猫弁と透明人間 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062774703

作品紹介・あらすじ

お人好しの天才弁護士・百瀬太郎の事務所は、ペット訴訟で放り出された猫でいっぱい。ある日"透明人間"から「ぼくはタイハクオウムが心配で、昼も眠れません」というメールが届く。婚約者と猫たち、依頼人たちの笑顔を守るため百瀬は今も走る。

感想・レビュー・書評

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  • 猫弁シリーズ2作目。

    前作同様、いえ前作以上にハートフルです。

    めでたく亜子と「婚約者」と呼び合う仲になった百瀬。
    ただし、本当に呼び合うだけで一向に進展はしない。
    優秀な脳みそも、恋愛に関しては経験値が0に等しいせいか、役にはたたず。
    そんなある日、百瀬の元に“透明人間”を名乗る人物から「タイハクオウムが心配で昼も眠れない」という相談メールが届く。

    百瀬からの視点と、透明人間側からの視点で物語が展開し、まったく別件であるオウムと医療事故の訴訟でふたつの世界が徐々に近づいていき、ひとつになる。
    このスタイルも前作と同様だけれど、今回のほうがムリがない。
    そして前回は物語が「パズル」に例えられたりしていたけれど、今回は「迷路」。

    船が沈んでタイタニック的状況になったとして――亜子のために必死で板を探して彼女を乗せる。自分は沈んでも! うん、迷いはない!!
    と、思った次の瞬間、七重さんで想像し→助ける、野呂さん→助ける、久しぶりに会った同期の寺本まで助けるだろう自分に思い至り、またしても迷路の中に入り込む。
    不器用すぎるよ、百瀬さん……。笑ってしまったけれど。

    その「迷路」、例えだけでなく実物も出てくる。
    透明人間こと沢村の少ない息抜きのひとつが迷路作成。
    百瀬と同じく天才と呼べる頭脳を持ち、複雑な迷路を作りながら、影からたくさんの訴訟を捌く沢村。

    そんな二人の予定外の対決。

    天才同士が法律を駆使しての闘い・・・なんていうと、息詰まる法廷劇が繰り広げられそうだが、かたや透明人間、かたや自分の案件ですらない、ので、裁判の様子が描かれるわけではない。
    困っている人を助けたいと思う気持ちは二人とも同じだけれど、けして法を曲げたりズルしたりせず真正面から向かうところが、とても百瀬らしい。
    「時間をかけてあらゆる制度を総動員し、オールハッピー」に導く姿勢は変わらず。

    タマオとさっちゃん、「あーちゃん」の謎が解けるエピソードには思わずじーん。
    そして百瀬が、亜子をぎゅっと抱きしめてしまうシーンには思わずきゅーんっ!

    百瀬と亜子の前に立ちはだかる伴大造(笑)を乗り越えて、無事にエンゲージシューズを作る旅に出られるのか……次の巻を読むのが楽しみ!

  • 1作目を読んでから随分と間が空いてしまったけれど百瀬先生はじめ、主要な登場人物のキャラやストーリーはなんとなく覚えていたのでそのまま第2弾へ。
    不思議と急に百瀬先生に会いたくなり、手にした本書。会えて良かった。
    大変な時も大変な事も苦を表に見せる事なくさらっと飄々と身の回りで起こる全てを受け入れ解決してしまう。
    穏やかにスルスルとした身のこなしにいつの間にか虜になっています。

    猫弁先生がこれからどんな人と出会いどんな弁護士っぷりを発揮し、亜子さんとはどんな展開を迎え…まだまだ先が楽しみです。
    個人的にはまこと先生が好きなんだけどなぁ〜
    まこと先生の活躍も読みたい!

  • 大山淳子さんの猫弁シリーズは、いちおうミステリーではあるが、のほほんふんわかたらたらきゅんな小説。確かに、無理矢理ジャンル分けしようとすれば、ミステリーになるんだろうな。なるんだろうけど、ミステリーを求めて読んだとしたら、ちょっとがっかりかもしれない。少なくとも、猫弁の読者は、それは求めていないんじゃないかな。とにかく癒されますよ、このシリーズ。
    亜子の健気さがすごくきゅんです。

  • シリーズ2作目。
    1作目を読んでとても面白かったので、続きを早く読みたいと思いつつ間が空いてしまった。色々忘れていたから、やはり続きモノはなるべく間を置かずに読み進めたい。
    百瀬が弁護士としての仕事をしながら、婚約者の家に挨拶?に行くまで。学生時代どのように過ごしていたのかも少し明らかになる。

    百瀬はやはり人間が素晴らしいなぁ。モテない設定だけど、頭が良くて純粋で人にも動物にも優しくて、こんな人物が現実にいたら取り合いだと思う笑
    婚約者の父親に怒鳴られて感動しているのが面白かった。
    7歳で離れた母親の謎が気になる。

  • 箱庭のようなお話。
    登場人物がみんなどこかで誰かと結びついている。都合がよすぎる、と解釈する人もいるでしょうが、この、みんながふわっと手のひらにくるまれているような世界観こそ猫弁。
    百瀬さんが少しずつ幸せになり、少しずつ人と繋がってゆく。
    今回第二の主人公とも言うべき沢村透明くんが登場します。彼もまたよい。系統の似た沢村くんの行動によって、百瀬さんの器の大きさ、明晰さが際立ちます。

  • 最初、展開が少しゆるいかと思ったのですが、途中から次へ進まずにはいられなくなりました。
    主人公猫弁百瀬のキャラクター全開で、最高にかっこよく、もうたまりません。「正義」を振りかざすことなく、「正義」を通す、それも草の根的な泥臭いスタイルで。でも、百瀬はブレない。
    婚約者大福亜子への対応以外では。
    他の登場人物もキャラのイキイキ度合いがハンパ無いです。
    特にゴースト弁護士。とても細かい周囲から彼の描写がしてあって、頭の中で勝手に動いてくれるようです。
    大福亜子もズレてるようで、百瀬を受け入れる度量にかけてはドッシリとしていて、本当にうれしくなってしまいます。
    前巻も読後感がとても良いと感じましたが、こちらもさらに上を行きそうです。ああ、読んでよかった!

  • 猫弁シリーズの第二作。

    個性豊かな人物がこれでもかと登場し、にぎやかな話。

    そもそも主人公の猫弁こと百瀬太郎自体も、濃い。
    天才、不器用、お人よし。
    彼女いない歴39年にしてようやく射止めた女性は、結婚相談所の担当者だったというのは、前巻のこと。

    ここでは、やはり天才的な頭脳を持ちながら引きこもっている沢村という人物、法律王子としてタレント的人気を博す二見純など、新たな人物が登場する。
    それから、百瀬の「婚約者」となった大福亜子の後輩、春美などの周辺の人物が魅力的ではある。
    そういえば、男勝りのまこと先生は、この巻ではあまり活躍していない気がするが…。
    ともあれ、沢村の「自立」が本巻の読みどころ。
    たくさんの人物たちは、次の巻以降で活躍するのかな。

  • 本作も優しく面白かったです。

  • 百瀬さん素敵です。
    読んでいてほっこりしました。

  • 今回で完全に百瀬さんの大ファンになった!
    なんてステキな考え方をする人なんだろう!!

    亜子さんが大きな口でぱくぱくショートケーキを食べる姿への感情。
    『幸せそうな彼女の顔。思い出すだけで心がなごむ。写真に撮って胸ポッケにしまっておきたい』とか。

    コピー機の順番を2人に譲ってしまい、長く待たされることに対して『「今日は腕が鍛えられた」と思うことにした』とか。

    同窓生の寺本が大笑いした際は『これだけ笑ってくれたらありがたい。』と思うことにしたとか。

    自分の生い立ちに対して『自分はラッキーな人間だ。どこでも学べたし、運よく天職についた』と思っていて、亜子さんにもそう思って欲しい、安心して自分の前でショートケーキをぱくぱく食べて欲しい、とか。

    エンゲージシューズとか。

    沙織が投げてくだけ散ったりんごを拾い集め、捨てられなくてアパートの敷地に埋めた、とか。
    そのりんごが成長し、22年見つめてきた、とか。

    自分のお誕生日に、健康な体への感謝の気持ちを込めてなるべく外食を避け、手作りの食事を摂るように心がけている、とか。

    挙げ始めたらキリがないー!

    亜子さんに「ポッケにいれておく為に」写真が欲しい、言うのも、もうたまらない。

    亜子さんとのこれからも楽しみだし、続編も一気読みしちゃうんだろうなぁ。

    黒岩サチ江さんへの対応も見事なもの。誠実そのもの。世田谷区猫屋敷事件、一度ちゃんとした物語で読んでみたい。

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著者プロフィール

東京都出身。2006年、『三日月夜話』で城戸賞入選。2008年、『通夜女』で函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞グランプリ。2011年、『猫弁~死体の身代金~』にて第三回TBS・講談社ドラマ原作大賞を受賞しデビュー、TBSでドラマ化もされた。著書に『赤い靴』、『通夜女』などがあり、「猫弁」「あずかりやさん」など発行部数が数十万部を超える人気シリーズを持つ。

「2022年 『犬小屋アットホーム!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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