占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062775038

作品紹介・あらすじ

密室で殺された画家が遺した手記には、六人の処女の肉体から完璧な女=アゾートを創る計画が書かれていた。彼の死後、六人の若い女性が行方不明となり肉体の一部を切り取られた姿で日本各地で発見される。事件から四十数年、未だ解かれていない猟奇殺人のトリックとは!? 名探偵・御手洗潔を生んだ衝撃のデビュー作、完全版! 二〇一一年十一月刊行の週刊文春臨時増刊「東西ミステリーベスト一〇〇」では、日本ミステリー部門第三位に選出。

感想・レビュー・書評

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  • かなりの文字量で読むのにかなり時間かかりました。
    だが死体を増やすトリックには驚かせれました。こんなトリック考えれるのがすごい。家族への恨みはとても深いと思い知らされました。

  • 再読(正確には、以前読んだのは改定完全版ではなくて、文庫版オリジナルだが、ほとんど覚えていないので、まあいいでしょう)。

    しかも二十年以上前なのは確かであり、当時二十代だった私は、島田荘司さん自ら旗頭となった(と記憶している)、“新本格”という言葉にときめき、彼の推薦した推理作家の作品を(綾辻行人、歌野晶午、法月綸太郎等)、片っ端から読みまくり、それくらい島田さんに心酔していた頃があった。

    その根拠は、日本でも、こんな面白い推理ものを楽しめるんだといった気持ちが強く(今になって思うと、井の中の蛙の典型ですよね。恥ずかしながら)、いつも解けないくせに、次こそはと挑戦したくなる魅力的な謎と、そこで待っていた予想の上を行く、衝撃のトリックや大どんでん返しにやられた喜びは、当時の鬱屈していた私の数少ない楽しみとなり、その虜となっていったが、あまりにたくさん読み続けるにつれて、最初にあった挑戦意欲は次第に失せていく反面、今度はどんな驚きを見せてくれるのかといった、解答へのハードルを上げてゆく期待ばかりに目が行くようになってしまい、後に私が、一度推理ものを離れた理由は、ここにあります。

    そして、今回の再読ですが、おめでたい性格をしている私は、なんと解答編に入って、やっとトリックの全てを思い出すといった、いちばん最悪のパターンとなってしまい、当然、新鮮さは無いわけだが、それでもこれは凄いと思い、何故かというと、トリックの内容そのものだけではなく、それを形成するために数多くある、考えに考え抜かれた伏線と、それに反して、そこに至るまでの過程に見られた大胆さや弱さも含めた人間味が、ふとすると、狂気性も窺えそうな残虐性のある犯罪なのに、決して悪い印象ばかりを抱かせない犯人像を描いている、そこに感じさせる人間らしさであり、物語で、探偵役の御手洗も言っていたように、『そんな単純なものじゃない』のが、人間が人間たる所以だと思うからである。

    それから、せっかく名前が出てきたので、御手洗の事を少しだけ書くと、当時は、もっと怖いくらいに狂気的でエキセントリックな奴だとイメージしていたのが、今回再読したら、「あれっ、こんなにいい奴だったっけ?」というのが正直なところで、おそらく、これは今の私が人間の様々な一面を、様々な本で知った事で、御手洗も一人の人間だということを、やっと実感出来るようになったからだということと、私の中での好きな探偵の要素の一つに、相手の気持ちを慮ることの出来ることがあり(たとえ探偵自身がどんなに奇矯に思われても)、本書ではこれがあったことで、どれだけ犯人が救われたのかを鑑みると、当時は斬新なトリックばかりに目がいっていた私が、今では物語の中の人間の心情を、慮ることが出来るようになった嬉しさもあって、本格推理ものには、こうしたシーンも合わさる事で、より深く感じ入るものが出てくるのではないかと再実感したことに、改めて島田さんは人間を描いていたんだなと気付く事が出来たのが、私には最も嬉しかった。

    そして、それは勿論、人間の一つの面だけではない奥深さを描いた事でもあることと同義であり、御手洗にしても、普段の言動から思いもかけないような奥ゆかしさを持っているのだから、これはやはり、考えて書いているのではないかと思わずにはいられないのと共に、島田さんの作家以外の素の一面を見た思いがした。言葉だけにすると、何のことやらかもしれないが、これがまた、御手洗の色々な気遣いを感じさせる、いい言葉なのですよ。

    『劇的な場面で堂々と名乗りをあげるには、あまり向いてない名前だから』


    私に再読するきっかけをくれた、
    ひまわりめろんさん。
    ありがとうございます。

    • ひまわりめろんさん
      たださん
      こんばんは!

      そうなんですよねー
      御手洗潔がただの謎解きマシーンになってないところがいいんですよ

      土瓶さんのコメント欄で書きか...
      たださん
      こんばんは!

      そうなんですよねー
      御手洗潔がただの謎解きマシーンになってないところがいいんですよ

      土瓶さんのコメント欄で書きかけてやめたんですが、石岡がぜんぜん見当違いのところを延々と続けるくだりあるじゃないですか?
      もちろん読者をミスリードするって思惑もあったと思うんですが、あんなもんワトソンが追いかけてる時点でカスリもしないことは明白なわけで、かなりミスリードとしての力は弱いわけです
      じゃあ、あの部分がなぜ必要かっていうと、石岡とその裏で動いている御手洗の人間性みたいなんを描き、また想像させるためにあるパートだと思うんですよね

      そして今の日本の若いミステリー作家に不足している部分だとも思うんですよね
      何気にこれまでもレビューの中で指摘してきているんですが
      斬新な設定やトリックは確かにすごいんだけど、人間を描いてないんで深みがないんです
      まだまだ島田荘司さんには及ばないな〜なんて偉そうに思ったり
      でももう一歩踏み込めたらこの中からとんでもない作家さんが生まれるかもという期待感があったり

      あ、長々と失礼しましたw
      2023/06/28
    • たださん
      ひまわりめろんさん
      おはようございます!

      思いの込もったコメントをありがとうございます(^^)

      石岡のあのくだりは、私も印象に残ってまし...
      ひまわりめろんさん
      おはようございます!

      思いの込もったコメントをありがとうございます(^^)

      石岡のあのくだりは、私も印象に残ってまして、結構長々とページを割いてますよね。これは少しくらい、何か得るものがあるのかなと思ったら、まさにカスリもしなくて、笑ってはいけないのですが、彼には何故か、そういう結果が似合いますよね。

      しかし、それでも思わず、「ピュアか!」と言ってしまいたくなる石岡の優しい人柄と、御手洗の為に何とかしてやりたい、友情の素晴らしさを感じさせられて、いい場面だと思いましたし、あれはあれで、私には旅の読み物としても、興味深く読めまして、駄文にしていないのが、島田さんのまた凄いところだと思いました。

      ただ、「AZOTH」は、途中で読むのやめようかなと思ったくらい辛かったですね。若い頃は、ああした内容に、却って興味をそそられたのかもしれませんが、今読むと、何を言ってるのか全く理解できなくて(笑)
      でも、それすら伏線になっていたのかもと思うと、やはり凄いですよね。

      それから、ひまわりめろんさんの書かれていた、とんでもない作家さんへの期待感、私も同感でして、これから出会いたい気持ちも高まりましたが、中々、本格ものをたくさん読む機会も無くて、ひまわりめろんさんのレビュー、是非楽しみにしております(^-^)
      2023/06/28
  • 本格? 新本格? ミステリーの代表作としてたびたび名前の挙がる超有名作。

    満を持して手に取りました!

    読みました!!

    ダメでしたーーー_| ̄|○

    あ、合う合わないって……あるよね~。きっと( ;∀;)
    好きな人はごめんなさい<m(__)m>

    半分くらい読んだとこで犯人とトリックがほぼ見当がついてしまったので、後半はひたすら疲れた。このだらだら書いている部分はミスリードさせようとか、引っ掛けようとして書いているんだな、と思ってよんでいると辛いです。
    謎もポンと最初に提示されるだけで、読み進めるうちに被害者が増えていったり、謎が増えていくこともないので、自分的には盛り上がりに欠けました。
    起こした事件の大きさにしては動機が少し弱い気もするし、犯行は運に恵まれすぎているとも思う。

    有名な御手洗潔とワトソン役の男もあまり好感は持てなかった。というかまだ第一作目だからか関係性も特徴もよくわからなかった。

    たまたま今回私に犯人やトリックがわりと早めにわかってしまったのは、この作品のオマージュ的なものや影響された作品を読んでいるからでしょう。決して楽なトリックではありません。それだけこの作品が影響を与えたのは大きいということなのでしょう。

    本格やら新本格の定義は知らないけど、自分には横溝正史や綾辻行人や京極夏彦のほうが好きだな。

    あ、あと、舞城王太郎の初期の方、「煙か土か食い物」とか「暗闇の中で子供」も思い出した。
    トリックのはっちゃけぶりはそっちが上。

    • 土瓶さん
      純文学かぁ~。ハードル高そうでな~。

      和。べつにおもしろければ和でも洋でも。

      なおなおさん。ナカーマー(=゚ω゚)ノ

      横溝...
      純文学かぁ~。ハードル高そうでな~。

      和。べつにおもしろければ和でも洋でも。

      なおなおさん。ナカーマー(=゚ω゚)ノ

      横溝正史で……「真珠郎」かな? 祭るんだね(笑)
      2023/06/19
    • みんみんさん
      妹に金田一シリーズたくさん貰ったからそのうち読もう(〃ω〃)
      妹に金田一シリーズたくさん貰ったからそのうち読もう(〃ω〃)
      2023/06/19
    • ひまわりめろんさん
      まぁ、予想通りのオチでしたねw
      ダラダラの部分はミスリード目当てとはちと違うと思うんだけど、まぁ捉え方はそれぞれだ

      横溝正史祭りは一足先に...
      まぁ、予想通りのオチでしたねw
      ダラダラの部分はミスリード目当てとはちと違うと思うんだけど、まぁ捉え方はそれぞれだ

      横溝正史祭りは一足先に始めます
      ちょっとおびーとは違う視点で
      さすが一歩先行く男ひまわりめろん
      2023/06/20
  • 数年前に図書館で借りて
    返却期限の手前で読み
    最初の章で「なんだこりゃ!?」と
    ワケがわからなすぎて、そのまま期限が来たので返してしまった。

    SNSで好きな本が「占星術殺人事件」
    という方を見かけると「あの難解な文章をこの人達は読んだのか…」と尊敬してました。

    あれから数年
    目次も特に読まなかったので
    よくわかってなかったが、最初の章を「占星術にのめり込み女性を殺して、その部位を集めて完璧な人間を作ろうとした"狂人の手記"」として認識し…
    ようやく読むことができた。
    (アレはまともに読んでたら頭がおかしくなる…)
    その狂人にまつわる四十年前の殺人事件の謎を解明しようと奮闘する話

    ようやく、主人公の御手洗くんの登場
    第一声で「手記」を読み終えた読者の気持ちを代弁してくれている。
    四十年前の事件を追うため、解決したところで意味があるのか?という疑問を持ったまま進む。

    「これはどうだろう」という予想は次のページくらいでどんどん却下されていく。
    登場人物の一覧を紙に書いて、それぞれの状況を整理しないと追えない…
    (改訂版でようやく図が足されたらしい、これなかったらキツかったなぁ)

    本作のワトソン役である
    石岡くんの敬愛するシャーロック・ホームズを探偵として、ボッコボコにけなした後から話が動き出す。

    上記の疑問も解決し、事件の真相を追わなければならなくなった御手洗達
    どちらかというと男としてというか
    「探偵」としての勝負に出て突っ走る
    そして暴走、疾走 鬱と躁のバランスの中で狂人の謎に、狂人が挑む。

    ワトソンはホームズになろうとして独自の捜査を進める。
    石岡くん疲れるだろうけどいい関係性だなぁ…

    ルールがあり、ヒントをすべて出した上での「読者への挑戦状」の
    ページは、少し震えました。
    (全然わからなかったけど)
    事件に絡む人々の「感情」の部分は、どうしても真相が解明してからになるだろうと、あえて気にせず読み「謎」を解く姿を追い続けました。

    やはりこの手の本格推理小説は
    「探偵」が「謎」に挑む姿を
    一種のスポーツのように観戦するような感覚で読んでます。

    「トリック(謎)」に重点がくるため、好き嫌いが分かれそうなジャンルですが…
    「紅蓮館の殺人」以降どハマりしています。

  • トリックは初見だとめっちゃ秀逸なトリックだと思うんだけど、いかんせん先に某名探偵の孫を読んでいたせいで、完全に楽しむことが出来なかったのが悔やまれる...
    御手洗潔のキャラは面白かった。

  • 余韻に浸る程の面白さでした!

    本格ミステリで「読者への挑戦」があり、本を閉じ自作メモを見ながら考えたのですが、私には解けませんでした。。。

    画家の梅沢平吉の手記から始まるのですが、自分は悪魔憑きで、理想の女(アゾート)を作るのが夢であるという。
    自分の娘達を占星術で占い、理想の星座の身体の部位を寄せ集め、アゾートを作り出すという、エログロ要素満載の出だし。
    事件は2・26事件と同時に起こったのですが、平吉本人が密室で殺害されてしまうというもの。
    そこから終戦後40年もの間、謎が解明されず時効へ。

    娘達の複雑な家庭環境、手記の内容、占星術の示す星座と運命、死体安置の軽度や緯度、狂人の思想の巧妙さ。

    すごく面白かったです。

  • あまりにも評価が高い本書。
    「これ以上のトリックは二度と現れないだろう」という声が多くあったので、読むのを躊躇っていました。
    そんなに面白いのなら人生最後の一冊にしたいと思い、ずっと読むのを我慢していました。
    しかしミステリーファンとして読みたい衝動を抑えられず、ついに読んでしまいました。

    最高でした!!
    作中で言われている通り、分かってしまえば実に単純なトリックでしたが、そこに至るまでの伏線やミスリードがとても絶妙で、見事に騙されました。

    それなりに分厚い方ですが面白すぎて止まりませんでした。
    最高の読後感です。
    ネタバレを踏む前に読んでほしい。

    確かにこれ以上のトリックはもう現れないかも…という気持ちになりましたが期待を超えてくれることを信じ、これからもミステリーを読み続けます。

  • 他の方も書かれていましたが、最初の手記がかなり読みづらかったです・・・。
    ただ、これが30年以上前に描かれた小説なのだと考えると、そこまで違和感なく読めるのが凄いと感じました。

    「大衆次元への押し下げというやつだ。」
    「日本の汽車から見える山々が、懐に飛び込んくるような気がしましたって言ってたよ、」

  • 久しぶりの長編ミステリーを読みましたー
    島田荘司作品は初めてなのですが楽しく読みました
    途中、読者にミステリーの解明は出来そうですかみたいな投げかけが有りますが、アタシなんかにはさっぱり判らず読み進めるしか無い状態でしたが、御手洗さんは凄い(^^)
    ラストの犯人からの遺書は圧巻でした…

  • 最初のアゾート殺人の手記や密室殺人の図、説明の箇所は、昔確かに読んだことがある。でもそれ以降の記憶は全くなかったので、昔はここらで挫折したんだなあと回想。
    今回もここらまでは時間かかったけど、アゾート追跡の謎解きあたりから加速して読むだす。
    なぜこんなに古い時代設定何かと思ったけど、今の時代では暴かれる、この時代だからできる血液判定技術なんかの理由があったのか。
    やっぱり語り継がれる名作なんだなあ、面白かったです!

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

島田荘司の作品

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