが響いてくる。
    作中にあった、『松明の火を手渡す、という表現が好き。
    作品を読んでいると、本当にそのとおりなんだなと思える。そしてそれが成っていっているのがわかる。
    見られるのが嬉しいし、見せてもらえるのが嬉しい。

    ちょっと仕事でフラストレーション溜まってたときにラストを読んだら、すっきりした気分になれた。
    溜まっていたものがいい風に吹き飛ばされていったようなカンジ。

    獣の奏者は本当にいい作品。

  • シリーズ完結。
    久しぶりに後書きを読む前に自分の感想だけで。


    やはり災いは起こってしまった。
    その被害は小さくすんだが。
    そして、祖ジェと同じように人々は新たな規律を組んだ。

    違うことは、人々にこの事件に限らず
    知識が開かれるようになったこと。

    エリンが何度も口にしていたように
    一人が一生のうちに明らかに出きることには限りがある。
    それを、後に伝えていくことの大切さを思いしった。


    そして、この小説では母が子を思う気持ちの強さを感じた。
    エリンの母、エリン、セィミヤ。
    他にも、
    自分のためだけに行動しているわけではない人々の、その意思の強さが胸をうった。


    先にも書いたが、エリンは過去と同じ災いを引き起こしてしまった。
    しかし、ここでエリンの望む幸せな未来を手に入れることがなかったのがこの物語の意味なのかなと。
    人間は何度でも失敗して、
    その度に学んで、
    未来を切り開いていかないと。

  • はっきりいって、好きじゃない。
    けれど、これはけなし言葉ではない。だいたい、私は、ファンタジーには多少の隙が遭った方が好き。隙が無さすぎるんですよ、このひとの作品。風俗、歴史、架空の生き物のオリジナリティとリアリティなどを、きちんと抑えていて、齟齬のようなものが見つからない。登場人物も、たとえ、突出した能力があっても、理由がきちんとあり、ご都合主義にならない。主義主張にブレがない。
    結末の壮大さに混乱することもなく、作者の書きたかったものもよくわかるし、変な文章もない。むしろ、文章で情景を目に浮かぶように書ける作家は少ない。
    実に優等生。きらいじゃないけれど、私の好みじゃない。
    まったくもって、好みではない。

    けれど、もし、この世に子供に読ませるべきファンタジーがあるとしたら、この本は間違いなくそうだと思う。
    最近のぬるいファンタジーとは明らかに一線を画する作品だ。
    結末含めて面白いです。
    好みではないけど、買ってるくらいですから。

  • 悲劇が起こるとわかっていながら、禁位を冒してしまう人々の物語。悲劇が現実となってしまう終盤の展開が凄まじい。シリーズ通してとても面白かった。

  • 獣の奏者、続編、完結。
    グランドフィナーレに相応しい終焉、感無量。
    言葉では言い尽くせない。
    疾風に勁草を知る。

  • 堂々の完結編!であります。

    いや~、こんな結末になったのだなぁ。
    ハッピーエンドとすべきなのか否か。

    あと、3・4巻読んで印象に残ったのは、架空世界の話にもかかわらず生活風景の描写が非常に細かく、とてもリアルに表現されているというあたりです。
    架空料理(しかもウマそう)とか架空衣服とか架空商店街とか、はたまたイアルさんの架空「男やもめ」生活(?)とか。

    私の読了後、引き続き娘(小5)がガシガシと読み進めております。

  • 本作がどれだけ面白いかは、他のレビュアーの方々が言葉を尽くして書いておられるので、書かない。

    ただ読了後、文庫に掛かっていたオビを見て、胸を衝かれたことだけを書いておきたい。

    オビにはこう書いてあった。

    『懸命に生きた人。
    小さな、けれどいとおしい
    一瞬の輝き。』

著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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