眠りの牢獄 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1008
感想 : 95
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062774581

作品紹介・あらすじ

階段から落ちた恋人・亜矢子は意識不明のまま昏睡状態に陥る。それから五年、浦賀は亜矢子の兄に呼び出され、友人の北澤・吉野と共に階下の地下室に閉じ込められてしまう。解放の条件は彼女を突き落とした人物自身の告白だった。外部で進行する「代理殺人」の本当の目的とは何か。驚愕の結末は予測不可能!?-。

感想・レビュー・書評

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  • 不意に二時間ほどの時間が出来たのでこれを使って何か一冊読みたいなぁ、で手にした200ちょいページのこちらの作品。浦賀和宏さんの箇条書き風な文体が懐かしい....久々のこんにちはでした。

    密かに愛を育んでいた二人。
    ある日地下室へ二人で向かう途中階段から転落、主人公である浦賀は意識を取り戻し女は昏睡状態。
    数年が経ち、仲間内で集り彼女の荷物を整理する事となったが身内である兄にシェルターに閉じ込められる。「誰が妹を突き落としたのか白状するまでここから出さない」
    果たして彼女は誰に突き落とされたのか、この状況から抜け出すことは出来るのか。そして合間に語られるストーカー女がネットで知り合った女と企て実行した交換殺人がココとどう繋がっていくのか。
    ーーーーーーーーーーーーー

    今回トリックとしては珍しく納得、と言うより
    「有り得なくはないか...」といった半分麻痺してる気もしなくもない着地点。
    しかし動機はやっぱりネタを感じてしまう...
    相も変わらずの むむむ な材料がてんこ盛りで今回も物の見事に小首を傾げまくりな濃密な2時間だった。

    想像していなかった唐突にぶっ込まれたエロとグロはなんだか陳腐で、一瞬テンション上がった物の萎むのも瞬速...無念。
    トリック...はグレー。 断言してグレー(矛盾)
    ミステリではやってはいけない(ことは無い)
    例えるなら「多重人格オチ」的なくらいグレー(くどい)

    とは言え浦賀が小説にこだわる真意とこの作品の構築がマッチした時は心地良さを感じた。しかしその後の返しもこれまたグれ..(以下略)

    短い作品でしたが、ツッコミ的な意味での脳内の忙しさはそれ以上の濃厚な時間を提供してくれた。満足です。年に一回読みたくなる浦賀和宏作品、ワンイヤー後にまた逢いませう。

  • 全く関係のなさそうな2つのパートが交互に描かれる。
    ①主人公・浦賀が昏睡状態に陥っている恋人の亜矢子の兄によって地下シェルターに閉じ込められられるパート
    ②元彼を恨む冴子がネットで出会った人物と交換殺人を計画していくパート

    上手くぼかしてあるが、同時進行で進む2つのパートに、なんとなく秘密が隠されていそうだとなと予想できる。

    叙述トリックや2つのパートが繋がっていく展開ににはかなり驚かされたが、登場人物の誰にも感情移入出来なかった。
    様々に解釈できるラストは個人的には良かったと思うが、少し過激な表現があり、好き嫌いも分かれそうな作品だと思う。

  • どんでん返しというか、えぇー!?という感じ。
    内容は面白かった。
    ある描写が生々しくて嫌がる人もいそうだけど、そこも伏線のひとつだったんだなと関心した。
    好き嫌いが別れそうな作品

  • 22年1月20日、読了。浦賀和宏さん、二作目。

    読み終わって…うなってしまいました。参った…

    結構なアクロバティックな仕掛けでしたが、結末が僕には悲しすぎて…トリックが明かされた時の爽快感より、胸を押さえつける悲哀の方が強く残りました。

    この人、一体どんなアタマをしているんだろうか?昨年初めて読んだ小林泰三さんも、不思議に思いましたが…この浦賀さんも!僕には衝撃の大きな出会いです。でも、お二人共、既に亡くなっているそうですね༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽

    浦賀さんは連作で有名だそう…次は何を読もうかな…楽しみです。

    • shukawabestさん
      shukawabestです。
      何とか、ギリギリ読めました。食べるのか・・・と思い、撤収しそうになりましたが、とりあえず完読できてよかったです...
      shukawabestです。
      何とか、ギリギリ読めました。食べるのか・・・と思い、撤収しそうになりましたが、とりあえず完読できてよかったです。ありがとうございました。
      2022/04/10
    • まーちゃんさん
      shukawabestさん、いつもありがとうございます。

      やはり、ダメでしたか…かなりグロい箇所もありますよね。

      僕は、あのアクロバティ...
      shukawabestさん、いつもありがとうございます。

      やはり、ダメでしたか…かなりグロい箇所もありますよね。

      僕は、あのアクロバティックな仕掛けが、気に入りました。でも、その点も、「よくある」「どこかで読んだ」とかの批判もあるようで…どうも失礼しました。
      2022/04/11
    • shukawabestさん
      いえいえ、あの仕掛けはよかったです。自分の予想が裏切られて行ったので。

      推理やサスペンスになると、読みながら挑んでいるような気持ちになるこ...
      いえいえ、あの仕掛けはよかったです。自分の予想が裏切られて行ったので。

      推理やサスペンスになると、読みながら挑んでいるような気持ちになることが多く、予想外ならその作品は◎、逆ならつまらない、△や×の評価をしているような気がします。

      自分では書けもしないのに・・・と思いながらも。
      2022/04/11
  • ハサミ男とおなじ衝撃を受けた。面白かったポイントは2つある。

     1つめは、浦賀が女というトリックに騙されたこと。
     一人称が僕、冒頭の亜矢子とのイチイチャ、これだけの要素で浦賀は男だと思っていた。考えてみれば、浦賀が男だと明言されてなかったのに。先入観の裏をかかれたどんでん返しに衝撃を受けた。
     今思えば違和感あったシーンは2つあったな。第一に、浦賀が吉野の路上ライブに行ってファンの子が不満そうな顔で去る所。何で不満そうにするんだろ?と思ったけど、浦賀が女だったら吉野の彼女だと勘違いしたんだろうな。第二に、浦賀と亜矢子が行為中。前戯たっぷり(足の指全部舐めるなど)したのに、なぜ本番しないか疑問だった。でも浦賀が女なら納得。だって女には入れるアレがないもんね。これにはヤられた。

     2つめは、吉野と北澤のキャラが濃くて面白いこと。
     吉野が気持ち悪かった。北澤の血をすすって人肉くうとか正気の沙汰じゃない。いくら保身のためとはいえ、「証拠隠滅のために死体食ったろ!」って、どんな神経してんだ...。吉野が浦賀を犯してるときの、腰を一定のリズムで犯してるのもコワイ。
     吉野が浦賀のことを「変態」「特殊な性癖」「お前の病気を治してやる」と表現してるのは偏見だなと思った。きっと彼は同性愛に対して激しい嫌悪感を抱いてたのに違いない。俺だったら相手がレズと知った時点で非難もせず手を引くね。
     北澤は俺と似てたので感情移入できた。俺も束縛されるの大嫌いだし、飽きたらすぐに女を捨てるし、その場限りの関係多め。
     冴子が束縛女でうざかった。あの束縛具合じゃ嫌気がさす北澤に同情。別れて正解だったと思う。さすがに彼女の親友に手を出したのは解せぬがね。冴子が掲示板に書き込むときと、北澤本人にメールしてる時の温度差のギャップが怖かった。束縛女と別れる時は穏便にしなきゃアカンでしょ。

     俺も今までワンナイトした女に悪口書き込まれてると思うと身震い。もしかしたら殺したいほど憎まれてるかもしれない。冴子のような女に捕まらないよう用心せねば...。

  • コンパクトな作品だが、相変わらず構成は抜群、リーダビリティも高く、そしてしっかり驚かせてくれる。
    最後に立場が逆転し、互いに相手の夢を想う。このあたりはやはり巧い。
    前例があるのかは分からないが、カニバリズムの動機にも納得。そして本書の最大の肝となるあのトリックだが、一人称「僕」は(わかっててやっているような気もするが)やはりどうしても引っかかる。伏線に関しては性行為のシーン、編集者との旅行云々の話、「亜矢子みたいな女しか好きになれない」という台詞など十分すぎるほどある。ややわかりやすくはあるものの、「浦賀」という名前のミスリードには脱帽。

    本作の前に書かれた浦賀作品からすると少しシンプルでがあるが、著者の良さがよく出ている。

  • 初めての作家さん。
    評価に、何度この手に騙されるんだ…!て書いてあったのにすっかり忘れて読んですっかり騙された笑
    まあ内容に必要なトリックではなかったかな?
    でも、アヤコなんで男3人に自分1人なんてメンバーでお泊まり会?て思ってたから、そこも伏線だったかとすっきりした。
    ただ最後の吉野に襲われるシーンは、なんか男に都合いいように描写されてんなと思った。

    重量感はなかったけど、読みやすくてすっかり騙されたので満足度高め。

    (いまノベルスの背表紙見たら、監禁された三人の青年、って書いてあった。これはミスかな?)

  • 良い意味で、叙述トリックのおいしいところが詰まっていて、定石のような手法が満載なのですが、読み手のスタンスで評価が分かれる気がします。
    個人的には、先読みすると衝撃が激減するので、騙されるがままに読み進めたので、期待通りの読了感でした・・・後味は悪いですが。
    主人公についてのヒントはたくさんありますが、一人称「僕」はギリギリですかね。。。

  • 短いながらに様々なサプライズ要素があってよかった。
    何かと疑い深くなってしまってるため、叙述の1つは初めからわかった。
    もう1つも仕掛け自体は想像がついたが、完答にはいたらずフワッと読んでいた。
    非常に面白いのだが、物語としての重厚感にはやや欠けるのかもしれない。

  • フーダニット・ハウダニット・ホワイダニット全てにおいて早い段階で分かる。
    それが悪いわけではないと思うし、面白くないという事もない。
    分かった後の魅せ方が微妙で、唐突なグロとエロは本当に必要だったのかな?と思ってしまった。

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著者プロフィール

1978年、神奈川県生まれ。1998年、『記憶の果て』で第5回メフィスト賞を受賞しデビュー。『時の鳥籠』『頭蓋骨の中の楽園』など、著書多数。2020年、急逝。

「2020年 『こわれもの 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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