新装版 塔の断章 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062774161

感想・レビュー・書評

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  • 乾くるみ氏の創作にはタロットをモチーフとした作品群があり、今作はその第1作である。最も有名な「イニシエーション・ラブ」もこの作品群に属する。シリーズの共通項として「天童太郎」なるキャラクターが登場すること、それぞれの作品にリンクは存在せず独立した作品である。

    初乾作品は「イニシエーション・ラブ」であり、タロットシリーズは「リピート」「セカンド・ラブ」と読了している。奇しくもシリーズ第1作が最後となってしまった。既読の作品には共通してトリックが仕掛けられており、今作も同じような仕掛けを予想し読み進めたのだが、見事に乾氏の術中に嵌ってしまったのであった。

    以下ネタバレです、未読の方は立ち入り禁止とします!あくまで以下自己責任でお願い申し上げます。













































































    今作の構成は3部であり、序章、断章、終章となり、序章では殺人現場の数ページ、誰が女を殺したのか?という謎解きが大筋である。大半が断章で主人公「辰巳まるみ」の一人称である。これが時系列がバラバラであり、非常に読みずらい。また事件と直接関わりなさそうな過去の体験までもがカットバックされている。キャラクターの相関図など、把握する為にページを戻ることも多い。そして最後の謎解きが終章、これもわずか数ページ。しかしながら超ど級のトリックに悶絶した。

    天童太郎は今作が第1作目ゆえ、主役扱いであり、この後の作品でのチョイ役的存在とは違い、キャラ造詣も、その存在感もしっかり描かれており、今まで掴み切れていなかったモノが払拭された。これは自分が順番を違えていたせいであるが…

    今作のメイントリックは、作中での殺人事件から真相究明までの時間軸と、作中人物が辿った時間軸を混同させること。そして断章パートそのものが、死の直前の「走馬灯」として「辰巳まるみ」の心をよぎったモノとして描かれている点である。

    つまり被害者1号「十河香織」が塔より落下し死亡する事件、実は犯人は「辰巳まるみ」の件は作中に記述なく、真相究明場面で「天童太郎」が真犯人「辰巳まるみ」を投げ落とす場面が序章であり、物語世界における時系列は、序章より始まり、わずか数分後、まるみは塔より落下し、その刹那走馬灯として「断章」を追体験したのである。ここで初めてあの時系列バラバラパート、無関係な過去の体験などがキッチリ腑に落ちることとなる。まぁよくこのような構成を創り上げたものだと思う。実際読んでみて気付かない読者もいるのだろうと思う。過去の文庫版には筆者自身のネタバレ解説があったようであり、これは読んでみたい。

    この後傑作「イニシエーション・ラブ」が世に出たことを鑑みれば、納得の今作品であった。

    タッロトシリーズはいつまで続くのか?天童太郎はどこへ行くのか?これは大きな謎なのかな?

  • 「らしい」作品・・・。
    終末に期待し,
    終末を勘ぐりながら読み進めていったが
    やっぱりひっくり返される・・・
    でも,すっきり感がないのは
    どういうわけだろう・・・

  • まさに乾くるみ作品!という感じだった。綺麗に騙された。ライトに読みやすいミステリ。

  • 序章が最後に繋がる内容だが何だかダラダラと進行して和美の回想が良く分からない。
    どう意味があるのか分からなかった。
    辰己と天童?モヤモヤして「?」だらけ!
    単なる歪んだ愛情表現だったのか?
    乾くるみさんの作品としては?マーク。
    他の作品も読んでみたいが…?

  • 転落死したお嬢様の殺害犯を探すよう頼まれた小説家とゲームプログラマーの動きと過去の話が絡み合って構成されているんだけど、過去の部分の必要性がわからない。
    随所に織り込まれるので、何か深い意味があるのかと思っていたけど、ただのページ稼ぎにしか思えない。
    犯人も『この人じゃないか』ってのは結構すぐにわかるんだけど、殺害動機もよくわからなかった。
    乾くるみの作品だから期待していたけど、デビュー作なんだ。これがなぜ評価されたのかはよくわからなかった。

  • 「イニシエーション・ラブ」「セカンド・ラブ」を読み、乾くるみにハマリ、せっかくだから「タロウ・シリーズ」を読破しようと、読みました。

    ちょっとモヤっとしてしまいました。
    途中で犯人分かったという感想もありますが、自分は全く気付かず。
    なんで、どうやって、辰巳は香織を夜中に屋上に誘い出したのか?
    そういうのは読者が想像するのが、想像シロを残しておくのが、ミステリーの大人な楽しみ方なのでしょうか?

  • 乾先生の人気作『イニシエーション・ラブ』を含む“タロウ(タロット)・シリーズ”の1冊目。
    私は『イニ・ラブ』⇒『リピート』⇒『セカ・ラブ』と読み、こちらに手をつけました。
    『イニ・ラブ』への布石と言える作品と思います。
    『イニ・ラブ』程の衝撃や纏まりを想像するのは控えるのがオススメ。
    あくまで“布石”
    これがあったからこそ『イニ・ラブ』が生まれたのでは?と思います。
    このシリーズでの未読は『嫉妬事件』のみとなりましたが、この作品が今のところ一番、天童さんが出てきます。
    天童さん好き(がいるかは不明ですが(汗))にはたまらない作品。

  • 時系列がバラバラで読みづらい。まあ、初期の作品はこんなもんかな。

  • プロローグとエピローグの間に、時系列がバラバラになった、断片的なエピソードが多数挟み込まれるという、変わった構成になっています。

    一見、読みにくいと思われるのですが、時間の流れはある程度把握出来るので、思っていたよりも読みにくさは感じられませんでした。
    ちょっと短めの長編と言えそうな分量も、この作品には丁度良さそうですね。

    ただ、この新装版には、旧版に掲載されていた作者自身による解説がないのが残念。

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著者プロフィール

静岡県大学理学部卒業。1998年『Jの神話』で第4回メフィスト賞を受賞し作家デビュー。著者に『イニシエーション・ラブ』、『スリープ』など。

「2020年 『本格ミステリの本流』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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