オルゴォル (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 119
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062775076

作品紹介・あらすじ

小学5年のハヤトはトンダじいさんの「一生の一度のお願い」を聞いて古ぼけたオルゴールを鹿児島に届けに行く。みずみずしい成長譚

感想・レビュー・書評

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  • 『かたみ歌』を読んで、たいへん気になりながらも、ようやくの2冊目です。

    母親と公団住宅で暮らす小4のハヤト。
    同じ住宅に一人で暮らすトンダ(東田)じいさんとは、あいさつを交わす程度の知り合いなのだが、ふとしたきっかけから「一生に一度のお願い」を託される。
    それは、預かっているオルゴールを鹿児島に住む人に届けてほしいというもの。
    ハヤトが大人になってからでも構わないと言われたが、交通費として手渡されたお金を使ってしまったことから、妙に後ろめたくなって・・・。

    春休みになって、ハヤトが大阪で暮らす、離婚した父親の家に遊びに行くと、そこには若い女性がいて、お腹には赤ちゃんが。また、アパートの隣人・サエさんと思わぬいきさつから広島へ旅行することになって、遂には鹿児島へと向かっていく。

    10歳の春休みにハヤトが出会う小さな、しかし本人にとっては衝撃的な事実や事件のあれこれに、ハヤトの思いが伝わってきて胸がつまる。与えられるぬくぬくした暮らしの中で、これらの事件のたった一つすら経験しないで済む10歳(多くの子ども達はこちらだと思うけど)と比べて、かなり早い段階で人生の苦みや痛みを味わったことになる。
    けれどハヤタには、共に歩いてくれる人や励ましてくれる人、見守ってくれる人がいて、実は愛情に囲まれ幸せな姿もそこにはある。
    子どもは子どもなりに、深く感じ考えているものだ。大人の気配を察知し、大人が悲しむのを回避したいと願っている。時には拗ねてしまったり、自分の感情に身を任せねばならないときもあるけれど。

    登場人物の誰もが、なんらかの苦しみを抱え、それでも笑う。現実を受け容れることが難しくても、それを無かったことにはしない強さも持っている。

    共に旅をするサエさんは特にいい。
    ハヤトを子ども扱いせず、彼を理解しつつもわかったふりはしない。真正面から向き合ってくれるのだ。ハヤトにとっても、彼女と出会ったことで大人への扉が少し開いたのではないか。

    また、級友のシンジロウとの関係も大きく変化していく。ハヤトはクラスの雰囲気を決定する中心的なグループの側にいて、自分の気持ちよりもそこからはじき出されない振る舞いを常に要求される子供の世界。
    そこには属さないシンジロウを空気の読めない、見下すべき存在と感じていた持ちが、鹿児島への旅の中で変わっていく。子供じみているのはむしろ自分たちで、芯があり勇気を持っているのは、シンジロウのほうではなかったか?
    閉ざされた世界に存在する自分の目の前に、大きな世界(広い社会)が現れる。経験によって知が啓かれ、見通しがきくようになると、今までの殻を脱いで一回り大きくなれるようだ。

    「スタンドバイミー」を思い出させてくれる、男の子の成長物語。それと異なっているのは、手本となる素敵な大人が大勢出てくるところか。

    最後の最後まで、魅力的なお話。
    解説もまた、いい。

  • 後少しで5年生になるハヤト。
    両親が離婚しており、東京で母親と暮らす。
    大阪で住んでいる父親の所へ行くのだけれど父親は再婚しておりもう少しで子供も産まれる。

    この父親、決して悪い人ではないのだけれど、何だかモヤモヤ。
    大事なことをどうして自分の口から伝えないのか。
    『自分は父親だ』と言うなら、どうして子供と向き合わないのか。
    きっと想像力が足りないのだ。
    簡単な事ではないだろうけど、この父親は好かない。

    大阪で知り合ったサエと、ハヤトが東京でおじいさんとした約束をはたしに2人で鹿児島へ。

    戦争や近年で起きた事件、事故など色々と詰め込みすぎかなぁと思うものの、
    それでも良い本だ。
    読みやすい本だから子供でも読めるはず。

    こんな風に親からだけではなく、周りに揉まれ
    色々なものを見て大人へと進んでいって欲しいなぁと、娘の寝顔を見ながら思いました。

  • (「BOOK」データベースより)
    「実は前から、ハヤ坊に頼みたいことがあってなぁ」東京に住む小学生のハヤトは、トンダじいさんの“一生に一度のお願い”を預かり、旅に出る。福知山線の事故現場、父さんの再婚と新しい生命、そして広島の原爆ドーム。見るものすべてに価値観を揺さぶられながら、トンダじいさんの想い出のオルゴールを届けるため、ハヤトは一路、鹿児島を目指す。奇跡の、そして感動のクライマックス!直木賞作家による感動の成長物語。

    我が家で大流行している朱川湊人の作品の中でも異例の長編で、いつも短編か連作なので長編はどうなのかなと若干心配していましたが、結果杞憂でした、とても良い本でした。
    少々作者の顔が透けえて見えるような部分があり、素直に読めない部分も有りましたが、やはりこの叙情性はとても心地よく最後は朱川マジックに掛かっていました。

  • 同じ団地のおじいさんからオルゴールを鹿児島まで届けるよう頼まれた小学生のハヤト。オルゴールの処遇をめぐり、ハヤトは大阪に暮らす父に休みを利用して相談に向かう。

    この作品も朱川さんらしい登場人物への温かい視点、そしてオルゴールをめぐっておこるちょっと不思議な出来事が、美しい結末へ綺麗につながっているように感じます。

    この作品の一番の読みどころはオルゴールをめぐってハヤトが成長していく姿でしょう。初めの方こそなかなかのいけ好かないガキなのですが(笑)初めての一人旅、大阪での出会い、鹿児島までの旅を通して彼はさまざまなものを目にし、考えそして人間的に成長していくのです。

    新幹線に乗るのにドキドキするハヤトの様子を読んで、初めて一人で電車に乗って都市部の映画館まで行った自分を思い出しました。そういう懐かしさを誘うところもあれば、原爆資料館や戦争のことなど改めて思い出さなければいけない、と思うことや人とのつながりなどハヤトに教えられることもたくさんありました。

    ハヤト以外の登場人物たちもよかったです。悪い人がいない、という意味で安心して読めるのですが、それぞれ胸の中に葛藤や苦悩を抱えていて、それらをハヤトがどう受け止めるのかも注目すべきところ。
    個人的にはハヤトの同級生の真面目な少年通称「リアのび」(リアルのび太の略)が好きでした。こういう友人が近くにいるってホントに大事だと思います。

    大人が読んでもいろいろ考えるところのある小説だと思うのですが、小・中学生が読んでも得るものがたくさんある小説だと思います。語彙や心理描写もそんなに複雑ではないし、自分自身その頃に読んでいたかった小説だなあ、と思いました。

    本って各年代によって好みが分かれるところだと思いますが、この本はあらゆる世代の人が読んでも何か大切なものを残してくれたり、心を温めてくれる本ではないかと思います。

  • もっとも好きな作品かな。ちゃんとオルゴール渡せたし、子供なりに両親のこと理解できたし。
    そして、自殺じゃないよ。心の病で亡くなったんだよって言葉がすごくよかった。そうだよね。そう思う。

  • 子供は外(社会)との関わり合いにより成長する。大人と関わり合いを持つ事で新たな扉を開く事が出来る。かわいい子には旅をさせろ。と言うのは本当だな。

  • 顔見知りのおじいさんの頼みを聞いてオルゴールを遠方まで届けることになったハヤト。お金欲しさに安請け合いした。それがきっかけで、大切にしなければならない友達、人それぞれの考えや事情、人の親切や愛情などいろいろなことを学ぶ。

  • 旅のストーリーとしては際立っているものではないと思いますがやはり戦争の遺恨を残す場所を廻りラストの盛り上がりはジ~ンとしますね。
    いい話だと思います。

  • 男の約束を果たすため、東京から鹿児島へ旅する少年の成長物語。
    人は一人では生きていけない。支えあってこその「人」である。よく言われることだが、その実感は本当のピンチの時に知ることができる。
    生まれてきたからには、本当に死にたいと思う人はいない。少年が、福知山線事故現場、広島平和記念資料館、知覧特攻平和会館で感じた「生きる」ことの尊さ。
    大きなテーマを読みやすく、そして心温まるストーリーに仕上げた作者の力量が素晴らしい。私も我が子を旅に出そう。

  • まっすぐに、本当に面白かったです。
    小学生のハヤトの新鮮な感動や感覚がそのまま伝わってくるようで、純粋な気持ちになれました。
    朱川湊人さんの描く子どもが好きです。というか、子どもが出てくるといきいきとした描写になる感じが楽しく、いつも主人公が小学生だと分かった瞬間「ヨッッシャ!」と思います(笑)

    このお話に込められた主題が本当に素敵で、読むことを通してそれぞれに感じ取ってほしいと思うから、私の可愛い5年生のみんなにおすすめして、読んでもらっています。

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著者プロフィール

朱川湊人(しゅかわ みなと)
1963年、大阪府生まれの作家。『都市伝説セピア』が直木賞候補。05年『花まんま』で直木賞受賞。ノスタルジックホラーというジャンルを開拓した。小説業のかたわら『ウルトラマンメビウス』の脚本も手がけるなど活動は多岐にわたる。著書に『サクラ秘密基地』『月蝕楽園』『冥の水底』『キミの名前』など多数。
2018年9月、『アンドロメダの猫』を刊行。

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