シューマンの指 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
2.93
  • (22)
  • (63)
  • (117)
  • (63)
  • (32)
本棚登録 : 904
レビュー : 132
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062773850

作品紹介・あらすじ

音大のピアノ科を目指していた私は、後輩の天才ピアニスト永嶺修人が語るシューマンの音楽に傾倒していく。浪人が決まった春休みの夜、高校の音楽室で修人が演奏する「幻想曲」を偶然耳にした直後、プールで女子高生が殺された。その後、指を切断したはずの修人が海外でピアノを弾いていたという噂が……。(講談社文庫)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 前半は、ほぼ音楽と作曲家に関する記述で捲っても捲っても一向に動かない展開に挫折しそうになった。物語も半分過ぎ、事件が起こって以降は(自分の)気分も乗ってきたのかスラスラ読めた。そして、一番の衝撃は本当にラスト10ページ!
    シューマンを改めて聴きながら読んでみたい。

  • ミステリの要素もあるけれど、それよりも音楽の小説、幻想的な青春小説として。
    シューマン自身ではなく、その分身を物語の中心に据えることで、シューマンやシューマンの作品をいきいきと語った作品なのであるなあ。
    演奏や曲の、迫力のある描写はさすが。
    物語にでてきたシューマンの楽曲を順に聴いていこう。

  • 知人が子供のころに習っていたピアノを大人になって再開したのはこの本がきっかけだった、とのこと。
    気になって読んでみた。
    とても面白かった。
    人に勧められて読んだ本はパッとしないことも多いものだけど、これは面白かった。

    そもそもニーチェがシューマンを好きで夢中で弾いていたということを知ってからシューマンは気になっていた。
    シューマンは聴いた感じだとすぐに弾けそうだが譜面を見ると同時に押さえる音が多く難しいので決して初心者向きではない。

    この小説は一応ミステリーということになっているようだけど、正確にはミステリー要素は10%くらいだと思う。
    どちらかといえば、著者の音楽論やシューマン論と純文学の要素が強い。
    著者はフルートを演奏する人であるうえにシューマン好きの作家だ。
    音楽評論のような文章が全体を通奏低音のように流れるのは当然のことなのかもしれない。
    それがミステリー好きの人からすればあまり評価できない点であり、音楽好きからすれば評価できる点である。
    ミステリー小説としてではなく、音楽小説として読むのならば優れた作品だと思う。

    小説中の人物、修人(マサト=シューマンの当て字)は作中で繰り返し「音楽はすでにそこにある」という。
    演奏されるか否かは関係がない。音楽とはそこにあるものであり人が演奏するものは完璧とはいえないのだ、と。
    この考え方はキリスト教圏の人間のそれである。
    世界は神の造りしものであるからパーフェクトに違いない、というあの信念。
    日本人にはわかりにくいキリスト教的エートスに満ちている。
    そこのところが興味深かった。
    だから、本来は自分がどう演奏したいかなんておこがましい話なのだ。
    音楽は世界と同様に神の造りしものであるならはじめからそこにあり、人間ができることといえばそれを不器用に再現することにしか過ぎない。
    このような考え方ができるかどうかが西洋の芸術を理解する鍵ではないかと私は思う。

    特に気に行った箇所。
    p.47
    大抵の音楽において、光と闇があくまで交差するのに対して、シューマンの音楽には、闇が全体にねっとりまとわりつくような印象がある。喜びと悲しみが、交わり合い、重なり合うのではなく、喜びがそのまま悲しみであるような音楽。

  • シューマンに対する知見が全くない僕でも、一種のシューマン論評を読んでるかのように魅力的な音楽性、フラジールな人物像を学んでいるという感覚。前半は特に。
    これはミステリーになりうるのか?と思ったら急に殺人事件。後半はあれよあれよと畳み掛ける展開で一気に読み進めてしまった。

    それでも音楽を文字で表現するときの幻想的形而上的言葉の紡ぎ方が心にじわっと染み込む感覚が好き。後、言葉のチョイスも深遠で幅広くて、比喩表現も巧みで好みな文章だった。

    総じてストーリーとしてはどんでん返し系。こんだけ語り尽くした物語がまさか。。。って驚きは初めてでやられた!というか推理はもう諦めてた!

  • 本題に入るまでがあまりにも長く、久しぶりに途中で投げ出したくなった。ミステリ特有の「なんとなく大事そう」なフレーズも分かりにくくて、かつオチも急展開過ぎてついていけなかった。苦手。唯一、装丁だけは好き。

  • 読んでいるときの違和感が あ〜〜そーゆーことねぇぇぇ!!と結末で回収されたのはよいのだけど、要するに思ってたのと違うからこその違和感だったわけですね。
    主題となるであろう 幻想的な晩の映像が怪しく美しく脳裏に思い描かれる。

  • この手の感じ、あまり好きじゃない。
    音楽評論みたいで読みづらいなと思ってたら、
    妄想の”お話”だったなんて。。。

  • 奥泉氏については個人的笑いのツボ、どストライクのユーモアミステリ『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』についで2作目、芥川賞作家のミステリとして2011年度このミス第5位である。さらにタイトルから容易に連想されるが、音楽、とりわけクラシックとミステリの融合である。これは中山七里氏の岬洋介シリーズとかぶる世界観であり発刊日も2010年と同じ年。音楽を文字で表現する手法においても対比せざるをえないだろう、そのような予想の元に読了した。

    以下かなりのネタバレとなります、この先の立ち入りはご注意ください!


    まず本書の構成は主人公一人称の独白スタイルである、30年以上前の青春時代を回想するという形式。ミステリ通ならばこの構成でなんらかの仕掛けを疑うかもしれない。自分もその疑惑を持ちつつページをめくったのだが、その疑惑は間もなく霧散してしまった。

    冒頭において核心となる謎が提示される、指を失ったピアニストが遠く異国の地でピアノ演奏をしていたという事象。この謎と時を同じくして発生した殺人、過去を紐解き真実に迫ろうと記憶を手繰り、資料を洗いだしていくのだが、そこにまるごと音楽家シューマンが存在したのである。

    主人公とシューマンに魅せられた天才ピアニストの友情、そして彼等がつむぐシューマンの音楽、序盤から中盤はこれがほとんどである。読者によっては難解すぎ退屈かもしれない、しかしながら自分にとっては、クラシック音楽素人でありながらも、その世界観に入り込むに容易く、シューマンの音楽、音楽論、人物像、それが勘違いであろうと己の脳内に確立されたのだ。もちろんページから音楽を聴くことはできない、作家と読者の相性もあろうが、これは作家奥泉光氏の「言葉」の威力に他ならない。彼の綴る言葉、会話、その計算された配列が綯い交ぜになることなくすんなり頭に入ってくる。既読の読者ならおわかりと思うが、章と章の合間の一行だけの会話、独白、文節の切り方などが頻繁に現れる。過去と現在を繋ぐ場面、背景の移り変わりなどで多様されるが、そのアクセントは自分の読書力に完全に当てはまった。この快感を味わいつつ世界観に埋没したのだ、そこで最後の物語の反転にも素直に驚き、ミステリ的感動も味わうことができた。


    「クワコー」において奥泉氏が挑戦したのは「笑い」であった、真義はともかく自分はそう受け取った。笑いは読者の反応を見るには簡単である、笑わせればよい。自分は大笑いした。次作を読んで思うに、あの笑いの質が改めて思い起こされる。キャラクター、会話、出来事が渾然一体となって、完全に何が起きたのかがわかるのだ。そこにも奥泉氏の「言葉」の威力があり、自分との相性もあったかもしれない。色彩は全く違う作品であるが、表現という手腕においては共通のものを感じることができる、他の作家と比べても歴然たる同一性を感じることができた。


    音楽とミステリの融合と銘打つも実際の演奏シーンは少ない、少ないながらもそのシーンにおいては作者の技量が満遍なく発揮されて、息を呑む密やかさ美しさがページに溢れていた。中山氏のシリーズとは音楽をベースにおきつつも作風は全くの別物であった。中山氏が音楽を通じての人間的成長、外側に広がっていく陽の側面なら、奥泉氏は人の内側に深く入り込んでいく陰の側面、結果人を滅ぼしかねない魔力を描いていた。描写という点では甲乙つけがたいと感じたが、読者は読み取るものは別物であろう。


    結末については賛否があるようだ、自分は音楽に入り込みその予想ができなかった。同じ作風は別の作家にもあり枚挙にいとまない。しかしながら本当の真実は明かされじまいであり、虚構の中に灰色の影を仄かに照らすような終り方であった。どうやらこれも奥泉氏の作風のひとつであるようだ。また別のものも読んでみるしかないようだ。


    そしてやはりシューマンを聴いてみなくては…

    • chie0305さん
      しろさん、フォロー並びにコメントありがとうございます。勉強させてもらえる、なんてとんでもない。この「シューマンの指」と「追想五断章」のレビュ...
      しろさん、フォロー並びにコメントありがとうございます。勉強させてもらえる、なんてとんでもない。この「シューマンの指」と「追想五断章」のレビューを読んで、しろさんてなんて頭のいい人だろう、と思ってました。(私は「へ?」ってなった記憶があります。)なので、こちらこそよろしくお願いします。
      2017/09/27
  • こうした小説を読んでいると、音そのものを聴きたくなる。そんなとき、YouTubu ですぐ聴くことができるってありがたい。
    シューマンを聴く、と云うことは今までなかったように思うが、少し聴く機会が増えるかもしれない。

  • まず感服したのが、シューマンへのオマージュ。
    久しぶりにシューマンの楽譜を引っ張り出してしまったほどw
    音楽……殊にシューマンに対する知識が乏しいと、楽曲然り音楽表現が多いので飽きてしまうかもしれないかな? でもYOUTUBE等でいろいろ聴きながら読み進めてみるというのもおもしろいのでは。
    音を聞きたくなるミステリだなんて、興味深くおもしろいじゃない。

    オチは「えっ?」てかんじ。
    伏線がはってあるけど、そう、そうきましたか、という印象。
    他の作品も読んでみたくなりました。

全132件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

奥泉光(おくいずみ ひかる)
1956年山形県生まれ。1986年に『地の鳥 天の魚群』でデビュー。1993年『ノヴァーリスの引用』で野間文芸新人賞、1994年『石の来歴』で芥川賞、2009年『神器』で野間文芸賞、2018年『雪の階』で毎日出版文化賞文学・芸術部門をそれぞれ受賞。

「2018年 『夏目漱石 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

シューマンの指 (講談社文庫)のその他の作品

奥泉光の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊坂 幸太郎
伊坂 幸太郎
宮部 みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印

シューマンの指 (講談社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする