地のはてから(下) (講談社文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062774963

作品紹介・あらすじ

小樽での子守奉公で初めて都会の暮らしに触れたとわは知床に戻り、森のなかでアイヌの青年と偶然再会する。しかし彼への恋心は胸に秘めたまま嫁ぎ、母となる。やがて戦争の足音が…。まだ遠くない時代に、厳しくも美しい自然とともに生きてきた人の営みを鮮烈に描き出した感動巨編。中央公論文芸賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 必死に生きる。とにかく生きる。生きていくために丁稚奉公に行かされ、親の決めた顔も知らない相手と結婚する。そんな生活がたった100年前のこの日本にも確かにあったなんて信じられないくらい時代は変化してきた。自分の欲を出せるような状況が何一つなく、常に大自然の厳しい寒さと戦い続けなければならかった時代に生きたとわ。それでも私は、とわは幸せだったと思う。

  • 「ニサッタニサッタ」の前日譚。エエ味出してたあのとわさんが主人公。

    大正から戦前戦中戦後といえば、戦争で悲惨なことになったとはいえ、文明国家だと思っていたの本。俺らの祖父祖母の時代だから地続きの世界と思っていたが、北海道開拓史においてはl、こうまで俺の知らない過酷な世界だったとは。

    それにしても、主人公とわ、そしてその母親のたくましさ、しぶとさが素晴らしい。物語の中で何度も何度もしつこいくらいに悲惨な目にあう、とわさんや母親。それでも彼女らは生き延びること、子供や家族をなんとしてでも養うこと、それだけを念頭に「今日を生き延びる、今日をやり過ごす」ことに集中する。そして何度も何度も地べたを這い、泥水をすするような事態にあっても、生き延びてゆく。その描写のすさまじさに眉間にしわが寄るのを止められない。そしてなぜか、とても大きな勇気をもらえる。

    彼女らの境遇からすれば、俺なんてまだまだ生きていけるし食えてるし眠れてるし逃げ場もたんまりあるじゃないか。もっともっとあがけるじゃないか。

    できれば、お国を運営している連中に読んでもらいたい。連中の舵の取り方、羅針盤の見方一つで、どれだけの尊い命が無駄にされていくか。しかと心に焼き付けてほしい。
    とわさんのお兄さんはじめ戦争で散っていった命一つ一つをないがしろにするつもりは一切ない、だが国の舵を握った連中が間違った航路を進めば尊い命が無駄死と化すのだということを、俺たちもしかと覚えておきたい。

    「お国のいうことは信じちゃなんめえ」
    パヨクるつもりはないが、作中に出てくるこの言葉の重み、きっちり感じておこう。

    それにしても、男連中の情けなさ…父親、義父、亭主、孫(これはニサッタニサッタの方)、まさかの三吉までもが実になさけないダメ人間。
    俺もその仲間かもしれないなぁ。老い先も短い人生とはいえ、もうちょっと生きるしたたかさを持つようにしたい

  • H30.8.20 読了。

    ・上巻から引き続き、大正から昭和時代にかけて北海道で生きたトワと家族の話。小樽や斜里に奉公に行ったり、アイヌ人と恋に落ちたり、親の決めた相手と結婚し、子育て、子供の死、戦争経験などなど困難だらけにも見える人生を懸命に生きた姿に勇気をもらった。そして、トワのように強く生きていきたいとも思った。
     ニサッタ、ニサッタも読みたい。

    ・「人というものは、果たしてどこまで自分で自分の一生を決めたり選んだり出来るものだろう。」
    ・「どうせ、すべては過去になった。思いだしたところで、今さらどうなるものでもない。」
    ・「ともかく明日、もう一度朝を迎えよう。また次の日。1日1日、歯を食いしばってでも、新しい朝を迎え続けなければならない。」

  • 最後まで暗い内容だった。終章で幾分明るくなったが。
    大正から昭和、第二次世界大戦まで、北海道東部への入植者の苦労が描かれている。
    暗いけど、面白く一気に読んだ。以前、吉村昭の赤い人という北海道樺戸刑務所の囚人が北海道開拓に一役をなしたという小説があるが、時代は赤い人より後になるが寒さ厳しき北海道東部の開拓本当に大変だったと思う。人間のすごさを感じるととともにそのような環境の中で、少しのことで幸せを感じるということに感動した。

  • とわは12歳で小樽で洋品、雑貨、小物を卸す大きな商家の子守として奉公に出されるが、商売が傾き、16の時、実家に帰される。とわは三吉への思いを秘め、親の勧めるままに結婚するが、戦争に向かう不穏な時代が始まる。
    アイヌの青年三吉との淡い恋と、その後の再会には胸がつぶれそうになる。これが現実。でも、三吉と結ばれていたとしても、幸せであったとは限らない。

    戦争が、いかに人々の人生を翻弄してきたか、それに加えて北海道の自然の厳しさ。ときに自然は人々に恵みを与えてくれた。それを使って生きる術を教えてくれたのは、アイヌの人々だった。「地の果て」での暮らしは、人々が支え合わなければ生きて行けない、極限の環境であった。

    とわはどのような試練にあっても、「生きなければならない」という計り知れぬ強さを持ち続けていた。子どものために、家族のためにと、こんなにも強くなれたのは、母つね、兄直人のおもいがあったからだろう。

    「ニサッタ、ニサッタ」は、とわの孫にあたる青年の物語であるらしい。現代に至っても、男たちは女の強さに敵わないようだ。現在、北海道は豊かにみえる。私には、その影に人生に敗れていった多くの開拓移民の姿が見え隠れする。

  • 三吉との恋愛がせつなかった。
    いろんな意味で大変な時代だったと痛感した。

  • 奉公から戻ったとわは、初恋の相手と再会するも嫁に行くことになる。
    自分の気持ちも殺し、親の言うままに生きていかなくてはならない辛さや寂しさが伝わってきて切なくなる。
    やがて母となり、更に強く強くなるとわ。
    地のはてまでやってきた幼子の頃から母になるまでの壮絶な人生は、涙なしでは読み進むことが難しかった。

    2015.2.2

  • 下巻も引き続き、
    不運が続く。

    ただ主人公が大人になってきたので、
    子供のときのような周りに振り回されるだけではないから、ちょっと穏やかに感じる。

    個人的にはアイヌの男性との恋物語が
    気になったが、結末はなくても良かったような。想い出はそのままキレイであってほしい、私の願望か(苦笑)。

    いい後味が残る大作でした。

  • 大正の初期に知床の地に入植した一家の娘「とわ」を主人公にした一代記。「おしん」のオンエアは見ていないが、さながら知床版「おしん」と言った感じの苦難の歴史。
    これが私の父と10歳程度しか違わない世代の物語とは到底思えない。
    「生きること」を真摯に問う長編小説。

  • オホーツク海、原生林に覆われた極寒の地・知床。
    アイヌ語で「地のはて」と呼ばれたこの地に追われるようにやってきた開拓民の家族。そして少女とわの物語。

    「とにかく生きる。生き抜くんだ」

    生が凝縮された一冊。

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著者プロフィール

乃南 アサ(のなみ あさ)
1960年東京生まれ。'88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。'96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『いちばん長い夜に』『新訳 にっぽん昔話』『それは秘密の』など多数。訪台をめぐる随筆の近著に『美麗島紀行』がある。

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