沿線風景 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 110
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062774574

作品紹介・あらすじ

鉄道とバスを乗りつぎ、移ろう車窓の景色に眼を凝らし、降り立った土地の食を楽しみ、関連する本に思いをめぐらす。昭和の雰囲気を忠実に残す郊外の団地、天皇や皇族にちなんだ場所、宗教施設やその跡地、さらに浅間山荘、旧上九一色村など戦後史の重要な舞台を訪ね、読書と旅の風景をつなぐ日帰り"書評"エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 原武史氏の専門は「日本政治思想史」なのださうですが、書評家としても活躍してゐますね。わたくしが購読する新聞では、毎週日曜日の読書欄にて、原武史さんの書評が載つてゐるので(無い週もあるが)必ず読んでゐます。
    ところで、この新聞では年末に書評委員たちが選ぶ「今年の3点」といふ企画が毎年ありますが、原氏は3冊選ぶ事に意味を感じないと否定的な意見を述べてゐます。選ばれた3点とそれ以外の間に明確な線引きが出来ぬ、選ばれたのは偶然に過ぎぬのに、あらぬ誤解を読者に与へる、といふのです。
    まあその通りなんですけど、それは承知の上で読者は受け止めてゐるのではないかと思ひます。あんまりピリピリせずに、もつと気軽にいけばいいのに。

    まあそれはそれとして、この『沿線風景』も、実は書評なのださうです。
    元元普通の書評連載だつたのが、原氏が事情により継続できなくなつたと週刊現代の編集者に訴へたところ、どこかに出かけながら書いてもいいぜと言はれたので、連載が無事に続けられたとか。
    行先は、編集者同行といふことで、週末に日帰りできる場所に限定されますゆゑ、勢ひ関東近辺になります。しかし目的は毎回違ふので、飽きる事はありません。

    書店を目的にしたり、滝山団地を目指したり、大川周明の家を訪ねたり、天皇ゆかりの地へ行つたり、キリスト看板を探したり......思ひ通りにはならぬ事や、期待外れの事もあつたりしますが、そつなく書評とからめて、愉快な読み物になつてをります。
    特に「天皇」や「団地」にまつわる話はまことに興味深い。
    一章一章が短い事もあり、冒頭で著者が述べてゐるやうに移動中の電車などで読むのには最適と申せませう。しかし内容が軽い訳ではなく、戦後史を考へる上での重要な指摘もあると存じます。
    一風変つた「書評」として、ユニイクな一冊でした。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-734.html

  • 本来の目的は書評だが、鉄道を中心とした紀行文でありエッセイの要素が強い。全22篇を通じて著者が行き先を示し、編集者が同行するスタイルをとっており、鉄道ファンである著者にしては鉄分が少ないような気がする。団地、天皇制、レッドアロー号が印象に残った一冊。読了更新は7日ぶりだが、それはイザベラ・バードと旅をしているため……(苦笑)

  • 単行本持ってるんだけど、古本100円ってのと加筆ってのにひかれて買っちゃった。紀行+書評ってふれこみやけどまぁほぼ紀行かな。書評期待して読むとハズレやろうけど、紀行としてはおもしろい。マニアック過ぎず、高踏過ぎず、アカデミック過ぎず、スゴいいい線ついてきてると思うんだよね。

  • 2015/12/16

  • 面白かったです。

  • 008

  • 政治思想史を専門とされている原武史さんによる書評。書評と言っても、必ず電車に揺られて小旅行をする。昼時には概ね麺類を注文する。訪れた土地の郊外団地について考察がなされ、また、天皇とその土地の関わりが語られる。
    なんだか、とってもユニークな本。
    好きだなぁ、こういう感じ。この人の他の本も読んでみたくなりました。

  • 後書きで「私の本職は、日本政治思想史の研究である。」と云われる原先生。「大正天皇」「昭和天皇」などの著作もある。鉄道好きでも有名。
    主に東京近郊に鉄道やバスで出かける。あさま山荘や三里塚、上九一色村など昭和、平成の事件となった舞台や天皇の御用邸、大規模団地など。
    小さな旅行記の中で、本が紹介される。新刊ではなく、昭和の時代の側面を伝えるノンフィクションが多い。文芸作品も多少。

    書評というには言及は短いが、郊外に残る昭和の風景の記憶と本の話が、なんとも言えない味を醸している。

    大本教を再訪するのが、チョッと不思議。昔読んだ栗本慎一郎の本でも大本教は取り上げられていた。当時に沢山出現した新興宗教の一つと思っていたが、社会学者が注目するだけのことがあるのか。

    旅先で蕎麦やうどん、時々鰻を食してる。駅弁は釜飯が二回出てくるぐらい。ホームの駅そばの味を知っているのは、流石は筋金入り鉄ッちゃんです。

  •  週刊誌に連載していた書評エッセイをまとめたものが単行本化され、それが文庫本になったもの。書評の内容もあるのだが、その書評よりもメインはむしろ著者の日帰り電車紀行。書評を強引に旅の記録に結びつけているものがあるが、それは著者も言及している通りで、いろいろな所へ行ってみてそこで体験したり思ったことと、本で読んだことを結びつけることは、そこでまた新たな発見があるものだ。
     鉄道と風景や人々の日常生活、社会・歴史の心象風景を結びつけて綴られているのがとても面白い。著者はもちろん筋金入りのテツだろうが、むしろ鉄道をインターフェイスに、日本政治史・日本政治思想史分析や生活体験を絡めての社会分析がとても勉強になる。特に文庫特別番外編は元ジモティーには懐かしさが(弁天洞窟行きまくっていたので)。

  • 政治思想史研究者で鉄道オタクでもある原武史先生が、主に関東近郊に鉄道の小旅行をしながら新刊紹介をするという週刊現代での連載をまとめた本。
    出かける先は、ご本を書かれている皇室関係、団地関係、西武関係のところが多いですが、自分が子供のころに家族旅行で行った場所を再訪するなんていうノスタルジックな回もあって、非常に楽しそう。
    自分もこういうエッセイを書きたいな、と思いました。

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著者プロフィール

1962年生まれ。早稻田大学政治経済学部卒業,東京大学大学院博士課程中退。放送大学教授,明治学院大学名誉教授。専攻は日本政治思想史。98年『「民都」大阪対「帝都」東京──思想としての関西私鉄』(講談社選書メチエ)でサントリー学芸賞、2001年『大正天皇』(朝日選書)で毎日出版文化賞、08年『滝山コミューン一九七四』(講談社)で講談社ノンフィクション賞、『昭和天皇』(岩波新書)で司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『皇后考』(講談社学術文庫)、『平成の終焉』(岩波新書)などがある。

「2023年 『地形の思想史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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