- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062774451
作品紹介・あらすじ
江戸・千駄木町の庭師一家「植辰」で修業中の元浮浪児「ちゃら」。酒好きだが腕も気風もいい親方の辰蔵に仕込まれて、山猫のようだったちゃらも、一人前の職人に育ちつつあった。しかし、一心に作庭に励んでいた一家に、とんでもない厄介事が降りかかる。青空の下、緑の風に吹かれるような、爽快時代小説。
感想・レビュー・書評
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朝井まかてのデビュー2作目。
江戸時代の植木職人の世界を描くという点では、1作目と共通しています。
大名屋敷が集まっている江戸では、庭園づくりに熱が入り、庭園都市になっていたというのが面白く、言われてみればなるほど、と。
江戸は千駄木町の「植辰」の親方に拾われた浮浪児のちゃら。名前もなかったが、ふとしたいきさつで「ちゃら」に。
高いところを飛び回って逃げる浮浪児に辰蔵親方が笑いかけ、植木屋の仕事は空に近い「空仕事」だと言ったのだ。
ひょうひょうとしているが、腕はいい親方と、兄弟子たち。
親方の娘のお百合はまだ15だけど、男所帯をしっかり取り仕切っていて、ぽんぽんと威勢がいい。年齢の近いちゃらとは幼馴染のようでもあり、今もよくケンカになってしまう。
山猫のようだったちゃらも次第に腕を上げ、作庭の仕事が面白くなってきます。
趣の違う庭を作り上げていく実例が面白く、それぞれの家の事情も思いやる様子がわかって、前半は人情噺。
ほのかな初恋なども絡みつつ。
「植辰」に思わぬ災いが降りかかり、それが最近江戸で評判の人物と関わってのことでした。
後半はミステリー?冒険もの?
どんどん読めるので筆力は感じますが、やや驚きながら読んでました。
その間、お百合がちょっとほったらかしな感じだし。
江戸時代は10代半ばで適齢期にもなりますからねえ。どう転ぶのか?と…
結末はややあざといけど、まあそうなるだろうと思っていたし~(笑)
たっぷりした読みごたえに満足でした☆詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
江戸時代の庭師の話。悪役が出てきて、勧善懲悪の期待が高まっていく。ところが終盤に身内が黒幕だったことが判明するというまさかの展開。勧善懲悪の爽快感が無くなったと思ったら、主人公・ちゃらが、、、ところが最後は、、、終盤は話が大きく動きます。面白かった。
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江戸の庭師の話。
木や石や草を扱う庭師の仕事、江戸っ子の暮らし、とても楽しく読んでいたのだが、途中から黒雲が広がり、後半は物語の世界が変わってしまったような…
個人的には、ちゃらが雑木を入れた古里の庭が良いなぁと思った。 -
朝井まかてさんの本は2冊目。本作は「恋歌」ほどの圧倒される感動ではないけれど、爽快感があり、お涙ほろりもあって最後まで面白く読めた。
江戸の人情ものはやっぱり好きだなぁ。助け合って支え合って、1日1日をみんな生きている。
そして、作庭の細かな描写もよかった。職人たちの情熱が脈々と受け継がれて今の文化に通じているんだとあらためて感じた。
お留都の決意や、お百合の母お麻の愛情に心打たれる。朝井さんは女性を本当に魅力的に描きますね。
最後の最後は出来すぎ感もあったけど、個人的には好きなラスト。登場人物たちのこれからの日々に想いを馳せる。 -
出だしから、面白さと、テンポの良さで、のめり込んでしまった。
この作者 朝井まかて氏の「すかたん」も良かったが、ちゃらの「空仕事」という言葉の庭師に、植木だけでなく、その背景になるものの配置の仕方で、庭の奥行から、イメージが、変わってくることに、今ひとたび、日本庭園の素晴らしさを、感じてしまった。
お百合の一途さや、五郎太の良き友に恵まれているちゃら。
材木問屋の大和屋のご隠居の庭を造った時に、ご隠居が喜ぶ。
仲の良い老夫婦。
そのつまのお咲が、昔の郷里の風景が、辛い事を思い出すのだが、懐かしいと、、、
行きているってええもんですな。ほして、死ぬのもええもんやと思いますわ。
皆、死ぬために生きている。いつか死ねるから、生きてられる。
この世にあるのも後少しやとおもうたら、どんなに辛かったことも懐かしいもんになる。と、、、、、
言葉遣いにも、又、この倫理観の深さにも、さらっと言ってのける老婆の言葉に感銘。
物語りも、良い事ばかりでなく、妬みや、迷信のごときものまで、この庭師一家の「植辰」に災難がのしかかって来る。
しかし、ちゃらが、水に落ちてしまった後の事が、主語が、無くてもわかる最後の言葉が、作者特有のアイデアだと、思う。
次回、又、この人の作品を読んでみたいと、思った。 -
江戸時代のお話だけど読みやすくまっすぐなちゃらの姿が目に浮かびます。
植物を愛する庭師が作り上げた技法が今の庭にも受け継がれていると思うといろんなおうちの庭に自分の好みを見つけるのも楽しくなりそうです。
スピード感あってグイグイ引き込まれ、いっち大切なもんがわかるラストも大好き。 -
庭師を主人公にした時代小説というのは新鮮です。
反抗的な孤児・ちゃらが度量の大きな親方の下で庭師として成長し、妻を亡くした親方の所にはおきゃんな娘・お百合がいて、兄弟の様だった二人がやがてお互いに意識するようになり。。。こう書くとありがちではありますが。
一方で、白楊という何やら庭師界の天一坊のような悪人が出てきて、阿片を用いて人々を誑かし。
Amazonなどをみると非常に高い評価です。しかし、私にはどうもピンときませんでした。
どうも2本の流れにギャップがありすぎる。白楊の話はかなり飛んでいて、これだけでまとめれば単純なエンターテインメントとして面白そう。しかし、そこには人情もののちゃらとお百合のストーリーがうまく絡んでいかない気がします。最後の仲間の裏切りも納得できないし。
という訳で星の数は少なめにしましたが、実は読んでて楽しい本でした。 -
江戸時代の庭師の物語。
庭のある生活って憧れてしまう。 -
江戸時代。
跳ねるように身軽な若い庭師の成長物語。草木や水、石、光、空気まで想像できる瑞々しい文章。
と、思って読んでいたら…。だんだん不穏な方向へ話が進んで、これってアクション、ミステリーなのか?
とっても面白い本に出会えたという嬉しい気持ちの反面、なにか物足りない、いや、多過ぎるんだと感じました。
庭師として、また人としての成長。親方や先輩たちの庭造りの素晴らしさ。恋愛模様。
ミッション・インポッシブル的な終盤もいいけど、そんなに混ぜないで~。