夏を喪くす (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062773829

感想・レビュー・書評

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  • 全て女性が主人公。それぞれが何かを抱えつつ、それぞれの人生を生きている。その中で転機になる出来事を絡めた四篇。原田さん、こういうのも書くんだな。

  • 理性が働くとその時つらくて、理性働かんかったら後々つらいやん
    どうしたらいいんやろって感じやけどそれが人生なんか、、、

  • マハさんの本はいくつか読んだけれど、私はあまり好きでないかな。
    40歳前後の女性の働きながら、プライベートも充実させつつ壁に当たるお話たち。切ない気持ちが一番に来た。

  • 4つの中編小説集。

    ・天国の蝿
    娘の範子と父の話。借金を膨らませ、家庭を崩壊させたどうしようもない父親。家を出ていった父親を思い出そうとしても、出てくるのは意地悪でインチキな父親の思い出ばかり。
    それから月日は経ち、当時の自分と同じ年頃の娘を持つ年齢になった。そんなある日、雑誌のとある詩を読んで父を思い出す。
    父親は過去に二度家を出ている。
    生活能力や計画性が皆無であるが故に、家庭を二度捨てた父だったが、一度娘を助けるために、そして母親を助けるために帰ってきたことがあった。
    そして詩を通してもう一度、父親が帰ってきたのだと私は解釈した。
    範子の娘もまた詩を書く人になった。
    必然的な血の繋がりを感じる作品だった。

    ・ごめん
    結婚してから10年。冷めきっていた夫婦の関係だったが、不覚にも夫の事故によって、再び夫婦の時間が動き出したようだった。
    旦那さんの誠実さと、オリヨウさんの包容力、その2つを体感した陽菜子はこれからどう行動していくのか。
    なんだか想像してしまう。
    小さい屋台に入って、人情味のある店主と会話をしたいと思えるお話だった。

    ・夏を喪くす
    夫とは形だけの結婚生活を送っている咲子。
    中年と言われる歳だが、容姿端麗かつ男を魅了するスタイルを持っていた。
    理解ある仲間と新しい会社を立ち上げ、魅力的な男性を恋人にし、全てが順風満帆に思えた。
    そんな時に乳癌が見つかる。
    夫は夫で本当に愛する恋人を見つけ、人生の絶頂にいるようだ。
    恋人の渡良瀬はもともと咲子にそこまで思い入れがあるわけでもなく、あくまで仕事が1番、2番目に家庭、3番目に咲子である。
    仕事仲間の青柳に惹かれつつあった咲子であったが、青柳にも大切なものがあった。
    全てに見放された咲子は、青柳との賭けで残っていた運を青柳に託し、乳房を切除せずに死のうと考えていたのだと私は解釈した。
    しかし、青柳からその運は返されてしまった。「あなたにも叶えたいものがあるだろう」と。
    夫とも、渡良瀬とも関係を切り、青柳から託されたその運をどう使うのか。
    沖縄の島にかかる無意味な橋の上で、咲子は自分の生きる意味を見つけたのだろうか。

    ・最後の晩餐
    ある時、突然ニューヨークから去ったマリ。
    その一年後、同じ家に住んでいたクロも消息を絶った。
    大家のミセス・キャンベルがクロを最後に見たのは2001年9月10日…
    7年ぶりにニューヨークを帰ってきたマリは、クロが消えてからも家賃を払い続けている人を探した。
    と言っても本当に探していたわけではなかった。
    なぜなら、その家賃を払い続けていたのは他でもない自分だったから。
    家賃を払い続け、クロがいつでも帰ってこれるように待っていたのだろうか。クロが好きだったイアンと一夜を共にした償いのつもりで払い続けていたのだろうか。
    9.11のあの日からクロは消えた。けれどもマリの心の中には今も生き続けているような気がする。
    あの日の一年前、マリとクロが最後の晩餐(ラスト・サパー)をしていたのなら、クロは今も生き続けていたのだろうか。
    マリは後悔という言葉を一度も使っていなかったと思うが、重く、ジワジワと後悔をしているような気持ちを私は感じた。
    ただ、今回二人が住んでいたアパートが買収され、家賃の振り込みも終わる。
    思い出深い人たちとも会い、なんだか一区切りがついて、マリがここから前へと進めていけそうな気がした。

  • 4つの短編集、中でも「ごめん」と「夏を喪くす」が良かった。

  • 既婚女性の愛と葛藤を語り紡いだ四編の物語です。父親失踪後の母子の苦難の記憶を、一篇の詩から呼び覚まされる『天国の蠅』、夫の隠し通帳の行方から判明した事実に自責の念に苛まれる『ごめん』(高知市電の東の終点駅“御免”が作品名)、既婚女性と離婚歴のある男が、共同経営する会社の社員旅行先の南の島(沖縄諸島)で、予期せぬ出来事に遭遇する『夏を喪くす』、筆者【原田マハ】の青春譜を想像させられる『最後の晩餐』はニュ-ヨ-ク9.11が絡む、ほろ苦さの香る物語です。

  • ゆるやかに下り坂が見えてきた女性たちの、悩みや葛藤を描く短編集。相変わらず、わかりやすく、うまいのでリアリティーが感じられた。

  • なんとなく、
    なんとなく、
    読み終わった感じ
    女、ツライなって思う

  • どれが好きと選べないくらいどれも面白かった。

    4人の女性主人公たちは、皆んな傷ついてつらい思いをしているのに凛と前を向いている。
    過去に囚われて立ち止まるんじゃなく、進んで、決断する。その強くあろうとする姿が格好いい。

    一歩先に進む勇気をくれるような短編集。

  • 切ない4つの話
    どの話も、静かで切ない。そして最後には決断し前を向く。
    その先どうなったの?と知りたくなる。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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